リバティアイランド(欧字名:Liberty Island 香:自由島、2020年2月2日 - )は、日本の競走馬[1]。
2023年に史上7頭目となる牝馬三冠を達成した。馬名の意味は、アメリカ合衆国・アッパー・ニューヨーク湾の自由の女神像が建っている島(母・ヤンキーローズから連想)[3]。
主な勝ち鞍は2022年の阪神ジュベナイルフィリーズ、2023年の桜花賞、優駿牝馬、秋華賞。2022年度のJRA賞最優秀2歳牝馬、2023年度の最優秀3歳牝馬である。
戦績
2歳(2022年)
2022年7月30日新潟5レース(芝外1,600m)の新馬戦でデビュー。川田将雅を鞍上に据え、単勝2.1倍の1番人気に推される[7]。レースでは4角7番手から末脚を発揮、2着クルゼイロドスルに0.5秒、3馬身の着差をつけ勝利[7]。上がり3F (ゴールまでの600m) を31.4秒(≒68.8 km/h)というスピードで駆け抜けた。これはJRAで計測が始まって以降、同年5月の韋駄天ステークスでルッジェーロが記録したものと同じで、史上最速タイ記録である。レース後川田は「調教通りの内容でした。これからの成長が楽しみな1頭です」と期待をこめたコメントを残した[8]。
次戦は8月28日、新潟2歳ステークスとの報道もあったが[9]、10月29日アルテミスステークス(GIII)へ向かうこととなった[10]。 3枠3番に入り、単勝1.4倍の1番人気に支持された[11]。レースでは、中団で運び4コーナーで外に進路を取ろうとしたところで進路にフタをされ、上手く抜け出せず最後は外から勝ったラヴェルを猛追するもののクビ差の2着に終わる[11][12]。
3戦目に12月11日の阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)を選び、アルテミスSを制したラヴェルのほかコスモス賞(OP)の勝ち馬モリアーナや札幌2歳ステークスの勝ち馬ドゥーラ、同2着馬ドゥアイズなどのライバルと一堂に会した中で、単勝2.6倍、3戦連続の1番人気に推される[13]。レースは前半半マイル(800m)45.2秒の流れを9番手で進めると、最後の直線では大外を強襲[14]、上がり35.5秒で先行馬を交わし、4コーナーまでほぼ同じ位置にいた2着馬シンリョクカ(12番人気)に2馬身半(0.4秒)の着差をつけてGI初制覇を果たした[13]。鞍上の川田は当レース初制覇で、朝日杯FS、ホープフルSと合わせ、史上3人目のJRA2歳G1完全制覇を達成[15]。レース後川田は「負けることはないなと思いました」「パドックからゲート裏まで集中力が増して、とてもいい雰囲気になったなと思っていました。何も言うことがないぐらい、いい走りでした」とコメントした。
3歳(2023年)
1月10日、JRA賞が発表された。リバティアイランドは、最優秀2歳牝馬の選出にて288票を獲得。満票での選出となった[16]。1月20日、馬主のサンデーレーシングがホームページで、2023年初戦として牝馬クラシック1冠目で4月9日に行われる桜花賞へ直行することを発表した[17]。
予定通り桜花賞へ出走。トライアルのチューリップ賞、フィリーズレビューをそれぞれ勝ったモズメイメイ、シングザットソングやチューリップ賞2着のコナコースト、同3着ペリファーニア、クイーンカップを勝ったハーパーなどが揃った中で、4ヶ月休養明けにもかかわらず、単勝1.6倍と4戦連続の1番人気に推された[18]。レースではゲートでやや後手を踏んだため中団後方からの競馬となり、4コーナーではまだ16番手付近に位置していたが、直線では大外から上がり3F32.9秒の末脚を繰り出し2着コナコースト、3着ペリファーニアらを差し切り勝利した。鞍上の川田は前年にもスターズオンアースで桜花賞を制しており、史上6人目となる連覇。管理する中内田充正はクラシック競走初制覇となった[19]。
同年春からJRAは、ジョッキーカメラを導入。桜花賞では、断然人気となったリバティアイランドに騎乗する川田のヘルメットに小型カメラが装着され、レース後、Youtubeにて収録された映像を公開した。ゴール後には「勝ったよ、ありがとう」や「お嬢さん、終わりです」などの声が収録されており、公開後3時間で再生数が20万回を突破、X(当時はtwitter)のトレンドに入るなど大きな反響を呼んだ[20]。
レース後は放牧に出され、4月29日に帰厩し、次走の優駿牝馬に向けて調整に入った。そして5月21日、予定通り出走。1.4倍という圧倒的な1番人気となった[21]。ゲート入りを落ち着いて進め、好スタート。後方に控える形となっていたこれまでのレースとは違い、前目からレースを運ぶ。1000m1分ちょうどのペースの中を6番手付近で追走。直線に向き、半ばで追い始めるとみるみる加速。先に抜け出したラヴェルを残り200mの標識を過ぎてからあっさり交わし去り、突き放して追い込むハーパー・ドゥーラの2着争いを尻目にゴール板を通過。後続には6馬身、1.0秒差がついていた。この着差は2012年、ジェンティルドンナが2着馬につけた5馬身差を超え、グレード制導入以降(1984年)における当レース史上最大の着差[注 1]となった。
