カレル・ドールマン級フリゲート (カレル・ドールマンきゅうフリゲート、オランダ語 : Karel Doorman klasse fregatten 、英 : Karel Doorman class frigate )は、オランダ海軍 のフリゲート の艦級。汎用フリゲート(Multipurpose-fregatten )を略してM級フリゲート (蘭 : M-fregatten )とも呼ばれる。
来歴
本級の計画は、1978年より、ルーフディア級 6隻の代替艦として着手されていた[ 5] 。当初計画では、コルテノール級(S級) をスケールダウンした基準1,900トン・全長111.8メートルの小型フリゲートを4隻建造することとされていた。これらの艦は北海 において平時の哨戒および水産保護にあたる予定であったが、同時に、コルテノール級(S級)とともに北大西洋 で対潜戦 にあたることも想定されていた。
しかし後に計画は修正され、より大型のファン・スペイク級 6隻の更新も兼ねることとなり、艦型は大型化し、建造数も倍増した。設計は1983年に認可され[ 5] 、これらの建造は1984年に策定された10ヶ年艦隊整備計画に盛り込まれた。まず1984年2月29日にルーフディア級の更新分となる前期建造分4隻が、続いて1986年4月10日にファン・スペイク級の更新分となる後期建造分4隻が発注された。なおS級の建造終了後の造船所の仕事量を確保するため、発注は当初の計画より早められた。またファン・スペイク級は、本級のための予算を確保するため、早期退役を余儀なくされた。
設計
本級は、外洋域での作戦に堪える最低限の対潜護衛艦として設計されており[ 5] 、当初計画よりもだいぶ大型化したとはいえ、コルテノール級(S級)よりは小さく、また性能的にもわずかに劣るものとなっている。設計にあたっては、レーダー反射断面積 (RCS)や赤外線輻射の低減によるステルス化 、またNBC 防護措置が導入された。減揺装置としては、従来のフィンスタビライザー にかわり、舵に減揺機能を組み込む方式とされている。
搭載艇としては複合艇 3隻が搭載された。また海兵隊 員30名の便乗に対応している。
艦型の縮小に伴い、巡航機はストーク-バルチラ 12SWD280ディーゼルエンジン (4,225 hp (3.2 MW))、高速機もS級のオリンパスと比して出力は低いが燃費に優れたロールス・ロイス スペイ SM1Aガスタービンエンジン (18,770 hp (14.0 MW))に変更され、CODOG 方式で2軸の可変ピッチ・プロペラ を駆動することとされた。また2番艦以降では、SM1Aにかわり、出力向上型のSM1C(24,485 hp (18.3 MW))が搭載され、1番艦でも後にバックフィットされた。
なお電源 としては、出力650キロワットのディーゼル主発電機4基と、出力120キロワットのディーゼル非常発電機1基が搭載された[ 5] 。
装備
C4ISR
戦術情報処理装置 は、新世代のSEWACO VII が採用された。ただし開発の遅延から、ネームシップは戦術情報処理装置を搭載せずに就役しており、まず1992年1月より漸進的なSEWACO VII(A)が、また1994年中盤よりフルスペックのSEWACO VII(B)が装備化された。戦術データ・リンク として、リンク10・11およびリンク 16 に対応している。またアメリカのAN/WSC-6をベースとした衛星通信 装置も搭載されている。
レーダー としては、当初、早期警戒用としてLバンド のLW-08 、目標捕捉用としてSバンド のDA-08 を搭載していた。また1992年より、DA-08は3次元式 のSMART-S に換装されていき、後の建造艦では当初よりこちらを搭載した。また1997年には、低被探知性を備えた対水上捜索用レーダーであるスカウトが追加搭載された。
ソナー としては7キロヘルツ級のPHS-36をバウ・ドームに収容して搭載した。また超低周波による長距離探知に対応したDSBV-61曳航ソナーも後日装備されており、1994年までに全艦に搭載された。
武器システム
武器システムは、基本的にはコルテノール級(S級)に準じた能力であるが、一部で更新を図ったものとなっている。個艦防空ミサイル(短SAM) はS級と同じシースパロー だが、S級では旋回・俯仰式のMk.29 が用いられていたのに対し、本級では垂直発射 式のMk.48 mod.1 (16セル)に変更された。このVLSは、格納庫左側舷の甲板上にまとめられており、当初は剥き出しに搭載されていたが、後にステルス性や抗堪性の観点から、防護板が設置された。
