カタルーニャ語 (カタルーニャご、català [kətəˈɫa] )は、スペイン 東部のカタルーニャ州 に居住しているカタルーニャ人 の言語 。よく見られるカタロニア語 という表記は地方名の英語名に由来する。インド・ヨーロッパ語族 イタリック語派 に属する。
カタルーニャ地方のほか、バレンシア州 、バレアレス諸島州 、アラゴン州 のカタルーニャ州との境界地域、南フランス ・ルシヨン 地方(北カタルーニャ)、イタリア ・サルデーニャ 州アルゲーロ 市などに話者がいる。
アンドラ公国 では公用語 になっており、またスペインではガリシア語 、バスク語 と並んで地方公用語(カタルーニャ、バレンシア、バレアレス諸島各自治州)となっている。なお、バレンシア州は同地で話されているこの言語の地域変種の名称を「バレンシア語 」と規定しており[ 3] 、このことは同州で話されているこの言語を、カタルーニャ語のバレンシア方言であるか、バレンシア語であるかと言う議論に発展した。 [要出典 ]
スペイン語 (カスティーリャ語)の方言と誤解されることも多いが、スペイン語とカタルーニャ語は親戚関係にある別言語である[ 4] 。
地理的分布
カタルーニャ語が話されている地域。
カタルーニャ語はヨーロッパの4か国で話されている(移民は除く):
アンドラ
カタルーニャ語が話されている国のうち唯一国家の公用語とされている。43.8%の住民によって日常的に使われている。
スペイン
フランス
イタリア
サルデーニャ島 のラルゲー (L'Alguer )では住民の13.9%によって話されている。イタリア国家は1999年の「歴史的な言語的マイノリティの保護に関する規則」により公共行政、教育制度、そしてRAIによるラジオおよびテレビ放送を開始した[ 6] 。
歴史
カタルーニャ語は、ピレネー山脈東部の南北両側麓で話されていた俗ラテン語 から派生している。ガロ=ロマンス語、イベロ=ロマンス語、北イタリアで話されていたガロ=イタリア語の特徴と原点を同じくする。アラゴン連合王国 のレコンキスタ によって、カタルーニャ語は南へ西へ広がり、バレンシア州やバレアレス諸島で話されるようになった。15世紀、バレンシア黄金時代にカタルーニャ語文学は頂点に達する。
しかし、ピレネー条約 によってフランスへ割譲された北カタルーニャ(ルシヨン )ではカタルーニャ語の公での使用が禁止されてしまう。スペインにおいても、スペイン継承戦争 の敗者であったカタルーニャでは、フェリペ5世 が布告した新国家基本法によって、行政および教育の場でのカタルーニャ語使用が禁止された。
19世紀 末にはカタルーニャ・ルネサンスと呼ばれる文芸復興運動(ラナシェンサ)が起こり、成果を見せた。20世紀初頭には、文法学者・言語学者プンペウ・ファブラ が正書法、文法書、辞書を完成させ、現代カタルーニャ語の規範化に貢献した。
ところが、1936年 に勃発したスペイン内戦 と後のフランシスコ・フランコ による独裁政権により、地方語は激しい弾圧を受け、カタルーニャ語も公的な場から追放、プンペウ・ファブラも弾圧によりフランスへ亡命した。カタルーニャ語は、公の場ではFCバルセロナ のホームスタジアムカンプ・ノウ 内を除いて一切の使用が禁止され、再び暗黒時代に入る。
フランコ独裁後期、カタルーニャの民俗および宗教行事が再開され、これらの行事の際にカタルーニャ語を使用することが容認された。1975年 11月のフランシスコ・フランコの死後、フアン・カルロス 国王 の治世下でスペインの民主化が進むなか、40年近くの間使用が禁止されていたカタルーニャ語も復権した。
特徴
言語学的には、ラテン語 (より正確には俗ラテン語 )から変化したロマンス語 の一つで、歴史的関係により、南フランス(オクシタニア )の地方言語であるオクシタン語 に近い。エスノローグ の分類ではオクシタン語とともにオクシタニー・カタロニア語 を構成するとしているが、言語学者にはこの説を支持していないものが多い。他のロマンス語と比較すると、カタルーニャ語には以下の特徴がある。
母音 の数が8つと、スペイン語 (カスティーリャ語)よりも多い(ちなみに鼻母音 は存在しない)。
人名に前置する人称冠詞が存在する。
他のイベロ・ロマンス語同様英語のbe動詞に相当する繋辞動詞として、ser(ésser)とestarを持つが、その使用はカスティーリャ語と若干異なる。
フランス語 (オイル語 )の en やイタリア語 (中央イタリア方言 )の ne、あるいはフランス語の y やイタリア語の ci に相当する副詞的代名詞 en 、hi がある(現代スペイン語には存在しない)。
多くのロマンス語で「行く」を意味する動詞と動詞の不定詞 で、近接未来を表す動詞迂言形を構成する(仏語:aller + 動詞の不定詞、西語:ir a + 動詞の不定詞など)が、カタルーニャ語ではanar+動詞の不定詞で過去を表す。
人称代名詞 が me や te などではなく em や et(あるいは m'、t')といった、やや特徴的な形になる。
正書法と発音
母音
a /a/
e, è /ɛ/
e, é /e/
a, e が強勢 のない位置に来ると /ə/ になる。
o, ò /ɔ/
o, ó /o/
o が強勢のない位置に来ると /u/ になる。
u /u/
i /i/
子音
p /p/
b, v /b/ :カスティーリャ語とほぼ同じ。母音間で摩擦音化。語末では無声化する。
t /t/
tn, tm; tl, tll:t が鼻音、側面音に同化し、単一の長い子音になる
d:母音間で摩擦音化。語末では無声化する。また語末で、-ld, -nd, -rds のつづりでは d のみ発音されない。
c(a, o, u の前), qu(e, i の前)/k/
qu(a, o, u の前), qü(e, i の前)/kw/
c(e, i の前), ç(a, o, u の前、語末)/s/
g(a, o, u の前), gu(e, i の前)/g/ :母音間で摩擦音化。語末では無声化する。語末で、さらに n の後にある場合は発音されない。
gu(a, o, u の前), gü(e, i の前)/gw/
g(e, i の前), j(a, o, u の前)/ʒ/
s /s/ , 母音間で /z/
母音後の ix /ʃ/
tx,(母音後)ig /tʃ/
tg(e, i の前), tj(a, o, u の前)/dʒ/
n /n/
m /m/
ny /ɲ/
l /l/
ŀl /ll/
ll /ʎ/
r /ɾ/ :語末では発音されないことが多い。
rr /r/
文法
関連項目
脚注
参考文献
外部リンク