国際連合 の地域グループ (ちいきグループ、United Nations Regional Groups)は、国連加盟国の地政学 的な地域グループ である。
元々、国連加盟国は非公式に5つの地政学的地域グループに分類されていた。総会や理事会のポスト配分を共有する非公式な手段として始まったものだったが、現在でははるかに拡大した役割を担っている。多くの国連機関 は、各地域グループに議席を割り当てている。事務総長 や総会議長 などのトップリーダー職は、地域グループ間で持ち回りで就任している。地域グループはまた、実質的な政策を調整し、交渉や組織票 のための共通の窓口となっている[ 1] 。
グループに加盟していない国連加盟国
オブザーバー国家
紛争中の領域
概要
地域グループの主な機能は、国際的に利害関係のある加盟国が国連において連絡を取り合い、議論し、投票やその他の活動を調整することもあるが、最も重要な役割は、国連機関の議席や長の地位の配分をすることである。安保理の非常任理事国の議席は、一定の計算式に従って地域グループ間で配分される。経社理や人権理事会などの他の機関でも、地域グループごとに議席が設定されている。国連総会議長は、5年周期でグループ間で持ち回りとなる。
地域グループ
加盟 国数
割合
人口 (概数)
割合
安保理 常任理事国
安保理 非常任理事国
経社理 の議席
人権理事会 の議席
総会議長 になる年
アフリカ
54
28%
11.4億
15.8%
0
3
14
13
4, 9
アジア太平洋
53
27.5%
42.4億
58.5%
1
2
11
13
1, 6
EEG
23
12%
3.4億
4.69%
1
1
6
6
2, 7
GRULAC
33
17%
6.21億
8.57%
0
2
10
8
3, 8
WEOG
28+1
15%
9.04億
12.49%
3
2
13
7
0, 5
非加盟
1
0.5%
12万4千
0.00%
–
–
–
–
–
国連加盟国合計
193
100
72.4億
100%
5
10
54
47
毎年
議席配分
安全保障理事会
総会
経済社会理事会
人権理事会
アフリカグループ
アジア太平洋グループ
東ヨーロッパグループ (EEG)
ラテンアメリカ・カリブ海グループ (GRULAC)
西ヨーロッパ・その他グループ (WEOG)
どの地域グループにも加盟していない国連加盟国
各地域グループ
アフリカグループ
アフリカグループは54の加盟国(国連加盟国の28%)で構成されており、加盟国数では最大の地域グループである。加盟国は全てアフリカ大陸 の中に所在し、名前の由来となった大陸と加盟国の所在する範囲が一致するのは、アフリカグループのみである。
アフリカグループは、安保理に3つの議席を保有しているが、全て非常任理事国である。また、経社理に14議席、人権理事会に13議席を保有している。西暦の下一桁が4か9である年にアフリカグループから総会議長が選出される。
アフリカグループの加盟国は以下の通りである[ 2] 。
アジア太平洋グループ
アジア及び太平洋小島嶼開発途上国グループ(アジア太平洋グループ)は、55か国(国連加盟国の27.5%)で構成され、加盟国数ではアフリカグループに次いで2番目に大きい地域グループである。加盟国は、一部の国を除き、アジア大陸 とオセアニア に所在する。かつては「アジアグループ」という名称だった。
一般的な大陸分布でアジアとオセアニアに分類される国のうち、アルメニア 、アゼルバイジャン 、グルジア 、ロシア は東ヨーロッパグループに、オーストラリア 、ニュージーランド 、イスラエル は西ヨーロッパ・その他グループに加盟している。キプロス は、アジア太平洋グループに加盟している中で唯一の欧州連合 (EU)加盟国である。トルコ はアジア太平洋グループと西ヨーロッパ・その他グループの両方に加盟し、投票行動は西ヨーロッパ・その他グループとともにする。
アジア太平洋グループは、安保理に3つの議席を保有しており、そのうち1つ(中華人民共和国)が常任理事国である。また、経社理に11議席、人権理事会に13議席を保有している。西暦の下一桁が1か6である年にアジア太平洋グループから総会議長が選出される。
アジア太平洋グループの加盟国は以下の通りである[ 2] 。
東ヨーロッパグループ
東ヨーロッパグループ(EEG)は23の加盟国(国連加盟国の12%)で構成されており、最も加盟国が少ない地域グループである。加盟国は東ヨーロッパ 、中央ヨーロッパ 、南ヨーロッパ に所在する。
