照月 (てるづき)は[ 1] 大日本帝国海軍 の駆逐艦 。
秋月型駆逐艦 （一等駆逐艦）の2番艦である[ 3] 月 」の意味[ 4]
一等駆逐艦照月 （てるづき）は[ 6] 太平洋戦争 で運用した秋月型駆逐艦の2番艦[ 3] [ 7] 1942年 （昭和17年）8月31日に竣工し[ 7] 第61駆逐隊 に所属した[ 8] 南太平洋海戦 や11月中旬の第三次ソロモン海戦 に参加した。第三次ソロモン海戦では、11月12日から13日にかけての夜戦、戦艦比叡 救援、11月14日の夜戦と戦艦霧島 の救助に従事した。
12月12日、第二水雷戦隊 旗艦（司令官田中頼三 少将）としてガダルカナル島 への輸送作戦に従事中、魚雷艇 の雷撃で喪失[ 10] 海上自衛隊 の初代あきづき型護衛艦 2番艦「てるづき 」、2代あきづき型護衛艦 2番艦「てるづき 」に継承された。
1939年 （昭和14年）度（④計画）の第105号艦[ 6] [ 11] 1940年 （昭和15年）11月1日 、三菱重工業長崎造船所 で大和型戦艦武蔵 が進水すると、日本海軍は武蔵進水後の船台で秋月型駆逐艦 を並べて建造することにした[ 12] [ 13] [ 13] 11月13日 、照月は三菱重工業長崎造船所で起工[ 7] [ 11] [ 1] [ 3]
命名直前の9月12日に内示された『昭和17年度海軍戦時編制』によれば、秋月型3隻（秋月、照月、初月）は第25駆逐隊となり[ 14] 鳳翔 および特設航空母艦 2隻と『第七航空戦隊』を編制予定であった[ 15] 太平洋戦争 が勃発したため、秋月型3隻（秋月、照月、初月）が鳳翔と実戦に参加する事はなかった。
「照月」は真珠湾攻撃 直前の11月21日 に進水した[ 7] [ 11]
1942年 （昭和17年）7月20日、折田常雄 中佐（陽炎型駆逐艦浜風 初代駆逐艦長、海兵49期）は照月艤装員長に任命される[ 16] [ 17] [ 7] [ 11] 佐世保鎮守府 籍となる[ 18] [ 19] [ 20] [ 22] 佐世保 に回航後、9月6日同地を出発する[ 23] 横須賀 に到着[ 23] [ 18] [ 23]
日本海軍は1942年 （昭和17年）10月7日付で秋月型2隻（1番艦秋月 、2番艦照月）により第61駆逐隊 を編成した[ 8] 則満宰次 大佐、海兵46期）[ 24] 第三艦隊 （司令長官南雲忠一 中将・海軍兵学校 36期）・第十戦隊（司令官木村進 少将・40期）に編入される[ 27] [ 23] [ 28] [ 23] トラック諸島 に到着する[ 23]
「照月」は直ちに機動部隊 本隊（第三艦隊司令長官南雲忠一 中将、参謀長草鹿龍之介 少将：旗艦「翔鶴」）と合流して出撃した。10月22日から23日にかけて重巡洋艦「筑摩 」と共に艦隊から分離、2隻だけで南雲機動部隊南方を捜索した[ 32] [ 32] 南太平洋海戦 における「照月」は、第三艦隊司令長官（南雲中将）直率の第一航空戦隊 （翔鶴 、瑞鶴 、瑞鳳 ）の直衛についた[ 34] 熊野 と駆逐艦8隻（第4駆逐隊〈嵐 、舞風 〉、第16駆逐隊〈初風 、雪風 、天津風 、時津風 〉、第17駆逐隊〈浜風 〉、第61駆逐隊〈照月 〉）という編成である[ 34]
戦闘の初期、SBDドーントレス 2機（空母エンタープライズ所属機）の奇襲により空母「瑞鳳」が被弾、発艦不能となり戦線離脱を余儀なくされた[ 37] [ 38] [ 38] 戦史叢書 によれば、「照月」は翔鶴直衛として対空戦闘中に至近弾を受け、若干の損傷を受けた[ 38] 飛行艇 の夜間爆撃によると回想している。7名が戦死した。
