トランジット (Transit )は、アメリカ合衆国 の自動車メーカー 、フォード・モーター によって生産・販売されるパネルバン 、ミニバス 、小型トラック である。Tシリーズ (T-150、T-250、T-350)としても知られる。2015年 時点で累計800万台のトランジットが販売され、世界で3台目に販売台数の多いバン となった[ 1] 。
フォード・オブ・ヨーロッパ (英語版 ) の初製品であるトランジットは、元々西ヨーロッパ とオーストラリア で販売された。2013年 にフォード・Eシリーズバン の後継車として発売されるまで、北米 を除くほぼ全世界で販売された。北米で発売されると、トランジットは総合的なベストセラー バンとなった[ 2] 。
トランジットはヨーロッパ においても40年間に渡りベストセラーとなり、一部国ではトランジット という名称が同クラスのバンを指す一般的な名称となっている [ 3] 。
最大積載量 にもよるが、車両総重量 が3.5トンを超える場合が多い為、日本 では準中型自動車 (5トン限定)に分類される場合が多い。この場合、2017年 3月以降に普通免許 を取得した場合は運転不可能である。
初代(1953年 - 1965年)
西ドイツでは「初代」
英国 製のトランジット「"系列"」とは異なり、フォード社が最初に「トランジット」のバッジを付けた量産車は西ドイツ のケルン 工場で製造していたバンであった。この車は1953年 に「FK 1000 」(フォード・ケルン:Ford Köln の積載量1,000 kg)として市場に導入され、1961年 から「フォード・タウヌス トランジット (Ford Taunus Transit )」と呼ばれた。このモデルの生産は1965年 に終了した。
命名システム
西ドイツ製の車は広範囲には輸出されなかったために「"マーク1"("Mark 1")」の呼称は一般的には英国製の1965-78年モデル(下記参照)に与えられた。1965年 以降のトランジットには3種類の基本モデルが存在するが、長い年月の間に様々なフェイスリフトや改良を施された結果、ある資料ではフェイスリフトされただけで新しい「マーク」番号を与えられその他の資料ではそうなっていないなど「マーク」番号の使用には混乱が見られる。1994年モデル発表のために出版されたフォード社自身の社史のトランジットの項では生産年度毎のトランジットに言及することでこの世代表記の混乱を避けている[ 4] 。それ故、この記事内では全て一般的な命名システムを適用している。
名称の起源
フォードは1970年代半ばまでアイルランド のコーク に工場を保有していた。第二次世界大戦 直後に現地のフォード・ガレージの「"トランジット・ガレージ"("The Transit Garage")」は、現地のコーク・20 ラリー(Cork 20 Rally)と競合する2座スポーツカーのフォード・スペシャル(Ford Special)を製造していた。この車はレースで活躍しフォード・トランジットとして知られ、この名称は現地工場の采配の下で確立され著名なものとなった。商用バン用の名称を探していたときに既に名声を確立していた「フォード・トランジット」の名を使用することが可能になっていた。
2代目(1965年 - 1978年)
英国では「マーク1」西ドイツでは「2代目」
最初の本来のフォード・トランジットは1965年 10月に導入され、現在まで3種類の基本モデルが生産され続けている。バンは当初イングランド のバークシャー にあるラングレー(Langley )工場(以前は第二次世界大戦中にホーカー ハリケーン 戦闘機を生産していた航空機工場であった)で生産されていたが、工場の生産能力が限界に達したためサウサンプトン へ移され、それ以来生産はその地で続けられている。トランジットの生産はベルギー のヘンク とトルコ の工場でも行われ、中国市場向けのトランジットの生産は中華人民共和国 でも行われている。
トランジットはミッドシップ エンジン、キャブオーバー 式小型バンのフォード・テームズ 400E(Ford Thames 400E )の代替として導入された。テームズは狭いトレッド(左右輪の幅)で有名であり、似たような外観でより大型のBMC・J4 、J2 バンやルーツ・グループ のコマー(Commer )PBシリーズの競合車であった。その後の英国市場はテームズの積載面積が小さかったためにかなりの数の企業ユーザーの獲得に失敗し、競合車のベッドフォード・CA (Bedford CA )に顧客を奪われてしまった。そこでフォード社は車の基本構成から考え直し、1950年代 にベッドフォード (Bedford )社が好評のCAで先鞭をつけたフロントエンジン配置に変更することにした。ヘンリー・フォードII世(Henry Ford II )の革命的な処置は、英国・フォード とドイツ・フォードの技術開発を統合することで、両社はヨーロッパのフォードのために協力して試作車を造り上げた。これ以前はこの2つの子会社 はお互いの国の市場で競合することを避けていたが、その他のヨーロッパ市場では互いの製品が直接競合関係にあった。
