ウクライナ紛争 (2014年-)

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ウクライナ紛争
目的 ロシアの領土併合・ウクライナの脱占領
発生現場  ウクライナ
期間 2014年2月23日現在進行中
行動 侵略占領テロ活動人権侵害
死者 13,000人以上(国連難民高等弁務官事務所による推計)[1]
 ウクライナ紛争
戦争新冷戦の一部
年月日2014年2月23日-現在
場所ウクライナ全域
結果:現在継続中
交戦勢力
 ウクライナ
支援:
ロシアの旗 ロシア
ドネツク人民共和国の旗 ドネツク人民共和国
ルガンスク人民共和国の旗 ルガンスク人民共和国
 ベラルーシ
指導者・指揮官
ウクライナの旗 ウォロディミル・ゼレンスキー
ウクライナの旗 ペトロ・ポロシェンコ
ウクライナの旗 オレクサンドル・トゥルチノフ
ウクライナの旗 アンドリー・ザゴロドニュク英語版
ウクライナの旗 ステパン・ポトラック英語版
ウクライナの旗 ヴァレリー・ヘレテイ英語版
ウクライナの旗 イーホル・クニャージ英語版
ウクライナの旗 オレクサンドル・シルスキー
ウクライナの旗 ヴァレリー・ザルジニー
ウクライナの旗 ルスラン・コムチャック
ウクライナの旗 アルセン・アバコフ英語版
ロシアの旗 ウラジーミル・プーチン
ロシアの旗 セルゲイ・ショイグ
ロシアの旗 ワレリー・ゲラシモフ
ロシアの旗 エフゲニー・プリゴジン
ロシアの旗 アレクサンドル・ザハルチェンコ
ロシアの旗 デニス・プシーリン
ロシアの旗 パヴェル・グバレフ英語版
ロシアの旗 イーゴリ・ギルキン
ロシアの旗 レオニード・パセチニク
ロシアの旗 イーゴリ・プロトニーツキー英語版
ロシアの旗 ヴァレーリー・ボーロトフ英語版
戦力
約50,000人 約10,000-20,000人
損害
ウクライナ軍の損失 戦死:2,900+名
負傷:9,000+名
分離主義者の損失 戦死:5,500-8,000名
ロシア連邦の損失:1,600名

ウクライナ紛争(ウクライナふんそう)は2014年に発生したマイダン革命(ウクライナ騒乱、尊厳の革命)後、クリミア半島クリミア自治共和国)とウクライナ本土のドンバス地方(ドネツィク州ルハーンシク州)で起こった2014年クリミア危機、およびウクライナ軍と、親露派武装勢力や反ウクライナ政府組織、ロシア連邦政府との紛争(軍事衝突や対立)である。2021年秋にはロシアがウクライナ国境への軍の集結を開始し(ロシア・ウクライナ危機)、2022年2月24日にはロシアがウクライナに侵攻した

ロシア・ウクライナ戦争(漢字:露宇戦争、宇露戦争、英語: Russo-Ukrainian Warロシア語: pоссийско-украинская войнаウクライナ語: російсько-українська війна)ともいう[4]

概要

ウクライナ系メディアでは、ロシアの正規軍の関与が広く見られることからロシアによる侵略、ロシアによる占領、またはウクライナ・ロシア戦争と呼んでいる。ポロシェンコ大統領もしばしば「ロシアとの戦争」という用語を使った。ただしウクライナ、ロシアともに宣戦布告は行っていない。

一方、ロシア系メディアでは、この紛争初期にはロシアの春と表現する場合もあったが、以降は「ロシア軍は関与していない」という立場と国際司法裁判所にウクライナ政府が求めていた「ロシアによる親露勢力への支援の認定」を、証拠不十分として退ける決定をした[5]との立場から、今次紛争をウクライナ国民同士の対立であるウクライナ内戦であると表現している。ロシア政府は同戦闘を「内戦」と呼び、自らの関与を否定するが、現地世論調査によると、ウクライナ国民の57%が「ロシアとウクライナの戦争」だと感じており、「内戦」(13%)だと見なす国民より圧倒的に多い[6]

