『十二国記』(じゅうにこくき)は、小野不由美の小説シリーズ。中国風異世界を舞台にしたファンタジー小説である[3]。完結しておらず、シリーズは継続している。アニメやドラマCDなどのメディアミックス展開も行われた。
『十二国記』は、神仙や妖魔の存在する中国風の異世界を舞台にしたファンタジー小説シリーズである。この異世界には十二の国が存在し、各国は王政国家である。麒麟が天の意思を受けて王を選び、王は不老の存在となり天の定めた決まりに従って統治を行う。このような舞台設定は、予言によって政治社会などを予測した古代中国の讖緯思想をベースにしており、人外の存在たちは『山海経』が参考にされている[4]。地球と十二国の世界は隣り合っており、天災「蝕」によって地球人が十二国の世界に流されることもあれば(海客・山客)、十二国の世界に生まれるはずの人間が生前に流されて地球に生まれることもある(胎果)。シリーズでは、本来あるべきでない場所に生まれた胎果や故国から引き離された海客、十二国の世界の人々の冒険や苦難が描かれるが、十二国すべてが舞台となるわけでない。政治を行う王、理想や野望を抱く官吏、市井の民などの多様な立場の人々が、過酷な運命のもとで必死に生きる姿を描いた骨太の物語である[4]。新潮社の担当編集者は「全編に貫かれているのは、生きることの難しさと如何に対峙していくかであると思います。」と述べている[4]。
最初に執筆された『魔性の子』(1991年)はホラー小説で、舞台は現代日本だった。当初は続編の予定はなかったが[4]小野が新潮社で『魔性の子』を書いたときに、背景となる想定世界として十二国世界が構築され、地図や年表、図表なども作っていた。講談社の編集者からファンタジーを書くことを提案された時に、このことを話したところ、書くように勧められ、結果として好評で十二国記シリーズが生まれた[5]。シリーズ1作目の『月の影 影の海』(1992年)から、少女小説レーベルの講談社X文庫ホワイトハートでファンタジーとして発表された。表紙と挿絵は山田章博で、人物や人外の存在が美しく迫力をもって描かれている[4]。小野は元々ファンタジーを読む方ではなく、ファンタジー作品を注文されてから 、C.S.ルイス『ナルニア国物語』やロジャー・ゼラズニイの『アンバーの九王子』を読み、自分なりのファンタジーの理想形ができていった[6]。小野は、十二国記のような物語は、ファンタジーというより神話や歴史絵巻の様なものだと考えているという[6]。本シリーズは少女小説としては珍しく、理想の政治を考えるというような、中国歴史小説ものに近い受け止められ方もあるようである[3][7]。とはいえ、十二国間では天が定めたとされる摂理により侵略が許されないため(これを破ると王は死ぬ)、商業面以外の外交は必要なく、現実の政治とはかけ離れている[3]。
元々小野は講談社X文庫ティーンズハートという少女小説レーベルで少女小説を書いており、読者の少女たちにファンレターで悩みを打ち明けられることがあった[6]。小野は、しいて言えばこの読者たちが陽子の原型であり、『月の影 影の海』は読者への返信の代わりであると述べている[6]。『月の影 影の海』は、少女向けとしてはあまりに重すぎるということで一度は没になり、紆余曲折があって出版された[6]。無理やり異世界に連れてこられた少女が、苦難に満ちた冒険の末に自分の居場所を見出すというこの物語は、「自己を探求し、真に帰属すべき場所を見出す」というファンタジーにおける大きなテーマが描かれており[3]、重すぎる、難しすぎるのではという出版社の一部の懸念に反して読者の少女たちの反応は好評だった[6][8]。人気により同一世界を舞台とする作品が増え、徐々に綿密な世界観が明らかにされていき、シリーズになった。主役は各話によって異なっており、日本の女子高生であったが十二国の世界に連れもどされ慶国の王となった陽子、陽子と同時代の日本に生まれたが戴国の麒麟であった泰麒(蒿里)、戦国時代の武家の跡取りであったが雁国の王となった尚隆、室町時代の貧民の子どもで延国の麒麟であった延麒(六太)など、胎果のキャラクターを中心にストーリーは展開する。シリーズの刊行は時系列ではなく、『ナルニア国物語』のように時代が前後しながら、様々な場所を舞台に物語が進んでいく。おもしろい物語と魅力的なキャラクターを持つこのシリーズは、普段ティーンズ向け作品を読まない層までファンを拡大させていった[3][7]。1996年には週刊誌の書評コーナーで評論家の北上次郎が『図南の翼』を絶賛し、2000年には雑誌『幻想文学』で評論家の石堂藍が紹介するなど、注目を集めた[8][7]。
