『クラッシャージョウ』は、高千穂遙による日本のSF小説。イラストは安彦良和が担当している。ソノラマ文庫→ハヤカワ文庫(朝日ソノラマ→早川書房)より1977年11月から刊行されている。第11回星雲賞日本短編部門賞受賞作品[2]。1970 - 1980年代の日本におけるスペースオペラの草分け的存在である[4]。
1983年に劇場用アニメーションが公開され、1989年にはOVAが制作された。またコミカライズも何度も行われている[5]。
舞台は22世紀、2160年代の宇宙空間。西暦2111年、人類はワープ機関を完成させる。以後、宇宙開発は一気に加速、他の恒星系への進出が進む。しかしそれには、宇宙航路の整備、移住先の惑星の環境調整など、難題が山積していた。西暦2120年頃、そうした荒事を専門に請負う者たちが出現を始める。それがクラッシャーと呼ばれる人々だった。彼らは膨大な数の惑星を居住可能なものに改造し、人類の銀河開発の尖兵となった。西暦2129年の惑星トプロスの独立宣言を皮切りに、惑星国家の時代が到来。西暦2134年、独自の宇宙軍を保有する銀河連合設立。西暦2143年、地球連邦はそれまで惑星単位だった国家の規模を太陽系単位に改め、あらたに太陽系国家ソルとして生まれ変わった。これをきっかけに、人類の歴史は1つの太陽系を1つの政治国家とする太陽系国家の時代へと変わっていくと同時に、太陽系単位の改造は急ピッチで進んだ。それから20年近く経過し、8000の太陽系国家が連合に加盟し、銀河は安定と繁栄の頂点を迎える。しかし、その影では非合法組織や宇宙海賊もその勢力を延ばしていた。惑星改造を主な仕事としていたクラッシャーは、そうした荒くれ者とのもめ事も引き受けるようになっていく[4]。
「クラッシャー」とは、宇宙時代に登場した「何でも屋」的な宇宙生活者のことである。もともとは惑星開発に従事し、テラフォーミングや航路の障害物の破壊を行なっていたため、「壊し屋=クラッシャー」と呼ばれるようになった。護衛・危険物の輸送・人命救助、そのほか、犯罪以外なら報酬次第で何でも引き受けるため、人によってはただのならず者と見なすこともある。しかし、実際は非合法なことはやらず、自分の仕事を完璧にやり遂げるために様々な技術や専門知識を身につけた宇宙のエリート集団である。
シンボルマークは「流星マーク」と呼ばれる、3本の光条を引いて飛ぶ山吹色の流星。チームシンボルはこれにリーダーのイニシャルの飾り文字を組み合わせる。チームのメンバーは「クラッシュジャケット」と呼ばれる共通のデザインの制服を着用している。このジャケットはメンバーごとに上衣の色が異なり、個人識別に使用される[注釈 1]。また防弾耐熱で気密性も高いことから簡易宇宙服や潜水服にもなり、様々な隠し武器も装備されている。
主人公ジョウとその仲間達はそのクラッシャーのチームのひとつとして様々な事件に挑む。
後述するドレーク、エギルやダーナ以外にも、劇中には幾つかのクラッシャーのチームが登場する。映画版とそのノベライズ版『虹色の地獄』には惑星改造などの大技を得意とするクラッシャーケビン[注釈 2]が、『虹色の地獄』には危険物輸送のエキスパートであるクラッシャーガレアが登場する。
声はアニメ版。
この項目では、主人公達との関連人物、高千穂の他作品からの登場人物を挙げる。
「クラッシャージョウ」は、人類が居住可能な惑星へと進出した"宇宙時代"を舞台に、宇宙の何でも屋・クラッシャーのジョウの活躍を描いたスペースオペラで、1977年に第1巻が朝日ソノラマ「ソノラマ文庫」より発売された[5]。以降、本編第10巻まではソノラマ文庫より発刊されていたが、第11巻以降は早川書房「ハヤカワ文庫」で続刊中。
