チューロニアン (英語 :Turonian )は、9390万年前(誤差80万年)から8980万年前(誤差100万年)にあたる後期白亜紀 の地質時代 名の一つ[ 1] 。
なお、「チューロン階 」「チューロニアン階 」という名称があるが、これらは時代を示すものではない。「階」は地層に対して当てられる単位(層序名)であり、層序名「チューロン階 」「チューロニアン階 」と時代名「チューロン期 」「チューロニアン期 」は対を成す関係である。詳しくは「累代 」を参照のこと。
層序学的定義
イスラエル 南部 Makhtesh Ramon 北部に由来する Gerofit 層(チューロニアン)の石板状石灰岩
チューロニアンはフランス の古生物学者アルシド・ドルビニ により1842年に定義された。彼はフランスのトゥーレーヌ州 のトゥール という都市にちなんで命名し、ここを模式地とした。
チューロニアンの最下部はアンモナイト の種である Wutinoceras devonense が地質柱状図に初めて出現する場所と定義されている。チューロニアンの国際標準模式層断面及び地点 (GSSP)はアメリカ合衆国 コロラド州 のプエブロ 近辺のロックキャニオン背斜 に位置する(38° 16' 56" N, 104° 43' 39" W)[ 2] 。
チューロニアンの最上部(すなわちコニアシアンの最下部)はイノセラムス科 の二枚貝 である Cremnoceramus rotundatus が地質柱状図に初めて出現する場所と定義されている。
細分化
チューロニアンは前期(下部)・中期(中部)・後期(上部)の亜期(亜階)に区分されることがある。テチス海 においては以下のアンモナイト のバイオゾーンが含まれる。
Subprionocyclus neptuni のゾーン(上部)
Collignoniceras woollgari のゾーン(中部)
Mammites nodosoides のゾーン
Watinoceras coloradoense ないし Watinoceras devonense のゾーン(最後の2つはともに下部)
他の重要な示準化石 にはイノセラムス科のイノセラムス 3種(I. schloenbachi と I. lamarcki および I. labiatus )がある。イノセラムスは現代のイガイ に関連する二枚貝の軟体動物 である。
環境
チューロニアンの前の地質時代であるセノマニアン との境界では海面上昇に伴う世界規模の海洋無酸素事変 (OAE 2 )が発生した。無酸素事変の中心となったのは大西洋 とテチス海 であったが、海洋無脊椎動物の絶滅パターンに差はあれど日本近海の生物相も影響を受けた。北海道のアンモナイトは境界から20 - 50万年後に回復を見せた[ 3] 。OAE 2とそれ以降の新種の出現はチューロニアンの基底を定義する。国際地質科学連合の白亜系層序学小委員会では、OAE 2のδ13C値 の正シフトの終了がセノマニアン/チューロニアン境界と定義されている[ 4] 。
炭素・酸素同位体比の研究から、後期チューロニアンからコニアシアン にかけて海水準低下と地球規模の気温低下が起きていることが示された。後期白亜紀 は全体として寒冷化しており、火山活動で放出された二酸化炭素 による温室効果 で一時的な温暖化が繰り返されていた[ 4] 。
日本において
北海道では中部蝦夷層群 三笠層 がセノマニアンから中部チューロニアンに、上部蝦夷層群が上部チューロニアンにあたる[ 5] 。チューロニアン期の間にはニッポニテス など新たな異常巻きアンモナイトのグループが出現したほか、ユーバリセラス 、オビラセラス 、シューパロセラス といった肋の発達したアンモナイトが生息した[ 6] 。
主な生物
アンモナイト
日本で産出するアンモナイトを挙げる[ 7] 。
上部(後期)
サブプリオノサイクルス・ミニムス
サブプリオノサイクルス・ネプチュニ
中部(中期)
メソプゾシア・パシフィカ
ニッポニテス・ミラビリス
コリンニョニセラス・ウルガリ
下部(前期)
ファゲシア・ゼベステンシス
パキデスモセラス・コスマチ
プゾシア・オリエンタリス
曲竜類
鳥群
角竜類
チューロニアンの角竜類
分類群
生息期間
場所
概説
画像
ズニケラトプス
アメリカ合衆国ニューメキシコ州 Moreno Hill 層
目の上に角を持つ最初期の角竜かつ、北アメリカから知られる最古の角竜。全長は3 - 3.5メートルで、尾が1メートルを占める。
ズニケラトプス
ワニ形上目
哺乳類
チューロニアンの哺乳類
分類群
生息期間
場所
概説
画像
ブリセオミス
アメリカ合衆国ユタ州 Straight Cliffs 層
ネズミより小型だがある程度似ている哺乳類
鳥脚類
首長竜類
翼竜
有鱗目
チューロニアンの有鱗目
分類群
生息期間
場所
概説
画像
ダラサウルス
アメリカ合衆国テキサス州アルカディアパーク頁岩
基盤的な小型のモササウルス科
ラッセロサウルス
アメリカ合衆国テキサス州アルカディアパーク頁岩
基盤的な小型のややがっしりとしたモササウルス科
竜脚類
非鳥類型獣脚類
出典
参考文献
Gradstein, F.M.; Ogg, J.G. & Smith, A.G. ; 2004 : A Geologic Time Scale 2004 , Cambridge University Press .
Kennedy, W.J.; Walaszczyk, I. & Cobban, W.A. ; 2005 : The Global Boundary Stratotype Section and Point for the base of the Turonian Stage of the Cretaceous: Pueblo, Colorado, U.S.A. , Episodes 28 (2): pp 93–104.