カラマンダリン (英語 : Kara Mandarin )は、ミカン科 ミカン属 の植物 。カラオレンジ 、カラ とも称する。ウンシュウミカン にキングマンダリン (英語版 ) を交配した雑種 であり[ 3] [ 4] [ 5] 、1915年 に開発された[ 2] [ 6] 。世界 的にはあまり栽培されていない種であるが、日本 では少量の商業的な生産が行われる[ 7] 。
特徴
カリフォルニア大学リバーサイド校 のフロスト博士(H. B. Frost)が開発し[ 6] 、1935年 にフロスト博士が「カラ」と命名した[ 3] 。尾張 系のウンシュウミカンにキングタンゴール を交配したものである[ 6] [ 8] 。
樹勢はウンシュウミカンに似ており、樹形は開張性で側枝が垂れやすい[ 3] [ 4] [ 6] 。多くの果実 を付け[ 3] 、個々の果実は果梗(かこう)部の突起を除いて楕円 形をしている[ 3] [ 4] 。大きさは中程度からやや大きめであり[ 4] 、ワシントン州 産のネーブルオレンジ よりは小さい[ 9] 。果皮 は中程度の厚さであるが、むきにくい[ 4] 。中の実は10 - 12房である[ 4] 。果肉 は濃い橙色 をしており[ 3] [ 4] 、濃厚で日本人 の好みに合う味を呈する[ 3] 。ただし未熟の場合は酸味 が強い[ 3] 。種子 の数は多く、淡緑色をしている[ 4] [ 6] 。種子の多さは商業生産上のネックとなっていた[ 6] 。
カラマンダリンに吉浦ポンカン を受粉させた珠心胚実生である「南津海(なつみ)」という柑橘類も開発されている[ 2] [ 10] [ 11] 。山口県 大島郡 橘町 (現・周防大島町 )の農家がカラマンダリンの高い糖度 に注目して[ 10] 1978年 (昭和53年)に開発した[ 11] が、カラマンダリンとはあまり区別せずに出荷されることが多い[ 2] 。
栽培と流通
完熟する時期は4月上旬であるので、栽培は無霜地帯かつ暖かい土地であることが望ましい[ 3] 。開発されたカリフォルニア州 リバーサイド では3月1日 から6月後半にかけて食される[ 9] 。露地栽培種であるが、ハウス栽培種としても注目されている[ 5] 。結果から収穫までおよそ1年樹上で育て、果実に養分を行き渡らせ、糖度を高める[ 7] 。果実を収穫しないで実ったままにしても品質は低下しないが、果皮と果肉が分離する「浮皮」になる[ 12] 。浮皮のカラマンダリンは傷みやすく、味が落ちることがある[ 13] 。
誕生したカリフォルニア州では他のオレンジ類と出荷 時期が重なるため[ 3] [ 6] 、商業的な生産はあまり行われていない[ 3] [ 4] [ 6] 。1950年代 のニューヨーク およびロサンゼルス では1ポンド あたり10 - 25セント で販売されていた[ 9] 。
日本のカラマンダリンの収穫量と作付面積の推移(1974-2013年)
日本では少量ながら生産が行われ、3 - 4月にかけて収穫され、減酸した後に出荷される[ 14] 。減酸には2週間から1か月を要し[ 15] 、4 - 5月に流通する[ 13] [ 16] 。生産現場では「晩生 みかん」[ 5] ・「春のみかん」として扱われる[ 13] 。2013年 (平成25年)の日本国内の栽培面積 は146ha 、出荷量は2,592t であり、愛媛県 が全出荷量の65%を占める[ 13] 。特に松山市 の生産量が他の県内産地を圧倒し[ 15] 、松山市内では中島 などの離島を主産地とする[ 16] 。また2007年 (平成19年)7月に「まつやま農林水産物ブランド」第5号に認定された[ 16] 。日本における栽培発祥の地である三重県や和歌山県 の有田地方 での生産も多い[ 15] 。
生産県 (2013年)[ 17]
日本への導入は1955年 (昭和30年)で、田中長三郎 が種子を持ち込み、三重県 度会郡 南勢町 (現・南伊勢町 )の農家に依頼して栽培が始まった[ 8] 。また農林水産省や愛媛県果樹試験場(現・愛媛県農林水産研究所 果樹研究センター)などへも後に穂木が導入された[ 2] 。当初は酸味が強く、カンキツかいよう病 に弱かったため、田中は商業生産に消極的であった[ 8] 。その後5月にヒヨドリ が群がっているのを目撃し、味が良いことが確認され、かいよう病対策も実現した[ 8] 。栽培と管理が難しかったことから普及には至らなかったが、1990年代 以降は生産量が増加している[ 13] 。三重県では1980年 (昭和55年)頃より地域特産果樹として本格的な栽培がおこなわれた[ 18] 。
脚注
参考文献
市ノ木山浩道・奥田均・後藤正和(2015)"‘新姫’および‘カラマンダリン’の搾汁時における果皮の有無が果汁のフラボノイド含量ならびに香味の質に及ぼす影響"園芸学研究(園芸学会 ).14 (3):283-289.
岩堀修一・門屋一臣 編『カンキツ総論』養賢堂、1999年1月20日、708p. ISBN 4-8425-9818-2
農文協 編『果樹園芸大百科 1 カンキツ』農山漁村文化協会 、2000年2月25日、1151p. ISBN 4-540-99331-3
湯川勇 編『カンキツの品種更新技術』養賢堂、昭和59年11月30日、205p.
Cameron, J. W., Soost, R. K. (1953)"The Kara Mandarin: tangerine-type, late spring fruit of excellent eating quality is promising"California Agriculture(University of California ).7 (7):4,14.
Iwasaki, N., Oogaki, C., Iwasa, M., Matsushima, J., Ishihata, K. (1986)"Adaptability of Citrus Species Based on the Relationships between Climatic Parameters and Fruit Quality Characteristics".Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (Japanese Society for Horticultural Science ).55 (2):153-168.
関連項目
外部リンク