セイヨウカジカエデ
カッセル、ベルクパーク・ヴィルヘルムスヘーエのセイヨウカジカエデ
分類 (APG III )
学名
Acer pseudoplatanus
シノニム
Acer abchasicum Rupr.
Acer atropurpureum Dippel
Acer bohemicum C.Presl ex Opiz.
Acer dittrichii Ortm.
Acer erythrocarpum Dippel
Acer euchlorum Dippel
Acer fieberi Opiz
Acer hybridum Bosc
Acer majus Gray
Acer melliodorum Opiz
Acer montanum Garsault
Acer opizii Ortmann ex Opiz.
Acer opulifolium Thuill.
Acer procerum Salisb.
Acer purpureum Dippel
Acer quinquelobum Gilib.
Acer rafinesquianum Dippel
Acer villosum C. Presl
Acer wondracekii Opiz
Acer worleei Dippel
セイヨウカジカエデ の葉
セイヨウカジカエデ の翼果
セイヨウカジカエデ 、シカモア またはシカモアカエデ は、 カエデ の一種で、中央ヨーロッパ と南西アジア に自生している。 フランス から、東はウクライナ 、南はスペイン 北部の山、トルコ 北部やコーカサス に生息していたが、他の場所でも栽培され帰化 している[ 1] [ 2] 。
名前
セイヨウカジカエデ の葉 や樹皮が見かけ上、スズカケノキ 属 のプラタナス に似ていることから、古代ギリシャ語で"偽"を表すpseudo- をつけてpeudoplatanus と命名された。しかし、この2つの属は全く異なっている。カエデ属とスズカケノキ属では葉序が異なり(スズカケノキ属は互生だが、カエデ属は対生である)、果実においてもスズカケノキ属は球状の房をつけるが、カエデ属は2つで1組の翼果 をつける。
"シカモア" という英名は、本来は、南西アジアに生息するイチジク属 の一種で、聖書においてヘブライ語 で"shikmoth"および"shikmim"と呼ばれている[ 3] Ficus sycomorus の名前である[ 4] 。葉の見た目が似ていることから、この種の他にプラタナス もこの名で呼ばれることがある[ 4] 。
この木は、他にもfalse plane-tree ,[ 5] great maple ,[ 5] Scottish maple ,[ 5] mock-plane ,[ 6] [ 7] , Celtic maple .[ 8] という別名がある
特徴
茎最上部の芽
セイヨウカジカエデは成熟すると20〜30mにも達する大きな落葉樹 で、幅広いドーム状の見た目をしている。若木では樹皮 は滑らかで灰色だが、年齢とともに粗くなり、うろこ状に割れて薄茶色のピンクがかった樹皮を露出させる。
葉 は対生で、掌状に大きく5浅裂していて、大きさは10〜25cm四方で5〜15cmの葉柄がある。革のような質感で太い葉脈が裏面に隆起している。縁はノコギリの歯のようになっていて、表は濃い緑色で、裏は白っぽい色をしている。幾つかの品種 は、紫や黄色がかった色の葉をつける。また、真菌の一種Rhytisma acerinum によって引き起こされる黒い斑点が付いているものもある。[ 9] 葉柄は赤みを帯びているものが多い。
雌雄同株で黄緑色の花 は春に咲き、10~20cmで振り子のような形をして、各茎に20~50の房状の花が総状花序 で咲く。直径5~10mmの種子 は翼果 で2つ1組になっていて、各種子は落ちるときに風をとらえて回転する20~40mmの翼を持つ。この翼によって、親木からより遠くへ広がることができる。種子は受粉後約6ヶ月の秋に熟する。[ 2] [ 10]
成熟した木が倒れてそこに日光が当たると、根から蘖 (ひこばえ)が生える。[要出典 ]
生態系
いくつかの鱗翅目 の種は、セイヨウカジカエデの葉を食糧とする。
歴史
セイヨウカジカエデに古代からの名前がないことは、1487年ごろにセイヨウカジカエデが伝来される以前にその名前がなかったことを示しているが、fior chrann という、スコットランド・ゲール語 でのこの木の古代からの名前があることは、少なくともダルリアダ王国 にゲール人が入植したころからこの木がスコットランド に存在していたことを示唆しているとして反論意見がある。よって、セイヨウカジカエデは、史前帰化植物 (1500年よりも前に人の手によって持ち込まれ帰化した植物のこと)もしくは、人間の介入なしにスコットランド に達したとすれば土着の植物として扱われるだろう。現在では、帰化植物 (1500年以降に人間の手によって持ち込まれ帰化した植物のこと)に分類されるのが一般的である。[ 8]
