「abさんご」(エイビーさんご)は、黒田夏子による小説。
概要
2012年9月7日発売の『早稲田文学』5号に、第24回早稲田文学新人賞受賞作品として掲載された。なお同賞受賞は蓮實重彦の単独選考によるものであった。2013年1月、第148回芥川龍之介賞を受賞。横書きで書かれた作品であり、横書きの小説による受賞は芥川賞史上初。また作者は受賞時75歳で、受賞時点において史上最高齢の芥川賞受賞者となった[1]。
2013年1月22日、文藝春秋より単行本として刊行された[2]。同年2月9日、同社より電子書籍版が配信開始された[3]。2015年7月10日、文春文庫として『abさんご・感受体のおどり』が発売された[4]。
内容
『受像者』から始まる15の断章からなる物語。主人公は両親の片割れを幼少時に亡くしており、もう片方の親も最近亡くしている。小学校入学の際に二校の選択肢があった幼少時代についての夢をきっかけとした追想が始まる。
評価
『早稲田文学』で新人賞を取った。その際に蓮實重彦による選評における「普通の形式で書かれていないというだけの理由でこの作品を読まないのは損だ」という意味の文言が抜粋され推薦文として単行本の帯に載せられた[5]。
中野翠は「サンデー毎日」の連載コラムで、2013年3月3日号で、高く評価した。最初はあざとい実験作と思ったが読み進むうちに面白くなった、第一章のタイトルである受像者という造語が気に入った、などと書いた。
小谷野敦は、アマゾンドットコムのレビューで最低点である星一つの採点をし、新人賞公募なら一発で撥ねられる水準の作品だが、蓮實が誉めたから芥川賞などを受賞できたのだと述べた[6]。
芥川賞選考委員による選評
山田詠美は、自分は絶対に書かないと決めた書き方で書かれているので、読んでいる間じゅう、くすぐったかったし、全篇に漂う「一人うっとり感」にも違和感を覚えたと述べた。他の選考委員が前衛と言ったが、一昔前の前衛ではないかとの疑問を呈した[7]。
村上龍は、洗練されすぎていて芥川賞には向かないが、この作品が受賞したことは嬉しかったと述べた[8]。
出典
- ^ ブックアサヒドットコムの記事
- ^ 『abさんご』黒田夏子 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
- ^ 『abさんご』黒田夏子 | 電子書籍 - 文藝春秋BOOKS
- ^ 文春文庫『abさんご・感受体のおどり』黒田夏子 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS
- ^ 本作品を表題作とする単行本の帯。
- ^ “まあ普通に新人賞に応募したら一次予選ではねられる類。”. www.amazon.co.jp. AMAZON JAPAN (2013年2月15日). 2020年9月7日閲覧。
- ^ 文藝春秋2013年3月号 選評より
- ^ 文藝春秋2013年3月号 選評より
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1930年代 - 1950年代(第1回 - 第42回) |
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1980年代 - 1990年代(第83回 - 第122回) |
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1980年代 |
- 第83回 該当作品なし
- 第84回 尾辻克彦「父が消えた」
- 第85回 吉行理恵「小さな貴婦人」
- 第86回 該当作品なし
- 第87回 該当作品なし
- 第88回 加藤幸子 「夢の壁」/ 唐十郎「佐川君からの手紙」
- 第89回 該当作品なし
- 第90回 笠原淳「杢二の世界」、高樹のぶ子「光抱く友よ」
- 第91回 該当作品なし
- 第92回 木崎さと子「青桐」
- 第93回 該当作品なし
- 第94回 米谷ふみ子「過越しの祭」
- 第95回 該当作品なし
- 第96回 該当作品なし
- 第97回 村田喜代子「鍋の中」
- 第98回 池澤夏樹「スティル・ライフ」/ 三浦清宏「長男の出家」
- 第99回 新井満 「尋ね人の時間」
- 第100回 南木佳士「ダイヤモンドダスト」/ 李良枝「由煕」
- 第101回 該当作品なし
- 第102回 大岡玲「表層生活」/瀧澤美恵子「ネコババのいる町で」
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