『ファイアーエムブレム』(英: Fire Emblem)は、開発をインテリジェントシステムズ(IS)、発売を任天堂が行うコンピュータゲームにおけるシリーズ作品。略称は「FE」。ジャンルは全タイトルともシミュレーションロールプレイングゲーム (SRPG) である。
狭義では、同シリーズのそれぞれの作品内において重要な役割を果たす“炎の紋章”とも呼ばれるアイテムのことを指す。この場合、単に「エムブレム」と表記する場合もある。
後に「シミュレーションロールプレイングゲーム (SRPG)」と呼ばれるジャンルを確立させた草分け的作品。『ファミコンウォーズ』のゲームシステムをベースに、各ユニットにクラス(兵種)の違いだけでなくそれぞれ異なる顔グラフィックや能力値の差による個性・経験値による成長要素などのRPGのようなキャラクターの概念を入れたうえで、ユニットの生産やリソースの確保などの要素は省き、単純に集団戦をすることを目的としたゲームになっている。
本シリーズを特徴付けているのはユニットの「ロスト」の概念である。本シリーズでは原則としてHPが0になって死亡・撤退したユニットを復活させることはできず、ロストしたキャラクターは二度と使うことができなくなってしまう。ただし、「復活の杖」などのアイテムで1 - 数名の復活が可能、またはモード選択で次マップからは復活可能な作品もある。
西洋文明における中世を下地に置いたファンタジーの世界観で、「主人公は勇者の血統を持つ王侯貴族のロードとして軍隊を指揮し、大陸に平和をもたらすために敵国と戦う」というのが大抵の作品でほぼ共通した筋立てである。また、シリーズを通して「ファイアーエムブレム」という重要アイテムや、竜などの人にあらざる種族が登場する。そのほか、恒例のキャラクター設定などが存在する[注 1]。
ファミリーコンピュータで発売された第1作目の『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』から始まり、スーパーファミコン、ゲームボーイアドバンス、ニンテンドーゲームキューブ、Wii、ニンテンドーDS、ニンテンドー3DS、Nintendo Switchといった任天堂の歴代ハードでシリーズ作が製作・発売されている。
シリーズを題材にした関連書籍が極めて多いのも特徴で、『聖戦の系譜』では20種類以上の攻略本が発売された。また、小説・コミック・ファンブックなども多数発売されているほか、1996年には『紋章の謎』がOVA化されている。また、主に『暗黒竜』から『紋章の謎』の時期にかけて、漫画版などのドラマCDも制作されている。
ストーリー漫画は1991年8月23日発売[1][信頼性要検証]の『ファミリーコンピュータMagazine』1991年18号(徳間書店)から連載が開始された『ファイアーエムブレム』(島田ひろかず)を皮切りに、角川書店の『増刊『ASUKA』ファンタジーDX』で連載された『ファイアーエムブレム』『外伝』(佐野真砂輝&わたなべ京)、エニックス(現:スクウェア・エニックス)の『月刊Gファンタジー』に連載された『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』(箱田真紀)をはじめとする各誌に多くの作品が連載された。2023年時点では、集英社『最強ジャンプ』において『ファイアーエムブレム エンゲージ』(今日和老)が連載されている[2]。
アンソロジーコミックは双葉社が1991年12月に出版した『ファミコン4コマまんが王国』の佐々木亮による漫画「愛と勇気とファルシオン」が、事実上初とされる。これ以降、任天堂公認による4コマ・ショートコミック誌・アンソロジーの出版が増え、『聖戦の系譜』の頃には最も多く発売されたが、『トラキア776』で激減。『封印の剣』のアンソロジーが数冊刊行されたのち、2014年に一迅社から『覚醒』のアンソロジーが刊行されるまで10年余りのブランクが存在した[3]。
その一方で、小説化作品においては『烈火の剣』や『聖魔の光石』までの、『封印』以降のシリーズ作品の刊行も行われていた。
この他、正式な許諾を受けた作品ではないが、二次創作の同人誌についても成人向けも含めて数多く出回っている。1992年6月18日に発行された「コミックマスターエクストラ1」(ホビージャパン)では本シリーズの特集が組まれており、同誌やNTT出版から1996年に刊行された「ファイアーエムブレム ザ・コンプリート」では既に本シリーズの同人誌即売会情報が掲載されていたことが確認できる。なお、現在は削除されているが開発元のインテリジェントシステムズは過去にインターネット上の二次創作に関する制限事項を特に設けない旨を表明していた[4]。
