アメリカ陸軍 (アメリカりくぐん、英語 : United States Army , USA , U.S. Army )は、アメリカ合衆国 の軍隊であるアメリカ軍 の6つの軍種 の1つ。アメリカ合衆国に8個ある武官組織 の1つ。
概要
陸軍 組織として、陸上兵力を受け持っており、アメリカ軍内では、最大規模を有する。2020年度の常備軍(USA)の兵力は480,893人、陸軍州兵(ARNG)は336,129人、陸軍予備役(USAR)は188,703人であり、総兵力は1,005,725人とされている。軍政組織は、国防総省内の陸軍省 (Department of the Army)の管轄となっている。陸軍省は文民である陸軍長官 (Secretary of the Army)が指揮する。陸軍内の最高位の軍人は、アメリカ陸軍参謀総長 (Chief of Staff of the United States Army)であり、統合参謀本部 のメンバーともなっている。
アメリカ陸軍の起源は、アメリカ独立戦争 (1775年 - 1783年)以前に組織された大陸軍 にある。大陸軍は1783年に解散したが、小規模ながら常備兵力が設置され、1796年にアメリカ陸軍の名称となった。陸軍は、自らを大陸軍の後継と考えているため、発足年は1775年としている。
合衆国法典 第10編第7062条 10 U.S.C. § 7062 によれば、アメリカ陸軍の任務は、アメリカ合衆国とその関連領域の平和と安全のために防衛し、国家政策を支援し、国家目標の遂行に努め、アメリカ合衆国に対する侵略行為を打倒することにある。
歴史
アメリカ陸軍はアメリカ独立戦争 のためにアメリカ合衆国 建国の前の1775年 6月14日 に大陸会議 の決議によって、イギリス軍 に対抗するため組織された大陸軍 を起源としている。大陸軍はアメリカ13植民地 の統一された命令系統を持ち、独立戦争の全期間を通じてジョージ・ワシントン がその総司令官を務めた。大陸軍の行動ははじめ武器、食料の不足などで苦戦したが、各植民地の民兵隊やその管制下に残されていた部隊の支援とさらにヨーロッパ諸国からも支援も得て、独立戦争に勝利しパリ講和条約 によって13植民地はアメリカ合衆国として正式に独立を認められた。パリ講和条約締結後ウエストポイント と幾つかの辺境の前哨基地に小さな地域軍隊が残されたのみで、1783年 11月3日 ほとんどの大陸軍部隊は解散されたが、1784年 6月3日 の大陸会議の決議によってアメリカ陸軍 が結成された。
紋章にあるモットー は“This we'll defend ”(我等これを護る)。
構成
アメリカ陸軍は下記3兵種から構成される。アメリカ陸軍の兵員は“Soldier ”と呼ばれる[要出典 ] 。
上記3つの要素は、全て第一次世界大戦からアメリカが関わった全戦争に参加した。予備軍および州兵の使用権はベトナム戦争 の後に強められた。予備軍および州兵の部隊は、湾岸戦争 (コソボ紛争 における平和維持活動)および2003年 のイラク戦争 に参加した。2017年4月現在約46万人、予備役 約53万人が所属[要出典 ] 。
編制
アメリカ合衆国憲法 の規定により、アメリカ陸軍の編成権及び統轄及び規律に関する規則を定める権限は、アメリカ合衆国議会 にある。アメリカ陸軍は大まかに以下の編制からなる。コマンド もよく用いられるが、さまざまな規模であるため特定の階梯にはない。
総軍 - 陸軍総軍 (Army Forces Command)が存在する。主要司令部の一つ。 緊急即応・戦略予備部隊と陸軍予備軍・州兵部隊の管理を任務とするフォース・プロバイダーである。
軍集団 (Army Group) - 必要に応じて編成する。
軍 (Army) - 軍と訳す。軍政上は方面部隊を維持管理する。指揮官は中将 。
軍団 (Corps) - 通常2個師団以上からなる。現在第1軍団、第3軍団、第18空挺軍団、化学軍団(化学隊)(英語版) などの軍団がある。戦域 と任務が指定されていて指揮官は中将。
師団 (Division) - 現在、アメリカ軍の師団は通常3個以上の旅団戦闘団と、航空旅団、火力旅団などの支援部隊から成る。指揮官は少将 。
旅団 (Brigade)、群 (group) - 21世紀の米軍再編 では旅団規模での独立行動を可能とし、小規模(旅団単独)から中規模(数個旅団編成・師団への統合も含む)までの武力衝突への対応へ取り回しの効く実戦部隊が目指された。同再編では重旅団戦闘団、ストライカー旅団戦闘団、歩兵旅団戦闘団などの旅団戦闘団 が編成された。指揮官は大佐 、まれに准将 。旅団も群も通常複数の大隊からなる。
連隊 (Regiment)- いくつかの例外を除いて現在使われていない単位である。また旅団戦闘団と同一の編制であるが伝統上の理由から騎兵連隊の名称を用いている部隊がある。
大隊 (Battalion, Squadron) - 歩兵 、砲兵 および機甲部隊 の場合 Battalion、騎兵部隊の場合 Squadron の名称で大隊は編成される。大隊クラスの部隊は中佐 が指揮をとる。
