フォーヴィスム

フォーヴィスム: Fauvisme、野獣派)は、20世紀初頭の絵画運動の名称。ルネサンス以降の伝統である写実主義とは決別し、目に映る色彩ではなく、心が感じる色彩を表現した。

歴史

1905年パリで開催された展覧会サロン・ドートンヌに出品された一群の作品の、原色を多用した強烈な色彩と、激しいタッチを見た批評家ルイ・ボークセル: Louis Vauxcelles: Louis Vauxcelles)が「あたかも野獣(フォーヴ、fauves)の檻の中にいるようだ」と評したことから命名された。

象徴主義の画家で、当時エコール・デ・ボザール(官立美術学校)の教授をしていたギュスターヴ・モロー[注 1]がフォーヴィスムの画家達の指導者であった。彼が弟子達に主張したのは、形式の枠組みの外で物事を考え、その考えに従うことであった。主な弟子達は、この運動の中心人物であるアンリ・マティス[1]アンドレ・ドランらであった。

フォーヴィスムはキュビズムのように理知的ではなく、感覚を重視し、色彩はデッサンや構図に従属するものではなく、芸術家の主観的な感覚を表現するための道具として、自由に使われるべきであるとする。ルネサンス以降の伝統である写実主義とは決別し、目に映る色彩ではなく、心が感じる色彩を表現した。世紀末芸術に見られる陰鬱な暗い作風とは対照的に、明るい強烈な色彩でのびのびとした雰囲気を創造した。

フォーヴィスムに分類される主要な画家は、以下のとおり。

フォーヴィスムに影響を与えた画家として、明るく強烈な印象の色彩を使用するポール・ゴーギャンフィンセント・ファン・ゴッホ点描ジョルジュ・スーラポール・シニャックに代表される新印象派の画家達、またポール・セザンヌ等が挙げられる。

日本への影響

オトン・フリエスルーアン」(1908)

フォーヴィスムは日本にも大きな影響を与えている。オトン・フリエスの弟子として坂田一男宮坂勝が挙げられ、現在の日本美術史にも影響を与えたとされる。

その他、1992年から1993年にかけて『フォーヴィスムと日本近代洋画』(愛知県美術館京都国立近代美術館東京国立近代美術館)という展覧会が開催されており、その展覧会では次の21名の作家が取り上げられた。

脚注

注釈

  1. ^ 「刺青のサロメ」などの作品がある巨匠。マティスに「君は絵を単純化するために生まれてきた」と的確なアドバイスをしている。

出典

  1. ^ マチス」『日本大百科全書(ニッポニカ)』https://kotobank.jp/word/%E3%83%9E%E3%83%81%E3%82%B9コトバンクより2023年1月30日閲覧 

関連項目

参考文献