ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス(Sony Pictures Imageworks Inc.)は、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(以下SPE)の子会社であるアメリカ合衆国のVFX制作会社。日本のソニーグループ傘下であり、SPE製作の映画はもとより、他社製作の映画(『ハリー・ポッター』や『マトリックス』など)にもVFXを提供している。また、CGによるアニメーション制作も行っており、同じSPE子会社であるソニー・ピクチャーズ アニメーションや他社の長編作品に数多く参加している。
本社はカナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバーに所在しており、アメリカ・カリフォルニア州カルバーシティにもオフィスを構えている[2]。
歴史
創業期:1992年~1995年
1992年に同社の現VFXスーパーバイザーであるジェローム・チェン(Jerome Chen)を含む5名のVFXアーティストらによって設立[3][4]。同社の最初の仕事は1993年公開の映画『スリー・リバーズ』のアニマティクス制作であり[3][4]、トライスター ピクチャーズ(ソニー傘下の映画配給会社)の旧本社ビル内にオフィスを構えていた[4]。彼らが当時使用していたオフィスの会議室は、のちに同社初のデータセンターとなる[5]。
1993年よりVFX制作を開始し、『ザ・シークレット・サービス』や『スピード』などの映画に参加。特に『スピード』では、バレ消しやマットペインティングといった技術を駆使し、劇中でバスが間の空いた高速道路を飛び越える迫力あるシーンを作り上げた[3][4][5]。
1995年には、インダストリアル・ライト&マジックのVFXスーパーバイザーであったケン・ローストンがSPEによって招かれ、社長に就任[6][7][8]。彼の指揮のもと若いVFXアーティストが集まり、VFXスタジオとしての技術力と経営能力を高めていった[5]。
成長期:1997年~2007年
1997年公開の映画『アナコンダ』ではCGによる巨大蛇を制作し、これが同社の生み出した初のフルCGキャラクターとなった[4]。また、同年に公開された『スターシップ・トゥルーパーズ』でのVFXにより、1998年、第70回アカデミー賞において視覚効果賞に初めてノミネートされた[5]。その後も『スチュアート・リトル』(1999年)、『インビジブル』(2000年)において優れたVFXを生み出し、いずれもアカデミー賞での視覚効果賞にノミネート。2005年には『スパイダーマン2』(2004年)でのVFXにより、第77回アカデミー賞において初の視覚効果賞を受賞した。
また、2002年よりアニメーション制作に乗り出し、初の短編アニメ作品『チャブチャブズ』を発表。この作品は『メン・イン・ブラック2』と共に同時公開され[4]、翌2003年の第75回アカデミー賞において短編アニメーション賞を受賞。2004年公開の『ポーラー・エクスプレス』では、初めてモーションキャプチャーを取り入れたフォトリアルなアニメーション制作に挑戦。この手法は『モンスター・ハウス』(2006年)および『ベオウルフ/呪われし勇者』(2007年)でも取り入れられていくことになる。
企業活動としては、2002年7月に同社の役員であったティム・サーノフ(Tim Sarnoff)が社長に就任[9]。2007年2月にインド・チェンナイに制作拠点を置いていたVFX会社フレームフロー(FrameFlow)に資本参加し、同社の保有していた株式の51%を取得。同社はイメージワークス・インディア(Imageworks India)と改名され、2008年4月に新たなオフィスをチェンナイに設立した[10][11]。アメリカ国内には、カリフォルニア州ノヴァトおよびニューメキシコ州アルバカーキに制作オフィスを設立している[12][13][14]。
転換期:2009年~現在
2009年にサーノフが社長の座を退き、会社を去った[15]。2010年7月にはインダストリアル・ライト&マジックとファイル共有フォーマットAlembic(アレンビック)を共同開発し、SIGGRAPHにて発表。このフォーマットは異なるアプリケーション間でファイル共有を行う機能を備えており、多くのスタジオが容易に使用できるようオープンソースで開発された[16][17]。
2012年7月にはアルバカーキの制作オフィスを閉鎖し[18][19]、続いて2014年3月にイメージワークス・インディアのオフィスを閉鎖。約100名のスタッフが解雇がされた[20][21][22]。この閉鎖は同社のコスト削減の一環として行われたものであり[22]、これによりイメージワークス・インディアは事実上の消滅となった。2014年には、本社を含む主要施設を、それまでのカリフォルニア州カルバーシティからカナダのバンクーバーに移転[23][24][25]。カルバーシティには業務管理の事務所を残した。
2016年1月にはランディー・レイク(Randy Lake)が社長に就任。SPEのスタジオ運営責任者と兼任することとなった[26]。2017年に設立25周年を迎え[5]、2019年に『スパイダーマン:スパイダーバース』で第91回アカデミー賞において、同社初の長編アニメ映画賞を受賞。現在はバンクーバー本社とカルバーシティのオフィスのみに規模を縮小し運営している。
参加作品
※インターネット・ムービー・データベースの情報[27][28]および会社サイト[29]より引用。
映画
1999年まで
2000年代
2010年代
2020年代
テレビドラマ
アニメーション制作担当作品
※インターネット・ムービー・データベースの情報[27]および会社サイト[31]より引用。
長編
公開済みの作品
公開予定の作品
邦題 原題 |
公開予定日 |
日本公開予定日 |
製作会社
|
スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース Spider-Man: Beyond the Spider-Verse |
2024年3月29日[32][33][34] |
— |
コロンビア映画 ソニー・ピクチャーズ・アニメーション マーベル・エンターテインメント Arad Produtions Pascal Pictures Lord Miller
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短編
- 2002年:チャブチャブズ The ChubbChubbs!(自社制作、日本未公開)
ビデオ映画
Webアニメ
受賞歴
年 |
候補作 |
賞 |
部門 |
結果
|
1998年 |
スターシップ・トゥルーパーズ |
第70回アカデミー賞 |
視覚効果賞 |
ノミネート
|
2000年 |
スチュアート・リトル |
第72回アカデミー賞
|
2001年 |
インビジブル |
第73回アカデミー賞
|
2003年 |
スチュアート・リトル2 |
第1回視覚効果協会賞(en) |
キャラクター・アニメーション賞 |
受賞
|
チャブチャブズ |
第75回アカデミー賞 |
短編アニメ映画賞
|
2005年 |
アビエイター |
第3回視覚効果協会賞(en) |
優秀補助視覚効果賞(映画部門)
|
2005年 |
スパイダーマン2 |
第77回アカデミー賞 |
視覚効果賞
|
2010年 |
くもりときどきミートボール |
第8回視覚効果協会賞(en) |
最優秀アニメーション賞 |
ノミネート
|
最優秀エフェクト・アニメーション賞
|
2019年 |
スパイダーマン:スパイダーバース |
第91回アカデミー賞 |
長編アニメ映画賞 |
受賞
|
第46回アニー賞(en) |
長編作品賞
|
第17回視覚効果協会賞(en) |
優秀視覚効果賞(長編アニメ部門)
|
脚注
- ^ Sony Pictures Imageworks LinkedIn、2018年1月13日閲覧。
- ^ Contact Sony Pictures Imageworks、2018年1月13日閲覧。
