アーブー山 またはマウント・アーブー ( माउंट आबू [ヘルプ /ファイル ] Mount Abu)はインド 西部、ラージャスターン州 シローヒー県 にある人気の高い避暑地 である。グジャラート州 との境近くに位置し、アラーヴァリー山脈 に属する。この山は長さ22km、幅9kmの特徴的な岩の多い高原を形成する。山の最高峰は標高1722mのグル・シカル で、ラージャスターン州でもっとも高い[ 2] 。川、湖、滝、常緑樹の森があり、「砂漠のオアシス」と称される。もっとも近い駅は28km先のアーブー・ロード駅である[ 3] 。
アーブー山はジャイナ教 の聖地であり、ディルワーラー寺院群は主に11世紀から13世紀に作られた大理石 彫刻 で知られる。同時にヒンドゥー教 の聖地でもある[ 4] 。
歴史
アーブー山の古代の名前はアルブダーチャラ(arbuda-acala)といった。プラーナ文献 ではこの地域はアルブダーラーニヤ(アルブダの森)と呼ばれ、アーブーはこの古代の名前が縮まったものである。ヴァシシュタ 仙がヴィシュヴァーミトラ 仙との争いの後に引退してアーブー山の南の麓に住んだと信じられている。別の伝説によれば、アルブダという名前の大蛇がナンディー (シヴァ の乗り物)の命を救ったと伝えられ、この事件によって山が「アルブダーラーニヤ」と命名され、それが変化してアーブーになったとされる。
1311年、デーオーラー・チャウハーン朝 のラーオ・ルンバがアーブー山を征服した。これによってパラマーラ朝 による支配が終わり、アーブー山は衰退した。ルンバは首都を平地のチャンドラヴァティーに移した。1405年にチャンドラヴァティーが破壊された後、ラーオ・シャースマルはシローヒー に遷都した。その後、英国政府が当時のシローヒーのマハーラージャからアーブー山を租借した。
アーブー山とグルジャル人
アルブダ山地(アーブー山)一帯は有名なグルジャル人 (英語版 ) の故地と言われる。アーブー山とグルジャル人の関係はダナパーラ『ティラカマンジャリー』や多数の碑文によって見てとれる[ 5] 。これらのグルジャル人はアルブダ山地から移動し、すでに6世紀にラージャスターン州 とグジャラート州 にいくつかの公国を建てていた。この2つの州の大半は、ムガル朝時代以前には何世紀にもわたってグルジャラトラー(グルジャル人によって支配または保護される土地)またはグルジャラブーミ(グルジャル人の地)として知られていた[ 6] 。
アーブー山とラージプート
伝説によれば、ヴァシシュタ仙はアーブー山の頂上でヤジュナ (英語版 ) の祭祀を行い、神々に世界の正義を守るための備えを求めた。祈りに答えてアグニクンダ(火の祭壇)から若者が現れた。これが最初のアグニヴァンシャ・ラージプートであるという[ 7] 。
見どころ
ディルワーラー寺院群のジャイナ教寺院
アーブー山の日没
地図
アーブー山はラージャスターン州唯一の避暑地であり、標高1,220mの高さにある。ラージャスターン州および隣接するグジャラート州 の熱を避けるために、アーブー山は何世紀にもわたって人気のある場所であった。アーブー山野生生物保護区 (英語版 ) は1960年に設立され、山の290km²の範囲を覆う。
アーブー山にはアーダール・デーヴィー石窟寺院(アルブダ・デーヴィーとも)、シュリー・ラグナート・ジー寺院、およびグル・シカル峰の頂上に建てられたダッタートレーヤ (英語版 ) の寺院など、いくつかのヒンドゥー教 寺院がある。また、11世紀から13世紀にかけて白い大理石 を彫って建てられた複合寺院であるディルワーラー寺院群 (英語版 ) (デルワーラー、デルワーダーとも)を含む多数のジャイナ教 寺院がある。ディルワーラー寺院群でもっとも古いヴィマル・ヴァーサーヒー寺院は、1021年にヴィマル・シャーによって建てられ、最初のジャイナ教ティールタンカラ に捧げられた。
15世紀にメーワール王国 のクンバー によって建てられたアチャルガル (英語版 ) 城砦が近くにある。中心には旅行客に人気のあるナッキー湖 (英語版 ) がある。蛙岩は湖近くの丘の上にある。城砦の近くには有名なシヴァ 寺院であるアチャレーシュワル・マハーデーヴ寺院がある。
アーブー山にはブラーマ・クマリス という、世界128か国に展開する教団を代表する精神的本部がある[ 8] [ 9] 。毎年約250万人がこの精神的運動の複雑に広がったキャンパスを訪れる[ 10] 。
夏には何千人もの人々が訪れる。アーブー山へ行くためのもっとも近い町はアーブー・ロードで27kmの距離である。
アーブー山の日没の景色は旅行客に有名であり、映画『カヤーマット・セー・カヤーマット・タク』(破滅から破滅へ)で描写されている[要出典 ] 。
気候
アフマダーバード と比べると8~9℃ほど気温が低い。
夏
夏は4月なかばから6月なかばまでで、平均最高気温は摂氏36度前後に達する。薄い木綿の服が適する。
モンスーン
土地の起伏と地理的条件により、アーブー山ではモンスーンの季節に雨がふる。雨季には気温は下がる。服は夏と同じでよい。雨に濡れるのを避けるために傘を持ち歩くのがよい。
冬
アーブー山の冬は涼しく、16度から22度程度に下がる。夜は肌寒く、夜間の平均気温は4-12度である。氷点下2-3度まで下がることもある。寒さに備えた服装をすることが望ましい。日中はセーターで充分である。
アーブー山 (平均値: 1981年~2010年,極値: 1901年~2012年)の気候
月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
年
最高気温記録 °C (°F )
29.0 (84.2)
30.6 (87.1)
39.6 (103.3)
38.8 (101.8)
40.4 (104.7)
38.4 (101.1)
35.0 (95)
31.1 (88)
33.0 (91.4)
33.6 (92.5)
30.4 (86.7)
34.2 (93.6)
40.6 (105.1)
平均最高気温 °C (°F )
19.7 (67.5)
22.3 (72.1)
26.5 (79.7)
30.6 (87.1)
32.3 (90.1)
30.2 (86.4)
24.9 (76.8)
23.5 (74.3)
25.6 (78.1)
27.5 (81.5)
24.2 (75.6)
21.5 (70.7)
25.7 (78.3)
平均最低気温 °C (°F )
3.1 (37.6)