東ヨーロッパグループは、安保理に2つの議席を保有しており、そのうち1つ(ロシア連邦)が常任理事国である。また、経社理に6議席、人権理事会に6議席を保有している。西暦の下一桁が2か7である年に東ヨーロッパグループから総会議長が選出される。
東ヨーロッパグループの加盟国は以下の通りである[ 2] 。
ラテンアメリカ・カリブ海グループ
ラテンアメリカ・カリブ海グループ(GRULAC)は、33の加盟国(全国連加盟国の17%)で構成されている。加盟国は、南アフリカ 、中央アメリカ 、カリブ海 の島嶼国の各国と、北アメリカ のメキシコである[ 3] 。
ラテンアメリカ・カリブ海グループは、安保理に2つの議席を保有しているが、全て非常任理事国である。また、経社理に10議席、人権理事会に8議席を保有している。西暦の下一桁が3か8である年にラテンアメリカ・カリブ海グループから総会議長が選出される。
ラテンアメリカ・カリブ海グループの加盟国は以下の通りである[ 2] 。
西ヨーロッパ・その他グループ
西ヨーロッパ・その他グループ(WEOG)は、28か国(国連加盟国の15%)で構成されている。加盟国は全大陸に分散しているが、その大部分は西ヨーロッパと北アメリカに所在する。また、正式にはどのグループにも加盟していないアメリカ合衆国 がオブザーバーとして参加している。
(アメリカ合衆国を含めて、)西ヨーロッパ・その他グループは、安保理に5つの議席を保有しており、そのうち3つ(イギリス、フランス、アメリカ)が常任理事国である。また、経社理に13議席、人権理事会に7議席を保有している。西暦の下一桁が0か5である年に西ヨーロッパ・その他グループから総会議長が選出される。
西ヨーロッパ・その他グループの加盟国は以下の通りである[ 2] 。
オブザーバー
西ヨーロッパ・その他グループには、以下の国がオブザーバーの資格で参加している。
特殊な例
キプロス
EU加盟国であるキプロス は、WEOGにもEEGにも加盟していない。地理的な位置とロシアとの密接な関係から、キプロスは欧州の2つのグループの間で中立を保つことを決定し、アジア太平洋グループの一員となっている。
バチカン
バチカン はWEOGにオブザーバーの資格で参加している[ 4] 。
イスラエル
イスラエル は地理的にはアジアに位置するが、2000年にWEOGの暫定メンバーとなり、2014年に正規メンバーとなった[ 5] 。
キリバス
2010年現在、(地理的にはオセアニアに位置する)キリバス は、どの地域グループにも加盟していない。2017年までは、国連に加盟しているにもかかわらず、一度も常駐代表(国連大使)を派遣していなかった[ 2] 。
パレスチナ
パレスチナ国 は、パレスチナ解放機構 (PLO)だった1986年4月2日からアジア太平洋グループにオブザーバーとして参加している[ 6] [ 7] [ 8] [ 9] 。
トルコ
トルコ はWEOGとアジア太平洋グループの両方に参加しているが、投票においてはWEOGの一員とみなされている[ 10] 。
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国 は自主的にどのグループにも属さないことを選択し、WEOGの会合にのみオブザーバーの資格で出席している。国連総会で選挙の候補者を立てる際にはWEOGのメンバーとみなされる[ 11] [ 12] [ 13] 。
歴史
国際連盟
国連における議席を地域に対して割り当てる前例は、国際連合の前身である国際連盟 において設定された。国際連盟の制度では、理事会の非常任理事国の議席配分のための名簿を作成するために指名委員会が設置されていた[ 14] 。
理事会の議席数は常に変化していたため、これは困難な作業だった。しかし、1926年から1933年までの間は、理事会の非常任議席が以下のような非公式な配分パターンに基づいて割り当てられていた[ 14] 。
ラテンアメリカ 諸国 : 3
スカンジナビア諸国 : 1
小協商 諸国: 1
英連邦 諸国: 1
極東諸国: 1
スペイン・ポーランド: それぞれ1
国際連合
国際連合憲章 の草案作成において、新組織の議席の地理的配分は優先課題の1つとなっていた。アメリカ合衆国の勧告に基づき、第1回国連総会は以下の加盟国で構成された[ 14] 。
5か国の常任理事国
ラテンアメリカ諸国: 3
英連邦諸国: 2
東ヨーロッパ諸国: 2
西ヨーロッパ諸国: 1
中東諸国: 1
この配分は、国連機関の議席配分に地域グループを用いるという前例を生んだものである。例えば、安全保障理事会 の第1回選挙では、以下のような方式で議席を配分した[ 15] 。