GI3勝目は、2022年スターズオンアースに続き2年連続史上17頭目の牝馬クラシック2冠達成。最優秀2歳牝馬の優駿牝馬制覇は史上13頭目。騎乗した川田はジェンティルドンナ以来10年ぶり当レース2勝目。管理する中内田は2000m以上のGI初制覇となった。レース後川田は、「リズム良く走ることができました」「2冠馬までなってくれたことをホっとしているし、強い姿をお見せできて誇らしげに思った」と語った[22][23][24][25][26]。
5月25日、JRAが優駿牝馬のレーティングを発表。120ポンドという数値を獲得し、2012年ジェンティルドンナ、2017年ソウルスターリング、2018年アーモンドアイ、2022年スターズオンアースの115ポンドを抜いてレース史上トップとなった。26日にノーザンファームしがらきへ放牧に出された。秋は秋華賞にトライアルレースは用いずに直行し、そこで2020年デアリングタクト以来の牝馬三冠を目指すことも明言された[27]。
10月15日、予定通り秋華賞に出走。単勝オッズ1.1倍の圧倒的1番人気に推される[注 2]。好スタートを切ると、馬群の中段を追走。3コーナーから外めにつけて動き始め、4コーナーから早くも先頭に立つとそのまま他馬の追随を許さず優勝。2020年のデアリングタクト以来3年ぶり、史上7頭目となる牝馬三冠を達成し、GI4勝とした[28][29]。次走としてジャパンカップに出走すると表明した。また、選択肢の1つとして香港カップの予備登録も行ったことを同時に発表している[30]。
11月26日、予定通りジャパンカップに出走。イクイノックスに次ぐ2番人気に推される。落ち着いたスタートを切ると道中1番人気イクイノックスを見るように前から4、5番手の位置をキープ。そのまま最後の直線に入るとそこから脚を伸ばし、残り150m辺りで2番手まで上がるも、先に抜け出していたイクイノックスを捉えきれず、イクイノックスから4馬身差の2着に敗れた。GI連勝記録は4でストップ、GI初黒星となった[31]。レース後鞍上の川田は「全力で挑ませていただいて素晴らしい走りをしてくれた中で、やっぱり世界一の馬はさすが世界一だなという感じですごく強かったです。ただ、リバティアイランドにとっても素晴らしい経験になったことが今後に必ず生きてくると思います」とこの敗戦を前向きに捉えている[32]。また、同馬の調教師の中内田調教師はレース後、「出走させたことに悔いはありません。悲観する内容ではなかったです。展開に応じて、ちゃんと競馬をしてくれました。リバティも初めて全力で走ったんじゃないですか」と振り返っている[33]。今後について、同馬を所有するサンデーレーシングの吉田俊介代表は、「有馬記念は使わず、休養に入ると思います」と話した[34]。
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2023年桜花賞
-
2023年オークス
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オークス口取り式
-
2023年秋華賞
4歳(2024年)
次走(始動戦)としてドバイシーマクラシックに出走すると表明した[35]。後日招待状が届き、これを受諾。正式に出走することとなった[36]。鞍上は主戦騎手である川田将雅が引き続き務める。しかしドバイシーマクラシックは3着に敗れている。その後、右前種子骨靭帯炎を発症していることが判明し、春は全休となった。
8月9日、サンデーレーシング側はリバティアイランドの次走を天皇賞・秋と発表した。
10月27日、予定通りに天皇賞・秋に出走した。レースでは道中は好位の外めを追走して手応え良く直線を迎えたように見えたが、そこからズルズルと後退し13着に大敗した。鞍上の川田騎手は、「返し馬の雰囲気も良く、4コーナーまで抜群の手応えで回ってきたけど、これだけ動けなかったのは初めて」と語った[37]。
10月30日、サンデーレーシングは新たにジャパンカップを検討していることを発表したが、この時点で香港カップの予備登録も済ませており、11月6日にジャパンカップは回避して香港カップへ向かうと発表された[38]。
12月8日に行われた香港カップに予定通り出走した。レースでは道中後方4番手に控え、最後の直線では差し脚を伸ばしたが先に抜け出していたロマンチックウォリアーには及ばず2着となった[39]。レース後川田騎手は「とても具合が良く、競馬を迎えられました。彼女が気持ち良く走れるように、というのをメインに競馬を組み立て、強い勝ち馬を意識し、少し離れたところから捕まえに行くプランでした。ただ、並ぶところまで持っていけなかったのは、やはりこの香港の偉大なチャンピオンの1頭ですから、全力で挑めたことをありがたく思います。」と語った[40]。
