『マッドマックス』(原題: Mad Max)は、1979年公開のオーストラリアのアクション映画作品である。
監督のジョージ・ミラーと主演を務めたメル・ギブソンの出世作品であり、後にシリーズ化された。特殊撮影や舞台設定など、国内外の多くの作品に影響を与えた。
暴走族による凶悪事件が多発する社会となった近未来の荒廃したオーストラリアの路上が舞台になる。
暴走族で警官殺しの凶悪犯、ナイトライダーは、暴走族専門の特殊警察「M.F.P.(Main Force Patrol)」から、追跡用に改造されたパトカー「V8インターセプター(パシュート・スペシャル)」を奪って逃走。「M.F.P.」に所属する敏腕警官、マックス・ロカタンスキーはこれを発見し追いつめた末に、ナイトライダーは運転操作を誤って事故死する。
友人だったナイトライダーの死を知ったトーカッター率いる暴走族は自分達をコケにした報復としてM.F.P.を襲撃すべく行動する。まず、一味の一人であるジョニー・ザ・ボーイがM.F.P.隊員ジム・グースらに逮捕されるが、不起訴となり、失態を犯した彼はトーカッターに脅され、グースを襲撃。彼が運転していた車両はトーカッター一味により横転させられた挙げ句、火を点けられた。僚友グースの被害を見たのち、マックスは辞職を申し入れるが、マックスの腕を惜しんだ上司フィフィの提案を聞き入れて休暇を取り家族と共に数週間の旅行へ出発。しかし、トーカッター一味が妻を美人だとして目を付け、絡んだ事を切っ掛けに、これが原因で一味が妻子を襲撃、息子・スプローグの命が奪われ、妻・ジェシーは重体となった。
怒りに駆られるマックスは、報復を行うべく、スーパーチャージャー付きV8エンジンを搭載し600馬力にまでチューンナップされたもう1台の漆黒の特殊追跡車「V8インターセプター(ブラック・パーシュート・スペシャル)」をM.F.P.本部から無断で持ち出し、互いの復讐を賭けトーカッター一味と激突する。
インターセプターの馬力と速度によって、凶悪な暴走チームは壊滅。逃げおおせたかに見えたジョニーも捕えて私刑に処し、インターセプターのハンドルを握るマックスは暗雲立ち込める地平線へと続く一本道を疾駆する。
括弧内は正式名である。
監督のジョージ・ミラーは医学生時代に負傷者を搬送する救急車に同乗したことがあり、この経験がバイオレンスシーンの参考になったという。もっとも、劇中での直接的なバイオレンス描写は少なく、代わりにそれを暗示させる映像効果を挿入することで表現している(例:マックスが病床のグースを見た瞬間、画面が不気味に揺らめく)。
1970年代のオーストラリアでは暴走族が社会問題化しており、暴走族やバイクが登場する映画が多数制作された。特に1974年のマッドストーンは主要キャストの多くがマッドマックスにも出演している。
低予算映画であり、その大半をフォード・オーストラリア製のファルコンXBを改造したインターセプターを始めとする車輌の改造に費やしたため、金銭的な余裕は無かった。撮影の多くで既存の建物を利用しており、M.F.P.が入っていた司法省のビルは昔の水道局のものを、地下駐車場はメルボルン大学のものを使っていたという。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』に抜かれるまでは「制作費と興行収入の差が最も大きい映画」としてギネスブックに掲載されていた。
スタントマンによるアクション・シーンでは、無謀な撮影により2名の死者が出たと噂された。DVDのコメンタリーでも「死者が出た」となっているが、グース役のスティーヴ・ビズレーや元撮影スタッフなどのインタビューなどでは否定されている[注 7][注 8]。
クライマックスのトーカッターとトラックの激突シーンの撮影は、車両が破損する事にトラックの持ち主が難色を示したため、車体前面に鉄製の頑丈なガードを取り付けて行われた。ガードに貼り付けた板にはトラックのライトやラジエーターのイラストが描かれ、ライトが点灯したときの黄色い色までつけてある。衝突場面はロングショットでの撮影であったが、そのままでは呆気無い最期となるため製作陣は剥き出た両眼のアップを挿入する事でショッキングさを強め、よりインパクトのある場面となるよう演出した。この手法は後のシリーズにも活かされる事になる。
オーストラリアの俳優はオーストラリア特有の訛りがあるため、劇場公開時にはアメリカ人による吹き替えの英語版に差し替えられた。吹き替えは配給会社の判断だった模様で、監督のミラーは事前の断りも無く声を差し替えられたことに対して不満を露わにしている。
主演のオーディションに現れたメル・ギブソンはボロボロの服装だった。前夜に喧嘩をして、そのまま来たという。これをミラーが気に入って主演が決まった。メルは当時演劇学校に通う学生だった。
暴走族のリーダーであるトーカッターを演じたヒュー・キース・バーンはマッドストーンにも出演していたが、キャスト決定時点ではバイクの免許を持っておらず、撮影時は免許を取得したての初心者状態だったという。映像に登場する暴走族は、セリフのある者やスタントマンを除けばほとんどが本物だったため、現場には不穏な空気が流れていたとのこと。当時オーストラリアで社会問題となっていた暴走族を登用することで映画に真実味を持たせ、さらに、彼ら素人を使うことで予算を安く上げるという思惑もあった。トーカッターの片腕でもある副リーダー“ババ”役のジョフ・パリーは、セリフが少ない上に演技も達者とは言えず、その容姿も「悪のオーラが全身から漲っている」ことなどから、本物だとの噂が絶えなかった。登用した暴走族グループの親分がこのパリーだとされたこともあるが、その後、日本のファン達の調査により、俳優であったことが判明している。
“ロックさせた前輪を軸に後輪をパワースライドさせ、路上に円を描くようにタイヤ痕を付ける”という技の呼び名「マックスターン」は、この作品に由来する。和製英語であり、海外では単に「ドーナッツ」と呼ばれている。
1979年3月にCircus Booksから出版された映画版の内容に基づいたテリー・ケイ(Terry Kaye)により書かれたノベライズ小説がある。現在は絶版。
Mad Max: Original Motion Picture Soundtrack Soundtrack
(作曲)Brian May[注 9]
ゲーム版
マッドマックス - マッドマックス2 - マッドマックス/サンダードーム - マッドマックス 怒りのデス・ロード - マッドマックス:フュリオサ
マッドマックス (1990年のゲーム) - マッドマックス (2015年のゲーム)
ジョージ・ミラー - メル・ギブソン
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