また南雲長官（機動部隊司令部）は大破した「翔鶴」から「照月」に移乗する予定だったが、照月不在のため「嵐」に移動した。中島親孝 第三艦隊通信参謀によれば、「照月」は出撃前の打ち合わせに参加していなかったため、いつのまにか「翔鶴」から離れていたという[ 43] [ 43] [ 44] 第二航空戦隊 司令官角田覚治 少将(旗艦隼鷹 ）が航空戦の指揮を委任され、航空部隊（隼鷹、瑞鶴）を指揮してアメリカ軍機動部隊と交戦した[ 43] [ 23] 工作艦 「明石 」による修理を受けた[ 18]
南太平洋海戦後、「しばらくは空母同士の戦いは起こらないだろう」という判断により[ 46] 第二艦隊 （司令長官近藤信竹 中将・海兵35期）の指揮下に入る[ 46] 阿部弘毅 少将：旗艦比叡）に編入されてトラックを出撃し、ガダルカナル島 沖に向かう[ 47] [ 48] 第三次ソロモン海戦 （12日夜戦・第一次会戦）では、ダニエル・J・キャラハン 少将のアメリカ第65任務部隊とノーマン・スコット 少将のアメリカ第64任務部隊と交戦する。
挺身攻撃隊は第十一戦隊（比叡 、霧島 ）、第十戦隊（旗艦〈長良 〉、第16駆逐隊〈雪風 、天津風 〉、第6駆逐隊〈暁 、雷 、電 〉、第61駆逐隊〈照月 〉）、第四水雷戦隊（旗艦〈朝雲 〉、第2駆逐隊〈村雨 、五月雨 、夕立 、春雨 〉、第27駆逐隊〈時雨 、白露 、夕暮 〉）という戦艦2隻・軽巡洋艦1隻・駆逐艦14隻で、このうち第27駆逐隊（時雨、白露、夕暮）は後方警戒のため夜戦には不参加である[ 51]
日米双方の艦隊が混乱する中、照月は長10cm主砲160発、25mm機銃200発を発射し、戦闘概報で「敵巡洋艦1隻・駆逐艦6隻と交戦し駆逐艦1隻撃沈・全隻に命中弾」と報告[ 53] [ 54] [ 55]
第一夜戦後の「照月」は、戦艦「霧島 」の避退を護衛したのち、損傷した戦艦「比叡」（艦長西田正雄 大佐）の直衛にあたった[ 57] [ 58] 木村進 少将（旗艦長良）より命令を受けた「照月」は、舵故障のためサボ島周辺海域から離れられない「比叡」に合流する[ 59] [ 58] [ 62] 陽炎型駆逐艦 8番艦「雪風 」（比叡より阿部少将座乗、臨時旗艦）、第27駆逐隊（時雨、白露、夕暮）と共に対空戦闘を行う[ 62] [ 64] 西田正雄 大佐をふくむ比叡乗組員を収容して戦場を離脱した[ 68] [ 62]
前進部隊指揮官近藤信竹 第二艦隊司令長官は、挺身攻撃隊残存部隊を収容すると艦隊の再編を実施した[ 71] 愛宕 、高雄 〉、霧島、長良、雷、五月雨）、直衛隊（四水戦旗艦〈朝雲〉、第11駆逐隊〈白雪 、初雪 〉、61駆〈照月〉）、掃討隊（軽巡〈川内 〉、第19駆逐隊〈浦波 、敷波 、綾波 〉）という編成で、戦艦1隻・重巡2隻・軽巡2隻・駆逐艦9隻という戦力である[ 71] [ 73] 近藤信竹 中将。旗艦愛宕）の指揮下にあり、ウィリス・A・リー 少将の第64任務部隊（戦艦2・駆逐艦4）と交戦した。
砲戦時、射撃隊は朝雲-照月-愛宕(旗艦)-高雄-霧島という単縦陣 であったという。「照月」は米戦艦サウスダコタ (USS South Dakota, BB-57 )を砲撃したが、魚雷発射の機会には恵まれなかった（愛宕11本、高雄8本、朝雲4本発射、全て命中せず）[ 76] ワシントン の砲撃で航行不能となった[ 77] [ 78] 岩淵三次 大佐は駆逐艦による曳航によりガ島に擱座することを試みたが、「霧島」の曳航は不可能であった。