栽培と用途
成熟したセイヨウカジカエデの樹皮
セイヨウカジカエデは、風、都市汚染、塩水噴霧、冷夏に強いことで有名であり、そのためにヨーロッパ では、都市や、冬に塩で処理された道路や、沿岸地域によく植えられている。もともとの生息域よりも北の地域、特にブリテン諸島 とスカンディナビア のノルウェー のトロムソ (北は、ベステローデン諸島 まで種子をつけることができる。)、アイスランド のレイキャヴィーク 、フェロー諸島 トースハウン で栽培され、広く帰化 している。ブリテン諸島 では、17世紀に導入され、今では島全体に生息している[ 11]
北米では、ニューイングランド 、ニューヨーク 、太平洋岸北西部に生息しており、栽培からの帰化によって生息域を広げている。また、南半球の温帯気候の地域にも植えられており、ニュージーランド やフォークランド諸島 で最もよく植えられている。
セイヨウカジカエデはヨーロッパの多くの地域で、中〜大規模な盆栽に使われることがあり、優れた標本を見ることができる。[ 12]
人気の品種"'Brilliantissimum'"は、鮮やかなサーモンピンクの若い葉を付けることで有名で、この品種は、イギリスの王立園芸協会 ガーデン・メリット賞 を受賞している。[ 13]
花は、香りが良く、繊細な風味で淡い色の蜜を豊富に作る。
木材
セイヨウカジカエデは、木材 生産のためにも栽培される。その木材は、白くて、絹のような光沢を持ち、耐久性が高い。楽器、家具、フローリング や、寄木細工 に使用される。
中でも、波状の木目 を持つ木材は、装飾用のベニヤ板 として高値で取引される。
重さは、立方メートルあたり630kgで広葉樹としては中程度である。[ 14] 古くからバイオリン の裏板、ネック、スクロールに使われてきた伝統的な木材である。[ 15]
しばしば、”rippled sycamore”という名前で売られている。土に触れると腐敗するため、主に屋内に用いられる。[ 14]
外来生物種
セイヨウカジカエデは、ビクトリアのYarra Rangeをはじめとするオーストラリアの一部地域では雑草として認識されており[ 16] 、マウント・マセドニア、デイルズフォード、ダンデノング 、タスマニア では、ユーカリの森に帰化している。[ 17]
また、ニュージーランド [ 18] 、ノルウェー [ 19] 、そしてイギリスの環境に敏感な地域[ 20] では、セイヨウカジカエデは侵略的外来種としてみなされている。
アメリカ合衆国農務省 やニューヨーク州でも侵略的外来種として認識されている[ 19] [ 21]
文化
イギリスのクリスマスキャロル"Wassail, Wassail All Over the Town" で、歌中に出てくる”white maple”は、silver mapleではなく、セイヨウカジカエデのことである。
著名な木
殉教者の木、イギリス のドーセット 州、トルパドル のセイヨウカジカエデは、英国の貿易組合運動の発祥の地とされている。
トルパドルの殉教者の木
1834年、イギリスのテルパドル殉教者として知られている6人の農業労働者は、ドーセット のトルパドルにあるセイヨウカジカエデの木の下で、初期の貿易組合を結成した。しかし、1797年反乱扇動法(Incitement to Mutiny Act 1797)に違反していることがわかり、オーストラリアに流刑 となったが、一般市民の抗議によって再びイギリスに戻った。[ 22]
現在、その木は、胴回り5.9mで、[ 23] 2005年の研究によって、1680年生まれだと決定された。[ 24] その木は、ナショナル・トラスト が管理しており、2002年と2014年に枝の刈り込みが行われている。[ 25]
コーストフィンのセイヨウカジカエデ
太古のセイヨウカジカエデは(プラタナスと表記される場合あり)以前はコーストフィンの村(現在は、スコットランドの郊外)に植わっていた。その木の名前をもとに、独特な黄色の葉を持つ亜種はAcer pseudoplatanus Corstorphinensis と名付けられ、世評によれば15世紀に植えられた。その木は、「スコットランド最大のセイヨウカジカエデ」と言われ、1679年にジェームズ・フォレスター卿 (英語版 ) 殺害の現場となった。[ 26] その木は1998年12月26日の嵐によって倒されたが、その後場所を移され、挿し木 から生長し、現在はコーストフィンのカークの教会付属の庭に立っている。[ 27]
参照
^ Flora Europaea: Acer pseudoplatanus
^ a b Rushforth, K. (1999). Trees of Britain and Europe . Collins ISBN 0-00-220013-9 .