トランジットは当時のヨーロッパ製商用車にとり大きな出発点であった。その幅広いトレッド と米国風のスタイリングは当時の競合車よりも搭載量で大きな優位性を持ち小さな物品の輸送に革命を起こした。トランジットの機械部品のほとんどは当時の各種フォード車からの流用であった。トランジットが成功したもう一つの要因は様々なボディ形式を取り揃えていたことでパネルバンには長短ホイールベースがあったがピックアップ・トラック、ミニバス、クルーキャブといったモデルは極く僅かであった。英国では1.7 L と 2.0 LのエセックスV4 ガソリン・エンジンとパーキンス社(Perkins )製の43 bhp (32 kW) ディーゼルエンジン も提供された。このエンジンはトランジットの短い鼻先に搭載するには長すぎたのでディーゼルエンジン版は長いボンネットにスタイリングを変更された。劇的に低馬力であったパーキンス社製エンジンは不人気であることが分かり、1974年 にフォード社は自社製の"ヨーク"("York ")エンジンに換装した。ヨーロッパ本土ではトランジットはケルンで生産される1.7 Lのドイツ製タウナス用V4エンジン(Ford Taunus V4 engine )か2.0 LのエセックスV4エンジンを搭載していた。
3.0 LのV型6気筒 (V6)エンジンを搭載するためにディーゼル版の鼻先の長いバンが警察と救急車 用に供給された。
オーストラリア ではフォード・ファルコン に使用されていた直列6気筒 エンジンを搭載するためにディーゼル版の鼻先を延ばした顔を持ったモデルがあった。
3代目(1978年 - 1986年)
英国では「マーク2」、西ドイツでは「3代目」
1978年 3月に顔付きが変更され、新しい内装とエセックスV4・エンジンの替わりにコーティナ のピント・エンジン(Pinto )を搭載したフェイスリフトを施されたモデル(幾つかの市場では「"マーク2"」の名で知られる)が発表された。しかし多くの企業ユーザーは初期のピント・エンジンに発生したカムシャフト の早期磨耗という問題を経験し、2年の間トランジット 75には1600ccのフォード・ケント 「"ゼクスフロー"("Xflo")」エンジンが提供された。警察車両や救急車向けには3.0 L V6のエセックス・エンジン(Essex engine )搭載の高性能版も提供された。1984年 にヨーク・ディーゼルエンジンは2.5 Lの「"DI"」(ダイレクト・イグニッション)エンジンに再設計された。この世代のモデル末期には、以前はボディと同色だったヘッドライト 周りをラジエターグリルと共に黒いゴム 製にすることを含めた僅かなフェイスリフトを受けた。このフェイスリフトは一般的には新しい「マーク」番号を与えられて呼ばれない。
4代目(VE6型:1986年 - 1991年、VE64型:1991年 - 1994年)
英国ではVE6型「マーク3」VE64型「マーク4」西ドイツでは「4代目」
1986年 1月に第2世代のトランジット・プラットフォーム という物が発表された。これは「"ワンボックス"」デザイン(フロントウインドシールドとボンネットが同一の角度をなす、いわゆる「ワンモーション」スタイル。)の全く新しいボディと、キャブ・シャシ (運転台 とシャシのみの状態)とロングホイールベース (LWB)版以外の前輪は完全な独立懸架 に改められた。 駆動方式はFRのままで、搭載されるエンジンのほとんども先代(1978年 - 1985年)の最終モデルからそのまま引き継がれたが、1989年 に高性能版の3.0 L ガソリンエンジンはケルン製2.9 L 燃料噴射装置 付きV6 に置き換えられた。1992年 に僅かなフェイスリフトが施され、全てのモデルの前輪が完全独立懸架化される一方で、床構造が再設計され、ホイールハウスを縮小するためLWB版の後輪がシングル・タイヤとなった。これらの後期型は、より丸みを帯びたヘッドランプで識別できる。