2021年9月時点でシリーズ累計発行部数は1280万部を突破している[9]。『ダヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2020』小説ランキング50では1位を獲得している[10]。また、2002年にNHKでテレビアニメ化されている。
2001年7月以降シリーズ新作は久しく発表されていなかったが、『yom yom vol.6』(2008年2月27日発売)にて、約6年半ぶりとなる新作短編、十二国記シリーズ番外編「丕緒(ひしょ)の鳥」が掲載され、同誌vol.12(2009年9月27日発売)にて、柳国を舞台とした短編「落照の獄」が掲載された。
当初講談社X文庫ホワイトハート[注 1]から発刊されたが、読者層が成人層へ拡大し、2000年から一般向けの講談社文庫からイラストなしで刊行された。少女小説が一般の文庫に引き入れられた例はそれまでになく、少女小説の世界で同シリーズは非常に破格の作品であった[7]。
シリーズ誕生のきっかけとなった講談社の担当編集者が新潮社に転職して文庫編集部に配属されて、そのまま作者の担当者になり、2012年4月にシリーズが講談社から新潮社に移籍し、一般向けの新潮文庫から完全版が刊行される運びとなった[11]。同年7月以降、既刊の新装版、新作を含む短編集、新作長編が順次刊行された。これまで別作品という形だった『魔性の子』が、Episode-0巻としてシリーズの中に統合された。完全版の表紙・挿絵はホワイトハート版と同じ山田章博。詳細は#シリーズ全体の構成を参照。
このシリーズは現在では公式に「十二国記」と呼ばれて表紙・カバーなどにも明記されている。しかし当初はこのような表記はされておらず正式な名称は無かった。「十二国記」というシリーズ名が付されるのは1994年9月に出版された『風の万里 黎明の空(下)』以降のことである。1994年6月の『東の海神 西の滄海』の著者による後書きには、シリーズ名はないが、読者はおおむね「十二国」と呼んでおり、自分も呼びやすいのでそう呼んでいるとある。「ダ・ヴィンチ」2003年7月号の著者インタビューによると、シリーズ名が付けられたのは編集部からの要望によるものである。
新潮文庫刊行の『魔性の子』以外は、全て講談社X文庫ホワイトハートおよび講談社文庫。ホワイトハート版のイラストは山田章博が担当。講談社文庫版の装丁は菊地信義(イラストなし)。元々『図南の翼』まではホワイトハート版のみで刊行されていたが、後に講談社文庫からも刊行されるようになった。『黄昏の岸 曉の天』以降は講談社文庫版が先に、続いてホワイトハート版が刊行されるようになった。
2012年7月より新潮文庫から刊行されている新装版は、表紙および本文イラストは全て山田による書き下ろし。言い回しや文字遣いなどに部分的に訂正が入ったのみで、内容に大きく影響する改訂は加えられていない。
本シリーズは、同一の世界設定の中で作品ごとに別の国・別の時代・別の主人公を持ち、執筆順と作品内での時間軸が前後する形でストーリーが展開されている。ホワイトハート版の後書きで、『月の影 影の海』が、「『魔性の子』の続編であり、本編である」と説明があり、同一の世界設定でホラーとファンタジーという別のジャンルの小説として書かれていた。当初は事情がそれ以上明らかにされず、読者は『魔性の子』は、十二国記シリーズの外伝ではないかなど、様々に想像していた。
戦国時代の日本と雁国が舞台の『東の海神 西の滄海』は、「今回は番外編という気分で書き始めた」と述べられている。『東の海神 西の滄海』の後日譚を描いた『漂舶』(ドラマCDの付録)は、表紙に「十二国記外伝」と表記されている。恭国が舞台で主要キャラクターに胎果・海客がいない『図南の翼』は「番外編」とされており、人気作であるがアニメ化されなかった。
文庫未収録作品は、発表年によった。
日本で生まれ育った普通の女子高生・中嶋陽子は寝る度に恐ろしい気配に追われ、日を追う毎にその距離が縮まっていくという異様で怖い夢を見ていた[注 2]。そんな陽子の前に、突如「ケイキ」と名乗る異装の男が現れる。ケイキは陽子を主と呼んで跪き、一方的に謎の盟約を迫る。突然の出来事に戸惑う陽子を異形の獣が襲撃、それを辛くも退けたケイキは、強引に陽子を月の影の向こうにある地図にない世界へと連れ去った。陽子はケイキから「決して剣と鞘を離さないように」と碧の玉が付いた鞘に収まった剣を渡され、「剣を振るえない」という陽子に自らのしもべの賓満・冗祐を憑依させ、陽子の意に反して陽子に襲い掛かる獣を体が勝手に動いて撃退するようにして、他のしもべに陽子を託して彼女を異世界に送り出した。