中隊 (Company, Battery, Troop) - 大部分の兵科 では Company、砲兵の場合は Battery、騎兵部隊の場合は Troop の名称で中隊は編成される。中隊クラスの部隊は通常、大尉 が指揮をとる。
小隊 (Platoon) - 通常、中尉 あるいは少尉 が指揮をとる。
分隊 (Squad)、班(Section) - 分隊以下はアメリカ陸軍の分隊編制 も参照すること。
操作班(Crew)、射撃班(Fire Team)
戦闘部隊と戦闘支援部隊
軍は任務によって編制される。
組織
司令部
アメリカ合衆国陸軍省本部 (HQDA)
指揮・統制
メリーランド州兵の陸軍第175歩兵連隊 第1大隊の兵士。ニュージャージー州フォートディックスの模擬都市バラドで陸軍予備役訓練評価プログラムの一環として行われる都市警戒及び捜索演習を実施中。
アメリカ陸軍は、現役 、陸軍州兵 、陸軍予備役 の3つの要素から構成されている。陸軍州兵と陸軍予備役は、いずれも予備役であり、主に月に一度訓練するパートタイムの兵士(戦闘集会 や部隊訓練集会(unit training assemblies、UTAs))で構成され、その他に年に一度、2~3週間の年次訓練を実施している。現役と陸軍予備役は合衆国法典第10編 で編制され、陸軍州兵は合衆国法典第32編 で編制されている。陸軍州兵は、アメリカ陸軍の一部として組織され、訓練され、装備を保有しているが、連邦軍に編入されていない時は州知事や州副知事の指揮下にある。しかしコロンビア特別区陸軍州兵 は例外として、連邦軍に編入されていなくても、ワシントンD.C.市長 ではなく、大統領 の指揮下にある。陸軍州兵の一部又は全部は、大統領令によって、州知事の指揮下から連邦軍に編入することができる。
イラク のラマーディー で徒歩パトロール中に壁際で警戒する第6歩兵連隊 の兵士
アメリカ陸軍は、国防長官 の権限、指示、管理の下で、陸軍の全ての業務を遂行するための法定権限を有する陸軍長官 の統制下にある。陸軍の最高位の軍人はアメリカ陸軍参謀総長 であり、陸軍長官の主たる軍事顧問であり執行代理人となる。またアメリカ統合参謀本部 のメンバーとして、他の軍種 の参謀総長等と共に統合参謀本部議長 及び統合参謀本部副議長 の指導の下、運用上の軍事問題について大統領 、国防長官 、国家安全保障会議 の軍事顧問となる。1986年のゴールドウォーター=ニコルズ法 によって、アメリカ軍 の作戦管理権は、大統領から国防長官を通じて、機能別または地域別に組織された統合軍 の司令官が実施することとされたため、各省の長官(陸軍長官 、海軍長官 、空軍長官 )及び各軍種の参謀総長等は、組織管理権に限定され、それぞれ軍の部隊を整理、訓練、装備する責任のみを負う。陸軍は、国防長官の指示に従って、統合軍の任務に従事させるために部隊を訓練し、提供する。
乗馬分遣隊と模擬突撃展示を実施する第1騎兵師団 の戦闘航空旅団
2013年現在、陸軍は6個の地域的統合軍(CCMD)に対応する、6個の地理的司令部に整理されている。
アフガニスタン のファラにあるグリスタン地区の野原をパトロールしている第3特殊部隊グループ 所属の陸軍兵士
陸軍は、その基本部隊を師団 から旅団 に変更した。師団の組織は維持されているが、師団司令部は特定の旅団だけではなく、全ての旅団を指揮することができる。この計画の核心は、各旅団がモジュール式(同じタイプの旅団は全て同じ組織である。)であり、従って、どの師団がどの旅団を指揮しても問題なく運用可能となる。2013年時点で旅団は、次の3つのタイプの旅団戦闘団 が定義されてる。
機甲旅団戦闘団、2014年時点で4,743名の兵力を有する。
ストライカー旅団戦闘団、2014年時点で4,500名の兵力を有する。
歩兵旅団戦闘団、2014年時点で4,413名の兵力を有する。
更に、戦闘支援と後方支援のためのモジュラー旅団が編制されている。戦闘支援旅団には、重航空部隊と軽航空部隊から編制される戦闘航空旅団、砲兵旅団(現在は師団砲兵隊に改編)、戦場監視旅団 が組織されている、後方支援 旅団には維持旅団が該当し、いくつかの種類が存在し、軍隊の標準的な後方支援を担当している。
戦闘部隊
アメリカ陸軍は、現在11個の現役師団 と1個の展開可能な師団司令部(第7歩兵師団 )及び独立部隊で編制されている。アメリカ陸軍の組織は、数年間にわたり軍拡 傾向にあったが、現在は縮小傾向にある。2013年6月、陸軍は2015年までに32個旅団戦闘団 、現役兵力49万人までに縮小する計画を発表している。アメリカ陸軍参謀総長 レイモンド・オディエルノ 大将は、更に2018年までに現役兵力45万人、陸軍州兵 33万5,000人、予備役 19万5,000人に縮小すると発表した。しかし、この計画はドナルド・トランプ 大統領 により破棄され、2017年10月までに現役兵力を16,000人に増員し、合計47万6,000人とする計画を発表した。州兵と陸軍予備役も、小幅な増員をすると見られる。