この世代のトランジットはテレビ番組のトップ・ギア 内の「バン対決(Van Challenge)」でジェレミー・クラークソン に使われ2位を獲得した。(対決相手は小さなスズキ・スーパーキャリー:Suzuki Super Carry と巨大なLDV・コンヴォイ:LDV Convoy )この対決では1,000UKポンド 以下で購入でき、典型的なバンの使用用途を想定した1/4マイル ・ドラッグレース(街中での走行);家具 の積み込み、運搬(積載性、積み込み性);テールゲート(視認性);"破損した"ドアの交換(補修性);カーチェイス (操縦性)等の項目が試された。トランジットは敏捷さに関する評判、特に最終項目のカーチェイスで、鈍重なLDVや、最初のカーブで横転した、安定性に欠けるスズキよりも遥かに高いその性能を証明した。
5代目(VE83型、1994年 - 2003年)
英国では「マーク5」ドイツでは「5代目」
1994/5年に大掛かりなフェイスリフトが行われ、新しい顔付きとダッシュボード が1994 - 98年のフォード・スコーピオ に使用されていた2.0 L DOHC 8バルブ エンジンと共に採用された。このエンジンは初期のシエラ(Sierra )のDOHCエンジンと似ていたが、ディストリビューター を使用せず、EEC-V並みに改良されたOBD2 (自己故障診断)エンジン制御部品 を使用していた(スコーピオ、エスコート RS2000:Escort RS2000 、ギャラクシー に使用されたフォード社製16バルブエンジンの幾つかはこのエンジンのブロックを基にしていた)。これと同時にエアコン 、パワーウィンドウ 、セントラルロック、電動ミラー が全てオプションで装着できるようになった。
このモデルのあだ名は「"スマイリー"("Smiley")」というもので、ラジエターグリルの形状が笑顔を連想させることから付けられた。
ターボ・ディーゼル版は85 PS (63 kW)、100 PS (74 kW)と燃料噴射装置 付は115 PS (85 kW)であった。
1995年 にトランジットの30周年を記念してフォード社はトランジット ホールマーク(Transit Hallmark)と呼ばれる限定モデルを発売した。3色のボディ色が各200台、合計600台が生産された。
6代目(V184/5型、2000年 - 2006年)
英国では「"マーク6"」;ドイツでは「"第6世代"」
2000年 7月に導入された次のトランジットは、フォーカス やKa の様な「"ニューエッジ"("New Edge")デザイン 」からスタイリング上の特徴を取り入れた全く新しい設計としては3代目の車であった。開発は英国のフォード社で行われ、革新的な点は前輪駆動 (FWD)か後輪駆動 (RWD)のどちらかが選べることであった。フォード社の社内呼称ではFWD:V185とRWD:V184であった。このモデルには2000年モデルのモンデオ やジャガー・Xタイプ にも使用された「"ピューマ"("Puma")」タイプのデュラトルク(Duratorq )・ターボディーゼルと2.3 L 16バルブ の直列4気筒 ガソリンエンジンが搭載された。このエンジンによりトランジットは60 mph (97 km/h)の加速に21秒、最高速度は93 mph (150 km/h)に達し、最初期のモデルでは乗用車並みの性能を持つことを示した。2005年 のトップ・ギア でドイツ のレーサーのサビーネ・シュミッツ がジェレミー・クラークソン の運転するターボディーゼルのジャガー・Sタイプ と対決しニュルブルクリンク を10分8秒で走りこのモデルのスピードをデモンストレーションした。対決で彼女はクラークソンに負けはしたが僅か数秒差であった。
このモデルは2001年度のインターナショナル・バン・オブ・ザ・イヤー(International Van of the Year )を獲得した。
デュラシフト(Durashift )EST オートマチックトランスミッション (AT)(後輪駆動の全モデルにはオプション)はダッシュボード上にシフトレバーと手動モード、牽引モード、エコノミーモード、冬季モードの各種モードを備えていた。
2年後にフォード社は、旧態化したエスコート とフィエスタ のパネルバンの代替を目的としてC170 (フォーカス)プラットフォーム を使用した小型パネルバンのトランジット コネクト(Transit Connect )を導入した。この車はフルサイズのトランジットとは技術的な共通点はほとんど無いが、トルコに新しく建設された工場でトランジットのバンと並行して生産されている。
2002年 に最初の高圧コモンレール (High Pressure Common Rail:HPCR)・ディーゼルエンジンが125 PS (92 kW)のHPCR 2.0 Lエンジン搭載のFWD車の発表と共にトランジットに導入された。