艦砲 はS級と同様に62口径76mm単装速射砲(76mmコンパット砲) を船首甲板に1基搭載する。また上部構造物後端部には、近接防空用として、GAU-8 30mmガトリング砲 を用いたゴールキーパー CIWS も搭載されるほか、近距離用として20mm単装機銃 も装備される。なお短SAMと艦砲は、戦術情報処理装置のサブシステムであるMWCS(Multi-Weapon Control System)による管制を受ける[ 5] 。火器管制レーダーとしてはSTIR-18 が2基搭載されている。
対艦兵器 はアメリカ製のハープーン 艦対艦ミサイル (SSM)、対潜兵器 は後部上部構造物内に固定装備された324mm連装魚雷発射管(Mk.32 mod.9) およびMk.46 mod.5 短魚雷 と、いずれもS級と同構成である。
船尾甲板は22×14.4メートルのヘリコプター甲板 とされている。艦載機 としてはリンクスSH-14D 哨戒ヘリコプター が搭載された。また後に、より大型のNFH-90 の運用にも対応したほか、チリ海軍ではクーガー を搭載している。
電子戦
電子戦 装置としては、アメリカのアルゴ社(ARGOSystems)のAPECS-II/AR-700電波探知妨害装置が搭載された。これは電子戦支援 用のAR-700電波探知装置と電子攻撃 用のAPECS-II(Advanced Programmable Electonic Countermeasure System)電波妨害装置を統合したもので、後にポルトガル海軍 のヴァスコ・ダ・ガマ級フリゲート やギリシャ海軍 のイドラ級フリゲート 、韓国海軍 の広開土大王級駆逐艦 でも採用された。ただしAPECS-IIの開発遅延により、初期建造艦では後日装備となっている。
同型艦
一覧表
運用史
このように、先進的な装備を小型の船体に搭載した本級であるが、低強度紛争 に用いるには複雑化し、人員も数多く必要とすることから、15年未満の就役期間で海外への売却が進められ、2009年現在、オランダ海軍においては、2隻が残存するのみである。退役した6隻は、ベルギー ・チリ ・ポルトガル の各国海軍で運用を継続している。
2004年、「チェリク・ヒッデス」と「アブラハム・ファン・デル・フルスト」はチリ海軍 に売却され、それぞれ「アルミランテ・リベロス」、「ブランコ・エンカラーダ」と命名されて再就役した。
2005年7月20日には、「カレル・ドールマン」と「ウィレム・ファン・デル・ザーン」がベルギー海軍 に売却され、ブルガリア への売却が提案されているウィーリンゲン級フリゲート の代艦として、それぞれ「レオポルド1世」、「ルイーズ・マリー」と命名されて再就役した。
2006年11月1日、「ファン・ネス」と「ファン・ハレン」がポルトガル海軍 へ売却され、それぞれ「バルトロメウ・ディアス」、「フランシスコ・デ・アルメイダ」と命名されて再就役した。
脚注
出典
参考文献
Friedman, Norman (1997), The Naval Institute Guide to World Naval Weapon Systems 1997-1998 , Naval Institute Press , ISBN 9781557502681
Gardiner, Robert, ed. (1996), Conway 's All the World's Fighting Ships 1947-1995 , Naval Institute Press, ISBN 978-1557501325
Prezelin, Bernard (1990). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World , 1990-1991 . Naval Institute Press . ISBN 978-0870212505
Saunders, Stephen, ed (2009). Jane's Fighting Ships 2009-2010 . Janes Information Group . ISBN 978-0710628886
Sharpe, Richard, ed. (1989), Jane's Fighting Ships 1989-90 , Janes Information Group, ISBN 978-0710608864
外部リンク