「照月」は「朝雲」[ 80] [ 81] 御真影 は、霧島に横付けした朝雲1隻に移動した[ 83] [ 85] 岩淵三次 大佐をふくめ、合計准士官以上69、下士官兵1031名）[ 77] [ 87]
海戦後、11月18日にトラックに帰投した[ 88] [ 23] [ 88] [ 88] [ 23] 阿賀野 」に旗艦を譲った[ 89]
第三次ソロモン海戦は、日本海軍の敗北で終わった。この海戦により輸送船団が壊滅状態になると、帝国海軍は駆逐艦にドラム缶を搭載してガダルカナル島へおくりとどける強行輸送作戦（鼠輸送 ）、通称『ドラム缶輸送』を実施する[ 93] 田中頼三 少将（第二水雷戦隊司令官）の指揮下で実施された第一次ドラム缶輸送作戦（11月30日）は、米艦隊に迎撃され夜間水雷戦闘となった（ルンガ沖夜戦 ）[ 95] 高波 の喪失に対し米重巡1隻を撃沈、3隻を大破させたが、輸送作戦そのものは失敗した[ 97] [ 100]
連合艦隊司令部はルンガ沖夜戦の戦訓から警戒駆逐艦の増強を決定し、12月1日附で駆逐艦3隻（秋月型〈照月〉、第17駆逐隊〈浦風 、谷風 〉）を外南洋部隊に編入した[ 101] [ 23] ショートランド諸島 に進出後[ 23] [ 101] 第二水雷戦隊 （田中頼三 少将・海兵41期）司令部が乗艦してその旗艦となる[ 103] 佐藤寅治郎 大佐の指揮下で実施された第三次ドラム缶輸送作戦に参加していた陽炎型駆逐艦「野分 」が空襲により大破、駆逐艦3隻（長波、嵐、有明）の護衛下でショートランド泊地へ引き返した[ 101] [ 107] [ 23] [ 101] [ 108] B-17 が飛来して爆撃を行い、タンカー「富士山丸 」（飯野海運 、9,527トン）と東亜丸（飯野海運、10,052トン）が損傷したため、3隻（照月、嵐、涼風）はその救援にあたった[ 109]
12月11日、山本五十六 連合艦隊司令長官は各方面に「今次ノ駆逐艦輸送ニ期待スルトコロ極メテ大ナリ、有ラユル手段ヲ講ジ任務達成ニ努メヨ」と激励した[ 110] [ 111] 第二水雷戦隊 ）はガダルカナル島 への第四次輸送作戦のためショートランドを出撃する[ 113] 照月 以下、第31駆逐隊（長波 ）、第15駆逐隊（陽炎 、黒潮 、親潮 ）、第17駆逐隊（谷風 、浦風 ）、第24駆逐隊（江風 、涼風 ）、第4駆逐隊（嵐 ）、第27駆逐隊（有明 ）という編成で[ 111] [ 114] [ 115] 戦闘機 6機、急降下爆撃機 20機に襲われたが、損傷はなかった[ 116] [ 117] サボ島 南方で魚雷艇 の一隊と交戦し、第24駆逐隊（涼風、江風）により撃退と判断した[ 118] [ 111] エスペランス岬 に入泊させ、警戒隊は外洋で警戒にあたる[ 120] 単縦陣 の最後尾に位置していたという[ 121]
同日、魚雷艇母艦に率いられた米軍魚雷艇(PTボート) は、すでにガダルカナル島北岸に展開していた[ 125] [ 125] [ 125] [ 126] [ 127] 重油 や弾薬に引火して大火災となった[ 111] [ 128] [ 125]
被雷から約30分後、足を負傷した田中少将および第二水雷戦隊司令部は、駆逐艦「長波」（第31駆逐隊）に移った[ 129] [ 130] 有賀幸作 大佐（海兵45期、のち戦艦大和 艦長）が指揮する「嵐」が照月艦首部に接舷し、乗員救助と消火作業にあたった[ 111] キングストン弁 を開いて自沈を命じ、実行された。米軍魚雷艇の再襲撃や離脱距離を考慮したため、自沈を決定したともされる[ 133] [ 134] [ 136] 12月12日 午前2時40分に沈没した[ 137] [ 注釈 6] サボ島 の210度6.7海里地点[ 111] 南緯09度13分 東経159度46分 / 南緯9.217度 東経159.767度 / -9.217; 159.767 [ 138] [ 139]
