「ジャズ葬(The Jazz Funeral)」という言葉は、ニューオーリンズ以外の地域からのオブザーバーによって長い間使用されてきたが、一般的に、ほとんどのニューオーリンズのミュージシャンや伝統の実践者から不適切なものとして軽蔑されていた。好まれた説明は「音楽を伴う葬式 (funeral with music)」であり、ジャズは演奏される音楽の一部だったが、式典の主となるものではなかった。古い伝統的なニューオーリンズ・ジャズより影響を受けたスタイルのファンク、ダーティー・ダズン・ブラス・バンドやソウル・レベルズ・ブラスバンド以降の音楽に精通した若い世代のニューオーリンズのブラスバンド・ミュージシャンたちの間では、20世紀末の15年ほどで、この言葉を使うことへの抵抗が大幅に薄れていった。
典型的なジャズ葬は、家族、友人、ブラスバンドによって、家か葬儀場か教会から墓地までの行進により始まる。行進の間中、バンドは弔歌や賛美歌を演奏する[5]。故人が埋葬された後、または霊柩車が行列を去り、行列のメンバーが最後の別れを告げて「肉体から自由の身となった (cut the body loose)」後、式典の趣が変わる。この後、音楽はより明るいものになり、多くの場合、賛美歌や霊歌がスウィングするように演奏され、人気のあるホットな曲になっていく。見物人が故人の人生を祝うために参加する騒々しい音楽とカタルシス・ダンスがある。音楽を楽しむためだけにバンドについていく人々はセカンド・ラインと呼ばれ、歩きながら、時にはパラソルやハンカチを空中で回転させるダンスのスタイルは、セカンド・ライニングと呼ばれている[6]。
ジャズ葬でよく演奏される典型的な曲のいくつかは、ゆっくりとした哀歌「主よ御許に近づかん」や、「ただあなたに寄り添って歩く (Just a Closer Walk with Thee)」などの霊歌である。後のより明るい曲には、しばしば「聖者の行進」や「Didn't He Ramble」が含まれている[7]。