三省堂が2023年11月に刊行する『オタク用語辞典 大限界』(名古屋短期大学小出ゼミ〈2022・2023年度生〉著)では、「ファイアーエムブレム界隈用語」だけを収録した章が存在する[5]。
2002年の『封印の剣』までは日本国内だけで発売されていたが、『烈火の剣』からは日本国外でも発売されている。これには『大乱闘スマッシュブラザーズDX』(英: Super Smash Bros. Melee、以下「スマブラDX」)の影響が大きいとされている。
『スマブラDX』に『紋章の謎』のマルスと『封印の剣』のロイが登場することになったものの、その時点でFEは日本国内でしか展開されておらず、日本国外版の発売に当たってはこの2名を削除する方針であった。しかし、一転して2名をそのまま登場させることになり、結果的に日本国外でもFEが広く知られることとなった。なお、このような経緯のため、マルスとロイは日本国外版でも日本語を喋っている。
続編『大乱闘スマッシュブラザーズX』 (英: Super Smash Bros. Brawl、以下「スマブラX」) で登場したアイクは、『蒼炎の軌跡』が日本国外への展開がなされたこともあり、日本国外版ではそれぞれの言語版オリジナルキャストの声が当てられている。一方、マルスは日本国外版『スマブラX』でも日本語のままであったが、『ヒーローズ』発売後の『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』で初めてマルスとロイに英語版ボイスが実装された。
なお、ゲームは未発売だったものの、『紋章の謎』のOVAは『スマブラDX』よりも以前に北米においてADVフィルムから発売されている。
また、『封印の剣』以降も『烈火の剣』、『聖魔の光石』とゲームボーイアドバンスで発売が続いたというのも、日本国外において一定の認知度を得てから開発費の多くかかる据え置き型ハードで発売する、という経営戦略があったためである。2000年代半ば過ぎの据え置き型での2作品(『蒼炎』『暁』)を経て、以降は携帯型ハードでのリリースが続いたが、『風花雪月』は12年ぶりに据え置き型ハードで発売された。
日本国外版の『烈火の剣』と『暁の女神』には、日本国内版には無い独特の仕様が追加されている。詳細は以下の記事へのリンクを参照。
「ファイヤーエムブレム」・「ファイアーエンブレム」・「ファイヤーエンブレム」と表記するのは誤りだが、商標は取得している[6][注 2]。
※略称の意味:FC=ファミリーコンピュータ、SFC=スーパーファミコン、GBA=ゲームボーイアドバンス、GC=ニンテンドーゲームキューブ、DS=ニンテンドーDS、3DS=ニンテンドー3DS、New 3DS=Newニンテンドー3DS、Wii U=Wii U、Switch=Nintendo Switch、iOS/Android=iOS/Android
コンピュータゲームの他にトレーディングカードゲームも発売されている。
ゲームのタイトルであるファイアーエムブレムは、アイテムや象徴的存在などさまざまな形で登場する。
ほとんどの作品で戦闘は大陸の国家間の戦争を描いているが、舞台とする大陸は作品ごとに異なる。『暗黒竜と光の剣』『紋章の謎』ではアカネイア大陸、『外伝』ではバレンシア大陸、『聖戦の系譜』『トラキア776』ではユグドラル大陸、『封印の剣』『烈火の剣』ではエレブ大陸、『聖魔の光石』ではマギ・ヴァル大陸、『蒼炎の軌跡』『暁の女神』はテリウス大陸、『エンゲージ』はエレオス大陸を舞台としている。『覚醒』はイーリス大陸とヴァルム大陸という、シリーズ初の二大陸を舞台としている。『風花雪月』の舞台となるフォドラはとある大陸の端にある大きな半島である。
なお、アカネイア、バレンシア、ユグドラルに関しては空間的に繋がっていると開発者が語っている。そのほかの大陸については不明だが、イーリスとヴァルムはそれぞれアカネイアとバレンシアの遠い未来(約2000年後)であることが『覚醒』作中においてとある形で示唆されている。
