ブルックリン・ブルワリー (Brooklyn Brewery) は、アメリカ合衆国 ニューヨーク 市ブルックリン区 のブルワリー (ビール 醸造所)。1988年 に、スティーヴ・ヒンディ (Steve Hindy) とトム・ポッター (英語版 ) が創業した。
歴史
ヒンディは、6年間にわたって、サウジアラビア やクウェート などの中東 諸国に滞在していた間に、ビールの醸造法を学んだ。1984年 に出身地のブルックリン区 に戻ったヒンディは、同じ建物の階下に住んでいたパーク・スロープ (英語版 ) 出身のポッターとともに、それぞれの仕事を辞めて、このブルワリー を創業した[ 2] 。二人は、「アイ・ラブ・ニューヨーク 」キャンペーンのロゴ の創案で知られるグラフィックデザイナー のミルトン・グレイザ- (英語版 ) を雇い、会社のロゴとアイデンティティを創らせた[ 3] [ 4] 。グレイザ-は報酬として、会社の株式を受け取った[ 5] 。
創業当初、すべてのビールはマット・ブルーイング・カンパニー (英語版 ) で契約生産され、創業者の二人は自前の販売会社を興し、自らニューヨーう周辺のバー や小売店に商品を運んで、市場を開拓した[ 6] 。1996年 、元はマッツァー 工場だったブルックリン区ウィリアムズバーグ を手に入れ、これを改装して機能的なブルワリー とした[ 2] [ 7] 。
ブルワリーは、このニューヨーク市内の施設の生産能力を高めようとしたが、初めのうちはウィリアムズバーグの生産能力に限界があって需要に追いつかず、瓶詰め工程の装置も欠いており、また契約生産の方がコスト面で有利であったため、ブルックリン・ラガー (Brooklyn Lager) と瓶ビールの全量を含む生産の大部分は、いわゆるアップステート・ニューヨーク であるニューヨーク州 中央部のユーティカ における契約生産に委ねられていた。その後、ブルックリンにおける施設拡充が取り組まれたが、地区内に適切な場所を見いだすことは難しかった[ 8] 。しかし、やがて景気後退が生じ、2009年 には650万ドルを投じて、ウィリアムズバーグにおいてブルワリーの規模を拡大することができた[ 9] 。
1994年 以降は、ギャレット・オリヴァー (英語版 ) が、ブルックリン・ブルワリーの醸造主任 (brewmaster) を務めている。オリヴァーは、1989年 に徒弟 としてマンハッタン・ブルーイング・カンパニー・オブ・ニューヨーク (英語版 ) に入って修業し、1993年 にはその醸造主任になった。2003年 に、オリヴァーは著書『The Brewmaster's Table: Discovering the Pleasures of Real Beer with Real Food 』を出版している。彼はまた、グレート・アメリカン・ビア・フェスティバル (英語版 ) の審査員を11年間にわたって務めた[ 10] 。
2004年 以降、11年間にわたって販売数量が年平均18%もの急成長を遂げ、輸出量も増えてクラフトビール としては屈指の規模となった[ 11] 。
2016年 、ウィリアムズバーグの施設の地主であるヨール・ゴールドマン (英語版 ) が、地価の高騰に見合った賃料を設定できないことを理由に、借地契約の更新を拒んで土地を売却するとしたため、ブルワリーは、ウィリアムズバーグで行なっていた特別なビールの生産を移転せざるを得ないと公表した[ 12] 。ブルワリーは、ユーティカにある主力工場を移転させ、7000万ドルを投じて20万平方フィート(2ha弱)の新たな施設をスタテンアイランド に新設すると発表した[ 12] 。
2016年10月、日本 の麒麟麦酒 (キリンビール)が資本提携し、ブルックリン・ブルワリーの 24.5%を所有する株主となり、両者が協力して日本やブラジル でブルックリン・ブランドの商品の販売に当たることが発表された[ 11] [ 13] 。その後2017年2月に同社との合弁会社「ブルックリンブルワリー・ジャパン」を設立。
Beer School
ヒンディとポッターは、2006年 に、共著書『Beer School: Bottling Success At The Brooklyn Brewery 』をジョン・ワイリー・アンド・サンズ から出版した[ 6] 。この本は、起業 とビール 醸造 の両方のガイドであり、二人がブルックリン・ブルワリーを作り上げてきた回想録 ともなっている。『Beer School 』は、チームの作り方から、ゲリラ・マーケティング 、パブリシティ などにも言及しており、ブルワリーの歴史に沿って、個々のテーマを中心に各章が綴られている。この本は、ヒンディとポッターの視点から語られており、多くの批評家たちから好評を得た[ 14] [ 15] 。
栄誉
『エスクァイア 』誌は2012年 2月号の記事で、ブルックリン・ラガー16オンスを「今飲むべき最高の缶ビール (Best Canned Beers to Drink Now)」として取り上げた[ 16] 。
ビール
年間を通して生産する商品
Brooklyn Lager - 5.2% アメリカン・アンバー・ラガー (American Amber Lager)
Brooklyn American Ale - 4.5% アメリカン・ペール・エール (American Pale Ale)
Brooklyn Brown Ale - 5.6% アメリカン・ブラウン・エール (American Brown Ale)
East India Pale Ale - 6.9% インディア・ペール・エール (India Pale Ale)
Brooklyn Pilsner - 5.1% ドイツ式ピルスナー (German-Style Pilsner)
Brooklyn Defender IPA - 6.7% レッドIPA (Red IPA)
Hecla Iron Ale - 3.4% ダーク・エール (Dark Ale) - 海外向けのみ
Brooklyn Blast! - 8.4% ダブルIPA (Double IPA)
Brooklyn Greenmarket Wheat - 5% ヴァイス (Weisse Brewed) - ニューヨーク州 産の小麦 、麦芽 、ホップ で製造
Scorcher IPA - 4.5% セッションIPA (Session IPA)
Brooklyn Brewery 1/2 Ale - 3.4% ホッピー・セッション・セゾン (Hoppy Session Saison)
Local 1 - 9% 瓶入り再発酵ゴールド・エール (bottle refermentation gold ale)
