(319) レオナ [ 8] (英語 : 319 Leona )または レオーナ [ 9] は、小惑星帯 内を公転 している小惑星 の一つである[ 1] 。2023年 12月12日 にオリオン座 の1等星であるベテルギウス の掩蔽 を起こしたことで知られる[ 10] 。
1891年 10月8日 にフランス の天文学者 であったオーギュスト・シャルロワ によって発見された[ 1] 。フランス語 で女性に対して使われる名前が命名されているが、具体的な人物に因んで命名されたものなのかは分かっていない[ 11] 。
分類と軌道
(319) レオナの軌道
レオナは、小惑星帯 の中でも比較的外側である、太陽 から 2.7 〜 4.1 au 離れた軌道を約6年余りの公転周期 で公転 している。その軌道離心率 は約0.22で、黄道 に対する軌道傾斜角 は約11度 となっている[ 1] 。レオナの軌道要素 から、キュベレー族 と呼ばれる小惑星族 に分類される[ 注 1] 。
特徴
スペクトル分類
レオナのスペクトル分類 は、広視野赤外線探査機 (WISE) による観測からは暗く赤みがかったP型小惑星 に[ 4] 、パンスターズ による測光 観測からはX型小惑星 に分類されている[ 6] 。一方で、Collaborative Asteroid Lightcurve Link が運用している Astroid Lightcurve Database 上では炭素 質のC型小惑星 であると仮定されている[ 5] 。光度曲線の解析により、レオナの自転周期が 430 ± 2 時間 であることが明確に求められ、自転による明るさの変動は0.5等級 であった[ 3] 。
低速自転
2016年 10月、アメリカ のOrgan Mesa天文台 の天文学者 Frederick Pilcher、イタリア のBalzaretto天文台 の Lorenzo Franco、およびチェコ のオンドジェヨフ天文台 のペトル・プラヴェツ による測光 観測からレオナの自転 による光度曲線 が得られた[ 3] 。
これによりレオナは。自転周期が判明している既知の小惑星の中で最も自転が遅い小惑星の上位100個 に入ることとなった。さらにこの観測においては、430時間の自転周期とは異なる周期を持つ非主軸回転 (non-principal axis rotation) も検出された。この回転の存在により、レオナの自転周期にはこれまでに測定された最も長い小惑星の自転周期の一つである 1084 ± 10 時間という代替候補解も得られている[ 3] 。この周期の場合、自転周期が現在知られている小惑星の中では3番目に長いことになる(List of tumblers も参照)。
それまでの観測では、約6時間から約15時間というはるかに短い自転周期であると考えられていた[ 14] [ 15] [ 16] 。これは自転速度が遅いこと、特に非主軸回転をする天体を観測する際の複雑さを示している。このような天体の測光測定の手順に関する詳細な説明が、Pilcher らによって提供されている[ 3] 。
直径とアルベド
日本 の観測衛星あかり や、アメリカ航空宇宙局 (NASA) のNEOWISE の観測によると、レオナの直径は 49.943 ~ 89.00 km と測定されており、表面のアルベド は 0.02 ~ 0.085 とされていた[ 4] [ 17] [ 18] 。Collaborative Asteroid Lightcurve Link では、レオナの絶対等級 が10.25等級であることに基づいて、アルベドを0.0304、直径を 67.95 km と導出している[ 5] 。一方で、2023年9月の掩蔽 観測からは、レオナは平均直径が 66 km の楕円体の形状をした天体であることが示されている[ 2] 。
2023年のベテルギウスに対する掩蔽
SOLEX (英語版 ) と呼ばれるソフトウェアを使って予測された、2023年12月12日のレオナによるベテルギウスの掩蔽が観測される地域
2023年 12月12日 1時9分から1時27分(協定世界時 )頃にかけて、レオナによるオリオン座 のベテルギウス への掩蔽 がヨーロッパ 南部、トルコ 、ギリシャ 、シチリア島 周辺から観測された[ 10] 。このときのレオナの見かけの等級 は14等級 で、ベテルギウスを11.6秒間に渡って3等級暗くさせると予測されていた[ 19] 。この掩蔽の特性全体は当初は不確かで、地球上の非常に狭い領域でのみ掩蔽が発生するとは考えられていたが、その正確な幅と位置についてはレオナの大きさと経路に関する正確な情報が不足していたため、当初は不明であった[ 20] 。その後の調査から[ 21] 、タジキスタン やアルメニア 、トルコ、ギリシャ、イタリア 、スペイン 、大西洋 北部、フロリダ州 周辺、そしてメキシコ の一部までの狭い地域に渡ってレオナがベテルギウスの一部を掩蔽する金環食 (リング・オブ・ファイヤーとも呼ばれる)が観測されると予測が改良された[ 22] 。この現象によって観測される光度曲線 の研究からは、ベテルギウスの表面にみられる対流セル の粒度レベルに至るまでの明るさの分布を理解するのに役立つとされ、これまでの研究では調べることが出来なかった巨星 に関する詳細なデータがもたらされるとされている[ 23] 。
2023年9月に発生したレオナによる別の掩蔽観測からは、形状がわずかに楕円形であることが示され、レオナの予備的な3Dモデルの構築が可能となった。このモデルから、その大きさが約 80 × 55 km であることが確認されているため[ 2] 、レオナの地球から観測したときの見かけの大きさは約 46 × 41 ミリ秒 になると予測されている[ 23] [ 24] [ 25] 。ベテルギウスの空での見かけの大きさは約40ミリ秒だが、大気 中における光の拡散により、約50ミリ秒程度に見える可能性がある。ベテルギウスがレオナよりも大きく見える場合、ベテルギウスからの光は完全には遮られないが、そうでない場合は、掩蔽を観測できる地域の中心線の周りに幅が数 km 程度の狭い「皆既食帯」が発生し、この地域内ではベテルギウスが5秒から15秒の間に渡って完全に消えたように見えると予測されていた[ 23] 。
ベテルギウスほど明るい恒星が小惑星によって掩蔽されることは非常に稀であるため[ 26] 、掩蔽が観測されると予想された多くの地域で観測が行われた。astroar曇天により掩蔽が観測できなかった地域もあったが、イタリア やスペイン などではレオナの掩蔽によるベテルギウスの「減光」が観測され、このことから、レオナよりもベテルギウスの見かけの大きさが大きかったため、この掩蔽は「金環食」となったことが示唆されている[ 9] 。国際掩蔽観測者協会 (IOTA) のヨーロッパ 地域部門の公式X(旧 Twitter) では、各地で観測されたベテルギウスの減光を捉えた映像や光度曲線の投稿がまとめられている[ 9] [ 27] 。
脚注
注釈
^ a b キュベレー族には、太陽からの軌道長半径 が 3.27 ~ 3.70 au の範囲内、軌道傾斜角 が30度未満、軌道離心率 が0.3未満の条件を満たす小惑星が分類されるという定義が示されている[ 12] [ 13] 。レオナは全ての条件を満たしており、これらの条件のみで考慮するのであればキュベレー族に分類されると考えることが出来る。
出典
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関連項目
外部リンク