2004年 に135 PS (99 kW) の2.4 Lエンジンが最初のRWDのHPCR車がRWD車用のMT-82型6速MTと同時に導入された。
500万台目のトランジットが2005年 7月18日 月曜日にサウサンプトン工場の生産ラインを離れ、英国のチャリティー に寄付された。
7代目(V347/8型、2006年 - 2013年)
フォード・トランジット(7代目)
フォード・トランジット
ボディ 駆動方式
FF又はFR パワートレイン エンジン
L4 2.2L デュラトルクTDCi L4 2.4L デュラトルクTDCi L5 3.2L デュラトルクTDCi L4 2.3L デュラテック[ 5] 変速機
5速MT 、6速MT 車両寸法 ホイールベース
147.6 in (3749 mm) 全幅
77.7 in (1974 mm) 車両重量
1800 kg (3968 lb) [ 6] (2.2L デュラトルク、中間ホイールベース、ミィディアムルーフ、パネルバン) その他 テンプレートを表示
英国では「マーク7」、ドイツでは「7代目」
2006年 8月のトランジットは、新しいヘッドライト、テールライト 、新しい顔付きとダッシュボードから突き出したシフトレバー と新しいフォード社独自デザインのカーオーディオ を備えた新しい内装といった内容のフェイスリフトを受けた。外観が変更されると共にエンジンも全て一新された。古いガソリンエンジンはフォード・レンジャー に搭載されている物に替えられ、FWDのディーゼルは2.0 Lから2.2 Lへ排気量が上げられ、全てのディーゼルエンジンは高圧コモンレール・システム(TDCi )が採用された。動力系は新しい環境規制に合致するように変更された。この新しいトランジット(フォード社の社内呼称ではFWD:V347とRWD:V348)は、全く新規モデルの競合車が何台かあったにもかかわらず2007年度のインターナショナル・バン・オブ・ザ・イヤーを獲得した。
2006年 半ばに130 PS (96 kW)エンジンと「"ルマン"("Le Mans")」ストライプ、18in アルミホイールなどの外装品を装備した限定生産車の「"スポーツバン"("Sport Van")」が発表された。
2007年 遅くに130 PS 版に代えて140 PS (103 kW) のFWD用エンジンが大出力に対応した6速MTのVMT6型トランスアクスル を装着して発表された。
2008年 遅くに110 PS (81 kW) エンジンが115 PS (85 kW)に増強されたときに中馬力のFWD用に6速MTが導入された。
2008年 遅くに、現在のユーロIV(Euro IV)規制より厳しい排気ガス規制に合致するように設計された「("coated Diesel Particulate Filter":cDPF)」が全てのディーゼルエンジン車にオプションとして導入された。
2010年 3月16日、ベトナム にて2007年モデルが、運転者の操作によらず加速する現象が把握され、交通運輸相兼国家交通安全委員長の支持により自動車登録検査局が緊急調査を開始した。フォード・ベトナムは、翌17日、製品に欠陥はなくエンジンの特性であるという見解を示した[ 7] 。
フォード・トランジット XXL
フォード・トランジット XXL
トランジットがインターナショナル・バン・オブ・ザ・イヤーを獲得したことを記念してフォード社はこのストレッチ・リムジン(stretch limo )スタイルのトランジット XXLを製造した。この車は1台のみの特製で現在までで最高価格のトランジットである。
北アメリカ
2007年 9月10日 にアメリカ大陸 のメキシコ でフォード・トランジットが発売され9つの異なるモデルが提供されている。メキシコはアメリカ大陸でトランジットが販売されている唯一の国である。フォード社のCEO のアラン・ムラリー(Alan Mulally)は最近その他の北米地域でもトランジットを販売すると決定した。
直列4気筒のディーゼルエンジン、MT、軽量、空力的に優れたデザインによりトランジットは、北米でのフォード社のもう1つの持ち駒であるV型8気筒 エンジン、ATのEシリーズ よりも燃費性能 が優れていると考えられる。
8代目(2014年 - 現在)
フォード・トランジット(8代目)
概要 別名
フォード・トゥルネオ(乗用仕様、北米市場以外) フォード・Tシリーズストリートスクーター・ワークXL (ドイツ 市場) 製造国
