悪魔の実(あくまのみ)は、漫画『ONE PIECE』に登場する架空の果実。
悪魔の実は「海の悪魔の化身」「海の秘宝」と言われる果実で、食べた者は特殊な能力が身に付く。人間はもちろん、魚人族や動物など、いかなる生物が食べても能力を得られる。悪魔の実には多くの種類が存在し、食べた実の種類に応じて様々な力を得ることができる。実を一口でもかじると、その時点で食べた者に能力が発現し能力者となるため、残りの実はただの果実となる(すなわち、1つの実から複数の能力者が誕生することはない)[1]。実を直接食べず、実から抽出したエキスを摂取することでも能力を得られる。味は非常に不味い。この果実を食べた者を「悪魔の実の能力者」と呼ぶ(作中では「能力者」と略されることが多い)。悪魔の実の能力者は、その能力によって「○○人間」とも呼ばれる[注 1]。能力は使い方と訓練次第で強化することができ、技の威力や効果を及ぼす範囲などを拡大させることが可能。また、能力には相性や上下関係があり、特定の能力に対して高い効果を発揮するものも存在する。
悪魔の実は伝説とされるほど希少な存在で、その存在自体を知らない者や、噂程度にしか知らない者も多い[注 2]。チョッパーや幼少期のロビンのように、能力者ゆえに周囲から迫害されることもある。一方、世界中の海賊が集まる「偉大なる航路」には、数多くの能力者が存在する。その絶大な効力と希少さから、売れば最低でも1億ベリーの値がつく[注 3]。
悪魔の実の能力者に対する対抗策としては、その能力の弱点を突くこと、海水や海と同じエネルギーを発する鉱石である「海楼石」を用いること[注 4]、「武装色の覇気」[注 5]がある。悪魔の実の能力は能力者の肉体のみならず、衣服などにも作用する場合がある[注 6]。
同じ悪魔の実が同時期に世界に2つ存在することはない[2]が、悪魔の実の能力者が死ぬと、世界のどこかにその能力を秘めた悪魔の実が復活し、その実を食べた者が新たな能力者となる。詳細不明ながら、黒ひげ海賊団は、能力者を殺しその能力を奪い取る「能力者狩り」を行っている。過去に実在した悪魔の実の名前や能力を記した「悪魔の実の図鑑」が存在する[注 7][3]。ただし、図説まで載っている実は少ない[3]ため、実際に食べるまで実の名前や能力を知るのは難しい。
悪魔の実の色や形状には特に統一性がないが、果皮に唐草模様のようなグルグル模様がついているのが特徴[3]。名称の通り果実であるが、どのようにして収穫されるのかは現在のところ作中では明かされていない[注 8]。
Dr.ベガパンクは悪魔の実について、「誰かが望んだ『人の進化』の可能性であり、不自然ゆえに『自然の母』である海に嫌われる。能力者は誰かが思い描いたいくつもの異次元を生きる者達」という仮説を立てている。
悪魔の実には共通して以下のようなデメリットが存在する。
Dr.ベガパンクは、悪魔の実の研究で大きな実績を挙げている。例として以下のものが挙げられる。
チョッパーは、悪魔の実の変形の波長を狂わせる劇薬「ランブルボール」を開発し、「ヒトヒトの実」の新たな変形点を発見している。
シーザー・クラウンは「血統因子」を応用して、動物系の人造悪魔の実「SMILE」の原料となる薬品「SAD」を製造している。
同種の能力を持つ悪魔の実の間には、上下関係がある場合がある。ただし、能力の強さが能力者の強さと必ずしも一致するわけではない[5]。作中で判明しているのは以下の4例。
悪魔の実の能力は、稀に「覚醒」を遂げることがある。覚醒の条件は、能力者の心身が「能力」に追いつくこと。覚醒した能力者は通常の能力よりも更に強大な力を扱えるようになるが、能力によっては体力をより大きく消耗し、動物系の場合は人格を取り込まれてしまうことが多いなど、相応のリスクも抱えている。超人系は能力が自身以外に影響を与え、動物系は特殊な変身が可能になるが、自然系の場合は現時点では不明。作中で登場した能力者は以下の通り。
悪魔の実はその能力によって、人智を超えた能力が身に付く「超人(パラミシア)系」、動物への変身能力を持つ「動物(ゾオン)系」、身体を自然物に変化させ操れる「自然(ロギア)系」の三系統に大別できる。
作中には多数の悪魔の実の能力者が登場するが、「悪魔の実」そのものが描写されているのは一部のみである。『ONE PIECE magazine』では「悪魔の実図鑑」と題して、作中で描かれていない悪魔の実の外見を紹介している。作中に登場した実の色はアニメより。
超人(パラミシア)系は、人智を超えた能力が身に付く種である。確認されている数は最も多い[6]。得られる能力は多種多様で、動物系と自然系以外は全て超人系に分類される[7]。能力者の身体そのものが変化する場合もあるが[7]、基本的にはその原形を留める能力である[6]。物質や他の生物に影響を及ぼす能力の中には、能力者が気絶または死亡すると効果が失われるものがある。能力者や対象者の体力および「寿命」を削る能力もある。
動物(ゾオン)系は、動物への変身能力が身に付く種である。能力者は、通常時の形態である「人型」、完全に動物の姿となる「獣型」、中間形態である「人獣型」の計3つの形態に変形できる。