欧米諸国からは、派兵や兵器・燃料の供給をはじめ、ロシアの直接的関与は明白だとして、対露制裁を科すなどの措置を取っている。しかし、「内戦」という用語は用いず、代わりに紛争、占領、侵略、軍事侵攻等の用語を使用している。

クリミア自治共和国では、衝突初期の2014年2月下旬-3月にかけて行われたロシアによる軍事干渉と、国際的な非難を浴びながら行われた住民投票の結果、同年3月17日にロシアへの併合を求める決議を採択したと宣言。ロシア軍の支配下に置かれ、さらにロシアへの併合が宣言された。その後、ウクライナ本土のドンバス地方(ドネツィク州ルハーンシク州)での抗議運動が、武装した分離主義勢力による反乱へと広がった結果、ウクライナ政権が軍事的反攻に乗り出し(ドンバス戦争)、ウクライナがNATOに入ろうとしたことも相まって全面的侵攻にまでエスカレートした

経緯

クリミア半島

クリミアに展開する「リトル・グリーンメン」と呼ばれる国籍を隠した部隊

2014年2月26日の初め、後にロシアのプーチン大統領が指示したロシア連邦軍と確認される武装勢力は、クリミア半島の主導権を徐々に握り始めていた。この間、クリミア半島でロシア連邦への併合についていわゆる「住民投票」が行われた結果、83%の投票者で96%の賛成が得られたが、この住民投票は、EUアメリカウクライナ人クリミア半島のクリミア・タタール人によって、「ウクライナ憲法国際法に違反している」として非難されている[要出典]3月17日、クリミア議会はウクライナからの独立を宣言し、ロシア連邦への併合について呼びかけた。3月18日、ロシアとクリミア自治共和国最高会議は、"クリミアとセヴァストポリの編入に関する条約"に署名した。3月21日に編入条約は批准され、ロシア連邦の2つの新しい連邦構成主体として発足した。国連総会は、公表された国民投票は無効であり、ロシアによるクリミア併合は違法に行われたとし、現状を「ロシアによる占領」と国連総会決議により定めている。

2014年4月1日までに約3,000人の住民がクリミア半島から逃れたとされ、その80%はクリミア・タタール人だったとされる。"Ivano-Frankivsk Oblast"と"Chernivtsi Oblast"の欧州安全保障協力機構(OSCE)のチームは、クリミアから西ウクライナへ移住した国内避難民を補助した。主にクリミア・タタール人だった多くの難民は避難を続け、UNHCRは5月20日までに約1万人の人々が移住したと発表している。

クリミア半島を実効支配したロシア政府は、半島東部とロシア領タマン半島を結ぶケルチ海峡クリミア大橋2015年に着工し、2018年開通させた。同年11月、ウクライナ西部のオデッサを出港したウクライナ海軍艦艇3隻が、ケルチ海峡を通過してアゾフ海沿岸にあるウクライナ東部の港湾都市マリウポリへ向かっていたところ、11月25日にロシアによって拿捕された。これを受けて、ウクライナ政府と議会は、ソビエト連邦の崩壊に伴う独立後では初となる戒厳令をロシアと隣接する10州に発令することを決定した(11月28日から30日間)[7]

ウクライナ政府は外交圧力によるクリミア奪還をめざしており、2021年8月23日、「クリミア・プラットフォーム」初会合となる首脳会議を首都キーウで開き、合計46の国家国際機関が参加した。首脳級は14人で、シャルル・ミシェル欧州理事会議長(EU大統領)のほか、ロシアの脅威にさらされている東欧諸国からポーランド大統領リトアニア大統領モルドバ大統領が参加した。米独はエネルギー担当閣僚に、日本は駐ウクライナ大使にとどめた。ロシア政府は参加国には対抗措置をとると警告し、「非友好的な行事」と非難した[8][9]

ドンバス地方(東部2州)