トルコ (コジャエリ県 イズミット 、フォード・オトサン ) アメリカ合衆国 (ミズーリ州 クレイコモ 、カンザスシティ 工場) ロシア (エラブガ 、フォード・ソラーズ 、2014年 - 2022年 ) ウルグアイ (モンテビデオ 、ノルデックスS.A. ) 販売期間
2014年 - 現在 デザイン
ポール・キャンベル ボディ エンジン位置
フロント リア(モーター、E-トランジット) 駆動方式
後輪駆動 全輪駆動 (欧州 市場および北米 市場)前輪駆動 (北米市場以外) パワートレイン エンジン
2.0L直列4気筒 エコブルー TDCi 2.0L直列4気筒デュラトルク TDCi(中国 市場)2.2L直列4気筒デュラトルクTDCi(欧州市場およびオーストラリア 市場) 2.4L直列4気筒デュラトルクTDCi(欧州市場) 3.2L直列5気筒 デュラトルクTDCi/パワーストローク(南米 市場以外) 2.0L直列4気筒エコブルーハイブリッドm HEV TDCi 2.0L直列4気筒エコブースト (中国市場) 2.3L直列4気筒デュラテック (欧州市場) 3.5L V型6気筒 Ti-VCT (北米市場) 3.7L V型6気筒Ti-VCT(北米市場) 3.5L V型6気筒エコブースト 変速機
6速AT 6速MT (北米市場以外) 5速MT(中国市場) 電動シングルスピードAT 10速AT(2020年 - 現在) 車両寸法 ホイールベース
3,300mm(レギュラー) 3,750mm(ロング) 3,505mm(ショート) 3,955mm(レギュラー) 4,520mm(ロング) 全長
5,532.1mm - 6,758.9mm 全幅
2,052.3mm - 2,126.0mm 全高
2,087.9mm - 3,050.5mm その他 モーター
11.5kW統合ベルト駆動スターター 198kW永久磁石DCモーター テンプレートを表示
8代目は2013年 1月に開催された2013年北米国際オートショー で発表された[ 8] 。先代は米国 で開発された(なお米国市場では販売されていない)のに対に、8代目はフォード・オブ・ヨーロッパと共同開発された。2013年に生産 が開始され、2015年 モデルイヤー として2014年 に北米 で販売 を開始した。
8代目はEシリーズ のワゴン/バンの後継車として史上初めて米国とカナダ で販売される(Eシリーズはキャブ付シャシのみ継続生産される)。1953年 から生産されるが、先代はエコノライン /Eシリーズとの競合を避ける為、北米での販売は見送っていた。
8代目からネームプレートがフォードの商用 向けサブブランド へ移行した。トランジットとトランジットコネクト の中間クラスを補完する為、従来の前輪駆動 方式を採用するトランジットはトランジットカスタム とし、2014年にはフィエスタ ベースのトランジットクーリエ も最小クラスとして発売した。競合車はシボレー・エクスプレス /GMC・サバンナ 、メルセデス・ベンツ・スプリンター 、フィアット・デュカト (および姉妹車 )、フォルクスワーゲン・クラフター となり、世界市場 で販売される。
8代目は後輪駆動 方式を採用する。バンは2種類のホイールベース (3,299mmと3,749mm[ 9] )が用意され、キャブ付シャシ は3種類のホイールベース(3,505mm、3,954mm、4,521mm)が用意される。先代バン同様、エクステンデッドホイールベースのバンは、シングルまたは後輪デュアルアクスル を採用した(後者は、以前はシャシ付キャブ用であり北米では初採用)。
Eシリーズからの変更点としては、トランジットは独立フレーム では無くユニボディ を採用する。また、ボロン鋼 を多用する事により、Eシリーズと比較して最大積載量 を272kg増量させた[ 10] 。Eシリーズで長らく採用されたツインI-ビーム は廃止され、8代目はフロントサスペンション にマクファーソンストラット 式を採用した。
パワートレイン
8代目は、レンジャー やモンデオ と共有するデュラトルク ディーゼル を先代から引き続き採用した。2.2Lおよび2.4L直列4気筒 (前者は欧州 市場およびオーストラリア 市場向け、後者は欧州市場向け)と2.0L直列4気筒(中国 市場向け)が用意され、3.2L直列5気筒 (南米 市場以外向け)も用意された。ガソリン も設定され、2.0L直列4気筒エコブースト (中国市場向け)と2.3L直列4気筒フォード・デュラテックエンジン も用意された。
