『捜査圏外の条件』(そうさけんがいのじょうけん)は、松本清張の短編小説。『別册文藝春秋』1957年8月号に掲載され、1957年12月に短編集『詐者の舟板』収録の1作として、筑摩書房から刊行された。
これまで3度テレビドラマ化されている。
あらすじ
銀行員の黒井忠男は、朗らかな妹の光子と2人で暮らしていた。6月の末、光子は墓参りのため田舎に行くと言い、そのまま失踪した。捜索願を出してから十日後、北陸の温泉旅館で、光子らしき人物が急死していると連絡が入る。黒井は遺体が紛れもなく光子であることを確認したが、光子は男と二人連れであり、男は光子が急死するやいなやその場を遁走したという。宿帳の筆跡と旅館で聞いた人相から、男が同じ銀行の笠岡勇市であると確信した黒井は、笠岡を呼び出す。笠岡は事実を認めたが、「どんなに殴られてもいい。その代り、このことを公表しないでくれ。公表されたら僕は破滅だ」と黒井に懇願する。笠岡の徹底した自己保身ぶりに黒井は憎悪、殺意を抱くに至った。しかし、自分が捕らえられたら何にもならない。自分を容疑の外に、捜査の圏外に置くため、黒井は遠大な計画を実行し始める。
エピソード
本作について著者は「警察のいわゆる捜査聞き込みが、ある範囲に限定されているきらいがあるので、そのことを盲点のように思っていた」と述べている[1]。
テレビドラマ
1959年版
1959年10月3日、フジテレビ系列の「スリラー劇場」枠(22:00-22:30)にて放映。
- キャスト
- スタッフ
1962年版
ドラマタイトル「不在証明」。1962年5月24日と5月25日、NHKの「松本清張シリーズ・黒の組曲」(22:15-22:45)の1作として2回にわたり放映。
- キャスト
- スタッフ
1989年版
1989年7月4日、日本テレビ系列の「火曜サスペンス劇場」枠(21:03-22:52)[2]にて放映、フィルム作品。タイトルは「松本清張スペシャル・捜査圏外の条件」、サブタイトルは「不倫に殉じた妹よ!復讐の完全犯罪を謀る男が宇部の女に愛された時」。なお、原作でモチーフとして使われた「上海帰りのリル」は、本ドラマでは「神田川」に変更されている[3]。視聴率19.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。
- キャスト
- スタッフ
- 企画:小坂敬
- プロデューサー:嶋村正敏(NTV)、板橋貞夫(松竹)、林悦子(『霧』企画)
- 脚本:宮川一郎
- 音楽:丸谷晴彦
- 撮影:加藤正幸
- 美術:西村伸明
- 照明:高橋哲
- 録音:川田保
- 編集:河原弘志
- 記録:宮下こずゑ
- 装置:美建興業
- 装飾:西村事務所
- 衣裳:鈴木康之(松竹衣裳)
- 効果:佐々木英世
- 整音:山本逸美
- 広報担当:難波佐保子
- 助監督:中山博行
- 制作主任:南條記良
- 制作協力:エイコーテクニカ(現・映広)
- 協力:かとう企画
- 現像・テレシネ:IMAGICA
- 衣裳協力:ジャン・メール
- 美術協力:JIS 日本情報システム株式会社
- 音楽協力:日本テレビ音楽
- 監督:田中登
- 制作:松竹、『霧』企画
脚注・出典
- ^ 『松本清張全集 第36巻』(1972年、文藝春秋)巻末の著者による「あとがき」参照。
- ^ 当日は19:00-20:54にプロ野球中継があり放送が30分延長された。そのため作品放送は実質21:33-23:22の放送である。
- ^ プロデューサー間での合意による。原作者は「神田川」や(歌い手の)かぐや姫を知らなかったが、この件は担当者に任せるとして軽く片付けた。林悦子『松本清張映像の世界 霧にかけた夢』(2001年、ワイズ出版)77-78頁参照。
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