異形の獣の襲撃は月の影に入った後も続き、「敵の攻撃から目をつぶってはいけない」(賓満は憑依した者の目を借りて動くため)という警告を無視して目をつぶってしまったことがきっかけで陽子は、ケイキとそのしもべ達とはぐれ見知らぬ場所(巧州国、略称:巧国)にたどり着く。巧国では自分と同じように日本や中国からこの世界に流された人を徹底的に差別しており多くの場合は処刑されるため、陽子も役人に役所に護送される事になったが、その道中でまた異形の獣に襲われ、陽子は車の下敷きになった鞘から玉だけを切り外してその場を逃走する。全く事情が判らないまま縋る気持ちで現地の人間に助けを求めるも、“海客”として酷い仕打ちを受けたり、利用されそうになったりしたため、夢で見る元いた世界の幻で自分の周りにいた人達が自分の事を悪く言ったこと(実は剣が本当の事を見せていた)や青猿(その正体は陽子が無くした鞘に封じられていた妖魔。剣と鞘が離れたため封印が解けた)の讒言もあって陽子は徐々に人間不信に陥る。
人目を避けつつ、なおも襲撃を続ける異形の獣(妖魔)と戦い続ける陽子は満身創痍となり、行き倒れたところを半獣の楽俊に救われる。楽俊は陽子を介抱し、さらには海客に対する保護体制が整っている雁国(雁州国)への道案内を買って出る。道中に妖魔と遭遇しそれを退ける陽子であったが、衛士(警備兵)に見つかるという恐怖から、倒れている楽俊を見捨ててしまう。後にそれを後悔する陽子であったが、同時に「口封じに楽俊を殺す」という選択肢を選ばなかった自分に安堵する。そして、「口封じにあのネズミを殺せばよかったのに」と言った青猿を殺すと、無くした鞘が現れた。楽俊との再会はかなわず、陽子は一人で雁国を目指す旅を続けるのであった。
雁国へたどり着いた陽子を待っていたのは楽俊であった。楽俊は先に雁国に渡り、港で働きながら情報を集め、陽子を待っていたのだという。再び二人旅となった陽子たちは、雁国で暮らす海客「壁落人」を訪ね、そこで陽子が胎果(元々十二国の人間であるが、生まれる前の木に実っている時に現実世界に流され、あちらの人間の腹から生まれた人)であることを知る。その後、陽子と楽俊の何気ない会話で陽子がケイキとそのしもべのやり取りを思い出し、「台輔」(宰輔の敬称)という単語がきっかけでケイキとは慶東国(略称:慶国)の麒麟の「景麒」であり、景麒が「主」と呼ぶならば陽子は巧と雁に挟まれた国である慶国の王「景王」であると告げられる[注 3]。陽子が神である王だと分かり距離を置こうとする楽俊に、陽子は反発し、実際の互いの距離しか離れていないのだと告げ、楽俊はそれを受けて今まで通りの接し方をしようとする。
楽俊は延台輔宛てに、慶王保護の書状を送り、それを受けた延王は陽子らを妖魔の襲撃から助けた。延王は陽子に、麒麟と契約した時点で人としては死に、神となっていること、日本に戻れば民を見捨てることになるので、天意に反するため短期間で死に、大勢の民が犠牲になることを教え、日本に戻るのか、景王になるのかの選択を迫る。景麒が陽子を守るために付けた使令(景麒のしもべである妖魔)の冗祐は、王の器ではないと迷う陽子に「玉座を望みなさい。あなたにならできるでしょう」と告げる。陽子は迷いの果てに、慶国の王になること、延王の助力を受けて偽王・舒栄を討つことを決意する。
蓬山の捨身木に戴極国の麒麟の卵果が実り、母親代わりとなる女怪が生まれ、蓬山は麒麟の誕生を待っていた。しかし、突如襲来した蝕に巻き込まれ、麒麟の卵果は流され行方不明になってしまった。
それから10年後、泰麒は蓬莱で発見され、無事に連れ戻される。普通の人間として育った泰麒は、身の回りの世話をする女仙から「麒麟は人ではなく獣であり、獣の姿に転変する」「麒麟は天啓を受けて自らの主である王を選定する」と知らされるが、何の力も振るうことができず、麒麟としての自覚も持てなかった。女仙の長・碧霞玄君は景麒を招き、麒麟の何たるかを泰麒へ教えさせるが、泰麒は生まれたときから人間の姿で今も転変できない自分は「麒麟の出来そこない」ではないかと思い悩む。泰麒を泣かせたことで女仙から責められた景麒は、その後泰麒に麒麟の能力や役割を伝授し、妖魔の折伏を実践してみせるが、結局泰麒には折伏することができなかった。しかも自然に出来るようになる転変の仕方については、教えることもできなかった。