2000年から2003年にかけては、ソノラマ文庫より当時既刊だった第1-8巻と別巻1・2巻までを改訂して発売。本文の修正を行い、安彦良和によって、第1 - 7巻目の表紙カバーイラストが以前と同じ構図で、別巻1巻は新たな構図で描き直された。なお、第8巻と別巻2巻は安彦自身がイラストに不満が無かったため、旧版と同一である。
2007年の朝日ソノラマ解散により、出版元をハヤカワ文庫に移行。またそれにともない、ソノラマ文庫で発刊されていた1巻から10巻までの表紙カバーイラストを一新し、新たに口絵を挿入して刊行(挿絵は朝日ソノラマ版と同一)。また別巻1(「映画版」)は、ソノラマ版では挿絵代わりに映画のシーンが挿入されていたが、ハヤカワ版ではない(口絵は挿入されている)。
カセットブックは、小説の内容をもとにしたシナリオを声優がラジオドラマ形式で演じたもの。
劇場版『クラッシャージョウ』は、1983年3月12日に松竹富士系にて公開された[5]。原作のイラストも手掛ける安彦良和の初監督作品であり、監督・キャラクターデザイン・脚本・絵コンテ・作画監督の5役を担当[4]。
バードやコワルスキーの設定など、原作とは一部設定が異なる。高千穂は、「映画版は小説をもとに、映画用のストーリーをあらたに構成した」「同じチームを主人公にした別の世界の物語と思って読んでいただけるとよいかもしれない」と映画版のノベライズ版『虹色の地獄』のあとがきでコメントしている。メカニックデザインもスタジオぬえの河森正治が映画用にリファイン・新設定を行った[注釈 15]。これらのプラモデルがタカラ(現タカラトミー)と日東科学教材から発売された。巡洋艦コルドバが宇宙で回頭するシーンの作画は、デザインの細かさに、作画スタッフだった佐藤元が泣かされたという。
物語の本筋には無関係だが、入国審査の対象者やディスコの客、海賊などスタッフが係わったアニメのパロディーや関係者をモデルにしたモブキャラなど、「業界ネタのお遊び」がちりばめられているのも特徴である。衣装・生き物など有名漫画家達が提供したスペシャルデザインも話題作りに一役買った[注釈 16][12]。
劇中でジョウらがダーティペアが登場する映画「ダーティペアの大冒険」を見る場面がある[13]。この劇中映画の声優は後年のアニメとは異なり、2人のモデルとなった元スタジオぬえの女性スタッフが演じている[14]。
安彦良和の初監督作品である同作は、企画から2年がかりで製作された[15]。
通常の劇場アニメはビスタサイズに対応した動画用紙を使うが、当時のサンライズの場合は通常の動画用紙の上下を切った「貧乏ビスタ」を使っていた[16]。本作も同様で、オリジナル・フィルムはまず地上波アナログTVの横縦比4:3に近いスタンダード・サイズ(横縦比が1.37:1または1.33:1)で制作され、劇場公開では上下部分をクロップ加工することで横長であるビスタ・サイズ(1.66:1程度)で上映された。なお、2013年7月に日本映画専門チャンネルHDにて放送された際には、オリジナル・フィルムに、縦黒帯を左右に付加加工するピラーボックス処理を施すことで、画質がほとんど維持されたまま16:9化された。
安彦を中心に設立された作画スタジオ・九月社が本作の作画の中核を担った。九月社には安彦の信頼が厚いアニメーターが籍を置いて作画に当たり、実に全体の半分を手がけたとのことである[17]。なお、九月社の設立は劇場用映画『機動戦士ガンダムII 哀・戦士』の作画作業に当たっていた1981年で、『巨神ゴーグ』の製作終了まで存在していた[17]。
九月社で作業をするアニメーターにはそれぞれ担当キャラクターが割り当てられ、そのキャラクターが活躍するシーンでは担当アニメーターが原画をメインで手がけるというスタイルが取られた。例えばヒロイン・アルフィンが画面を占めるシーンの原画は佐藤元が主に手がけており、佐藤は、アルフィンがキーボードを叩くシーンでは女性らしい手や指の動きを心がけて作画したことを語っている[18]。また部分的にCGも導入されており、この際使用されたコンピュータは、佐藤の私物の日立ベーシックマスターレベル3[18]。