2014年に親露派が武装蜂起したルハンスク州南部とドネツィク州東南部は2021年時点、両州合計面積の約3割が親露派の占拠下にあり、死者は累計で約1万4000人に達している[9]

ドネツィクの親露派(2014年3月8日)

2014年3月1日-3月6日にかけて、ロシアが主導したとされる親露派武装勢力はドネツィク州庁舎を占拠したが、ウクライナ保安庁によって排除された。ウクライナ当局によると政府庁舎での押収物の一部に、ウクライナを不安定化させるよう、ロシア語で書かれたメモがあったほか、明確なロシア語のアクセントを話す1,500人の過激派を拘束している。

3月13日、ドネツィクではウクライナ支持派と親露派の暴力的な衝突が起き、親露派の大群が警察の非常線を壊して乗り越え、少数の反対派への襲撃を始めた。 欧州安全保障協力機構(OSCE)による取材調査では、30人程度の政権支持派は警察のバスへ逃げ込んだが、反政権支持派により囲まれて襲撃され、バスの窓を打ち破って刺激性のガスがまき散らされ、バスの出口から出てきた政権支持派を叩いて暴言を浴びせたとしている。また、OSCEの報告では、警察は政権支持派を守る適切な処置を取っておらず、反政権支持派を好ましい形で処理しているのを目撃されている。この衝突の日の後、取材を受けた人はOSCEに、ドネツィクの住民は安全のため、平和的な政権支持派のデモを組織しないことに決めたと述べている。

4月6日、約1,000-2,000人の武装勢力は、ドネツィクでの集会に参加し、ウクライナからの国家の独立を問う法的根拠のない「国民投票」の要求を行った。その後、200人の分離主義者(ドネツィク現地警察のスポークスマンIgor Dyominによると約1,000人)と親露派勢力が行政庁舎になだれ込み、ドアと窓を打ち壊していったが、政府当局者は日曜日で不在だった。分離主義者は、いわゆる「臨時議会」が政府当局によって開かれない場合、ロシアへの併合を問う「国民投票」を呼びかけ、国民の権限により全ての地方議員を無視して、4月7日の正午に一方的管理措置を宣言するとした。ロシアのタス通信によるとこの宣言は地方議員によって投票されたとしているが、他のメディアではドネツィク市や近郊地域のどの地方議員も会議に代表として派遣されていないと報告している。同じ4月6日、分離主義勢力「ドネツク共和国」の指導者は、ドネツィク州のロシア連邦への併合に関する国民投票を遅くとも2014年5月11日までに実施すると発表した。加えて、平和維持に必要な部隊をドネツィク州へ送るようプーチン大統領に訴えた。

カラシニコフ自動小銃とRPG-26 無反動砲を装備した武装勢力に占拠されるスラヴャンスク市議会

4月12日防弾チョッキ野戦服カラシニコフ自動小銃を備えてマスクをした武装勢力がスラヴャンスクの執行委員会建物とウクライナ保安庁事務所を占拠した。ウクライナ内務相アルセン・アヴァコフは、この武装勢力をテロリストと判断し、ウクライナ特殊部隊により建物を奪回すると発表した。警察署や政府庁舎の分離主義勢力による強奪は、ドネツィク州のドネツィククラマトルシクホルリウカマリウポリエナキエヴェを含むその他の都市でも発生した。ウクライナ政権のトゥルチノフ大統領代行は、建物奪回に向けた全面的な反テロ作戦を開始すると発表した。

4月16日までにドネツィク州での暫定政権によって行われた対テロ軍事作戦は、クラマトルシクで武装勢力がウクライナ軍装甲車を奪取し、兵士がスラヴャンスクまで追いやられるなどのいくつかの障害にぶち当たった。4月16日の夜、約300人の親露派武装勢力は、マリウポリのウクライナ軍部隊へ火炎瓶を投げるなどの攻撃を行った。アヴァコフ内務相は、「ウクライナ軍が発砲し、3人の襲撃者が殺害された」と発表した。

