ニクスはthe Pluto Companion Search Teamの研究者によってハッブル宇宙望遠鏡を使用して発見された[8]。ニュー・ホライズンズのチーム(The New Horizons team)は冥王星がカロン以外の衛星を持っている可能性があると見ていたため、2005年にハッブル宇宙望遠鏡を使用し冥王星周辺で微小な衛星を捜索した[11]。ニクスの光度は冥王星の5000分の1しかないため、発見するためには長時間の露光が必要であった[12]。
発見画像は2005年5月15日と5月18日に撮像された。ニクスとヒドラは、2005年6月15日にMax J. Mutchlerに、2005年8月15日にAndrew J. Stefflに、それぞれ独立して発見された。2002年6月14日にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した冥王星の画像によって再確認された後、2005年10月31日に発見が公表された[13]。新たに発見された2つの衛星にはその後、S/2005 P 1(ヒドラ)とS/2005 P 2(ニクス)という仮符号が与えられた。両衛星は発見したチームからは非公式に「P1」「P2」とも呼ばれていた[14]。
ニクスは細長い形状をしており、長軸では49.8 km (30.9 mi)、短軸では31.1 km (19.3 mi)である。これにより、ニクスの大きさ(dimensions)は49.8 km × 33.2 km × 31.1 km (30.9 mi × 20.6 mi × 19.3 mi)となる[2]。
初期の調査では、ニクス表面は赤みがかった色であることが示されていると見られた[20]。これとは逆に、他の研究ではニクスの色は他の冥王星の小衛星と同じように大部分が灰色であることが示されている[21][22]。なお、色が灰色でアルベドが高いことは、ニクス表面に氷の水が存在していることを示唆している[19][22]。ニクスはまた、その光度とアルベド(反射率)が変化するように見受けられる[21] 。光度の変動はニクス表面の地域毎にアルベドが異なることによると考えられる[21]。ニュー・ホライズンズ探査機が撮影した画像ではおよそ18 km (11 mi)にわたる赤みがかった地域が写っており、これはニクス表面の色についての矛盾する観測結果の原因であり得る[9][23]。
ニクスは冥王星とカロンの共通重心から48,694 km (30,257 mi)の距離、ステュクスとケルベロスの軌道の間を公転している[3]。ニクスを含む全ての冥王星の衛星の軌道はカロンとほぼ同一平面上にあり、離心率が非常に小さい。このカロンの軌道は冥王星の赤道に対する軌道傾斜角が極めて小さい[27][28]。冥王星の衛星がほぼ同一平面かつ円形の軌道を持つことは、これらの衛星が形成されて以来、潮汐進化(tidal evolutions)が進んできた可能性を示唆する[27]。冥王星の小衛星が形成された時、ニクスはおそらくより大きい軌道離心率で冥王星とカロンの共通重心を公転していた[29]。現在のニクスが円形の軌道を持っているのは、恐らく冥王星ではなくカロンから潮汐力の影響を受けて離心率を減少させたためである。ニクスでは冥王星の潮汐力の影響は弱いが、カロンとの潮汐相互作用でニクスの軌道が時間とともに徐々に円形になったと考えられる[29]。
2015年7月14日、ニュー・ホライズンズ探査機が冥王星系を訪れ、フライバイしながら冥王星とその衛星の写真を撮影した。冥王星の小衛星の中でニクスとヒドラだけが表面の特徴を観察するのに十分な高い解像度で撮影された[19]。冥王星系のフライバイに先立ち、ニクスの大きさの測定がニュー・ホライズンズに搭載されたLong Range Reconnaissance Imager(英語版)(LORRI)によって実施され、当初はニクスの直径が約35 km (22 mi)であると見積もられた[31]。ニクスから231,000 km (144,000 mi)の距離からニュー・ホライズンズが撮影した最初のニクスの詳細な画像は、2015年7月18日にニュー・ホライズンズからダウンリンク(受信)され、2015年7月21日に公開された[23]。画像の解像度は1ピクセルあたり3 km (1.9 mi)であり、ニクスの形状はしばしば「ゼリービーンズ」の形に例えられた[23]。ニュー・ホライズンズの観測機器Ralph MVIC(英語版)からのカラー強調画像には、ニクス表面の赤みがかった地域が写されている[23]。これらの画像からニクスの大きさについて別途正確な測定が実施され、おおよそ42 km × 36 km (26 mi × 22 mi)の大きさであることがわかった。
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