「嵐」は照月乗員138名と第二水雷戦隊司令部員27名を救助するも、アメリカ軍魚雷艇が執拗に襲ってくるため救助作業を打ち切った[ 126] 折田常雄 中佐以下残る乗員156名（准士官以上17、下士官兵139）は、ボートでガダルカナル島カミンボ岬に上陸した[ 111] [ 140] 伊号第十九潜水艦 、伊号第二十潜水艦 、伊号第二十一潜水艦 、伊号第三十一潜水艦 、伊号第百六十八潜水艦 ）等に便乗し、同島を離れた[ 141] [ 142]
1943年（昭和18年）1月15日、「照月」は第61駆逐隊より外された[ 143] [ 144] [ 145] [ 146] [ 147]
※『艦長たちの軍艦史』353-354頁による。
折田常雄 中佐：1942年7月20日[ 16]
折田常雄 中佐：1942年8月31日[ 22] [ 145]
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Ref.C14121196500『昭和17年度 帝国海軍戦時編制(内示案) 昭和16.9.12/ 昭和17年度戦時駆逐隊・潜水隊・水雷隊・掃海隊・驅潛隊・通信隊・航空隊編制予定表 昭和17年度警備隊・防備隊附属艦艇及防備機関編制予定表 昭和17年度戦時艦船飛行機搭載予定表/第1表～第9表』。
^ 日本時間12月11日深夜に被雷して日付変更直後に沈没したため、12月11日沈没とする資料もある。福井「日本駆逐艦物語」290頁など。
^ 秋月型駆逐艦では当初装備されたのは水中探信儀のみで、水中聴音機は後日装備とされた。秋月への装備が1944年8月〜10月末の間であり、照月へは装備する機会がなかったと推測される。『歴史群像 太平洋戦史シリーズ23 秋月型駆逐艦』p39・p98〜99、『写真 日本の軍艦 第11巻』p158による。
^ 「(昭和17年)一二月一三日(日)晴(中略)一一日夜、ガ島の輸送。Sイ-3、敵魚雷艇に攻撃さる、消息不明。d×10の輸送、d×6は成功、「照月」敵魚雷艇と交戦、沈。ブナ方面、d×5の輸送成功。(以下略)」
^ 「(昭和17年)一二月一日(火)晴(中略)昨夜、サボ島東海面にて、我d×8敵有力部隊と夜戦。概報に依れば、敵B×1、C×1、d×2撃沈。我「高波」〔駆逐艦〕沈？尚戦果確むるを要す。」
^ 「(昭和17年)一二月八日(火)晴(中略)戦況、ガ島のd×10による輸送、敵機及魚雷艇の妨碍のため、揚陸止め引返す。」
^ 『日本の軍艦11』172ページでは「自沈」、遠藤, 199ページでは「自沈処置を取り、12月12日0240自沈確認」とある
^ 「○第二潜水隊(三〇-二二五四)伊十九潜、一九二五揚陸終了(中略)便乗者、往航海軍五名(通信員)、陸軍十五名。復航海軍五二名(主トシテ「照月」乗員)、陸軍七名。」
^ 「○乙潜水部隊(三-二二〇二)「ガ」島第二期第一次輸送情況/一.伊21潜十二-二六、伊31潜十二-二八、伊19潜一二-三〇〔行間書込〕魚雷艇ヲ認メズ、伊20潜十二-三一二〔行間書込〕以上四隻成功 伊168潜一-一〔行間書込〕敵魚雷艇発見、揚陸約六割ニテ避退。二、揚陸計約一〇〇「トン」。往航、海219名、陸39名。復航、海223(主トシテ「照月」乗員)、陸48名、便乗」