競走成績
以下の内容は、JBISサーチ[41]およびnetkeiba.com[42]の情報に基づく。
競走日 |
競馬場 |
競走名 |
格 |
距離(馬場) |
頭 数 |
枠 番 |
馬 番 |
オッズ (人気) |
着順 |
タイム (上り3F) |
着差 |
騎手 |
斤量 [kg] |
1着馬(2着馬) |
馬体重 [kg]
|
2022.07.30
|
新潟
|
2歳新馬
|
|
芝1600m(良)
|
12
|
2
|
2
|
002.10(1人)
|
01着
|
R1:35.8(31.4)
|
-0.5
|
0川田将雅
|
54
|
(クルゼイロドスル)
|
464
|
0000.10.29
|
東京
|
アルテミスS
|
GIII
|
芝1600m(良)
|
10
|
3
|
3
|
001.40(1人)
|
02着
|
R1:33.9(33.3)
|
-0.1
|
0川田将雅
|
54
|
ラヴェル
|
468
|
0000.12.11
|
阪神
|
阪神JF
|
GI
|
芝1600m(良)
|
18
|
5
|
9
|
002.60(1人)
|
01着
|
R1:33.1(35.5)
|
-0.4
|
0川田将雅
|
54
|
(シンリョクカ)
|
462
|
2023.04.09
|
阪神
|
桜花賞
|
GI
|
芝1600m(良)
|
18
|
2
|
3
|
001.60(1人)
|
01着
|
R1:32.1(32.9)
|
-0.2
|
0川田将雅
|
55
|
(コナコースト)
|
466
|
0000.05.21
|
東京
|
優駿牝馬
|
GI
|
芝2400m(良)
|
18
|
3
|
5
|
001.40(1人)
|
01着
|
R2:23.1(34.0)
|
-1.0
|
0川田将雅
|
55
|
(ハーパー)
|
466
|
0000.10.15
|
京都
|
秋華賞
|
GI
|
芝2000m(稍)
|
18
|
3
|
6
|
001.10(1人)
|
01着
|
R2:01.1(33.6)
|
-0.1
|
0川田将雅
|
55
|
(マスクトディーヴァ)
|
476
|
0000.11.26
|
東京
|
ジャパンC
|
GI
|
芝2400m(良)
|
18
|
1
|
1
|
003.70(2人)
|
02着
|
R2:22.5(33.9)
|
-0.7
|
0川田将雅
|
54
|
イクイノックス
|
470
|
2024.03.30
|
メイダン
|
ドバイSC
|
G1
|
芝2410m(Gd)[注 3]
|
12
|
2
|
12
|
002.80(1人)
|
03着
|
R
|
-3馬身
|
0川田将雅
|
54.5
|
Rebel's Romance
|
計不
|
0000.10.27
|
東京
|
天皇賞(秋)
|
GI
|
芝2000m(良)
|
15
|
7
|
12
|
002.30(1人)
|
13着
|
R1:58.1(34.1)
|
-0.8
|
0川田将雅
|
56
|
ドウデュース
|
492
|
0000.12.08
|
沙田
|
香港カップ
|
GI
|
芝2000m(Gd)[注 4]
|
11
|
5
|
9
|
004.70(2人)
|
02着
|
|
-1 1/2
|
0川田将雅
|
55.5
|
Romantic Warrior
|
474
|
血統表
脚注
注釈
- ^ グレード制導入以前では、1947年のトキツカゼが大差での勝利を記録している。
- ^ 尚、GⅠ競走における単勝オッズ1.1倍の支持を受けた馬はグレード制導入以来タイキシャトル、ファインモーション、ディープインパクト、オジュウチョウサン、コントレイルに続く6頭目でタイキシャトルの3着以来11連勝目である(出典:netkeibaのツイート)。
- ^ 馬場状態の発表は「Good」。これをJRAは「良」と発表した[43]。馬場状態#芝馬場参照。
- ^ 馬場状態の発表は「Good」。これをJRAは「良」と発表した[44]。馬場状態#芝馬場参照。
出典
外部リンク
表彰・GI勝ち鞍 |
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阪神3歳ステークス |
1940年代 | |
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1950年代 | |
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1960年代 | |
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1970年代 | |
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1980年代 | |
---|
1990年代 | |