慕っていた景麒が慶国に戻り、泰麒は麒麟としての自覚を持てないままであったが、戴国に麒麟旗が掲げられ、王になることを望む者(昇山者)たちが泰麒に会うために続々と蓬山に集って来る。王を選ぶ天啓がどんなものか判らないまま、昇山者と対面する泰麒は、騎獣をきっかけとして承州師将軍の李斎と知り合う。また、昇山者同士の喧嘩で出会った禁軍左軍将軍の驍宗には、恐怖に似たものを感じる。泰麒はその後も度々李斎の下を訪れ、驍宗とも会話を交わすようになり、彼らが蓬山を去る間際には一緒に騎獣狩りに行くほどの仲になる。女仙の反対を押し切って同行した狩りの最中、李斎が見つけた洞窟に入った3人は、内部に潜んでいた伝説級の妖魔・饕餮に襲われ、泰麒はひとりで対峙することになる。傷ついた驍宗と李斎を守るという強い思いから、泰麒は初めて折伏に成功し、饕餮を使令に下すという前例のないことをやってのける。
驍宗が蓬山を去る日が訪れる。驍宗から王になれなかったら禁軍を辞め黄海に入ると聞き、女仙からは蓬山に昇山できるのは一生に一度だけと聞き、二度と驍宗に会えないと思った泰麒は、離れたくないと思う感情が抑えきれずに走り出し、いつの間にか初めて麒麟の姿に転じていた。驍宗を王に選び誓約した泰麒だったが、「天啓が無いのに偽者の王を選んでしまった」と思い悩み後悔し続ける。女仙たちから驍宗が王として扱われることに過ちを感じ、天勅を受ける儀式で罰を受けると思っていたが何事も無く余計に不安になり、戴国へ下って王と宰輔の座に就くと国そのものが偽りでできているように思えた。泰麒の様子を伺いに載国の王宮を訪ねた景麒と再会し、不安げな様子を指摘された泰麒は、「偽者の王を選んでしまった」事を打ち明ける。
泰王即位の慶賀のため、驍宗と誼のある延王が戴国へやってくる。延王と面会した泰麒は、延麒と景麒もいる前で、延王に対し叩頭礼をするよう驍宗から命じられる。言われるまま叩頭しようとするが、地に手をついたところでそれ以上体が動かず、強引に押し付けられてすら叩頭することはできなかった。「麒麟は自らの主以外に叩頭できない」という事を身を以って知った泰麒は、自分が驍宗に感じた畏怖が王を示す天啓であったことを理解する。
延王・尚隆、延麒・六太は共に胎果であり、蓬莱(日本)で生まれ育った。六太は戦乱の中で親に捨てられた経緯から国を統治する者の存在を嫌い、蓬山に帰還した後も王を選べず、蓬莱へと戻ってしまう。その蓬莱で出会ったのが、滅亡に瀕した小松水軍を率いる小松三郎尚隆であった。会った瞬間に王気を感じた六太であったが、前述の理由により誓約を交わすことはなかった。しかし、尚隆の命を懸けて民を守ろうとする姿勢に自らの理想を重ね、絶体絶命の尚隆を助け、延王として十二国へと連れ帰った。
それから20年後、雁国は荒れた荒野から緑の大地へと復興を遂げていた。しかし、元州では治水の権限を王が奪ったままなのに梟王時代に破壊された漉水の堤が復旧されない事に州城の苛立ちが募り、謀反の動きがあるという情報があった。そしてある日、六太の古い親友である“駁更夜”と名乗る少年が玄英宮を訪れることから事態は進展する。妖魔の口の中に入れた赤子を人質に、六太をおどした更夜は六太を元州城へと連れ去り、元州の令尹・斡由は六太に「漉水の堤」を名目として、天網で禁じられている「上帝位の新設」[注 4]を奏上した。権力者の存在に否定的な六太はこれを拒否し、牧伯(国から地方に派遣される監督官)の驪媚と共に額に赤索条(一つが切れると他の綱が絞まる呪)を結ばれて神仙の力を封じられ、首に赤索条を巻かれた赤子と共に3人で元州城の内宮の赤索条が張り巡らされた牢に監禁されてしまう。
尚隆のもとへも同様の要求が伝えられたが彼がこれを拒否すると、成笙を元州に派遣し、道中で民を募って漉水の頑朴(元州の州都)の対岸に堤を築くよう指示する。そして尚隆本人は正体を隠して元州に行った際に元州師から勧誘を受けた事を利用して元州師に潜り込んだ。国府には宰輔の危機を聞き徴兵を希望する民衆が国内各地から押し寄せ、支援を申し出る郡や郷が沢山現れた上に、尚隆の計略もあって斡由があてにしていた諸侯諸官が宰輔誘拐という強攻策に反発して寝返るなど、事態は斡由に不利に動いていく。更に雨季が始まり、尚隆の計略により雨の中で対岸にのみ堤を築かれる(堤が無いこちら側が水攻め状態に陥る)事に危機を覚えた斡由は州師に対岸の堤を切るよう指示、州師と民の戦いとなり王師が民を守るという、「民のために堤を」を掲げる斡由にとっては皮肉な構図になってしまう。
