『バベルの塔』(バベルのとう)は、ナムコが開発し1986年7月18日に発売されたファミリーコンピュータ用アクションパズルゲーム。「ナムコット ファミリーコンピュータゲームシリーズ」第16弾。
旧約聖書の『創世記』に登場するバベルの塔をモチーフとしたゲームであり、主人公のインディー・ボーグナインを操作して塔の上階を目指す内容となっている。
1986年には任天堂VS.システム対応のアーケードゲームとして稼働開始し、1997年11月には非公式ではあるがX68000向けに移植、携帯アプリ向けには2003年に「バベルの塔」が、2006年には「裏バベルの塔」(後述)が移植、2014年にはWii Uのバーチャルコンソールソフトとして配信された。なお、従来のタイトル画面のロゴは「BABEL」だったが、Wii U版では「THE TOWER OF BABEL」に差し替えられている。
日本のみで発売された作品だったが、2023年にNintendo Switch向けのサービス『ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online』の中で初めて海外でもリリースされた。海外版のタイトルは『Mystery Tower』となっている。
あらすじ
はるか昔、古代バビロニアの人々は、神に近づくことを夢見て高い塔の建造を試みた。それがバベルの塔となる。バビロニアの神々が地上に降臨するための「神の階段」、そして塔の頂上には、神々が地上に赴く時に立ち寄ると信じられた美しい空中庭園がつくられたという。バビロンの空中庭園に関しては古代世界の七不思議とされているが考古学者のインディー・ボーグナインは謎を解き明かす事に興味を持ち、塔の探検に出発する。[2]
システム
全64面のフロアを、L字型のブロックを並べ替え、組み合わせて階段を作り、敵を回避しながら出口から脱出してクリアしていくゲーム。
フロアによっては出口を封印する水晶玉が置かれており、それを全て回収しないと扉は開かない。
主人公のインディーにはブロックを持ち上げる度に消費されるパワーが設定されており、ブロックを持ち上げられる回数が制限されているため、ブロックを並べ替える時にはよく考えて動かさなくてはならない。
ブロック操作の基本は、向きを変える、階段状に積む、積んだブロックを落とす、であり、これを更に発展させると半段差や半スペースを利用して、巧みにブロックを積んでいったり、下にあるブロックを引っこ抜くことで、階段状に積みあがった複数のブロックをそのまま落としたりすることができ、パズルとしての奥深さが増す。
移動手段には上下左右に移動でき、ブロックも落とせるツタ、上下に移動する雲、左右に移動する絨毯がある。また、アイテムとしてパワーを回復させる壺(表のみ)、インディーのスピードを上げる王冠、ウル(後述)を5回潰すと現れ、一定時間無敵になるダイヤモンド、ブロックをすり抜けられるランプ、スピードが最高になるコメットがある。
8面ごとに、「壁画の間」と呼ばれるフロアがある。[3]そのフロアで特定の行動をしたときに現れる壁画「ビッグパスワード」があり、最終面クリア後にそれまで集めた8つのビッグパスワードを正確に入力しないとエンディングを見ることができない。このビッグパスワードを出すための条件はゲーム中では全く示されていない(攻略ヒントは一切無く、ひたすらプレイヤーの勘に頼るしかない)。
タイトル画面でとあるコマンドを入力することにより「BABEL-PRO」というタイトル画面が青色の裏面(通称「裏バベルの塔」)をプレイすることができる。表面64面を難なくクリアできる人に適した難易度を誇り、壺でのパワー回復ができない分、より本格的なパズルを堪能できる(特に高難易度なのは,裏27面及び裏63面である。)。
面選択とパスワード
- ゲームスタート時、16〜64面までのゲームラウンドの選択をした場合には、スタートボタンを押すとパスワードの入力状態となる。
- 十字ボタンの上下を使用し、石、ツタ、出口、ブランク、の4種類のパスワードを入力。正しければ、ABボタンのどちらかを押すとスタート。間違っているとやりなおし。
ミス
インディーが以下の状況になったときはやられてミスとなり、残り数をひとつ失う。残り数が1のときにミスをするとゲームオーバーとなり、タイトル画面に戻る。
- 敵と接触したとき。
- 各フロア最下段のとげに墜落したとき。
- 落下する石の下敷きになったとき。石を持ったまま飛び降りて石と一緒に着地したときも下敷きとなる。
- 雲に乗って移動中、雲と床や石の間にはさまれたとき。
- パワーが0のときに石を持ったとき。
- 魔法のランプを持って石を通り抜けている途中でBボタンを放したとき。
- セレクトボタンを押してやりなおし(ギブアップ)したとき。
- 最終面クリア後のビッグパスワードを間違えたとき(このときは残り数にかかわらずゲームオーバーとなる)。