5か国の常任理事国: それぞれ1
ラテンアメリカ諸国: 2
英連邦諸国: 1
東ヨーロッパ諸国: 1
西ヨーロッパ諸国: 1
中東諸国: 1
経済社会理事会 の第1回選挙でも同様に地域ごとに議席を割り当てたが、議席数の割合が異なり、また、中東諸国ではなく近東諸国としていた[ 14] 。
5か国の常任理事国: それぞれ1
ラテンアメリカ諸国: 4
英連邦諸国: 2
東ヨーロッパ諸国: 3
西ヨーロッパ諸国: 2
近東諸国: 2
ただし、これらの取り決めは公式のものではなく、国連機関の議席配分について米ソが合意した紳士協定 に基づくものだった。
改革
脱植民地化の波の後、アフリカ・アジア・太平洋諸国からの国連への加盟が相次いだ。1955年のバンドン会議 以降、植民地から独立したこれらの国々の間で連帯感が高まり、国連に対しこれらの国々の代表を増やすよう圧力がかけられるようになった。この圧力を受けて、1957年12月12日の決議1192(XII)が採択された。この決議により、アジア・アフリカ諸国に4つの議席を与えるという、一般委員会の議席配分の正式なパターンが確立された[ 16] 。
これに続いて、1963年12月17日には、決議1990(XVIII)と決議1991(XVIII)が採択された。これらの決議は、一般委員会の議席配分をさらに概説しただけでなく、経社理の議席を地理的にどのように配分するかについても概説していた。決議では、世界を以下のような地域に分けることと規定している[ 17] 。
アフリカ・アジア諸国
ラテンアメリカ諸国
東ヨーロッパ諸国
西ヨーロッパとその他の諸国
1971年12月20日の決議2847(XXVI)で、経社理の議席の配分を正式に定めた。またこの決議では、1つのグループとしていたアフリカ・アジア諸国地域を、アジアとアフリカの2つのグループに分割した[ 18] 。
最終的に、1978年12月19日の総会で決議33/138が採択された。この決議は、総会の議長職と副議長職、および7つの主要委員会の議長職を地理的に公平に配分することを求めた[ 19] 。
現在
2011年、国連における太平洋島嶼国が果たす役割の増大を認識し、アジアグループがアジア及び太平洋小島嶼発展途上国グループ(アジア太平洋グループ )に改称された[ 20] [ 21] 。
2019年現在で、国連加盟国の中でいずれの地域グループにも加盟していないのは、キリバス のみである[ 2] 。
改善の提案
地域グループの加盟国数がグループによって大きく異なることから、地域ごとの代表を平等に選出することが困難となってきている[ 15] 。
さらに、グループ内での政治的な変化により、グループの中には改革を必要とするものもある。東ヨーロッパグループの多くの加盟国が北大西洋条約機構 (NATO)や欧州連合 (EU)に加盟し、徐々に西ヨーロッパ・その他のグループと足並みを揃えるようになってきた。また、西ヨーロッパ・その他グループの一部の加盟国は、グループ内のEU加盟国間の連携が強化されたことにより、その権限を剥奪されたと感じている[ 15] 。
1995年、オーストラリア政府は、地域グループを以下の7つのグループに再編することを提案した。
西ヨーロッパ: 24か国
中央・東ヨーロッパ: 22か国
中東・マグリブ : 19か国
アフリカ: 43か国
中央アジア・インド洋: 17か国
東アジア・オセアニア: 25か国
南北アメリカ: 35か国
この提案は、独自の地域を求めてきた南太平洋諸国の要求を満たし、構成国の性格が均質な中東のグループを作ることになる[ 15] 。
1997年、カナダの研究では、地域グループを以下の9つのグループに再編することが提案された。
ユーラシア: 21か国
アジア・太平洋: 25か国
地中海・湾岸地域: 19か国
北欧: 20か国
南欧: 19か国
北部アフリカ: 23か国
南部アフリカ: 23か国
南北アメリカ: 19か国
カリブ海諸国: 16か国
この提案は、各地域の地方政治も考慮しながら、同じような規模のグループを作ることになる[ 15] [ 22] 。
2000年、ナウル 政府は一般討論演説の中で、オセアニアのための新しい地域グループの設立を呼びかけた。この新しいグループが実現すると、現在、中東、中央アジア、東アジアと一緒にグループ化されている太平洋の島嶼国に、より多くの代表権を与えることになる。この提案されたブロックには、ナウルのほか、オーストラリアとニュージーランド(現行ではWEOGに参加)、日本、韓国、ASEAN諸国、およびオセアニアの残りの国々が含まれる可能性がある[ 23] 。