一方、元州城の内宮では「誰が上に立っても同じ」と言う六太に対し驪媚が「宰輔が選んだ王以外のものが国権を握ってはならない」と返す問答がされていた。驪媚は天帝の罰が及ばない仙が国権を握る事の恐ろしさを六太に説くが、彼には権力者の存在自体を肯定することができなかった。ある日、いつものように押し問答をしていた二人だったが、驪媚が六太を王師まで逃がそうと彼の赤索条を切ってしまう。赤索条が切れた事を知って駆けつけた更夜は驪媚と赤子の血を被って呆然としていた六太を見つける。更夜は再び六太の額に赤索条を締める際に今度は角を外して締めた。その後、六太は血に酔って具合が悪い身体で元州城から脱出しようとするも地下迷宮に迷い込んでしまう。六太はそこで牢に閉じ込められた先の元州侯・元魁と遭遇し、斡由の過去や人となりと、斡由の目的が誉められる事であることを知り、斡由は民のためにならないと確信する。その後、元州城に潜入していた尚隆に見つけられ負ぶわれて迷宮を抜け出せた六太は斡由と対峙し自分の考えを伝えるが、斡由は非を家臣の白沢や更夜へなすりつけようとする。しかし、大僕(王や州侯の私的な護衛)としてその場に紛れ込んでいた尚隆によって全てを断罪され、怒りから、斡由は無防備になった尚隆に斬りかかるが、最期は六太の使令によって瀕死の重傷を負い、尚隆に介錯され絶命する。
陽子が景王となって1年。朝廷は冢宰の靖共ら長年の官吏に牛耳られ、反靖共派の官吏も陽子の味方ではなく、陽子は玉座にありながら官吏の顔色をうかがう自らの姿に苦悩を感じていた。特に皆がいつも自分に対して平伏する事については、自分が通りかかる度に相手の仕事の手が止まる不合理さに悩み、相手の顔が見えない事に不信と恐怖を感じていた。そんな中、太師に謀反の疑いが掛かり、陽子は靖共の言うがまま、黒幕として名が挙がった麦州侯・浩瀚らを処罰する。だがそれに加えて、監督責任を怠ったとして靖共を太宰に降格することで、靖共派・反靖共派から共に権力を削ぐ。そして政治の実権を握らせるべきではないとされる景麒に、「自分よりこの国のことが分かっているから」と次の冢宰が決まるまでの間として実権を握らせる。
陽子はこの世界の理も国情も知らない自分に憤りを感じ、自ら市井に降りることを決意する。景麒の勧めにより固継という村の里家に逗留し、遠甫という老人の教授や蘭玉・桂桂の姉弟との触れ合いの中で、陽子は蓬莱とは常識から異なるこの地の風習を学んでいく。和州で暴政が行われているという噂を聞き、実情を確かめに和州を訪れた陽子は、重税が課され疲弊し、にも拘らず声を上げることもできない民の姿を目の当たりにする。固継に戻ると、不在の間に里家が何者かに襲われ、蘭玉が殺害され桂桂も重傷を負い、遠甫は拉致されていた。遠甫の足跡を追ううち、和州止水郷の郷長・昇紘を討とうとしている侠客の虎嘯らと出会い、これが和州の乱へと繋がっていく。
大木鈴は陽子の100年ほど前に蓬莱から流されてきた海客である。長く才国の飛仙・梨耀から執拗な虐めを受け続けていたが、決死の覚悟で采王に申し立て自由の身となった。女性・海客でありながら王となった景王に興味を持ち、慶国を目指す道中で出会った清秀という少年から、鈴は自分を憐れむばかりで周囲を見ていなかったと指摘される。妖魔から受けた怪我が元で衰弱していく清秀を支えて慶国にたどり着くが、清秀は和州止水郷で郷長・昇紘の馬車に轢殺されてしまう。激高した鈴は、昇紘を庇う者の最上位にある景王を暗殺しようと、才国の遣いを装い王宮に入るが、景王不在の為その機会さえなく王宮を去る。虎嘯らと出会い宥められた鈴は、打倒昇紘の郎党に加わる。
祥瓊は先の峯王の公主であったが、謀反によりその地位を失い、素性を伏せて里家に預けられていた。里家での貧しい暮らしや、預け替えられた恭国での屈辱的な仕打ちが耐えられず、自分と同じ年頃で王になった景王の噂を聞いて出奔する。景王を妬み、逆恨みし、簒奪してやろうと慶国を目指していたが、道中で楽俊と出会ったことで公主としての務めを果たしていなかった自分に思い至り、景王の為人を聞いて改めて興味を持つ。辿り着いた慶国和州の州都・明郭で芳国のような残虐な刑罰が行われているのに行き会い、思わず投石して追われる身になった祥瓊は、和州侯・呀峰に叛旗を翻そうとしていた侠客の桓魋に助けられ、和州の乱に身を投じる。
陽子・虎嘯・鈴らは打倒昇紘を掲げ郷城へと乗り込む。郷城の制圧と昇紘の捕縛には成功するが、捕らわれていた筈の遠甫は明郭に移されており、しかも呀峰は昇紘諸共に反民を屠るため州師を派遣してくる。州師相手では圧倒的に勢力の劣る虎嘯らであったが、桓魋・祥瓊らの加勢により戦況は一転し、桓魋の仲間による明郭の乱が成功するまで州師を引き付けることになる。しかし、続いて派遣されたのは王直属の禁軍であった。呀峰もまた靖共に庇われていたのである。陽子は鈴と祥瓊の話を聞き、王としての責任を確信すると共に、王として行動する決意を固める。禁軍を目の当たりにして動揺する人々に対し、鈴と祥瓊は自分の素性を明かして、景王を信じるよう説得する。陽子は景麒の背に跨って禁軍の前に姿を現し、反乱が王の意思である事を知らしめ、将軍に遠甫の救助と呀峰・靖共の逮捕を命じる。