同時期に『幻魔大戦』『宇宙戦艦ヤマト 完結編』(1週遅れて3月19日公開)と公開が重なり、「1983年春のアニメ映画興行戦争」と呼ばれた。この3作品で興行成績は『幻魔大戦』がトップで、次いで『宇宙戦艦ヤマト 完結編』となり、本作は3位だった。本作の配給収入は6.6億円[19]。アニメファンの支持を集め、『アニメージュ』が主催する第6回アニメグランプリ大賞を獲得した。なお、同誌では、公開まで佐藤元や吉永尚之ら所属スタッフの描く漫画やイラスト、そしてコメントで九月社での出来事や制作エピソードを毎号紹介していた。
サウンドトラック『クラッシャージョウ』(JBX-25012)はオリコンLPチャートで最高9位[20]を記録した。
原作者高千穂遙の意向により、完成前に急逝した当時の日本サンライズ前社長の岸本吉功も制作者としてクレジットされている。
公開から1年後の1984年4月3日(火曜) 19:30 - 21:48(日本標準時)には、テレビ朝日系列で『春のアニメスペシャル』として放送された[21]。
キャスティングについて、高千穂遥は映像化に際しての原作者の意志が尊重されるべきという考えを持っており、キャストは彼のイメージを重視して決定されている。小原乃梨子、納谷悟朗は『クラッシャージョウ大研究』で高千穂から指名があったとコメントしている。竹村拓は当時すでに役者を廃業していたが、以前所属していた劇団薔薇座で作成したデモテープが選考に紛れ込んでおり、それを聴いた高千穂がジョウ役に抜擢した。このことが、竹村が演技の世界に復帰するきっかけとなった。
1989年2月5日にバップから発売。
1989年6月5日にバップから発売。第7回『日本アニメ大賞』の「オリジナルビデオアニメ最優秀作品賞」受賞。
1979年に「宿命のパンドーラ二世」「復讐鬼の葬送」の2作が『マンガ少年』に掲載され、1982年に『マンガ少年』の後継誌『デュオ』別冊として出版された。漫画家細野不二彦のデビュー作で、当時所属していたスタジオぬえの社長だった高千穂の指名で描いたものである。
1983年に書き下ろし「セント・ジェルミの伝説」と合わせて朝日ソノラマ・サンコミックスで単行本化された。1993年に新版刊行。
1999年に「セント・ジェルミの伝説」のエピソードをメインに漫画のコマに音響・映像処理をし、声当てをした「まんがビデオ」が発売された。収録時間は80分。
声の出演はジョウ:林延年(現・神奈延年)、アルフィン:山崎和佳奈、タロス:梁田清之、リッキー:竹内順子。
2001年に、上記と『マンガ少年』掲載話「スターダスト・ストーリー」を収めたメディアファクトリー文庫版が出された。内容の加筆・修正・削除をしたため、新旧の画風が入り混じる内容になっている。
このま和歩による『クラッシャージョウ』は、講談社『コミックボンボン』に1982年12月号から1983年4月号まで連載された(全5話)。ストーリーはオリジナルである。単行本は発売されていない。
針井佑(作画、安彦良和は「キャラクター原案」)による 『クラッシャージョウ REBIRTH』[3]。『イブニング』(講談社)に2017年19号から不定期連載されている[3]。単行本第1巻の帯には安彦良和によるコメントが掲載されている[26]。
多摩豊によってデザインされ、1983年にツクダホビーよりボックス版にて発売された。
PC9801VX/UX以降およびエプソン486用ソフトウエア『歓楽惑星の陰謀』がファミリーソフトより発売された。
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