得点
各フロアの出口にたどりついた後、得点計算モードになり、集計される。
- GRADE POINT - 面をクリアするともらえる。1〜7面まで1,000点、以後8面毎に1,000点増えていく
- POWER POINT - 残りパワー1ポイントにつき100点
- 宝物
- 壺 - 1個につき100点
- 王冠 - 1個につき200点
- ダイヤモンド - 1個につき500点
- 魔法のランプ - 1個につき1,000点
アイテム
- 壷
- ゲーム中、エリアの各所に現れる白い壷。取るとインディーのパワーが1回復する。
- なお、前述の『裏バベルの塔』では壷をとってもパワーの回復が行われない。
- 王冠
- ブロックを持ち上げるとまれに現れる。取るとインディーの歩く速度が上昇する。
- ダイヤモンド
- 敵を多数倒すことにより現れる。取ると一定時間の間、無敵になる。無敵になるとインディーの色が点滅する。[3]
- 魔法のランプ
- たくさんのブロックを一度に落下させることにより現れる。取るとフロアをクリアするかミスをするまでの間、Bボタンを押したままでブロックをすり抜けられるようになる。
- ファミコン版では、ブロックに重なった状態でBボタンを離すとミスになる。
- 流れ星
- 持ち上げたブロックの上でウルを長時間乗せていると画面上方から現れる隠しアイテム。取るとインディーの歩く速度が大幅に上昇する。
登場キャラクター
- インディー・ボーグナイン
- 主人公。考古学者であり冒険家でもある。空中庭園を目指すべく、バベルの塔を登る。
- ペンネームは「コギト・エラスムス」。
敵キャラクター
- ウル
- バベルの塔に住み着く地縛霊。執拗にインディーを追いかける。ブロックで潰すことにより倒すことはできるが、一定時間後に復活する。
- ファミコン版でのウルのグラフィックは一種類のみだが、ナムコアンソロジーのアレンジ版では男女のグラフィックが用意されている。基本的には邪魔者だが、面によっては彼(彼女)がいないとクリアできない面(FC版裏フロア14、50ほか)も存在する。
- コウモリ
- 山なりに跳ね回るコウモリ。床の切れ目をすり抜けることがある。
- バベルズ
- 岩の化け物。遅いスピードで歩き回り、床の切れ端にくるとブロックを作る性質を持つ。一回倒されると復活しない。
- バベルズが生み出すブロックを使用しなければクリアできない面があるため、敵でありながら味方でもある存在と言える。
その他
- スペース
- インディーや敵キャラクター、ブロックなどが通過する何もない空間。何もない状態だと真下に転落する。
- 床
- インディーとウルが歩いたり、ブロックを置いたりできる足場。
- ツタ(ハシゴ、ロープ、鎖)
- インディーとウルが昇降できる道具。また、上と中の部分を歩くこともできるが、真下に床がない場合はブロックを持ったまま歩くことはできない。また、ブロックはこの道具に干渉されない(スペースと同じ扱い)。
- ブロック
- 本作品の主役となる鉤型の石で、インディーが持ち運びできる。階段状になった内側はそのまま歩くことができる(ブロックを持ちながら歩くことも可)。階段状になったブロックは同じ向きだとそのままつなげることができる(逆は不可)。また、敵のバベルズが一定法則で作り出す。落ちてきたブロックに潰されたり、ブロックを持ったまま一段差以上落ちたりするとインディーは死ぬ(途中でブロックが引っかかる場合はこの限りではない)
- 扉
- インディーが目指す場所で、足場がないと入れない。封印されている扉は画面上の水晶球を全部回収する必要がある。ブロックは重なり、少しでもブロックに隠れると入ることが出来ない。また、ブロックを持ったままでは入ることができない。
- 水晶球
- インディーのみが回収することができる宝物で、これを回収しないと扉の封印が解けない。扉と異なり足場は必要なく、ブロックの持ち運びに関係なく、また半分触れるだけで取ることができる。ブロックの重なり、ツタの中に置かれている場合もある。
- 絨毯
- 左右に移動する魔法の絨毯。ブロックを持ったまま乗ることもできる。真ん中にブロックを置くと千切れてしまう。
- 雲
- 上下に移動する魔法の雲。ブロックを持ったまま乗ることもできる。床に挟まれたり、真下の針山に接触したりするとインディーは死ぬ。床手前でブロックと重なると雲が床をすり抜けてしまうバグがある。
他機種版
一覧
ナムコアンソロジー版
ナムコアンソロジーのvol.1に収録されており、従来のFC版(クラシック版)とアレンジ版のバベルの塔をプレイできる。以下アレンジ版の特徴を挙げる。
- ステージの刷新が多く、新作面がかなり多い。また、FC版では水晶球の数は全部で3個だったが、アレンジ版はそれ以上の個数が登場する面がある。