王宮に戻った陽子は、遠甫を三公の筆頭・太師に、桓魋を禁軍左将軍に、桓魋の主だった元麦州侯・浩瀚を冢宰に任じ、靖共派だろうが反靖共派だろうが関係なく個人だけをみる、と大規模な人事改革を宣言。そして初勅として平時の伏礼を廃し、民のすべてに己という領土を治める王になって欲しいと告げる。
恭国には王がおらず、国は荒れていた。騎獣を狩る朱氏の頑丘は、金剛山の麓にある恭国乾の町の宿屋で一人の少女と出会う。少女の名は珠晶、恭国首都連檣の大商家の娘でわずか12歳、家から騎獣と金を持ち出して家出していたのである。無謀なまでの威勢のよさを見せる珠晶は、麒麟に会って王になるために、麒麟のいる蓬山へ昇山すると言い、そのための道案内として黄海に慣れた頑丘を雇うと提案する。
蓬山を囲む荒れ地・黄海への扉が開く日を迎え、珠晶と頑丘は黄海に入る。珠晶が旅の途中で一度出会った青年・利広とも再会し、他の昇山者と共に蓬山を目指すことになる。旅が進むにつれ、頑丘や近迫ら黄海に慣れた者たちは、この旅が都合よすぎると気づいていた。妖魔の襲撃が少なく、かつ安全に進むために効率がよく、その被害自体も少なかったからである。彼らはこの一行の中に「鵬(王となる人物)」がいると噂するようになっていた。
蓬山への道中に強大な妖魔が住み着いていることが分かり、頑丘らは森の中を迂回することを提案するが、室季和を筆頭に一部の昇山者はそのまま進むことを選ぶ。他の昇山者を見捨てるような頑丘の行動に、珠晶は怒り喧嘩別れし、季和と行動を共にすることにするが、妖魔の襲撃に恐れをなした季和や騎乗の者達は、徒歩の随従や荷物を捨て去り、一目散に逃げてしまう。季和の馬車に同乗していた珠晶は、逃げることはせず、残された随従と合流する道を選んだ。
頑丘・近迫・利広らは、命からがら逃げてきた季和らから事情を聞き、追ってくるであろう妖魔から逃れる蓬山への旅を急ぐことと、危険を冒して珠晶や残された人々を救うことの苦しい二者択一を迫られる。結局、利広が頑丘を雇って二人で珠晶の救出に向かい、残りの昇山者は妖魔から逃れるために先を急ぐことになった。一方、珠晶は取り残された人々と合流を果たし、自らを囮に協力して妖魔を倒すことを試み、成功するが、珠晶は妖魔の最期の抵抗に巻き込まれ行方不明になってしまう。その直後に頑丘らが到着、珠晶に救われた人々は彼女を慕い、必死で捜索するのであった。
一人はぐれた珠晶は何とか自力で元の場所に戻ろうとするも、迷ってしまい、挙句に妖魔と遭遇して窮地に陥る。だが珠晶を探すために留まった頑丘と利広に発見され、間一髪で救われる。しかしその際に頑丘は重傷を負い、血の匂いに妖魔が集ってくることが予想されるため、利広と珠晶に先に行くよう指示する。珠晶は頑なに拒否し、利広のみが救援を求めるためその場を離れた。乗騎の駮を犠牲にして逃げようとした頑丘・珠晶は偶然、神仙の犬狼真君に駮共々救われる。
犬狼真君と別れたところで利広と再会し、さらにそれを追うようにして30余騎の集団が突如として現れる。その中には、女仙達に混じって妖魔に跨り金の髪を靡かせる男の姿があった。麒麟が王気をたどり、王となる珠晶のもとにやって来たのであった。
泰王・驍宗が登極して半年が経過した。先王の時代から驍宗は優秀な部下を有しており、国府の中央は信の厚い人物で固められていた。その中、文州で叛乱が勃発し、驍宗ゆかりの町・轍囲が包囲されたため、王自らが出兵することになった。驍宗の身を心配する泰麒は、ただ2つしか持たない使令を驍宗のもとに差し向けるが、文州の乱は単なる暴動ではなく、大逆の一環だったのである。驍宗は突如として行方知れずになった。泰麒は襲われて意図せず力を使い、蓬莱(日本)へ渡ってしまった(泰麒は日本で十二国の記憶を失い、ただの人間の少年・高里要として生家に戻り暮らすようになる。この物語が『魔性の子』である)。
それから6年の月日が流れた。謀反の首謀者と思われる将軍・阿選が権力を握り、驍宗の臣下は次々と排除され、女将軍・李斎も罪人として逐われていた。追い詰められた李斎は最後の手段として、泰麒と同じ胎果で登極したばかりの景王を唆し助けを得ようと、慶国への脱出を決意する。
和州の乱から1年、慶国は新王のもとで安定を取り戻しつつあった。そんなある午後、王宮の門前に瀕死の李斎が現れ、景王に奏上したいことがあると申し出る。拒絶しようとする閽人(門番)の対応に業を煮やした李斎は強行突破を試み、たまたま出会った陽子の側近・虎嘯に助けられ、景王に泰国の救済を願うことを伝えて意識を失う。李斎は載から脱出する際に妖魔に襲われ、武将の命である右腕を失っていた。