Local 2 - 9% 瓶入り再発酵ダーク・アベイ・エール (bottle refermentation Dark Abbey Ale)
Sorachi Ace - 7.6% ファームハウス・セゾン (Farmhouse Saison) - イギリス の「Brewer's Gold」、日本 の「Beikei No. 2」、チェコ の「Saaz」の3種類のホップをブレンドして使用
季節商品
Black Chocolate Stout
Brooklyn Winter Ale
Monster Ale
Brooklyn Dry Irish Stout
Brooklyn Summer Ale
Brooklyn Oktoberfest
Post Road Pumpkin Ale
Brooklyn Black Ops
脚注
^ Ottaway Brothers Assume Leadership Roles at Brooklyn Brewery
^ a b Williams, Lena (1996年6月2日). “Could the Dodgers Follow? Brewing Returns to Brooklyn” . The New York Times . http://www.nytimes.com/1996/06/02/nyregion/neighborhood-report-williamsburg-could-dodgers-follow-brewing-returns-brooklyn.html 2010年4月24日 閲覧。
^ Foltz, Kim (1990年11月13日). “Lotas Minard Swaps Work for Equity Stake” . The New York Times . http://www.nytimes.com/1990/11/13/business/the-media-business-advertising-addenda-lotas-minard-swaps-work-for-equity-stake.html 2010年1月22日 閲覧。
^ “Case Studies: Brooklyn Brewery ”. Milton Glaser Inc. . 2011年10月4日時点のオリジナル よりアーカイブ。2011年10月1日 閲覧。
^ Acitelli, Tom (2013). The Audacity of Hops: The History of America's Craft Beer Revolution . Chicago: Chicago Review Press . p. 158. ISBN 9781613743881 . OCLC 828193572
^ a b Hindy, Steve; Potter, Tom (2005). Beer School: Bottling Success at the Brooklyn Brewery . Hoboken: John Wiley & Sons, Inc.. ISBN 0-471-73512-4
^ Furman, Phyllis (2007年4月16日). “Brooklyn's King of Beers” . Daily News (New York). http://www.nydailynews.com/money/2007/04/16/2007-04-16_brooklyns_king_of_beers_-2.html 2010年4月24日 閲覧。
^ McGeehan, Patrick (2008年7月20日). “Double Edge to Brooklyn's Success” . The New York Times . http://www.nytimes.com/2008/07/20/nyregion/20brewery.html 2010年4月24日 閲覧。
^ McGeehan, Patrick (2009年11月1日). “Soft Real Estate Market Is a Key Ingredient at Brooklyn Brewery” . The New York Times . http://www.nytimes.com/2009/11/02/nyregion/02brewery.html 2010年4月24日 閲覧。
^ Smagalski, Carolyn. “Garrett Oliver - Brooklyn Brewmaster of Beer and Food ”. BellaOnline.com . 2010年1月22日 閲覧。
^ a b 中山 一貴 (2016年10月22日). “キリンが「クラフトビール」に食らいつく理由 ニューヨーク発ビールは若者の心をつかむか ”. 東洋経済 online. 2017年2月12日 閲覧。
^ a b The Real Deal: "Brooklyn Brewery looking for 60K sf for brewing operation - The well-known beer brand is checking out Navy Yard, Industry City for space" February 23, 2016
^ “ブルックリン・ブルワリー社との資本業務提携について ” (PDF). キリンホールディングス (2016年10月12日). 2017年2月12日 閲覧。
^ “Nonfiction Review: Beer School ”. Publishers Weekly. 2012年11月9日 閲覧。
^ “Book Report – Beer School: Bottling Success at the Brooklyn Brewery ”. Seattle PI. 2012年11月9日 閲覧。
^ “Best Canned Beers to Drink Now ”. Esquire magazine via Yahoo news website (2012年2月22日). 2012年2月22日 閲覧。
参考文献
『クラフトビール革命 地域を変えたアメリカの小さな地ビール起業』発売日:2015年 7月3日 出版社:DU BOOKS 著者:スティーブ・ヒンディ(ブルックリン・ブルーワリー創業者) 翻訳:和田侑子 ISBN 978-4-907583-54-5
関連項目
外部リンク
座標 : 北緯40度43分18秒 西経73度57分28秒 / 北緯40.72167度 西経73.95778度 / 40.72167; -73.95778