ポップ・ロック(Pop rock)とは、ポップ・ミュージックとロックを融合したジャンルを指す。バブルガム・ポップ、ソフト・ロック、産業ロック、パワー・ポップなどと親和性が高い。
概要・定義
『American Popular Music』という教本では、ポップ・ロックを「エルトン・ジョン、ポール・マッカートニー、ロッド・スチュワート、ピーター・フランプトンといったアーティストたちによって表現されたロック」と定義している[3]。これに対して、音楽評論家のジョージ・スタロスティンは、「主にギターを基礎にしたキャッチーでポップな歌を用いるポップ・ミュージックのサブジャンル」と定義している。スタロスティンは、伝統的にパワー・ポップと呼ばれてきたもののほとんどがポップ・ロックのサブジャンルに含まれるだろうと言い、リリカルな内容のポップ・ロックについては「普通音楽にとって二次的なもの」と論じた[4]。
アメリカのポップスは、ペリー・コモのようなクルーナー系の甘い声のポピュラー歌手が象徴的な存在だが、抽象的なロックはロックンロールのような、アフリカ系アメリカ人音楽に影響を受けたジャンルにルーツを持っている。
オースランダーならびにサイモン・フリス(Simon Frith)、グロスバーグといった数人の研究家たちは、ポップ・ミュージックは「本物でない」「シニカル」「俗受けする」「エンタテインメントのありきたりな形式」と言われることが多いが、対照的にロックは、歌手やバンドによる曲作りを重要視した「本物」「真摯」「インストゥルメンタルの名人芸」そして「聴衆とのリアルなつながり」 と言われている、と主張した[5]。
サイモン・フリスによる1950年代から1980年代までのポピュラー・ミュージックの歴史分析に、B・J・ムーア=ギルバートが異議を唱えた。ムーア=ギルバートは、フリス(や他の研究家たち)は、1960年代にフォーク志向の音楽が発達した時はそれを「フォーク・ロック」と呼び、1970年代のポップの要素を吹き込まれたスタイルを「ポップ・ロック」と呼んだように、新しいジャンルが出てくるたびにそれを「〜ロック」と名付けることで、ポピュラー・ミュージックにおけるロックの役割を強調しすぎている。こうしたアプローチはロックを不公平に頂点に置き、他のどんな影響もロックの中心核に付け足したものにしてしまう、と批判した[6]。
主なミュージシャン
前史
1960年代
1970年代前半
1970年代後半
このうちビージーズについて権威ある事典は、1970年代後期のディスコ時代を体現したイギリス=オーストラリアのポップ・ロック・バンドと定義している[10]。アリゾナ大学のサイトはコレクション2からコレクション6で何十曲も羅列しているだけで、ドナ・サマーがポップ・ロックであるとは、立証していない[11] 。
1980年代
1980年、ディスコ・ブームの終焉に伴って、低迷した音楽産業が求めたのは、セールスを伸ばしてくれる商業主義的ロックであった。この70年代後半以降、アダルト・コンテンポラリーが人気だった。音楽批評家マイケル・グロスはそれを「儲け主義の綿菓子」と呼んだ。クリストファー・クロスの『セイリング』などもポップ・ロックのジャンルに加えることが可能である。『オール・アウト・オブ・ラブ』といったエア・サプライの「甘ったるいポップ・ロック」のヒットは、この時代の「チャートでヒットするための公式を最も良く例証した」[12]。
1990年代
2000年以降
脚注
注釈
- ^ 初期のシングル「抱きしめたい」からサイケ・アルバムの「サージェント・ペパーズ」、解散年の「レット・イット・ビー」まで変化と成長を続けた。
- ^ 「ブラック&ホワイト」「オールド・ファッションド・ラブ・ソング」などヒット曲多数。
- ^ 「ユア・ソング」などヒット曲多数。
- ^ 「マサチューセッツ」など、かつてはソフトロックのグループ。後にディスコに転向した。
- ^ 71年に「孤独の夜明け」が日本で話題になった。
- ^ 日本で71年に「そよ風の二人」が話題になった。
- ^ ポップ・ロックでは「火の玉ロック」をカバーした。
- ^ 「ラヴィン・タッチン・スクイージン」がアメリカでヒット。
- ^ 80年代には「ロザーナ」「アフリカ」などがヒットした産業ロック・バンド。
- ^ 「モア・ザン・ワーズ」が全米チャートで大ヒットし、年間チャートでも上位に入った。
- ^ 92年に、テイク・ザットのメンバーとしてデビューした。
出典
書籍/ウェブサイト
- Birrer, F.A.J. "Definitions and research orientation: do we need a definition for popular music?" in D. Horn (ed). Popular Music Perspectives, 1985. Gothenburg. pg 99-105.
- Chambers ,I. Urban Rhythms, Pop Music and Popular Culture. 1985:OUP.
- Fiske, J.Understanding Popular Culture, - 1989 - Routledge
- Frith, S. The Sociology of Rock - 1978 - Constable
- Frith, S. Sound Effects: Youth, Leisure and the Politics of Rock'n'Roll - 1983 - Constable
- Hamm, C. Yesterdays: Popular Song in America - 1979 - New York
- Harker, D. One For the Money: Politics and Popular Song - 1980 - Hutchinson
- Harron, M. "Pop as Commodity," cited in S Frith - Facing The Music: Essays on Pop, Rock and Culture 1988, Mandarin. pg 173-220
- Hill, D. Designer Boys and Material Girls: Manufacturing the '80's Pop Dream. 1986 - Blandford Press
- Middleton, R. Studying Popular Music. - 1990 - OUP
- Moore, A.F. Rock: The Primary Text, - 1993 - OUP
- Shuker, R. Understanding Popular Music - 1994 - Routledge