コロンブスの日あるいはコロンバス・デー(英語: Columbus Day)は、アメリカ州の多くの国々における祝祭日である。1492年10月12日にクリストファー・コロンブスによるアメリカ大陸への発見および到着を祝う。アメリカ合衆国では「Columbus Day」(コロンブスの日)、ラテンアメリカでは「Día de la Raza」(民族の日)と呼ばれ、宗教的な祭としてピラールの聖母を祝うスペインでは「Día de la Hispanidad」、「Fiesta Nacional」と呼ばれている。またベリーズやウルグアイでは「Día de las Américas」(アメリカの日)、バハマでは「Discovery Day」(発見の日)、アルゼンチンでは「Día del Respeto a la Diversidad Cultural」(文化の違いを尊重する日)、イタリアおよび世界中のリトル・イタリーでは「Giornata Nazionale di Cristoforo Colombo」または「Festa Nazionale di Cristoforo Colombo」と呼ばれている[1][2]。18世紀終盤から非公式に祝われており、20世紀初頭から様々な国々で正式に祝われるようになった。
ハワイ州、アラスカ州、オレゴン州、サウスダコタ州ではコロンバス・デーを認めていない。ただしハワイ州では同日ポリネシア人がハワイを発見したとして10月第2月曜を「Discoverers' Day 」(発見者たちの日)として祝っているが[19][20]、コロンバスによる新世界「発見」と関連して改名の議論が続いている[21]。州政府はコロンバス・デーも発見者たちの日もどちらも州公式休日とは認めておらず[22]、州、市、連邦政府の事務所や学校は休日ではなく通常通りとなる。サウスダコタ州では「コロンバス・デー」という名称は使用せず、「ネイティヴ・アメリカンの日」として州公式休日となっている[23]。オレゴン州ではコロンバス・デーを休日とも記念日とも認めておらず、学校や公共施設は通常通りである[24]。アイオワ州とネバダ州ではコロンバス・デーを州公式休日としていないが、その年によって変動する[25]。
コロンバスがアメリカ大陸に到着した日はラテンアメリカの多くの国でも祝われている。コロンバスをきっかけにして植民地支配を受けることになった中南米でも、10月12日(あるいは直近の月曜日)を祝日としている国が少なくない。アメリカのラテン・アメリカ人コミュニティの一部を含み多くのスペイン語圏では通常スペインと同じ「Día de la Raza 」(民族の日またはヒスパニックの人々の日)という名称を使い、ヨーロッパ人とアメリカ州の先住民族の最初の出会いを祝う[36]。スペイン語圏としての一体性を強調しているが、国によっては別の名称で呼ばれることもある。1917年、アルゼンチンで初めて祝われ、1921年にベネズエラとコロンビア、1922年にチリ、1928年にメキシコで祝われるようになった。スペインでもこの名称で祝われていたが、1957年から「Día de la Hispanidad 」(スペイン人の日)となった。2002年、ベネズエラでは祝日であり続けているものの、「Día de la Resistencia Indígena 」(先住民抵抗の日)という名称に変更されている。当初アメリカに影響を与えたスペインを祝す日、スペインおよびラテン・アメリカで互いに祝い合う証しとされていたが、ラテン・アメリカ中の先住民活動家に知られるようになりコロンバス・デーに反対し、アメリカにヨーロッパ人が到着したことを嫌って抵抗し、先住民と文化を祝うべきだとしている。
特に1960年代、アメリカでは民族の日にラテンの活動家たちが集まった。それ以降民族の日はヒスパニックの活動家たちの定期的な抗議活動の場となった。1996年のコロンバス・デーの日、ワシントンにてヒスパニックによる最初のデモが行われた。ヒスパニック系最大の社会的公正組織「National Council of La Raza 」としてその名が残っている[3]。中南米全体の傾向として、スペインによる侵略と殺戮、略奪が始まった日として、特に先住民系の人たちによる抗議デモも開催される[37]。
コロンビア
クリストファー・コロンバスから名がつけられた世界で唯一の国であるコロンビアでは「El día de la Raza y de la Hispanidad」として祝い、「2つの世界」の出会いを祝う機会となっており、人種の違いが文化をもたらした恩恵を反映している。
1994年、「Día de la Raza 」(民族の日)から、コスタリカおよびラテン・アメリカの文化を構成するヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、アジアの文化の融合を認める「Día de las Culturas 」(文化の日)に改名した[40]。
カリブ海地域
カリブ海地域のいくつかの国々にもコロンバス・デーと関連する祝日がある。ベリーズでは10月12日は「Day of the Americas 」または「Pan-American Day 」(アメリカ大陸の日)として祝われている[41][42]。バハマでは発見の日として公式に知られていたが、2001年、「National Heroes Day 」(英雄の日)と改名された。
スペインにとっては、中南米への植民地建設への第一歩を記した記念の日として、また広大なスペイン語圏の日として、毎年10月12日が「民族の日」(Día de la Raza、ディア・デ・ラ・ラサ)という名称の祝日となっており、この日には記念パレードなどが開催される。ただ、国威発揚のためのイベントであるとして、かつての植民地支配や国粋主義を嫌う人たちから批判を受けることも少なくなく、そのようなスペインの軍国主義を批判する日という意味合いも持つ。
1987年からスペインは「Fiesta Nacional 」または「National Day 」としてコロンバスのアメリカ大陸到着記念を祝している[44]。1957年に「Día de la Hispanidad 」に改名される前、世界中のヒスパニック・コミュニティとの繋がりを強調していた[44]。1981年、「Día de la Hispanidad 」は国公式祝日となった[44]。しかし1987年、「Fiesta Nacional 」に改名され、12月6日の憲法記念日と並び10月12日は2つしかない国の祝日の1つとなった[45]。20世紀、政権が変わるとNational Day は何度も変動した。君主制の地位とスペインの歴史を強調したい保守派と、スペインの民主社会の成長を記念したい共和主義者との間での譲歩の1つとして世界的なコロンバスの祝日がこの日に公式に制定された[45]。
「アメリカインディアン運動(AIM)」などによって、毎年この日になると全米各地で抗議行進やデモが行われていて、この際多数のネイティヴ・アメリカンが逮捕されている。また、この休日の名称そのものの変更を要求するネイティヴ・アメリカン団体「コロンバス・デー変更同盟」(The Transform Columbus Day Alliance)も運動を強めている。
^ abKubal, Timothy. 2008. Cultural Movements and Collective Memory: Christopher Columbus and the Rewriting of the National Origin Myth. New York: Palgrave Macmillan.
^ abCharles Speroni, "The Development of the Columbus Day Pageant of San Francisco," Western Folklore, Vol. 7, No. 4 (Oct. 1948), pp. 325–335.U.S. State Department, Bureau of International Information Programs.