陸軍州兵と陸軍予備役は、8個師団と27個旅団戦闘団、複数の戦闘支援及び戦闘業務支援部隊、独立大隊(騎兵 、歩兵 、砲兵 、航空、工兵 、支援)によって組織されている。特に心理戦 や民事作戦 を実施する部隊は、事実上全て陸軍予備役で編制されている。
アメリカ陸軍総軍 (FORSCOM)
特殊作戦部隊
アメリカ陸軍特殊作戦コマンド (USASOC)
装備品
アメリカ陸軍の一般的な
歩兵 の装備(2015年5月16日撮影)
兵科
歩兵科 (Infantry Branch)
工兵科 (Corps of Engineers)
野戦砲兵科 (砲兵科、Field Artillery Branch)
防空砲兵科 (Air Defense Artillery Branch)
機甲科 (Armor Branch)
武器科 (Ordnance Corps)
憲兵科 (Military Police Corps)
通信科 (Signal Corps)
航空科 (Aviation Branch
化学科 (Chemical Corps)
輸送科 (Transportation Corps)
需品科 (Quartermaster Corps)
兵站科 (Logistics Branch)
総務科 (Adjutant General's Corps)
調達科 (Acquisition Corps)
財務科 (Finance Corps)
監察科 (Inspector General's Corps)
法務科 (Judge Advocate General's Corps)
民事活動科 (Civil Affairs Corps)
衛生科 (Medical Corps)
衛生業務科 (Medical Service Corps)
専門医科 (Medical Specialist Corps)
歯科医科 (Dental Corps)
獣医科 (Veterinary Corps)
看護科 (Nurse Corps)
情報科 (Military Intelligence Corps)
軍楽科 (Army Band)
牧師科 (Chaplain Corps)
特殊部隊群 (Special Forces)
心理作戦科 (Psychological operations)
サイバー科 (Cyber Branch)
階級
士官
給与等級
O-1
O-2
O-3
O-4
O-5
O-6
O-7
O-8
O-9
O-10
Special
階級章
名称
少尉 Second Lieutenant
中尉 First Lieutenant
大尉 Captain
少佐 Major
中佐 Lieutenant Colonel
大佐 Colonel
准将 Brigadier General
少将 Major General
中将 Lieutenant General
大将 General
元帥 General of the Army
略称
2LT
1LT
CPT
MAJ
LTC
COL
BG
MG
LTG
GEN
GA
NATO 階級コード
OF-1
OF-1
OF-2
OF-3
OF-4
OF-5
OF-6
OF-7
OF-8
OF-9
OF-10
准士官
給与等級
W-1
W-2
W-3
W-4
W-5
階級章
名称
准尉 1 Warrant Officer 1
上級准尉2 Chief Warrant Officer 2
上級准尉3 Chief Warrant Officer 3
上級准尉4 Chief Warrant Officer 4
上級准尉5 Chief Warrant Officer 5
略称
WO1
CW2
CW3
CW4
CW5
NATO 階級コード
WO-1
WO-2
WO-3
WO-4
WO-5
下士官・兵
給与等級
E-1
E-2
E-3
E-4
E-5
E-6
E-7
E-8
E-9
階級章
階級章無し
名称
二等兵
一等兵
上等兵
特技兵
伍長
三等軍曹
二等軍曹
一等軍曹
曹長
先任曹長
上級曹長
最上級曹長
陸軍最先任上級曹長
統合参謀本部最先任下士官
Private
Private
Private First Class
Specialist
Corporal
Sergeant
Staff Sergeant
Sergeant First Class
Master Sergeant
First Sergeant
Sergeant Major
Command Sergeant Major
Sergeant Major of the Army
Senior Enlisted Advisor to the Chairman
略称
PVT ¹
PV2 ¹
PFC
SPC ²
CPL
SGT
SSG
SFC
MSG
1SG
SGM
CSM
SMA
SEAC
NATO 階級コード
OR-1
OR-2
OR-3
OR-4
OR-4
OR-5
OR-6
OR-7
OR-8
OR-8
OR-9
OR-9
OR-9
OR-9
¹ PVTの略称は二等兵・一等兵の両方に使われる。 ² 特技兵のためにSP4の略称も使われることがある
脚注
注釈
^ なお、現在の騎兵部隊は実際に乗馬しているわけではなく、主に伝統的な理由から「騎兵」の名称を持つ部隊を指している。
出典
参考文献
関連項目
外部リンク