^ Easton, M.G. (1897年). “Sycamore ”. Easton's Bible Dictionary . Thomas Nelson. 2019年4月21日 閲覧。
^ a b “Sycamore” , Merriam-Webster Online Dictionary , http://www.merriam-webster.com/dictionary/sycamore 2019年4月21日 閲覧。
^ a b c USDA GRIN entry for Acer pseudoplatanus
^ Tropicos entry for Acer pseudoplatanus
^ Bailey, L.H.; Bailey, E.Z.; the staff of the Liberty Hyde Bailey Hortorium (1976). Hortus third: A concise dictionary of plants cultivated in the United States and Canada . New York: Macmillan
^ a b Milner, Edward (2011). “Trees of Britain and Ireland”. Flora : 134.
^ “Garden Centre – The Sycamore ”. garden-centre.org . 27 October 2015 閲覧。
^ Humphries, C. J., Press, J. R., & Sutton, D. A. (1992). Trees of Britain and Europe . Hamlyn Publishing Group Ltd. ISBN 0-600-57511-X .
^ Preston, Pearman & Dines. (2002). New Atlas of the British Flora . Oxford University Press.
^ D'Cruz, Mark. “Ma-Ke Bonsai Care Guide for Acer pseudoplatanus ”. Ma-Ke Bonsai. 2011年7月14日時点のオリジナル よりアーカイブ。2011年7月5日 閲覧。
^ “RHS Plant Selector – Acer pseudoplatanus 'Brilliantissimum' ”. 3 July 2013 閲覧。
^ a b Sycamore . Niche Timbers. Accessed 19-08-2009.
^ Association of Scottish Hardwood Sawmillers (ASHS): Sycamore – Acer pseudoplatanus Archived 2014年8月27日, at the Wayback Machine .
^ Environmental weeds
^ http://www.southwestnrm.org.au/sites/default/files/uploads/ihub/csurhes-s-edwards-r-1998-potential-environmental-weeds-australia-candidate-species.pdf
^ Howell, Clayston (May 2008). Consolidated list of environmental weeds in New Zealand . 292. Wellington, NZ.: Department of Conservation. ISBN 978-0-478-14413-0
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^ “Eco Tree Care & Conservation – Woodland Management, Firewood Logs, Consultancy, Tree Surgery, Tree Surgeons and Conservation in Hertfordshire & Essex ”. Ecotreecare.co.uk. 2014年8月26日 閲覧。
^ “Interim List of Invasive Plant Species in New York State ”. Advisory Invasive Plant List . New York State Department of Environmental Conservation. 2013年5月12日時点のオリジナル よりアーカイブ。2013年6月1日 閲覧。
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^ “Tolpuddle Martyrs village tree pruning carried out ”. news.bbc.co.uk . BBC News (7 November 2014). 27 November 2014 閲覧。
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^ “Capital Trees ”. www.forestryjournal.co.uk . The Forestry Journal (2010年). 2014年12月4日時点のオリジナル よりアーカイブ。2014年11月27日 閲覧。
外部リンク