またこの三大陸を舞台にしたエピソードの時間的な関係については、アカネイア暦前740年 - 「守護神ナーガの戦い」(『紋章の謎』の約1350年前)の最中に、ユグドラル大陸の人間である大司教ガレがアカネイア大陸にて暗黒神降臨を果たしている[注 3]ことが明かされており、これによれば『聖戦の系譜』『トラキア776』と『暗黒竜と光の剣』『紋章の謎』『外伝』の間はおよそ1000年開いていることになる[10]。
なお、インタビューを受けた加賀は「プレイした人の数だけ物語がある」「ここでの回答も、あくまでもその物語の中の一つであって、決してこれが正解とか、設定という訳ではない」と語っている。
基本的に『ファイアーエムブレム』では人間の国家間の戦闘が中心として描かれているが、一方でその裏では人外の種族が影に日向に物語の鍵を握ることも多い。シリーズ作品に多く登場している、竜族のマムクートはその代表的なものである。マムクートの設定が作品ごとに若干異なるが、普段は迫害などを避けるため人の姿を取っていることが多い。登場しない作品もある。
テリウス大陸を舞台にした作品(『蒼炎の軌跡』『暁の女神』)では、マムクートの代わりにラグズという種族が登場する。マムクートと同様、竜の姿に変身する「竜鱗族」のほか、獣に変身する「獣牙族」や鳥類に変身する「鳥翼族」といった者も登場し、マムクートよりもストーリー中に多く関わってくる。
『覚醒』ではタグエルという動物(ウサギ)に変身する種族も登場した。
これとは別にロールプレイングゲーム的なモンスター(魔物)も一部の作品に登場するが、これについては戦う理由をもたず、単に人を襲うだけの存在である。
各作品は数章から数十章までの長さの章で構成されている。各章のマップで敵軍と戦い、章ごとに設定された勝利条件をクリアすることで次の章に進む。勝利条件は敵拠点の制圧や敵の全滅などであり、一方、主人公が倒されたりマップの敗北条件を満たしてしまうとゲームオーバーとなる。
戦場となるマップは格子状のマス目になっており、キャラクター(ユニット)はこのマス目に沿って移動力の範囲で移動できる。プレイヤーは各ユニットを動かして、攻撃や回復などの行動を行う。自軍の行動が終わったら次に敵軍の順番に移り、コンピュータが同様に敵軍側ユニットの移動や攻撃を行う。この一連の「ターン」を繰り返すことで戦いが進んでいく。
序盤の章では自軍の人数は少ないが、章が進むにつれて仲間となるキャラクターが登場し、説得や合流、救出、仕方なく敵側についていた者など、様々な理由により自軍に加入する。キャラクターは経験値を得ることでレベルが上がり成長していく。また、キャラクター同士が会話などの交流をしたり、絆を深めることができるシステムが作品毎に違う形で織り込まれている。
なお、特定の魔法やシューターなどによる遠距離攻撃では、双方が射程圏内にあり遠距離武器を装備していても、敵からは反撃されない。
本作に登場する主なユニットについて記す。この項目で列挙される特徴は、あくまでゲームシリーズ全体を通して見た場合の「一般的な傾向」である。作品によって、ここに書かれた特徴のいくつかが当てはまらないことがある。基本的に、ユニットには下級クラスから上級クラスにクラスチェンジするクラスと、しない特殊クラスがある。詳しくはキャラクターのクラスチェンジの項目を参照。
詳しくは後述するが、ユニットは経験を積むことでレベルアップし、成長していく。各パラメータの伸び方はランダムで、各パラメータごとに0 - 100%の成長率[注 11]が設定されている。 これらの成長率はユニットごとに固有であり、クラス特性以外の面でも個性を持つことになる[注 12]。
反面、経験値が相対性の作品では、入手経験値も上級職扱いで少なくなるためデメリットがあるが、全体的結論は作品によって早めにしたほうがいいのか最大レベルまで上げてから行ったほうがいいのかは作品と状況によって異なる。
育ち切った時の最終的な強さを重視するのであれば、限界までレベルを上げてからクラスチェンジするのが一番強くなれる[注 18]。
マップの各マスには地形効果が存在しており、侵入コストにしたがって移動力が低下する、または一部ユニットしか進入できない(山など)、回避率にボーナスが入る(森など)、ターンごとにHPが回復する(砦など)などの効果がある。また、飛行系ユニットは地形効果を利用できない[注 19]。なかにはアイテム・軍資金が手に入る宝箱や、アイテムを使わなければ開かない扉、攻撃で壊すことのできる壁などの特殊なマスもある。通過もしくは待機することでランダムにワープさせられる、炎や毒ガスなどが噴き出す、落とし穴に落ちるなどのトラップ地形も存在するが、盗賊系ユニットで解除できることも多い。トラップに関しては、飛行系ユニットにも影響があることが多い。以下に代表的なものを記載する。
