古生物地理的評価がフィル・ベルやスティーヴ・サリスバリーらによって行われ、オーストラリアのライトニング・リッジの南西部から産出した未命名のメガラプトル類(大衆メディアにより"Lightning Claw"と呼称、おそらくラパトルのシノニム)の記載が加えられた。当該の研究から、メガラプトル類は最後期ジュラ紀(約1億5000万年前 - 1億3500万年前)にアジアで出現し、前期白亜紀(約1億3000万年前 - 1億2100万年前)にゴンドワナ大陸のメガラプトル科に繋がる系統が多様化し、オーストラリアを通じて後期白亜紀のゴンドワナのメガラプトル科の放散に至ったとされる。また、当該の標本から、メガラプトル類の系統的位置がティラノサウルス上科とカルカロドントサウルス科のいずれに置かれるのかといった系統的検証が可能となった[11][17]。これはLamanna et al. (2020)により拡張された。Lamanna et al. (2020)では、メガラプトル類の分布域拡大はオーストラリア大陸から南極大陸を介して南アメリカ大陸へ至ったとされ、またそれに伴う体サイズの増大があったとされる。メガラプトル科の体サイズは白亜紀末の大量絶滅まで維持された[18]。
分類
初期の仮説
メガラプトル類を構成する属は様々な獣脚類のグループに置かれてきたが、2010年に一つの分岐群として纏められた。メガラプトルとフクイラプトルは1990年代に発見された際それぞれ独立に大型のドロマエオサウルス科恐竜と考えられていたが、これは前肢の大型の鉤爪が後肢のものとして誤同定されたためであった。これらの誤りは、ホロタイプの観察(フクイラプトル)や新標本の発見(メガラプトル)を経て修正された。2000年代中盤まで、彼らは基盤的テタヌラ類と考えられ、主にアロサウルス上科に置かれた。Smith et al. (2008)ではオーストラリアから産出したメガラプトルに類似する尺骨が報告され、メガラプトルはスピノサウルス上科として扱われた。同年に巨大なコエルロサウルス類として記載されたオルコラプトルは、より小型のコンプソグナトゥス科との類似性を複数示していた。アエロステオンはアロサウルスに近縁な恐竜、アウストラロヴェナトルはカルカロドントサウルス科の姉妹群に置かれた。
Fernando Novas et al. (2012)では新たな類縁仮説が提唱された[21]。Novasらはネオヴェナトルとメガラプトル類を結び付ける形質が2010年の論文で示唆されたよりも遥かに広範であると主張し、コエルロサウルス類の収斂がメガラプトル類とコエルロサウルス類の正当な繋がりを意味すると提唱した。さらに、彼らはBenson, Carrano, & Brusatteの研究ではコエルロサウルス類のサンプル数が僅か3であることを指摘した。Novasらの主張は2013年に論文化され、メガラプトル類はカルカロドントサウルス類からコエルロサウルス類に移され、ティラノサウルス上科の派生的位置に置かれた。Novas et al. (2013)ではネオヴェナトル科から除去されたメガラプトル類はメガラプトル科として命名され、基盤的なフクイラプトルを除くメガラプトル類が全て包含された。彼らはキランタイサウルス、ネオヴェナトル、シアッツがメガラプトル類である証拠が乏しいとした一方、ティラノサウルス上科のエオティラヌスをメガラプトル類に挿入しなかった。彼らはメガラプトル類とティラノサウルス科が近縁であると仮説を立てたが、メガラプトル類の系統がティラノサウルス類とは逆の方向に分岐した機能的な形態を持つことを指摘した。ティラノサウルス科の前肢が小型で頭部が大型かつ強力である一方、メガラプトル類は前肢が大型で、鉤爪も巨大であり、顎は相対的に弱い[8]。新たに発見されたメガラプトルの幼体の頭蓋骨は2014年に記載され、ディロングといった基盤的ティラノサウルス上科の頭蓋骨との類似性ゆえに仮説を補強した。とはいえ、メガラプトル類がカルカロドントサウルス類と共通する形質を多く持つことも事実であり、分類は依然として不確かである[9]。
以下のクラドグラムはメガラプトル類をティラノサウルス上科に置くNovas et al. (2013) の仮説を支持するものである。クラドグラムが準拠するPorfiri et al. (2014)では、メガラプトルの幼体標本が記載された。グアリコ、ムルスラプトル、トラタイェニアは当該の研究の間にまだ記載されていなかった[9]。