5.7 (42.3)
10.5 (50.9)
15.3 (59.5)
18.5 (65.3)
18.3 (64.9)
17.3 (63.1)
16.6 (61.9)
15.8 (60.4)
11.9 (53.4)
7.1 (44.8)
3.8 (38.8)
12.0 (53.6)
最低気温記録 °C (°F )
−5.7 (21.7)
−5.8 (21.6)
0.4 (32.7)
4.4 (39.9)
10.0 (50)
13.0 (55.4)
10.0 (50)
10.6 (51.1)
6.4 (43.5)
3.4 (38.1)
−0.4 (31.3)
−7.4 (18.7)
−7.4 (18.7)
雨量 mm (inch)
3.5 (0.138)
1.6 (0.063)
2.0 (0.079)
3.0 (0.118)
10.4 (0.409)
61.9 (2.437)
592.9 (23.343)
516.3 (20.327)
172.4 (6.787)
17.7 (0.697)
3.4 (0.134)
1.0 (0.039)
1,386.1 (54.571)
平均降雨日数
0.3
0.1
0.3
0.3
0.8
3.7
14.6
15.7
6.1
0.7
0.3
0.1
43.2
% 湿度
47
38
34
32
38
55
84
90
76
53
49
49
53
出典:インド気象局 [ 11] [ 12]
人口
2011年のインド国勢調査によれば、アーブー山は22,943人の人口があり、54.7%が男性、45.3%が女性である。平均識字率は81.15%で、国の平均である74.04%より高い。男性の識字率は90.12%、女性の識字率は70.23%だった。アーブー山では人口の12.34%が6歳未満である[ 13] 。
人口の89.31%はヒンドゥー教徒、7.69%がムスリム、1.45%がキリスト教徒である[ 13] 。
ギャラリー
ディルワーラー寺院群のパールシュヴァ寺院
ディルワーラー寺院群の大理石の像
ディルワーラーのジャイナ寺院の
カルパヴリクシャ (英語版 ) の木
日没後のナッキー湖
アーブー山のブラフマークマーリー本部
アーブー山野生生物保護区 (英語版 ) は29km²にわたる山、森、湖を含む
ナッキー湖近くの亀の形をした岩
ナッキー湖近くの蛙岩
脚注
^ “Census of India Search details ”. censusindia.gov.in. 10 May 2015 閲覧。
^ Physiography of Rajasthan , Government of Rajasthan, http://environment.rajasthan.gov.in/content/environment/en/rajasthan-state-biodiversity-board/about-rajasthan/physiography-of-rajasthan.html
^ Agarwal, Deepesh. “How to reach Mount Abu by Road, Air Or Rail ”. www.mountabu.com . 2017年6月22日 閲覧。
^ 渡辺研二『ジャイナ教』論創社 、2005年、296頁。ISBN 4846003132 。
^ Sudarśana Śarmā (2002). Tilakamañjarī of Dhanapāla: a critical and cultural study . Parimal Publications. p. 214
^ Ramesh Chandra Majumdar; Achut Dattatrya Pusalker; A. K. Majumdar; Dilip Kumar Ghose; Vishvanath Govind Dighe; Bharatiya Vidya Bhavan (1977). The History and Culture of the Indian People: The classical age . Bharatiya Vidya Bhavan. p. 153
^ Barua, Pradeep (2005). The State at War in South Asia . University of Nebraska Press. p. 24. ISBN 9780803213449 . https://books.google.com/books?id=FIIQhuAOGaIC&pg=PA24
^ 中牧弘允 (2010). “グローバル宗教の経営とマーケティング:アジア系宗教を中心に”. 東アジア文化交渉研究別冊 (国立民族学博物館) 6 : 63-75. NAID 110007645555 .
^ “Brahma Kumaris ”. 2013年11月20日 閲覧。
^ “Brahma Kumaris, Spiritual Headquarters: Mount Abu ”. 2014年6月25日時点のオリジナル よりアーカイブ。2013年11月20日 閲覧。
^
“Station: Abu Climatological Table 1981–2010 ”. Climatological Normals 1981–2010 . India Meteorological Department. pp. 1–2 (January 2015). 5 February 2020時点のオリジナル よりアーカイブ。18 February 2020 閲覧。
^
“Extremes of Temperature & Rainfall for Indian Stations (Up to 2012) ”. India Meteorological Department. p. M173 (December 2016). 5 February 2020時点のオリジナル よりアーカイブ。18 February 2020 閲覧。
^ a b “Mount Abu City Population Census 2011 - Rajasthan ”. www.census2011.co.in . 2017年6月22日 閲覧。
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
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