- FC版ではフロアに天井が存在したが、アレンジ版は天井が存在せず、最上段にブロックがあった場合、その上を歩いて通過することができる。しかし、天井にブロックを設置することはできない。
- 背景やBGMに種類があり、また石(木や金属、レンガのものもあるため、本作ではブロックと呼ぶ)やツタ(ツタの代わりに梯子、ロープ、鎖が登場することも)のデザインが異なることがある。
- パスワードの入力が不要。クリアしたフロア数だけセーブされる。
- ウルのスピードが遅い。
- インディーがブロックを抜き取ったとき、宙に浮かんでいるブロックの落下するタイミングが若干早くなっている。
- ビッグパスワード解読のための古文書が各フロアに置かれている。この古文書を取ることによって、8面ごとのビッグパスワードの間のタイトル画面のヒントが解読できるようになる(場所によっては、とんでもない所にある。また、取らなくてもクリアは可能)。
- FC版ではランプ使用中でブロックの真ん中でコマンドを解除するとインディーは即死するが、本作では即死せず、そのまま自動的に横にスライドし、ブロックの外に放り出される(インディーの向きにしたがって動く。その間は操作不能)。また、ランプを使って床をくぐり抜けることも可能になっている。
- アンソロジー版では、床の下半分の判定が異なり、FC版ではブロックを持ったままでは通り抜けられなかった隙間が通り抜けられる面がある。
- アナザー(裏)バベルをプレイすると更にニューバベルが待っている。難度はアナザーより劣るが、プレイに根気を必要とする面が多い。また、背景が滝、宇宙、ナムコの間(バックに往年の名作のグラフィックが登場する)、ジャングル、天空城などとかなり趣向が凝らされた面がある。
ナムコアンソロジー版のみ、自分でステージを作れるエディット機能を搭載しており、ある条件を満たすことで遊べるようになる。FC版を踏襲したX68000版にもエディット機能は搭載されているが、本作ではより機能が豊富になっており、パワーは255まで設定可能、ウル、バベルズ、コウモリ、水晶玉、古文書などは合わせて32個まで置くことができる。また、24種類の背景を選ぶことができる。フロアはメモリーカードの容量だけ製作可能。一ブロック消費する。
スタッフ
- 企画:永島洋武
- プログラマー:普川隆志
- 音楽:中潟憲雄
- キャラクター・デザイナー:冨士宏
評価
「ゲーム通信簿」評価
項目
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キャラクタ |
音楽 |
操作性 |
熱中度 |
お買得度 |
オリジナリティ
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総合
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得点
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3.05 |
3.01 |
2.94 |
2.89 |
2.81 |
3.00
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17.70
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ゲーム誌『ファミリーコンピュータMagazine』の読者投票による「ゲーム通信簿」での評価は以下の通り17.70点(満30点)と標準的な評価となったが、同雑誌1991年5月10日号特別付録の「ファミコンロムカセット オールカタログ」においてゲームの奥深さを指摘した他、他社のゲームと比較して安価であった事から「パズル好きに喜ばれた」と肯定的なコメントで紹介されている。また、ゲーム誌『ユーゲー 2003 Vol.07』において罰帝は、L字型の石が同じ方向に積みあがる事が物理法則を無視していると指摘した上で「神秘的なストーリーにマッチしていて雰囲気を盛り上げていた」と世界観に関して肯定的に評価した他、通常面と壁画の間のBGMが異なる事で「メリハリが利いている」と音楽面でも高評価を与えた。また、「ボリュームたっぷりの全64面をクリアしても、より難易度が高い『裏バベル』が登場し、さらに倍以上楽しめる」とコストパフォーマンスの高さに関して肯定的に評価している。
脚注
注釈
- ^ オリジナル版を忠実に移植しているが、タイトル画面のタイトルロゴのみ変更され「BABEL」から「TOWER OF BABEL」になっている。
出典
参考文献
関連項目
- 太鼓の達人 - 家庭用シリーズの幾つかに本作の楽曲が収録されている。
- 細江慎治 - ナムコのアルバイト時代に本作のマップデザインに関わったとの発言がある。
外部リンク