米国では、トランジットはFシリーズ と共有する高排気量 ガソリンも用意した。北米では275馬力の3.7L V型6気筒 が標準装備されるエンジンで、北米と南米では310馬力の3.5L V型6気筒ツインターボ エコブーストも用意された。2015年から185馬力の3.2L直列5気筒も用意された(後にパワーストローク ディーゼルへ変更)[ 9] 。2015年から2019年 までは全エンジンが6速AT と組み合わされ、2020年 からは10速ATへ変更された。
また、3.7Lには圧縮天然ガス (CNG)または液化石油ガス 仕様がオプション設定される[ 11] 。
ボディ
デザイン は先代のニューエッジ・スタイリング からキネティック・デザイン・ランゲージ に変更し、インテリア は3代目フォーカス と似た物となった。8代目はバンとキャブ付シャシの設定となった。バンは3種類のルーフ長と3種類のルーフ高が用意される。
世界市場では、トランジットの乗用 仕様は主にトゥルネオとして販売されており、米国とカナダのみ商用仕様と乗用仕様の両方をトランジットとして販売されている。北米市場向けに販売される他のフォード製トラック と同様、トランジットはXLとXLTの2グレードで展開される。北米では、Fシリーズおよびその前身のEシリーズと同様、ホイールベース、ボディ長、ルーフ高によって150/250/350および350HDで販売される。
Eシリーズや先代同様、救急車 、バス 、レクリエーショナル・ビークル などと言った商用車のベースとなっている。
2020年式トランジット350 2.0 フロント
同リア
2020年マイナーチェンジ
2020年に向け、トランジットはマイナーチェンジ を実施した。フロントグリル とダッシュボード が変更された[ 12] [ 13] 。北米向けには3.7L V型6気筒に代わる、ポート噴射 で275馬力の3.5L V型6気筒自然吸気 が用意された。直列4気筒フォード・0Lエコブルー ターボディーゼル (北米以外の市場向けレンジャーと共有)も用意された[ 12] [ 13] 。幾つかの出力(105馬力、130馬力、170馬力、185馬力)が用意され、エコブルー には130馬力のマイルドハイブリッド 仕様がオプション設定される。当初は北米での販売を予定していたが、エコブルーのオプションは発売直前に中止された[ 14] 。
トランジットおよびトランジットカスタムには、トランジットトレイルとして販売される新グレードが設定された[ 12] 。クワイフ 社製デフロック と北米市場向けF-150ラプター と似たデザインとなった[ 15] [ 16] 。また、クルーバンがオプション設定された。欧州ではダブルキャブ として知られており、乗用仕様と商用仕様のデザインを組み合わせた物で、5人乗りでかつ広大なトランク スペースを備える[ 13] 。また、パワースライドドア とデュアルスライドドア(商用仕様用)をオプション設定した[ 12] [ 13] 。
E-トランジット
E-トランジット
2020年11月、2022年 モデルイヤーでE-トランジット(電気自動車 )を発表した。最大積載量1,760kg/13.80m3、68kWh(使用可能容量)のバッテリーを備え、航続距離 はEPAのマルチサイクルテスト (MCT)に対応する最大203kmである[ 17] 。E-トランジットは2021年 11月にカンザスシティ 工場で生産を開始した[ 18] 。1台目となるE-トランジットは2022年2月に米国内の顧客 に引き渡された。フォード・モーターによれば、300人のフリートユーザー から1万台以上の発注 を受けていると発表している[ 19] 。 欧州市場向けの生産は、合計5千台以上の発注を受け、2022年4月にフォード・オトサン で開始された[ 20] 。
E-トランジットは、フレームレール の間にトラクションバッテリー を搭載する為、独自のシャシ を採用しているが、ボディは従来のトランジットと同一の物が採用される[ 21] 。ボンネット 下には、高電圧トラクションバッテリーとモーター用の冷却ポンプ 、キャビンのエアコン 、DC-DCコンバーター 等が採用される[ 22] 。 外観における相違点は、トラクションモーター を搭載し、従来のトランジットが採用するライブアクスル とリーフスプリング 式では無く、セミトレーリングアーム 式とコイルスプリング を採用した独立サスペンション を採用するリアアクスル程度である[ 23] 。