李斎は昏睡状態から回復すると、面会に来た陽子に改めて助けを懇願する。陽子は心動かされ、雁国の王と麒麟に協力を仰ぐが、延王はその国の王の依頼がなければ軍が他国に入ることはできないという「覿面の罪」(破ると王は死ぬ)を告げ、決してこの罪を犯さないよう忠告する。陽子は李斎に、泰の民が自ら阿選を討つことはできないかと聞くが、李斎は気候の厳しい泰の民はすでに生きるだけで精いっぱいであること、阿選を討つために人を集めてもどういう訳か多数の脱落者が出てしまうこと、また仙である阿選は寿命もなく、王も麒麟も生きているが行方が分からないという状況では仙の資格を取り上げる方法もなく、悪逆を止める摂理の一切が働かないことを告げる。陽子はできる限りのことはすると確約し、李斎もそれで充分だと答え、罪深いことを考えて慶に来たことを謝罪する。
陽子、景麒、諸官と延王・延麒が討議し、天が許す範囲でできることは泰麒の捜索だとの判断に至ったが、それが可能なのは麒麟だけだった。陽子の発案で、各国の麒麟に協力を呼びかけることになるが、前例のないことだけに女仙の長・碧霞玄君に相談するため、陽子と延麒は蓬山を訪れる。碧霞玄君は麒麟たちが泰麒を探すことは天網に反しないと告げるが、陽子は天網とそれに違反した場合の罰が非常に教条的であることと、天という組織が実在することに驚き、単に不思議な世界と思っていた十二国世界に違和感を覚える。
氾王・呉藍滌は捜索に協力するため慶を訪れ、彼が驍宗に贈った玉帯が戴から範に出荷された玉に混ざっていたと告げ、李斎に驍宗の行方の手掛かりを与える。慶・雁・範を含め7国の麒麟で泰麒の捜索が始まる。麒麟たちが現実世界の地球を知らないこと、蓬莱国だけを取っても範囲が広いこと、泰麒の気配があまりにも弱く使令の禍々しい気配に隠されることから捜索は難航したが、ついに泰麒が見つかる。泰麒は反乱で襲われた際に角を失っており、十二国で暮らした記憶を失くしひどく穢れ弱って、麒麟というよりただの人という状態だった。人は虚海を渡ることができないため、陽子たちは王が蓬莱に渡って泰麒を仙に召し上げるという手段を考え、再び碧霞玄君の判断を請うことにするが、李斎は天が実在することに衝撃を受け、無理を言って同行する。
かつて自分が昇山した時と比べ、雲海の上の旅があまりに楽なことに驚いた李斎は、王を選ぶためになぜ命をかけて雲海の下・黄海を旅しなければならないのか、麒麟が選ぶ前から天によって王が決まっているのなら、黄海での苦労は、死んだ人々は何だったのかと嘆く。陽子はこの世界は神が治める国なのかもしれないと思い、存在するものは必ず過ちを犯すのだから、人は自らを救うしかないと苦い思いで告げる。碧霞玄君は泰麒を助けず死ぬのを待てというのが上の意向であると告げるが、李斎は必死で食い下がり、天網の条文の隙を付いた、「泰麒を雁の戸籍に入れ[注 5]、三公(高位の官吏)を一時的に罷免し泰麒をこれに任命する[注 6]ことで仙にする」という手段を授かる。
作戦は決行され、延王が虚海を渡り泰麒を無事に連れ戻すことに成功した。しかし泰麒の身体は、他の麒麟が近寄ることもできないほど穢れていた。普通の人として暮らしていた泰麒は本来麒麟には食べられない肉類を食べていたこと、また汕子と傲濫が泰麒を守ろうとするあまり周囲で殺戮を繰り返したことが原因だった。泰麒の穢れは碧霞玄君の手に負えず、女神・西王母に助けを請うことになった。戴には希望が必要だという李斎の嘆願もあり、泰麒とその使令は清められることとなったが、西王母はそれ以上の助力はしなかった。角が折れた泰麒は麒麟としての能力がなく、使令も清めのために引き離されたことで、幼い頃より更に無力な状態であった。
泰麒は慶の王宮で休み、しばらくして眼を覚ます。陽子が泰麒を見舞っていた時に、慶の内宰と閽人が乱入し、陽子を弑逆しようとする。陽子が彼らを遠ざけ少数の者だけで周囲を固めていた上、他国の者に肩入れし王や麒麟を頻繁に出入りさせていたため、それに激昂しての犯行だった。延麒と景麒が駆け付けことなきを得たが、自分たちの存在が少なからず慶国の負担になっていると悟った泰麒は、戴を救うのは戴の民しかいないと李斎に告げ、共に戴国へ戻ることを決意する。見張りに付けていた使令によって二人の決意を知った延麒は、夜明け前にこっそり出立しようとする二人に餞別の旅費と旌券を授け、延王の騎獣も貸し出す。旌券には陽子が裏書していた。陽子は二人を行かせる辛さを受け止め、まず自分からなのだと思う。
シリーズ共通の主人公は存在しないが、各作品の登場人物は時代を超えてリンクし合っている。太字が主人公。