2016年、ノヴァスらはメガラプトル類の手の解剖学的研究を発表し、彼らの分類学的疑問への手がかりにしようとした。彼らはグアンロンやデイノニクスといった派生的なコエルロサウルス類の手に見られる重要な形質がメガラプトル類では失われていることを発見した。また、その代わりにメガラプトル類の手にはアロサウルスな基盤的なテタヌラ類に見られる原始的な特徴が多く残されていた。しかし、依然としてメガラプトル類をコエルロサウルス類の系統として支持する形質も多く存在する[16]。2016年のBell et al.の研究ではメガラプトル類をティラノサウルス上科とする仮説が支持されているが、これはPorfiri et al. (2014)ではメガラプトルの頭蓋骨のデータが追加されていることと、Benson, Carrano, & Brusatte (2010)よりも幅広くコエルロサウルス類のデータが用いられているためである[11]。Motta et al. (2016)もこれに同意し、断片的なパタゴニアの獣脚類であるアオニラプトルを非メガラプトル科のメガラプトル類として提唱した。彼らの研究ではアオニラプトルとデルタドロメウスおよびバハリアサウルスの類似性が指摘され、これら2属の基盤的メガラプトル類とされ、3属でバハリアサウルス科を構成しうるとされた[2]。2019年のムルスラプトルの再記載では、Rolando, Novas, & AgnolínはApesteguia et al. (2016)のデータセットを用い、メガラプトル類をティラノサウルス上科における多分岐とした[22]。
2016年、メガラプトル類の類縁関係に関してPorfiri et al. (2014)から派生して第3の仮説が提唱された。Sebastian Apesteguíaらは新たな獣脚類グアリコを記載し、グアリコとデルタドロメウスをNovas et al.のデータセットに追加して修正も行い、系統解析を実施した。メガラプトル類はNovas et al.のデータセットで当初支持されていたティラノサウルス上科から取り除かれ、アロサウルス上科は側系統群とされた。メガラプトル類は伝統的なコエルロサウルス類と近い位置に置かれた[6]。
Porfifi et al. (2018)ではApesteguía et al. (2016)のデータセットが拡張され、新たに2つのメガラプトル科が追加された[10]。結果は異なったものの、手法はApesteguia et al. (2016)と実質的に同じであった[6]。追加された属の一つはグアリコと同時期に記載されたムルスラプトルで[13]、もう一つは新属トラタイェニアであった。Porfiri et al. (2018)はトラタイェニアとムルスラプトルをメガラプトル科に置き、フクイラプトルをメガラプトル類の最も基盤的位置に置いた。しかし、メガラプトル類はコエルロサウルス類の最も基盤的な位置でキランタイサウルスやグアリコおよびティラノラプトル類と共に多分岐をなした。非コエルロサウルス類獣脚類も、ネオヴェナトルの位置が不安定なため、大きな多分岐が形成された。またPorfifi et al. (2018)はMotta et al. (2016) のバハリアサウルス科の設立について言及し、グアリコがデルタドロメウスとの類似点からバハリアサウルス科である可能性を指摘した。その場合、メガラプトル類はこれまで考えられていたよりも遥かに前肢の多様性が高く、グアリコは非常に小さくティラノサウルス科に似た前肢を持っていたことになる[10]。
2018年、Delcourt & Grilloはティラノサウルス上科に焦点を当てた研究を発表した。彼らはPorfiri et al. (2018)の解析にスコアリングの修正と新たなデータの追加を行い、解析を実行した。結果として、ネオヴェナトルは単系統のアロサウルス上科に置かれ、メガラプトル類は非ティラノサウルス上科の基盤的コエルロサウルス類とされ、キランタイサウルスやグアリコと近縁な位置に置かれた。ムルスラプトルはフクイラプトルの次に基盤的なメガラプトル類とされた[24]。
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