水冷式トラクションバッテリーはマスタングMach-E と共有する[ 21] 。使用可能容量は68kW-hr、総容量は77kW-hr[ 20] 。最大充電速度は11.3kW(AC)または115kW(DC)[ 21] 。コンバインド・チャージング・システム の車両インレット はフロント、エンブレム下に備える。E-トランジットのトラクションモーターはF-150ライトニングと共有しており、公称の出力は266馬力、430N・mである[ 24] 。英国では、トラクションモーターの出力を181馬力または265馬力の2種類から選択可能である[ 22] 。最大航続距離の203kmは、ロールーフ仕様で達成された[ 21] 。WLTP では最大航続距離は317kmとしている[ 20] 。プロパワーオンボード をオプション装備した場合、従来のACコンセント を介して工具やアクセサリー用に最大2.4kWを供給可能である[ 24] 。
英国では、車高(2種類)、ホイールベース(3種類)、車両総重量(3種類)の組み合わせで全25種類が用意される[ 23] 。米国では、ボディ長3種類(レギュラー、ロング、エクステンデッド)、ホイールベース2種類(3,300mmまたは3,760mm)、ルーフ高3種類(ロー、ミディアム、ハイ)、シャシ2種類(カーゴバン、キャブ付シャシ、後者はホイールベース4,520mmのみ)が選択可能である[ 17] 。米国向けは、車両総重量 4,300kgでT-350として販売される[ 21] [ 25] 。
英国の自動車雑誌 、What Car? で2022年にバン・オブ・ザ・イヤー に選ばれた[ 26] 。
生産
8代目の生産は、フォードの2箇所の工場で行われる。欧州とアジア 向けの生産は全てトルコ のコジャエリ県 にあるフォード・オトサンで行われており、同工場は輸出 車の生産も担当する。北米向けと南米向けの生産は主にミズーリ州 クレイコモ にあるカンザスシティ工場で2014年4月30日 から行われており[ 27] 、北米では2015年モデルイヤーとして発売され、商用仕様と乗用仕様の両方にトランジットの名称を使用した(他の市場で乗用仕様に使用されるトゥルネオの名称は使用しなかった)。
日本における使用
日本 においては防弾ガラス 仕様の警護車両として、特殊急襲部隊 (SAT)が使用している。
生産拠点
ケルン , ドイツ : 1953−1965 (FK 1000 と Taunus Transit )
ヘンク , ベルギー : 1965−2000 (Transit )
ラングリー , イギリス : 1965−1972 (Transit )
サウサンプトン , イギリス : 1972生産から (Transit )
コジャエリ , トルコ : 1976生産から (Transit と Transit Connect )
イノニュ , トルコ : 1982生産から (T と Ⓜ )
Obchuk , ベラルーシ : 1997−2000 (CKD ; Transit )
ハイズオン , ベトナム : 1998生産から (Transit )
南昌 , 中華人民共和国 : 2006生産から (Transit 2006 と Transit 2008 )
ウェイン /ルイビル , アメリカ合衆国 : 2012年に来る (Transit Connect )
脚注
^ “Top 20 best-selling vans of all time ” (英語). Parkers . 2024年7月28日 閲覧。
^ Cain, Timothy (2016年4月29日). “Ford Transit Tops In U.S. Van Sales, Ahead Of Minivans, Too ” (英語). thetruthaboutcars.com . 2024年7月28日 閲覧。
^ “Meaning of "transit" in the English Dictionary ”. Cambridge Dictionaries Online . Cambridge University Press. 2024年7月29日 閲覧。
^ "Van World" marketing periodical; in article "1965-1995: 30 years and 3,000,000 Transits later"; pub. Ford Motor Company Ltd., Brentwood, UK; Autumn 1994
^ Ford Transit Powertrain Archived 2010年11月24日, at the Wayback Machine .
^ Ford Panel Vans specifications brochure
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外部リンク