一部の施設としてのマスは、ユニットをそのマスに進入させることで特殊なイベントを発生させられる。
問題の始まりは『ファイアーエムブレム』開発会社であるインテリジェントシステムズ(以下「IS」)の開発者が一人、同社を退社して開発会社ティルナノーグを立ち上げたことにある。ティルナノーグの代表者である加賀昭三はそれまで『ファイアーエムブレム』の開発に深く関わっており、「ファイアーエムブレムの生みの親」と見なされていた人物である。
ゲーム雑誌『ファミ通』の発行元でありゲーム販売も手がけるアスキーのバックアップを元に、ティルナノーグは初代PlayStation用ソフト『エムブレムサーガ』の開発を始めた。これに対し任天堂は、著作権侵害として抗議していたが、アスキーから分社したエンターブレインは問題となったソフトのタイトルを『ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記』に変更し、内容を一部手直ししたうえで2001年5月24日に発売した。
加賀は当初FEシリーズの完全な続編として『エムブレムサーガ』を製作していたらしく、『ファミ通』での発表では過去5作品に登場した3大陸に次ぐ第4の大陸「フォーセリア」を舞台とし、マムクートが多くの部分で物語に関わり、「某変身系の少年」が謎の吟遊詩人、賢者として重要な役回りを演じるとして、「チェイニー」が登場すると仄めかしていた。また『暗黒竜と光の剣』と同年代の物語であることを明かし、必然性があれば他のキャラクターも登場させたいと発言していた。 なお、加賀氏は当初FEシリーズとの類似性が問題視されるとは考えていなかったのか、ネット上で「外伝タイプのゲームシステムで、・・・N社との関係は今まで通りです。今作はプレイステーションですが、」という発言を行っている。
作品中の主な相似点については、キャラクターや世界観・ゲーム性が酷似していること、『ファミ通』に掲載された記事で『ファイアーエムブレム』シリーズと世界観が繋がっていることを匂わせる記述があったことなどが挙げられる。ただし、「関わっているゲームクリエイターが同一人物である以上、内容に似通ったところが出てくるのは当然」という意見もある。
この作品に参加している『ファイアーエムブレム』シリーズに関ったスタッフは、前述の加賀昭三と『ファイアーエムブレム トラキア776』のキャラクターデザインをしていた広田麻由美の2名だけで、その他のスタッフはまったく関係が無い。
任天堂とISは『ティアリングサーガ』の発売を、不正競争防止法違反と著作権侵害として販売差し止めと賠償金を求める訴訟をティルナノーグとエンターブレインに対して起こした。その判決内容は以下の通り。
裁判所が任天堂の損害として認めたのは、「エンターブレイン側が『ティアリングサーガ』を『ファイアーエムブレム』と関係のあるソフトであるかのように宣伝して『ファイアーエムブレム』のブランドイメージを利用した」という箇所のみで、著作権侵害は認めていない。ただし、エンターブレイン側が当初主張した『トラキア776』の著作権は「IS」にない、との主張も認められなかった[11]。
この事件以降、任天堂は広報における方針を大幅変更し、それまで『ファミ通』に対して行われていた情報の一番出しを取りやめるなどの措置を採った。
また、『ファイアーエムブレム』シリーズのメディアミックス展開が大幅に縮小整理されたうえで、それまで同業他社と比較して各々の制作サイドの裁量権に大らかだった方針も改められ、設定や世界観などを任天堂が強く『公式』を管理するようになった。
なお、裁判の席において、エンターブレイン側陳述等で、同じ開発チームの別作品の例として、『ゼノギアス』と『ゼノサーガ』、『タクティクスオウガ』と『ファイナルファンタジータクティクス』が引き合いに出されている。今回の裁判では、これらのゲームのように独立したゲームデザイナーが、元の会社で作っていたのと同ジャンルのゲームを作っても、内容に直接関係がなければ著作権的には問題がないと判例として確立したことに意義があるといえる。
