Mk 44 ブッシュマスター II(英語: Mk 44 Bushmaster II)は、アライアント・テックシステムズ(ATK)社[注 1]が開発した30mm口径のチェーンガン。
構造
本砲は、先行して開発された25×137mm弾仕様のM242 ブッシュマスターをもとに、30×173mm弾仕様にスケールアップしたモデルである。構成部品の約70パーセントはM242と共通である[3]。給弾機構も、M242と同様に二方向からの装填に対応して、異なる弾種を速やかに切り替えて使用できる[3]。
上記の通り、標準的な使用弾薬は30×173mm弾だが、砲身や遊底、また送弾機構の一部を変更することで、エリコンKCBやラーデン砲(英語版)などで用いられている30×170mm弾にも対応できる[3]。
XM813
ブッシュマスターIIをもとに車載砲として最適化した派生型として開発されたのがXM813である。俯仰角を急に変更したときの動作不良への対策として、送弾機構が2方向からのベルト給弾ではなく容量150発の弾倉2個を用いた方式に変更されているほか、銃身が肉厚のものに変更され、ABM弾の使用にも対応した。またわずかな改修によって40×180mm弾仕様に変更することができる。
2013年11月の時点で、アバディーン性能試験場での試験においてXM813は3ヶ月以上・平均故障間隔4万発の長期信頼性が確認されている。長期的にはブッシュマスターIII 35 mm 機関砲とともに装架することが検討されている[4][5]。
2014年9月10日にはARDEC(英語版)のディジタル多目的試験複合施設でXM813のデモンストレーションが行われた。XM813は、M2歩兵戦闘車に装架され、最大1,500メートル先の標的に向けて発砲された。火器管制システムの改良により、長射程でも少ない斉射数で有効弾が得られ、時には従来10斉射必要だったところが2、3斉射で済むこともあった。XM813 30mm機関砲は、M242 ブッシュマスター 25mm機関砲を代替するものと考えられており、M2歩兵戦闘車以外の車両にも搭載される可能性がある。ただし、リンクレス給弾と曳火攻撃能力についてはデモンストレーションが行われなかった。曳火攻撃は、掩体に潜む敵と遭遇した際に極めて有効な手段である[6]。
運用史
車載型
本砲は、まずノルウェー陸軍向けのCV9030歩兵戦闘車に採用され、1995年より引き渡しが開始された。またスイス陸軍向けの車両も本砲を採用した[3]。
アメリカ海兵隊向けのEFV両用戦闘車はこの砲の搭載を予定しており、1999年には試作車が納入されたものの、2011年に開発中止となった。同車向けの砲システムはMk.46 mod.0と称されていた。
その他、シンガポール陸軍のバイオニクス、中華民国のCM-34 装輪戦闘車型、ポーランドのKTO ロソマクなどに標準的な主武装として搭載されている。
また、イスラエルのラファエル社によって開発された遠隔操作式砲塔ユニットである、サムソン RCWS-30に組み込まれ、チェコのパンデュールIIなどに搭載されている。
艦載型
アメリカ海軍では、EFVむけの砲システムをベースに、ブッシュマスター II 30mm機関砲1門と電子光学センサーなどを砲塔にまとめたMk.46 mod.1(後に改良型のmod.2に移行)を開発して、サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦の自衛用兵装や沿海域戦闘艦の対水上戦(SuW)モジュールにおける近距離用対艦兵器として搭載したほか、ズムウォルト級ミサイル駆逐艦でも当初予定のMk.110 70口径57mm単装速射砲にかえて搭載された。また密閉砲塔式ではなく開架式のペデスタルマウント方式のMk.38機関砲システムにおいても、従来は25mm口径のM242チェーンガンを採用してきたのに対し、mod.4では本砲が採用されることになった[10]。
イギリス海軍では、エリコンKCBの単装マウントを用いたDS30B 30mm機関砲を採用してきたが、2007年には、その機関砲部をブッシュマスターIIに変更したDS30M Mk.2が装備化された[11][12]。
海上保安庁でも、ブッシュマスター IIを単装砲塔に架して、はてるま型巡視船、くにがみ型巡視船の13番船以降やいわみ型巡視船に搭載している。
機上型
アメリカ空軍は、ブッシュマスター IIを2007年にAC-130U ガンシップ搭載のGAU-12 25mmガトリング砲とボフォース 60口径40mm機関砲の代替として検討し、GAU-23/Aとして制式化、2012年よりAC-130WやAC-130Jに搭載している[14]。
アメリカ海軍では、MH-60S多用途ヘリコプターに搭載して空中から機雷を破壊処理するためのRAMICS(Rapid Airborne Mine-Clearance System)を開発しており、その機関砲部にブッシュマスター IIを採用した。機雷の破壊処理にあたっては、スーパーキャビテーション効果を利用した専用のAPFSDS-T(Armor Piercing, Fin Stabilized, Discarding Sabot-Tracer)弾であるMk 258が用いられる。
登場作品
- 小説
- 『ゼロの迎撃』
- 安生正の小説。歩兵用に改造された物が登場。北朝鮮特殊部隊が使用し、橋の警備をしていた陸上自衛隊の普通科部隊を蜂の巣にする。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d Gander 2002, CANNON, UNITED STATES OF AMERICA.
- ^ http://www.dtic.mil/ndia/2012armaments/Wednesday14027hart.pdf
- ^ Bigger, badder Bushmaster cannon in the works - Armytimes.com, 8 November 2013
- ^ 30-mm weapon system on display - Army.mil, 16 September 2014
- ^ Peter Ong (2022-4-5), “U.S. Navy And Coast Guard Moving To Adopt Mark 44 30mm On MSI Mount”, NavalNews, https://www.navalnews.com/event-news/sea-air-space-2022/2022/04/usn-and-usgcmoving-to-adopt-mark-44-30mm/
- ^ “Scott, Richard, ASCG enhances Type 23 close-in defence” (英語). Jane's Defence News. 2009年11月9日閲覧。
- ^ Tony DiGiulian (2021-05-04), 30 mm (1.2") Bushmaster II Mark 46 Mod 1 and 40 mm (1.57") Bushmaster II, http://www.navweaps.com/Weapons/WNUS_30mm_BushmasterII.php 2024年4月22日閲覧。
- ^ “ATK's GAU-23 30mm Automatic Cannon Receives Type Classification for Use on U.S. Air Force AC-130W Gunships”. PR NewsWire. 9 July 2012閲覧。
参考文献
- 多田智彦「現代の艦載兵器」『世界の艦船』第986号、海人社、2022年12月。CRID 1520012777807199616。
- 中名生正己「巡視船 武装の歩み(下)」『世界の艦船』第825号、海人社、168-173頁、2015年11月。 NAID 40020597434。
- Gander, Terry J. (2002), Jane's Infantry Weapons, 2002-2003 (28th ed.), Janes Information Group, ISBN 978-0710624345
- Polmar, Norman (2013), The Naval Institute Guide To The Ships And Aircraft Of The U.S. Fleet (19th ed.), Naval Institute Press, ISBN 978-1591146872
- Williams, Anthony G. (2022), Autocannon : A History of Automatic Cannon and Ammunition, Crowood Press, ISBN 978-1785009204
- “Mk 44 Bushmaster II 30/40mm Automatic Cannon / Mk 46 Weapon Station” (英語). GlobalSecurity.org. 2009年11月9日閲覧。
関連項目