アンティキティラ島の機械(アンティキティラとうのきかい、希: Μηχανισμός των Αντικυθήρων, Mechanismós ton Antikythíron)は、アンティキティラ島近海の沈没船から発見された古代ギリシア時代の遺物で、天体運行を計算するため作られた手回し式の太陽系儀であると推定されている[1][2]。オーパーツの一つ。
"The animated figures stand(命を与えられた人形が立っている)
Adorning every public street(あらゆる街角を飾って)
And seem to breathe in stone, or(石の中で息をするように)
Move their marble feet.(大理石の足を動かすように)"
hanc sphaeram Gallus cum moveret, fiebat ut soli luna totidem conversionibus in aere illo quot diebus in ipso caelo succederet, ex quo et in [caelo] sphaera solis fieret eadem illa defectio, et incideret luna tum in eam metam quae esset umbra terrae, cum sol e regione
ガルスがその球体を動かすと、地球内部で回った分だけそのブロンズ(の仕掛け)の上を月は太陽を追いかけて回った。また空中で太陽の球体と月が列を成し、月が地球(上)に(その)影を落とす位置に来て日食を作り出した[17]。
何十年にも及ぶ機械の洗浄の後、英国の科学史家デレク・デ・ソーラ・プライスが1951年に系統的調査に取り掛かった。プライスは「時計以前の時計仕掛け」[24][25]また、「時計の起源」[26]についていくつかの論文を発表した後、1959年6月アンティキティラ島の機械についての最初の著名な論文となった「古代ギリシャのコンピュータ(An Ancient Greek Computer)」を発表した[27]。この論文は科学雑誌『サイエンティフィック・アメリカン』の巻頭論文として掲載された。アーサー・C・クラークのTV番組「Arthur C. Clarke's Mysterious World」の第三章の最後によると、彼の勧めによって掲載されたとされる。この論文中でプライスは、アンティキティラ島の機械は恒星と惑星の動きを計算するための装置であり、知られる限り最古のアナログコンピュータであるとの説を展開した。その時点までは、この機械は何らかの天文に関する装置、おそらくは天体観測にもちいられたアストロラーベだったと認識されていたが、機能についてはほとんど知られていなかった。1971年、当時エール大学初の科学史のアバロン教授となっていたプライスは、ギリシャの国立研究センター「DEMOKRITOS(デモクリトス)」の原子核物理学の教授であったCharalampos Karakalosと協力することになった。Karakalosはガンマ線とX線の両方でアンティキティラ島の機械を撮影し、内部構造について重要な知見を得た。1974年プライスは論文「ギリシャからの歯車:アンティキティラの機械-紀元前80年ごろのカレンダーコンピュータ(Gears from the Greeks: the Antikythera mechanism — a calendar computer from ca. 80 B.C.)」の中で、どのようにこの機械が動作しうるかというモデルを提示した[28][29]。プライスのモデルは装置の復元への最初の論理的な試みとなった。彼のモデルでは、前面の表示盤は、太陽と月が黄道十二星座を通過してゆく、1年間の経過をエジプト暦に対して表す。また背面上部の表示盤は4年の周期を表示し、付随の表示盤は235朔望月から成るメトン周期、すなわち約19太陽年を示す。さらに背面下部の表示盤は1朔望月の周期を示し、二次的な表示盤は12朔望月から成る太陰年を表す。プライスの提言の中で特筆すべきことは、アンティキティラ島の機械は角速度を加減できる差動歯車を装備し、月の動きの効果から太陽の動きの効果を差し引いて、月の満ち欠けを計算することができた、とする点である。
より不明瞭な観察結果に基づいてではあるが、背面下部の表示盤は交点月を数え、おそらく日食の予測に用いられたと結論付けた[40]。以上の発見は全てライトの復元模型に取り入れられ[39]、全ての機能を1つの機体に作りこめることが可能なだけでなく、動作することも証明した。線形断層影像法によりかなり改善された画像を得たにもかかわらず、ライトは既知の歯車の全てを、1つの完結した機械として組み合わせることができなかった。そのことから彼は、いくつかの機能は取り除かれたり付加されたりして改造された、という結論に至った[39]。数々の研究成果を挙げて[30][39][41][42][43][44][45]、最終的にライトはプライスの唱えた差動装置の存在仮説を否定した[36][39]。マイケル・ライトの研究は、アンティキティラ島の機械研究プロジェクトと平行して行われている。アンティキティラ島の機械研究プロジェクトの最新の結果である、月の角速度異常を見事に再現する、歯車に付随するピンと溝の機能を盛り込むために、最近ライトは彼のモデルをわずかに改良した。2007年3月6日、ライトはアテネの国立ヘレニック研究基金(National Hellenic Research Foundation)に彼の復元模型を提供した。
アンティキティラ島の機械研究プロジェクト
この機械の研究は現在、アンティキティラ島の機械研究プロジェクトにより進められている。このプロジェクトは、カーディフ大学(M. Edmunds, T. Freeth)、アテネ大学(X. Moussas, Y. Bitsakis)、テッサロニキ大学(J.H. Seiradakis)、アテネ国立考古学博物館、英X-Tek[46]、および米ヒューレット・パッカードが、リバーハルム財団からの資金とギリシャナショナル銀行[47]の支援による共同プログラムである[48]。海底から引き上げられたオリジナルは壊れやすく、博物館から移動することは出来ないので、ヒューレット・パッカードの研究チーム[49]とX-Tekは、測定装置をギリシャまで輸送しなければならなかった。ヒューレット・パッカードは「PTMドーム」と呼ばれる三次元表面撮影装置を、測定のために機械の周囲に組み上げた。X-Tekは12トン、450kVのコンピュータ制御微小焦点断層撮影装置を、この研究のために特別開発した。2005年10月21日にアテネにおいて、アンティキティラ島の機械の新たな部品が発見されたとの発表があった。現在82個の断片が存在する。新たな部品のほとんどは静置され、保存処理を待っている状態である。2006年5月30日、撮影システムにより更なるギリシャ文字の解読が進んだことが発表された。判読可能な文字は約1,000文字から2,610文字に増えた。これは現在までに発見された文字の約95%に相当する。研究チームの発見は、アンティキティラ島の機械の機能と目的に関する疑問に対して、新たな光を投げかけるものとなった。研究は継続中である。最初の結果は2006年11月30日と12月1日のアテネでの国際学会で発表された[48]。
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予稿 (Preprint(PDF) )
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