2005年5月には、エンターブレインより『ティアリングサーガ』の続編である『ベルウィックサーガ』がPlayStation 2用ソフトとして発売された。機種が違うとはいえ、『ファイアーエムブレム』シリーズの『蒼炎の軌跡』とほぼ同時期の発売となり、本家と分家の市場における直接対決となった。また、2007年4月にはエンターブレインより『暁の女神 パーフェクトガイドブック』が刊行され、2001年のファミ通文庫『紋章の謎・下巻』以来、6年ぶりに同社による関連書籍の発売が再開された。
任天堂のホームページにて、2007年に『ファイアーエムブレム』シリーズ公式サイトの「ファイアーエムブレムワールド【FIRE EMBLEM WORLD】」が開設された。内容は、シリーズ作品のイラストなどのアーカイブ資料、シリーズの新作情報、壁紙のダウンロードサービス、インテリジェントシステムズ代表取締役の北西亮一社長へのインタビュー記事などが掲載されている。また、ミニゲーム的コンテンツとして、「ファイアーエムブレムスロット占い」や「FIRE EMBLEM検定(3・2・1・マスター級)」などがある。
年末年始や休日を挟んだ場合は後の日へずれることもあったものの、定期的な更新は概ね毎月1日頃に行われていた。しかし、2010年1月からは不定期更新になった[12]。任天堂のゲームでシリーズ公式サイトがあるのは珍しく、ほかには『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズの「スマブラ拳!!」や、『メトロイド』シリーズなど、一部のシリーズにしか存在しない。
シリーズ25周年に当たる2015年にはTwitterの公式アカウントが開設された[13]。
第一作である『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』のオープニング、エンディング、およびテレビコマーシャルで使用された「ファイアーエムブレムのテーマ」は、『ファイアーエムブレム』シリーズを代表する楽曲として、シリーズの多くの作品で使用されている。作曲者は辻横由佳[14][15]とされているが、『大乱闘スマッシュブラザーズX』のゲーム内においては、「作曲者:インテリジェントシステムズ」という帰属表記になっている。
『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』のテレビコマーシャルは、騎士団のコスチュームを纏った声楽団が「ファイアーエムブレムのテーマ」を歌い上げるといったユニークなものであった。
CMを製作するにあたって、当時第一企画(その後旭通信社との合併によりアサツー ディ・ケイを経て、現在のADKホールディングス)に所属していた任天堂企画部・倉恒良彰は、『暗黒竜』の発売前のROMをプレイして世界を見たうえで製作するはずが、倉恒自身が『暗黒竜』に相当はまり、任天堂のプレゼンテーションの3日前に演出家・金巻氏と合宿をして相談をしたが、「世界を端的に表すような映像を撮る」では予算的と労力がかかり没に。ほかの資料から探した結果、オペラのレーザーディスクに収録されていたヴェルディの『ナブッコ』とFEのゲームの音楽の出来が良かったために、いまのオペラCMが作成されたとのことである。このCMに、出演者は全員オペラで活躍している二期会、音楽はフルオーケストラ、撮影の照明に映画監督・黒澤明と長く仕事をしていたテイク・ツーの佐野武治を起用している[16]。上記の「ファイアーエムブレムのテーマ」の歌は完璧だったが、衣装が重装備のため、着付けに25人参加するほど時間がかかったり、当時に公演していたオペラ『アイーダ』で出演した馬・ルイス号が総勢50人の歌声と効果の稲光に驚いて20回NGを出すハプニングもあったとのことである[注 22]。「ファイアーエムブレムのテーマ」の歌詞は、倉恒が「ゲームで体験した事を忠実に表現した」と述べている[16]。ほかに、FC初のRPGSLG[注 23]だったうえに、頭の中で広がるドラマ・キャラクター性は格別なものだったため、製作にかなり意識したという記述もある[注 24]。キャッチフレーズは「ファミコン超大作」「ロールプレイングシミュレーションの幕開け[注 25]」。
『ファイアーエムブレム 封印の剣』のテレビコマーシャルはこの1作目のもののオマージュとなっている。また、『封印』のサウンドトラックにテレビコマーシャルで使用した楽曲を収録するにあたって歌詞のロングバージョンが作られることとなった。(封印サントラ付属の冊子より)。
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