4月17日の停戦協定"Geneva Statement"によって、ドネツィク州での政府庁舎の占拠は終了せず、マリウポリの2つの親露派武装勢力は「この協定発効により裏切られたと感じる」と発表した。しかし、4月23日においても地域一帯の政府庁舎の占拠などの緊張状態は続いており、さらに、宣言された停戦は、スラヴャンスクでの分離主義勢力による検問所で起きた襲撃により破られた。

欧州安全保障協力機構(OSCE)は、スラヴャンスクの市庁舎、ウクライナ保安庁庁舎、警察署は自動火器で武装した勢力により要塞化されており、抗議する人もおらず町全体が静かになっていると報告している。しかしOSCEは「スラヴャンスクは制服を着た軍や覆面の武装勢力だけでなく、市民と同じ服装の多くの人々によって厳しい監視態勢に置かれていることは確かだ」としている。スラヴャンスクの一住人は「占拠している勢力について議論するのは恐ろしい」と語っている。

自称スラヴャンスクの分離主義勢力のポノマリョフ自称市長は、"我々は町の外にスターリングラードを設立する"と宣言した。ウクライナ政権は、4月25日にスラヴャンスクを完全に封鎖し、反テロ作戦を継続すると宣言した。4月26日ドネツク人民共和国によってチラシが配布され、共和国による州統治権の宣言を支持するかどうかの国民投票を5月11日に開かれることが周知された。

その後も、両州におけるウクライナ政府軍及びウクライナ政府及びその支持派と、親露派の衝突・対峙は続いている。2018年1月18日、ウクライナ最高会議(議会に相当)は、東部2州を「再統合」を目指すべき「占領地」、ロシアを「侵略国」と規定し、ウクライナ大統領に「東部解放」の軍事行動を認める法案を可決した[10]

ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を自称する政権の実効支配地域と、他のウクライナ領の境界地帯はコンタクト・ライン(接触線)と呼ばれ、約500キロメートルに及び、塹壕検問所が設置されている。接触線の東側でも、ウクライナ政府を支持あるいは頼りとする人々が暮らしている。毎月、延べ100万人以上が年金受け取りや親族との面会などのため接触線を越えて行き来している。ウクライナ政府や国営銀行の装甲付き輸送車が、危険を冒して検問所に近づき、こうした人々に現金パンなどを供給している[11]

ウクライナ軍と親露派は、前線からの兵力引き離しを2019年11月11日に完了した[12]

ロシア・ウクライナ危機(2021年-2022年)

ロシアはクリミア併合宣言やウクライナ東部への介入に加えて、2021年春以降、ウクライナの国境近くで軍事力の集結や軍事演習を断続的に行ない、ウクライナやジョージアへの北大西洋条約機構(NATO)拡大停止などを当該国や欧米に要求した[13]。米国の戦略国際問題研究所(CSIS)は2021年11月、ロシアがウクライナ本土に侵攻すれば首都キーウは数時間で陥落するとの予測を公表した[14]

ウクライナ政府は、クリミア奪還のために外交的・軍事的・経済的・情報的・人道的な措置を準備するという旨の政令を発する。(2021年3月24日)[15]トルコ製ドローンによる東部地域への攻撃(2021年10月26日)、女性も徴兵事務所への登録を義務付ける法律の施行(2021年12月17日)、インターネットによるロシアの情報工作に対抗する『情報安全保障戦略』を発効させる大統領令(同28日)に続き、2022年1月1日には侵略に対するレジスタンス活動を定めた法律と、国内河川運河でロシア船舶の航行を事実上禁止する法律を施行するなど、国家総動員体制をとりつつある[14]。NATOは軍事援助や共同演習でウクライナを支援している[14]

アメリカはウクライナとロシアとの間の緊張緩和を図るため、2021年12月7日[16]および同年12月30日にオンラインによる首脳会談を実施。2022年1月10日にジュネーヴでウクライナ情勢や旧ソビエト連邦諸国とNATOとの関係構築を制限する条約案などを協議する会合を開くことを決めた[17]

ロシアのウクライナ全面侵攻 (2022年- )