能力者の身体能力が純粋に強化される唯一の種。人獣型に変形すると、能力者の身体能力をベースにその動物並に身体能力が向上し、個々人の操作次第で姿形を変えられる[41][注 19]。肉食種は草食種と比べ凶暴性が増す。無生物に食べさせた場合、物が意思を持ち、エサも食べるようになる。
動物系の実の多くは、その動物の生物学的分類に基づいて、複数の「モデル」に分けられている(あくまで便宜的な区分であり、モデルが違えば全くの別の実である[2])。動物系の中でも珍しい種として「古代種」、より希少な種として「幻獣種」が存在する。
五老星曰く、「動物系の悪魔の実には意志が宿る」とのことだが詳細は不明[注 20]。
絶滅した古代の動物に変身することができる非常に珍しい種。他の動物系と比べて耐久性が高い。
伝説上の動物に変身することができる種。通常の変身能力に加えて、超人系や自然系のような特殊能力が使えるようになる。世界でも数が最も少なく、自然系より更に希少な種とされている。
自然(ロギア)系は、身体を自然物そのものに変化させ、自在に操れるようになる種[6]。数が少なく、三種の中では最も希少。
能力者の実体を原形を留めない自然物に変えることで[52][7]、通常の物理攻撃を受け流し無効化できる[6](ヤミヤミの実は例外)。その絶対的な防御力と、広範囲に及ぶ自然現象さながらの攻撃力から、三種の中でも最強種とされる[6]。
能力の制御は非常に難しく、慣れていないと体が勝手に自然物に変化してしまう。質量をあまり持たない自然物に変化する自然系は、ある程度の飛行能力も併せ持つ。
科学的手法により人工的に造られる悪魔の実。現在のところ、動物系の実のみが登場している。円形の模様がついているのが特徴。能力者は泳げなくなるというデメリットは共通する。
かつてDr.ベガパンクは、「ウオウオの実 モデル“青龍”」の能力者であるカイドウから血統因子を抽出し、人造悪魔の実を作った。巨大な龍に変身でき、強力な火を吐けるなど能力はほぼ完全に再現されたが、成分を完全再現することはできなかった[注 24]。ベガパンクはこの実を「失敗作」と見なし、世界政府から引き渡すよう要請されても応じなかった。この実はパンクハザードの研究所に保管され、後に光月モモの助によって食べられた。
ベガパンクによると、特殊な実も莫大な時間と金があれば再現可能だという。ただし、「覚醒」は未確認で自然系も再現には至っていない。超人系は、能力者の血液から生成した特殊な血液「グリーンブラッド」を投与することで再現が可能。セラフィムは、この技術によって能力を得ている。
「SMILE(スマイル)」は、ドンキホーテ・ドフラミンゴがシーザー・クラウンと手を組んで製造している、動物系の人造悪魔の実。通常の動物系能力やベガパンクの人造悪魔の実とは異なり、SMILEの能力者は体の一部を動物のある部位に変えられたり、常時体の一部が動物のものに変化したりする。独立した意思を持つ動物がSMILE能力者の体に発現して、能力者自身に不利益を与える場合がある。SMILE能力者が自由に変形できるかどうかは食べた実による[55]。本物の悪魔の実と違い、SMILEは普通の果物の味がする[56]。
ドレスローザの地下にあるドンキホーテファミリー所有の工場で製造される。工場内の河川にシーザーが製造する薬品「SAD」を流し込み、それを果樹に吸わせて、あらゆる植物を育てることができるトンタッタ族の力で栽培する。トンタッタ族曰く「とても不自然な果実」で、一期での収穫量の内、SMILEとして使える実は10分の1以下。実を食べても能力を得られる確率は約10%である。能力を得られなかった者は、泳げなくなることに加え、不完全な薬品である「SAD」の副作用で「悲しみ」や「怒り」の表情を失い、ただ笑うことしかできなくなるリスクを持つ。このリスクが「SMILE」の名の由来となっている。一口かじられた失敗作のSMILEには副作用だけを伝達する効力が残っており、他の者が食べてもリスクを負う。
原料の「SAD」は様々な動物の血統因子を混ぜた液体であり、血統因子は現存する生物からしか抽出できないため、シーザーの科学力では幻獣種や超人系・自然系のSMILEは作れなかった[18]。製造過程に本物の悪魔の実は関わっていないため、通常の悪魔の実と異なり同種の能力者が複数存在する[18]。
百獣海賊団のカイドウはSMILEを使い、何百人もの能力者軍団「ギフターズ」を組織している。ワノ国の将軍オロチは、おこぼれ町の住人に一口かじられた失敗作のSMILEを食べさせることで、町を笑顔が絶えない町へと作り変えた。
パンクハザード編でSADの製造装置が、ドレスローザ編でSMILE工場がそれぞれ破壊された。さらに、シーザーがルフィ達に捕まり、ドンキホーテファミリーが壊滅したことで、SMILEの製造と取引は完全に停止した。
現在までに名称が判明していない悪魔の実を列挙する。ただし、悪魔の実に由来しない能力も含まれている可能性がある。名前が太字で書かれている者は、悪魔の実の能力者であることが何らかの形で明示されている者。
原作以外の派生作品で登場した悪魔の実。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで行われている「ワンピース・プレミアショー」に登場する能力者。
2013年11月、大手コンビニ「セブン-イレブン」で、悪魔の実を再現したパン「ゴムゴムの実」が数量限定で販売された[94]。