- ^ a b c “Growing a Studio - Ken Ralston Talks VFX at Imageworks”. Animation World Network (2012年9月4日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ a b c d e f “From Speed to Spidey: 20 years of VFX and animation”. FXGuide (2012年8月30日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ a b c d e “Celebrating 25 years of Sony Pictures Imageworks”. FXGuide (2017年9月28日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ “Oscar-Winning Visual Effects Artist to Join Sony Pictures”. Los Angeles Times (1995年8月30日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ “Sony Hires Own Special Effects Expert”. The New York Times (1995年9月4日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ Ken Ralston - Writer Film Reference、2018年1月13日閲覧。
- ^ “Sarnoff To Head Sony Pictures Imageworks; Ralston Upped To VFX Supervisor”. Animation World Network (2002年7月24日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ “Sony opens Imageworks India studio”. The Hollywood Reporter (2008年4月11日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ “Sony Imageworks opens visual effects studio in Chennai”. SiliconIndia (2008年4月12日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ “Imageworks Takes Turn at Albuquerque”. Animation Magazine (2007年5月17日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ “Sony Pictures Imageworks Opens Albuquerque facility”. Computer Graphics World (2007年5月18日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ “Albuquerque Studios Sees Special Effects of SONY Imageworks Deal in New Mexico”. Cision PRWeb (2007年5月20日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ “Sarnoff leaves Sony Imageworks”. Variety (2009年1月28日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ “【SIGGRAPH2010】SPIとILM、オープンソースのジオメトリ・インターチェンジフォーマットを開発”. PRONEWS (2010年7月28日). 2018年1月21日閲覧。
- ^ “SPIとILMがシーンファイル共有フォーマット「Alembic」を共同開発”. CGWORLD.jp (2010年8月9日). 2018年1月21日閲覧。
- ^ “Sony Pictures Imageworks to close New Mexico visual effects office”. Los Angeles Times (2012年2月29日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ “Sony Pictures Imageworks to leave New Mexico”. Albuquerque Business First (2012年5月9日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ “Sony Imageworks India to Shut Down (EXCLUSIVE)”. Variety (2014年1月29日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ “Sony Pictures Imageworks India To Shut Down”. Cartoon Brew (2014年1月29日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ a b “【コラム】ソニーピクチャーズ・イメージワークス VFX制作拠点をカナダ・バンクーバーに インド・スタジオも3月末に閉鎖”. Inter BEE. 2018年1月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月29日閲覧。
- ^ “Sony Pictures Imageworks to move head office to Vancouver”. Vancouver Sun (2014年4月6日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ “Effects firm Sony Pictures Imageworks leaving L.A. area for Canada”. Los Angeles Times (2014年5月30日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ “Sony Pictures Imageworks opens new headquarters, making Vancouver the world's largest VFX and animation hub”. Straight (2015年7月9日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ “Sony Pictures Entertainment Names Randy Lake President, Studio Operations and Imageworks”. Shoot (2016年1月22日). 2018年1月13日閲覧。
- ^ a b With Sony Pictures Imageworks Internet Movie Database
- ^ With Sony Pictures Imageworks Internet Movie Database
- ^ vfx会社サイト
- ^ a b c d e f g h i Sony Pictures Imageworks (SPI)Internet Movie Database、2017年2月22日時点のオリジナルよりアーカイブ、2018年1月20日閲覧。
- ^ feature animation会社サイト
- ^ “‘Spider-Man: Across The Spider-Verse’ Heads To Summer 2023; Sony Dates ‘Madame Web’, ‘Equalizer”. Deadline.com (2022年4月20日). 2022年4月29日閲覧。
- ^ “‘Spider-Man: Across The Spider-Verse’ Fresh Footage Shown At CinemaCon, Part 2’s Title Revealed”. Deadline.com (2022年4月25日). 2022年4月29日閲覧。
- ^ “『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』タイトル決定 ─ 『スパイダーバース』続後編、マルチバース拡大を予感”. THE RIVER (2022年4月27日). 2022年4月29日閲覧。
- ^ The Remarkable Lucky 13 FXGuide、2019年9月22日閲覧。
- ^ “Ending and Cthulhu reference in Love, Death and Robots “In Vaulted Halls Entombed” explained”. HITC (2022年5月21日). 2022年6月26日閲覧。
外部リンク