2022年2月24日、ロシアがウクライナの東部・南部・北部から全面的に侵攻を開始し、ロシア対ウクライナの全面戦争に発展した。侵攻当初はウクライナ北部から侵攻したロシア軍が首都キーウに迫る勢いであったが、ウクライナ軍の頑強な抵抗に遭遇したため4月上旬までに北部戦線からは撤退し、それ以降は南部と東部で激しい戦闘が繰り広げられている。ロシアのウクライナ全面侵攻は西側諸国を中心とする国際社会から非難され、ロシアに対する大規模な経済制裁が行われたが、特にブチャの虐殺が発覚するとロシアに対する国際的な非難が激化しさらなる制裁が行われた。NATO諸国はウクライナを軍事支援するためにウクライナ軍に武器を供与し訓練も行っており、アメリカは武器を供与するためにウクライナ民主主義防衛・レンドリース法を可決した。またNATO諸国は人工衛星早期警戒管制機などの様々なアセットから得られた画像・電波情報をウクライナに供与して軍事支援しており、民間企業のスペースXスターリンク衛星網を使ってウクライナ軍を通信の面で支援している。

ロシア政府の対応

ロシア連邦政府は、クリミア半島については編入を宣言して実効支配しているものの(ロシアによるクリミア・セヴァストポリの編入)、ウクライナ本土東部2州の紛争については「ウクライナ国内の問題」という立場をとっている。ただし、後述するように、ウクライナ政府や独仏とこの問題に関する交渉を行っているほか、2019年4月24日にはウラジーミル・プーチン大統領が、親露派支配地域の住民が希望すればロシア国籍を付与する大統領令に署名した[18]。2022年2月21日には、ウクライナ東部の「ルガンスク人民共和国」「ドネツク人民共和国」を国家承認するなどし、欧米諸国から批判されている。 2022年2月24日、プーチン大統領はウクライナ東部住民保護を名目に「特別な軍事作戦を実施」と実質的な宣戦布告をし、ロシア軍は侵攻を開始。軍事施設や空港を巡航ミサイルで精密攻撃を行いウクライナの防空システムを制圧した。これに対し国連及び欧州諸国は激しく非難をした。

同年2月25日キーウ北側に位置するチェルノブイリをロシアが占拠した。

国際社会の反応

親露勢力がウクライナ本土東部2州で独立を宣言したドネツク人民共和国ルガンスク人民共和国によるノヴォロシア人民共和国連邦は、ロシアを除き、いずれの国際連合加盟国からも国家承認されていない[注 1]

欧米による調停や対ロ制裁

米国欧州連合(EU)加盟国などはロシアに対して経済制裁を実施する一方で、外交交渉を継続している[19](後述)。

ドイツフランスは東部ウクライナ2州についてウクライナとロシアを仲介し、2015年2月に停戦に合意したが(ミンスク合意)、その後も散発的に戦闘が続いている[20]

欧州安全保障協力機構(OSCE)が2014年から停戦を監視している。2017年4月、OSCEの装甲車がルガンスク州の親露派支配地域で地雷によるとみられる爆発に巻き込まれ、アメリカ人救急医療隊員1名が死亡、ドイツ人女性とチェコ人男性が負傷した。OSCEメンバーの犠牲は初めて[21]

アメリカ空軍は、ウクライナの要請を受けて同国上空で、オープン・スカイズ条約に基づくC-130偵察機型(OC-135B英語版)による監視飛行を2018年12月と2014年3月に実施した。これはカナダやヨーロッパ諸国の要員も乗り込んで行われた[22]

ICJは2017年4月19日、ウクライナ政府が求めていた「ロシアによる親露勢力への支援の認定」を、証拠不十分として退ける決定をした。ロシア外務省は「(ロシアによる)『侵略』や『占領』といったウクライナ側の主張は支持されなかった」とコメントした[5]

EUは2017年6月19日、ロシアのクリミア編入宣言に関する制裁の1年延長を発表[23]アメリカ財務省は2017年6月20日、ウクライナ東部紛争への関与を理由とする制裁対象に、ロシア政府当局者を含む38の個人・団体を追加した[24]