不老の神仙が存在し、妖魔の跋扈する世界。十二の国があり、政治組織は古代中国周礼に類似しているが、国政は封建制だが命令権の強い王制のもと統治が行なわれている。しかし世襲制ではなく、神獣の麒麟が天意に従って選んだ王により統治されており、麒麟が王を補佐する。麒麟は慈悲深く、血や死の穢れを嫌い、穢れによって病む。王の資質のある人間が選ばれると言われているが、それぞれの王によって国の繁栄の度合いは異なる。王は諸侯を封じ、政治を行う。王や一部の高位の官は神仙として不老を与えられ(特殊な武器で殺すことは可能)、王は死ぬまで統治をおこなう。王の治世は、数年で終わる場合もあれば、数百年にも及ぶこともある。
政治には天が定めたとされる絶対のルールがあり、王がそれを破り道を誤ると麒麟が病み、そのまま改めなければ麒麟は死ぬ。王を王たらしめた麒麟が死ぬと、王も死ぬ。または、麒麟が死ぬ前に、王が天に願って禅譲する(死を選ぶ)こともできる。反乱によって討たれることもある。王が死ぬと麒麟が新たな王を選ぶ。麒麟が死ぬと世界の中心にある山に麒麟の実がなり、新たな麒麟が生まれ王を選ぶシステムとなっている。王は必ずその国の人間である。王の在位中は妖魔の活動は抑えられ気候も安定するが、王がいなければ国は乱れる。このようなルール・システムは天帝が定めたと言われるが、天帝に会った者はいない(雁国主従(尚隆と六太)と主従に敵対し敗北した斡由のように、天帝の実在に疑問を呈する者もいる)。
生き物は特別な木から生まれるため、女性は出産せず、現実の男女観・ジェンダーとは異なっている。性欲やセックス自体はこの世界にもある。同国人同士でなければ子供を授かることはできず、子育てとは天に徳を示す行為と考えられている。子どもは親から生まれるわけではないので、外見が似ることもない。半分人間半分獣である半獣と呼ばれる人々がおり、国によっては差別を受けている。異なる世界(現実世界)から流されてきた人々は海客・山客と呼ばれ、こちらも国によっては差別される。異世界であるため、独特のオリジナルの言葉が多く用いられている。
世界の中心の島があり、この島は十二国に含まれない。島の中心の山は女神・西王母の領域で、麒麟のなる木があり、碧霞玄君が治め、配下である女仙たちが幼い麒麟に仕える。この山を囲むように黄海という荒れ地がある。島と海を隔て、花弁のような形の環状の大陸があり、ここに八つの国がある。国境は天によって定められている。さらにこの大陸を虚海という海が囲み、四方に四つの島国がある。現実世界は虚海の果て・世界の影にあるとされており、「蝕」と呼ばれる現象によって繋がっている。
他に、台湾版と韓国語版がある[47]。
NHKBS2の衛星アニメ劇場枠内で、2002年4月9日から2003年8月30日にかけて放送された。原作そのままではなく、アニメオリジナルの部分もある。
当初は全39話とされ、2003年3月に第2シリーズ(第40話以降)の放送が発表されたが、第45話で終了となった。NHKの公式発表では、その理由として原作が未完であるためキャラクターを生き生きと描きづらいことなどが挙げられている[51]。なお、脚色の會川昇が執筆し後に出版されたアニメ脚本集によれば、元々第2シリーズは「東の海神 西の滄海」に続いて「図南の翼」「黄昏の岸 暁の天」の構成で、原作未完の『黄昏の岸 暁の天』に何らかの決着を付けることでアニメ版十二国記の結末とする構想だった。『華胥の幽夢』収録の短編も、「書簡」「乗月」に続いて「冬栄」と「帰山」はアニメ化可能だった[52]。
後に教育テレビや衛星ハイビジョンでも放送された。日本のみならず、韓国、台湾、中国、アメリカなどでも放送されている。
BS2初回の放送期間は以下の通り。
2002年7月23日から8月27日、2003年3月18日・25日は再放送、また2003年4月5日 - 6月28日まで「十二国記の世界」と題された全13回の総集編として再編集された特別番組が放送されている。また、同作品は2006年BS夏休みアニメ特選枠内にて一部放送した。2010年10月6日よりキッズステーションにて放送(CSは勿論、NHK以外の放送局で初の放送となる)。また、2012年8月2日からはNHKBSプレミアムにて全45話が再放送されている。
2009年9月26日より順次発売開始されている。特典として、新作ミニドラマCDなどが封入されている。
2015年11月26日発売の廉価版。全4シリーズ、全45話を収録。ディスク枚数: 10枚、ドラマCDなし。
PS2版ゲーム2作が発売されている。いずれも制作コナミコンピュータエンタテインメントジャパン、発売元コナミ。
PC版オンラインゲームが1作発売されていた。発売元はアスミック・エース エンタテインメント。
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