同心円モデル(どうしんえんモデル、英語: Concentric ring model)は、別名バージェス・モデル(Burgess model)といい、都市の内部構造を説明するモデルのひとつである[1]。アメリカ合衆国の都市社会学者アーネスト・バージェスによって1925年に提示されたモデルで、同心円モデルの中心の中心業務地区(CBD)から外側に向けて、卸売・軽工業地区、低級住宅地区、中級住宅地区、高級住宅地区の順で、土地利用が変化していく[2]。同心円モデルはシカゴをモデルとしている[3]。
バージェスは、これまで展開していた人類生態学(英語版)の諸理論をシカゴに当てはめ、都市地域における様々な社会集団の分布を説明する初めてのモデルを作り上げた。
同心円モデルでは、以下の5つの地帯が設定される[1]。
同心円モデルの背景には、アメリカ合衆国における移民を考える必要がある[7]。都心部で、高い語学力を要さない単純労働や肉体労働に従事する移民は、自家用車を通勤に要さない遷移地帯に居住するが、語学力の向上、収入の上昇ともに、住環境のよい労働者住宅地帯に移動していく[7]。
また、通勤にかかるコストの関係で、都市の外縁部に居住できるのは高所得者になる[8]。
このモデルは結果的に、1世紀前にヨハン・ハインリヒ・フォン・チューネンが地方における(おもに農地としての)土地利用について導出したモデルを、都市に当てはめたようなものとなった[9]。同心円モデルは、ホーマー・ホイトが提唱したセクター・モデルや、多核心モデルと対置されるものである。
バージェスは、CBDからの距離と、住宅地ごとの住民の富との間には、一定の相関があり、比較的裕福な家族は中心業務地区からかなり離れた場所に住みたがる傾向がある、と考えていた。バージェスはまた、都市の成長が進むに従ってCBD自体が外へ拡大するため、その外側に隣接する地帯が同様に外へと押し出される、とも考えた。
同心円モデルは、伝統的に認識されていた、ダウンタウン - ミッドタウン - アップタウンの3分類、すなわちCBDとしてのダウンタウン、裕福な住宅地郊外地帯としてのアップタウン、その中間のミッドタウン、という分類よりも詳細なものであった。
バージェスの研究は、付け値地代理論の地代曲線を踏まえていた。この理論によれば、人々がどれくらいの金額を土地に対して負担するかによって、同心円が導出される。この金額は、ある場所をある用途に用いる場合に期待される利益額に基づいて決まる。都市中心部には人が多く集まるので、小売業にとって利益性が高い。製造業は土地にはさほどの大きな額を支払わず、もっぱら労働者の通勤の便や、原料、製品など物資の出入りにだけ関心を寄せている。住宅地としての土地利用は周辺部に位置することになる。
同心円モデルは、当時の都市地理学者の多くから批判を浴びた。第一に、このモデルはアメリカ合衆国以外では、特に歴史的文脈が異なる国々においては、あまり当てはまらない。合衆国の中でも、交通や情報通信の発達によって引き起こされた変化や、グローバル経済の変質などの結果、都市がはっきりした「地帯(ゾーン)」にきれいに区画されることはなくなった。(Los Angeles School of Urban Analysis、参照)
日本の大都市では同心円モデルを適用できないこともある[10]。この背景として、シカゴとは異なり、日本の大都市では工業化・都市化の前から歴史的に都市が存在していたことが指摘される[10]。
また、日本では高級住宅地が郊外に集中しているともいいきれない[11][注釈 1]。
Lokasi Pengunjung: 3.144.123.8