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阪神3歳牝馬ステークス |
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阪神ジュベナイルフィリーズ |
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1930年代 | |
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1940年代 | |
---|
1950年代 | |
---|
1960年代 | |
---|
1970年代 | |
---|
1980年代 | |
---|
1990年代 | |
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2000年代 | |
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2010年代 | |
---|
2020年代 | |
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1930年代 | |
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1940年代 | |
---|
1950年代 | |
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1960年代 | |
---|
1970年代 | |
---|
1980年代 | |
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1990年代 | |
---|
2000年代 | |
---|
2010年代 | |
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2020年代 | |
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(旧)最優秀3歳牝馬 |
1950年代 | |
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1960年代 | |
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1970年代 | |
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1980年代 | |
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1990年代 | |
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2000年代 | |
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最優秀2歳牝馬 |
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- 1 2001年より馬齢表記法が数え年から満年齢に移行
*2 1954-1971年は「啓衆社賞」、1972-1986年は「優駿賞」として実施 *3 1976年、1986年は2頭同時受賞
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(旧)最優秀4歳牝馬 |
1950年代 | |
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1960年代 | |
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1970年代 | |
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1980年代 | |
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1990年代 | |
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2000年代 | |
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最優秀3歳牝馬 |
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- 1 2001年より馬齢表記法が数え年から満年齢に移行
*2 1972年、1981年は2頭が同時受賞 *3 1954-1971年は「啓衆社賞」、1972-1986年は「優駿賞」として実施。
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