二重スパイ(double agent、double secret agent)は、諜報活動において、組織(政府)のために敵組織(政府)をスパイしながら、その敵組織(政府)から逆に組織(政府)をスパイするよう雇われた人物のこと[1]。逆スパイともいう[2]。
二重スパイは一般に、敵組織に潜入したスパイによって新たに育成するか、スパイを寝返らせる。捕まえたスパイを処刑すると脅かして二重スパイに仕立てたり、二重スパイをリダブル・エージェントにする。二重スパイは情報を得られる部署に所属しているが、離反者はそうでないため、二重スパイとは呼ばれない。しかし離反するまで情報を得られる部署に所属していた離反者もいたりする。
二重スパイは防諜目的に敵側に偽情報を伝えることもよくある。その場合、以前から真実の情報を与えて敵側の信頼を得ておく。そうした情報は真実であるが役に立たなかったり、逆効果だったりする情報にしておく。[3]
日本ではよく混同されるが、「二重スパイ」と「逆スパイ」は別の存在で、2つの国(組織)に相手の情報を売り利益を得るのが「二重――」で、敵組織に仲間を装って潜入しネットワークを破壊したりするのは「逆――」。
二重スパイの例
リダブル・エージェント
リダブル・エージェント(re-doubled agent)は、二重スパイとして捕まり、外国の情報機関をミスリードさせることを余儀なくされたスパイのこと。F.M. Begoumは、「元々の雇用主に二重スパイをやっていることがばれ、再び忠誠心を見せるよう説き伏せられたもの」としている[3]。
ヴィタリー・ユルチェンコはその例。
三重スパイ
三重スパイ(triple agent)は、一方には二重スパイのふりをし、もう一方には完全に二重スパイであるスパイのこと。忠誠心の相手を変える二重スパイと違って、元の雇用主を裏切らない。また、敵対する3つの組織(政府)のために働くスパイを指すこともある。この場合、それぞれの組織はスパイが自分たちのためだけに働いていると考える。[要出典]
カトリーナ・レオン(英語版)、ドゥシャン・ポポヴ、フマム・ ハリル・アブムラル・バラウィ(英語版)など。
野坂参三はソ連のスパイであったとして日本共産党から除名されたが(野坂参三#最晩年の除名)、三重スパイあるいは四重スパイだったのではないかとの指摘がある(野坂参三#多重スパイ疑惑)[5][6][7][8]。
二重スパイが重要な役割を果たした事件
関連項目
出典
- ^ “Definition of DOUBLE AGENT”. merriam-webster.com. 2020年5月1日閲覧。
- ^ “Double agentとは”. weblio英和辞典・和英辞典. ウェブリオ. 2020年5月2日閲覧。
- ^ a b Begoum, F.M.. “Observations on the Double Agent”. Central Intelligence Agency. 2020年5月2日閲覧。
- ^ García, Juan Pujol; West, Nigel (2011). “Childhood”. Operation Garbo: The Personal Story of the Most Successful Spy of World War II. Biteback Publishing. ISBN 9781849546256. https://books.google.com/books?id=KgOuAwAAQBAJ&lpg=PP1&pg=PT10
- ^ 「解説座談会 野坂参三は何重スパイだったのか 立花隆/小林峻一/加藤昭」、小林峻一、加藤昭 『闇の男 野坂参三の百年』文藝春秋社、1993年、ISBN 4163479805、189-210ページ。
- ^ 伊藤律「三重スパイ 野坂参三」『文藝春秋』72巻1号、1994年1月、文藝春秋社、310-329ページ。 ※伊藤律による1981年10月25日付の手記を公開したもの。
- ^ 「野坂参三、三重スパイ説をめぐって」、ジェームス・小田『スパイ野坂参三追跡』彩流社、1995年、ISBN 4882023555、9-68ページ。
- ^ 「8. 四重スパイ・野坂参三」「9. 愛される共産党」西鋭夫、岡崎匡史『占領神話の崩壊』中央公論新社、2021年、ISBN 978-4-12-005453-2、566-574ページ。
外部リンク