脚注
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^ a b c d e f g “United Nations Regional Groups of Member States ”. Department for General Assembly and Conference Management . United Nations (n.d.). 5 March 2019 閲覧。
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^ “Groups of Member States | outreach.un.org.mun ”. outreach.un.org . 2017年8月10日 閲覧。
^ “Israel Invited To Join the Western European and Others Group (WEOG) in Geneva ”. U.S. Mission to International Organizations in Geneva (3 December 2013). 2021年3月2日 閲覧。
^ United Nations General Assembly (7 July 1998). “UNGA Resolution 52/250 ”. United Nations. May 22, 2011時点のオリジナル よりアーカイブ。2011年1月10日 閲覧。 : "Palestine enjoys full membership in the Group of Asian States and the Economic and Social Commission for Western Asia."
^ Permanent Observer Mission of Palestine to the United Nations. “Status of Palestine at the United Nations ”. United Nations. 2011年6月6日時点のオリジナル よりアーカイブ。2011年1月10日 閲覧。 : "On 2 April 1986, the Asian Group of the U.N. decided to accept the PLO as a full member."
^ United Nations Conference on Trade and Development. “Government structures ”. United Nations. 2010年6月13日時点のオリジナル よりアーカイブ。2011年1月10日 閲覧。 : "At present, the PLO is a full member of the Asian Group of the United Nations, ..."
^ Doebbler, Curtis (27 November 2009). “International Law and Palestinian Independence: A View from Palestine” . JURIST (University of Pittsburgh School of Law). http://jurist.justia.com/cgi-bin/mt/mt-search.cgi?IncludeBlogs=1,6,11,3,7,9,12,2,8,4,1,10,5&tag=International%20Law&limit=20 2011年1月10日 閲覧。 : "Palestine is already recognised as a full member of the Asian Group of States in the UN, and often thereby submits and influences UN resolutions. Being a member state would also give the Palestinian representative to the UN the right to vote on General Assembly resolutions, among other UN decisions."
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関連項目
外部リンク