政府以外の動きとしては、西欧中欧諸国(ドイツフランスイタリアオーストリア等)や南北アメリカ各国のネオナチなどの極右過激派が、ウクライナ東部2州においてウクライナ側と親露勢力側の双方で「参戦」している。実戦経験を積むことや強権的なプーチンへのシンパシーなどが理由とされる[25]

4カ国協議

2019年12月9日、フランスのマクロン大統領、ドイツのメルケル首相の仲介で、ウクライナのゼレンスキー大統領とロシアのプーチン大統領がエリゼ宮にて会談を持った。5時間半に及んだ会談により、年内に捕虜の相互解放と停戦の履行を確認する共同声明が発表された[26]

ウクライナ社会への影響

ウクライナ南西部のロシア系住民が多く住む都市オデッサでは2014年5月2日、ウクライナの極右団体がロシア系の労働組合事務所に放火し38人が殺害された[27]

ウクライナの多くの地域で反ロシア的な世論が強まり、キリスト教ロシア正教会からのウクライナ正教会 (2018年設立)の正式な独立につながった。しかし、ウクライナ正教会の独立を承認したコンスタンティノープル総主教庁と、それに反発したロシア正教会モスクワ総主教庁による断交宣言は、世界中の正教会を巻き込んだ深刻な対立に発展しつつある(「モスクワとコンスタンティノープルの断交」参照)。

また歴史的に反ロシア感情が強い西部のリヴィウ州議会は2018年9月18日、ロシア語による歌曲を公共の場で流したり、書籍を出版したりすることを禁じる条例を可決した [28]

ギャラリー

脚注・出典

注釈

  1. ^ 両国を承認している南オセチア共和国は、ジョージアから事実上独立しているが、極めて限定的な国家承認しか得られていない。ロシアのプーチン大統領は2022年2月に独立を承認する大統領令に署名した。

