グレープフルーツジュース
スライスされたピンクグレープフルーツ。
グレープフルーツジュース (英 : Grapefruit juice )は、グレープフルーツ の果実 を搾る ことで得られる、果汁 (ジュース )である。
グレープフルーツジュースは、ビタミンC が豊富で、ぴりっとした甘さからとても酸っぱいものもある。様々な種類があり、ホワイトグレープフルーツやピンクグレープフルーツ、ルビーレッドグレープフルーツなどがある[ 1] [ 2] 。
なお、そのまま飲用される他にも、例えばスプモーニ 、ソルティ・ドッグ 、チャイナ・ブルー などのように、カクテル の材料として使われる例もある。
薬物との相互作用
グレープフルーツジュースやグレープフルーツは、シトクロムP450 のスーパーファミリー を構成する分子種の1つであるCYP3A4 を阻害することが知られている。多種多様な薬物の代謝に影響を与え、生物学的利用能 を増大させる(つまり薬の作用が想定しているよりも、強くなり過ぎるのである)。例えば、アステミゾールやテルフェナジン では、致命的な薬物相互作用 を起こしたため、それらの医薬品 が市場から撤退した一因となった。
グレープフルーツに含まれる、CYP3A4 を阻害する主要成分としてはフラノクマリン 誘導体の6',7'-デヒドロキシベルガモチンとベルガモチン (英語版 ) 、これらの二量体 であるGF-I-1、GF-I-4の4つが発見されている[ 3] 。
これらの成分は主に小腸 において、CYP3A4に直接結合して不可逆的に阻害し、その作用は3-4日継続するため、同時に摂取することを禁止するのではなく、服薬前後のグレープフルーツジュースの摂取自体を禁止する必要がある[ 4] 。この作用は、グレープフルーツジュースを最後に飲んでから3日から7日継続する[ 5] 。特に肝硬変や、複数の薬を飲んでいる高齢者では、このグレープフルーツジュースと薬物の相互作用の影響が強く出て、健康被害が生じ易くなる[ 5] 。
ある薬剤では、最高血中濃度がグレープフルーツジュースと同時に摂取した場合には約3倍に、グレープフルーツジュースを5日間定期的に飲んだ後では約5倍である[ 4] 。また異なる薬剤間での血中濃度の高まり方は一律ではなく、大きく異なる[ 4] 。シンバスタチン では、12倍から13.5倍の血中濃度となった[ 6] 。
およそ85種類の薬と薬物相互作用 を起こし、そのうち約半数の種類の薬では重篤な副作用を起こして、死亡 にかかわる危険性がある[ 6] 。
グレープフルーツ摂取の影響で、CYP3A4による代謝が阻害される薬剤の種類としては、マクロライド系抗生物質 、抗真菌薬 、オピオイド 、カルシウム拮抗剤 、多くのベンゾジアゼピン 、一部の抗うつ薬 や抗精神病薬 など、他にも多様である。
増強する薬の例として以下のものが挙げられる。
研究は積み重ねられているが、2010年の時点で、医師 や薬剤師 に対して正確な情報が提供されていなかったり、添付文書に最新の知見が反映されていなかったりする[ 4] 。
適切な量のグレープフルーツジュースを飲む程度であれば、スタチン との併用を避ける必要はないとの文献が存在する。グレープフルーツジュースとスタチンを併用している患者の横紋筋融解症 の発症は10,000人に1人程度であり、グレープフルーツジュースを適量でよく飲む患者であるならば、スタチンの減量で対応できるとしている[ 8] 。
健康
ハーバード大学 医学部によると、グレープフルーツジュースにはフラボノイドが豊富に含まれており、野菜や果物と同様に、物忘れを防ぐ効果がある[ 9] 。
また、杏林大学 医学部 教授の古賀良彦 協力研究による、アメリカ合衆国 フロリダ州 政府柑橘局の2015年 の発表では、60℃に温めたホットグレープフルーツジュースを飲むと、常温水・常温グレープフルーツジュースを飲んだ時よりも「計算問題達成数」、「落ち着き」、「気分の良さ」の3点すべてにおいて高い点数を獲得したことがわかっている。グレープフルーツジュースは、常温とホット双方にて前頭葉の脳血流量が増加し、脳の活性化が示されたが、とりわけホットグレープフルーツジュースはその効果が持続されており、この事から『勉強前や勉強の合間にホットグレープフルーツジュースを飲むと、集中力を高め勉強の効率化を図りやすい』とコメントしている[ 10] 。
出典
^ The World's Healthiest Foods; Grapefruit. The George Mateljan Foundation. Article
^ Fellers PJ, Nikdel S, Lee HS (August 1990). “Nutrient content and nutrition labeling of several processed Florida citrus juice products”. Journal of the American Dietetic Association 90 (8): 1079–84. PMID 2380455 .
^ 北村正樹, 景山茂「グレープフルーツジュースによる薬物相互作用 」『耳鼻咽喉科展望』第42巻第4号、耳鼻咽喉科展望会、1999年、430-433頁、doi :10.11453/orltokyo1958.42.4_430 、ISSN 0386-9687 。
^ a b c d 奥村勝彦・監修、大西憲明・編著『一目でわかる医薬品と飲食物・サプリメントの相互作用とマネジメント』(改訂版)フジメディカル出版、2010年、15-18頁。ISBN 978-4-939048-44-9 。
^ a b Owira PM, Ojewole JA (2010). “The grapefruit: an old wine in a new glass? Metabolic and cardiovascular perspectives” . Cardiovasc J Afr 21 (5): 280–5. doi :10.5830/CVJA-2010-012 . PMC 3721883 . PMID 20972517 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3721883/ .
^ a b Chen M, Zhou SY, Fabriaga E, Zhang PH, Zhou Q (April 2018). “Food-drug interactions precipitated by fruit juices other than grapefruit juice: An update review” . J Food Drug Anal 26 (2S): S61–S71. doi :10.1016/j.jfda.2018.01.009 . PMID 29703387 . https://doi.org/10.1016/j.jfda.2018.01.009 .
^ Sugimoto K, Araki N, Ohmori M, et al. (2006). “Interaction between grapefruit juice and hypnotic drugs: comparison of triazolam and quazepam”. Eur. J. Clin. Pharmacol. 62 (3): 209–15. doi :10.1007/s00228-005-0071-1 . PMID 16416305 .
^ Jonathan W Lee, Joan K Morris, Nicholas J Wald "Grapefruit Juice and Statins" Am J Med. 2016 Jan;129(1):26-9. doi :10.1016/j.amjmed.2015.07.036 . Epub 2015 Aug 20.
^ Godman, Heidi (2021年9月17日). “Can flavonoids help fend off forgetfulness? ” (英語). Harvard Health . 2022年1月8日 閲覧。
^ “グレープフルーツジュースを温めて飲むと、脳が活性化することが判明 ”. 株式会社マイナビ (2015年12月17日). 2023年8月3日 閲覧。
関連項目