出典

  1. ^ 【プーチンのロシア ウクライナ危機5年】(1)やまぬ砲撃 傷深く毎日新聞』朝刊2019年3月18日(1面)2019年3月20日閲覧。
  2. ^ NATO allies to provide more weapons to Ukraine, Stoltenberg says” (英語). Reuters (2022年2月26日). 2022年2月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月27日閲覧。
  3. ^ 欧州各国が相次ぎ武器供与 戦闘激化でウクライナ支援強化”. 時事通信社 (2022年2月26日). 2022年2月27日閲覧。
  4. ^ Snyder, Timothy (2018). The Road to Unfreedom: Russia, Europe, America. New York: Tim Duggan Books. p. 197. ISBN 9780525574477. https://books.google.com/books?id=l9KMDwAAQBAJ&q=timothy+snyder+road+to+unfreedom. "Almost everyone lost the Russo-Ukrainian war: Russia, Ukraine, the EU, the United States. The only winner was China." ; Mulford, Joshua P. (2016). “Non-State Actors in the Russo-Ukrainian War”. Connections 15 (2): 89–107. doi:10.11610/Connections.15.2.07. ISSN 1812-1098. JSTOR 26326442. ; Shevko, Demian; Khrul, Kristina (2017). “Why the Conflict Between Russia and Ukraine Is a Hybrid Aggression Against the West and Nothing Else”. In Gutsul, Nazarii. Multicultural Societies and their Threats: Real, Hybrid and Media Wars in Eastern and South-Eastern Europe. Zürich: LIT Verlag Münster. p. 100. ISBN 9783643908254. https://books.google.com/books?id=MhspDwAAQBAJ&q=%22Russo-Ukrainian+war%22&pg=PA134 
  5. ^ a b “国際司法裁判所 ウクライナ紛争の露支援を「証拠不十分」”. 朝刊. (2017年4月21日). https://mainichi.jp/articles/20170421/k00/00m/030/063000c 
  6. ^ (ロシア語)Большинство украинцев считают ситуацию в Донбассе войной с Россией 2014年10月6日
  7. ^ 「ウクライナ緊迫再び/艦艇拿捕/戒厳令 露との対立新局面」『読売新聞』朝刊2018年11月28日(国際面)
  8. ^ 「ウクライナ「クリミア奪還」初会議/米独 首脳級出席見送り『読売新聞』朝刊2021年8月24日(国際面)
  9. ^ a b 「クリミア問題で対ロ圧力 ウクライナ、連携狙う 44の国・機関招き首脳会議/米、対立懸念で慎重」日本経済新聞』朝刊2021年8月24日(国際面)同日閲覧
  10. ^ ウクライナ議会、東部2州の「再統合」法案可決『毎日新聞』朝刊2018年1月19日
  11. ^ Sergiy Karazy,Matthias Williamsによる現地レポート。ロイター/INSP。日本語記事「ウクライナ、新たな大統領はコメディ俳優 希望の見えない紛争地帯に平和は訪れるか?」は『ビッグイシュー359号掲載(2019年6月15日閲覧)
  12. ^ 「ウクライナ東部 緊張緩和/政府軍、親露派 前線から兵力撤退/露独仏と首脳会談再開も」『毎日新聞』朝刊2019年11月13日(国際面)2019年11月14日閲覧
  13. ^ 【地球コラム】新ウクライナ危機、プーチンの真意は 時事通信(2022年1月7日閲覧)
  14. ^ a b c 「露軍への備え ウクライナ加速/抵抗運動法施行■NATOと協議へ」『読売新聞』朝刊2022年1月5日(国際面)
  15. ^ 大統領は、一時的に占領されたクリミアの占領と再統合のための戦略を承認(2021年5月4日閲覧)
  16. ^ 米露首脳がオンライン会談 バイデン大統領「次は対面で会いたい」”. 毎日新聞 (2022年1月8日). 2022年1月8日閲覧。
  17. ^ 米露首脳、30日に電話会談へ ウクライナ情勢を協議”. 産経新聞 (2022年1月8日). 2022年1月8日閲覧。
  18. ^ 「ウクライナ住民にロシア国籍付与/東部地域 新政権揺さぶる狙い」朝日新聞』朝刊2019年4月26日(国際面)2019年4月26日閲覧
  19. ^ “EU露外相会談 ウクライナ問題を協議”. 毎日新聞ニュース. (2016年4月24日). https://mainichi.jp/articles/20170425/k00/00m/030/044000c?ck=1 
  20. ^ “ウクライナ紛争解決ほど遠く 停戦合意1年”. 『毎日新聞』朝刊. (2016年2月12日). https://mainichi.jp/articles/20160212/k00/00m/030/090000c 
  21. ^ “OSCE監視団に初の犠牲 ウクライナ東部で爆発”. 産経新聞ニュース. (2017年4月24日). https://www.sankei.com/photo/daily/news/170424/dly1704240010-n1.html 
  22. ^ 「米軍がウクライナで監視飛行 クリミアでの動き牽制か」『産経新聞』朝刊2018年12月7日(国際面)2018年12月26日閲覧
  23. ^ “EU、クリミア制裁を1年延長”. 『日本経済新聞』夕刊. (2017年6月20日). https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM20H06_Q7A620C1EAF000/ 
  24. ^ “米、対ロシア制裁 強化ウクライナ巡り”. 『日本経済新聞』夕刊. (2017年6月21日). https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H0T_R20C17A6EAF000/ 
  25. ^ 欧州極右、ウクライナへ実戦 経験狙い」『毎日新聞』朝刊2020年9月10日(国際面)2020年10月6日閲覧
  26. ^ ロシアとウクライナが首脳会談、ウクライナ東部の停戦で合意”. CNN (2019年12月10日). 2019年12月10日閲覧。
  27. ^ 38 die in fire lit by Right Sector radicals at Odessa trade union council buildingイタルタス通信(2014年5月3日)2021年8月24日閲覧
  28. ^ 「旧ソ連圏、強まる反露感情 ロシア語離れ加速」『産経新聞』朝刊2018年9月30日(国際面)2019年1月10日閲覧

関連作品

ドキュメンタリー映画
映画

関連項目