DARPAグランド・チャレンジ
DARPAグランド・チャレンジ (英語 :DARPA Grand Challenge)とは国防高等研究計画局 (DARPA)によるロボットカー のロボットカーレース である。アメリカ合衆国では防衛 上の先進的な課題の解決方法として従来の枠組みにとらわれない手法を求め、このような競技を行い、問題点を洗い出し、解決の糸口を探っている。最初の競技では(オフロード を含む)未舗装路を制限時間内に走破するものだった。2007年11月3日に実施された3回目の競技では市街地 を想定したコースが用意された[ 1] 。
歴史と背景
完全な自律(autonomy)型自動車は国際的に多年にわたって開発が行われている。日本 では1977年 (昭和 52年)から開発が始まった。西ドイツ では(Ernst Dickmanns (英語版 ) と VaMP (英語版 ) )、イタリア では(ARGO 計画)、欧州連合 では(EUREKAプロメテウス計画 )、アメリカ合衆国 や他の国でも行われている。
グランドチャレンジは世界初の長距離無人自動車の競技である。他の無人自動車の研究ではより伝統的な商業的あるいは学術的な努力が行われてきた。合衆国議会はDARPAに対して2015年 に自律的な無人軍用車 の比率を1/3にすべく最初のグランドチャレンジの賞金(100万ドル)の拠出を承認した。2004年 に開催された時にはディレクターを勤めるTony Tether (英語版 ) 博士が、次回の賞金は200万ドルに増額すると発表した。2007年のアーバンチャレンジでは第1位、2位、3位にそれぞれ200万、100万、50万ドルの賞金が贈られた。
競技の参加は世界中の個人や組織に対して開かれている。参加者は高校生、大学生、企業、他の組織と多岐に渡る。100以上のチームが最初の年に参加して幾多の技術をレースに持ち込んだ。2年目は195チームが36州と4ヶ国から参加した。
2004グランドチャレンジ
レッドチームレーシングの1986年式 HMMWV サンドストーム (英語版 )
2004年3月13日にモハーヴェ砂漠 で開催された第一回目のDARPAグランドチャレンジでは総距離150-マイル (240 km)でどの車両もゴールまでたどり着けなかった。カーネギーメロン大学 のレッドチームの(ハンヴィー を改造 した)サンドストーム (英語版 ) がスイッチバック の曲がる個所で岩に乗り上げて動けなくなるまで11.78 kmまで走った。勝者はいないと宣言され、賞金は与えられなかった。
2005グランドチャレンジ
Beer Bottle Pass
2度目のDARPAグランドチャレンジは、全長212 km (132マイル)のオフロード コース、制限時間10時間であり、2005年10月8日 午前6:40に開始された。
決勝に進出した23台のうち、1台を除いた22台が2004年の最高記録の11.78 km (7.32 mi)を上回り、5台が完走した。
2005年のコースは片方が崖 の切り立った岩山の曲がりくねった山岳地帯を越え、3か所の狭いトンネル を通過して100回以上の左右の半径の小さい曲がり道 を走破し、最後にBeer Bottle Passと呼ばれる1.5マイルほどの狭くて難しい区間を通るものであった[ 2] 。とはいえ、 2004のコースではスタート直後にいきなりもっと段差があったりコース中に尖鋭なスイッチバック (Daggett Ridge)がいくつかあったのにくらべ、2005年のコースではカーブが大幅に少なくなり全体的に道幅が広くなっており、無人自動車にとってはかなり救いとなっていたはずである。
スタンフォード大のチームリーダーのSebastian Thrunは以前はカーネギーメロン大学の教員でありRed Whittakerはやはりカーネギーメロン大のチームリーダーだったので、ある意味自然な結果だが、スタンフォード大学 とカーネギーメロン大学 は、互いに良きライバルになりこのレースを競いあった。H1ghlanderは(ライバルとの速さの比較以前の問題だが)それ自体の機械的な故障に悩まされた。Grayチームは大会数週間前にハリケーン・カトリーナ の被害にあっていたので、順位うんぬんではなく、参戦したこと自体を評価してやらねばならない。オシュコシュ・コーポレーション のテラマックス は大型のトラックで、夜間は進まず暖機運転で朝を待ち、慎重にBeer Bottle Passを通過し2日目にゴールまで辿り着き、制限時間の10時間を超えてしまったので厳密に言えば失格だが、一応は第5位の「完走」車となった。
各チームの後援企業は以下通りであり、これらの企業の多くがその後、自動運転技術の開発にもかかわるようになった。
Stanford Racing Team:Android 、Applanix、Coverity 、Google 、ハニウェル 、インテル 、Mohr Davidow Ventures、NXP 、レッドブル 、Tyzx 、フォルクスワーゲン
Stanford Racing Team:キャタピラ 、コンチネンタル 、GM 、グーグル 、IBEO、インテル 、McCabe Software、MobileEye 、ネットワーク・アプライアンス 、Tele Atlas 、Vector-CANTech、Viewpoint
2007アーバンチャレンジ
2007年度の競技に参加するために開発された車両
DARPA アーバンチャレンジの決勝で対峙したスタンフォードレーシングとヴィクター タンゴ
3度目のDARPAグランドチャレンジ[ 3] は"アーバン チャレンジ"として知られ、2007年11月3日に今では閉鎖されたジョージ空軍基地(現在は南カリフォルニア物流空港)で開催された(Google map )[ 4] 。コースは市街地を想定した総延長96 km (60 mi)で6時間以内に完走することが求められた。ルールは、他の車列や障害物に対応したり車列に合流しながら、すべての交通規則に従う事も含まれてた。
これまでの競技とは異なり、2007年のアーバンチャレンジはAとBの2つの"トラック"に分けられて開催された。トラックAとトラックBの全てのチームは同じ競技コースの一部だが、トラックAを選択したチームはUS $100万ドルの予算を受ける事ができた。これら11チームは主要な大学と大企業で構成された。それらはカーネギーメロン大学 はゼネラルモーターズ と組み、スタンフォード大学 はフォルクスワーゲン と組み、ヴァージニア工科大学はVictorTangoとしてTORCテクノロジーズと組み、オシュコシュ・コーポレーション 、ハネウェル 、レイセオン 、カリフォルニア工科大学 、Autonomous Solutions、コーネル大学 とマサチューセッツ工科大学 である。トラックAでの少数の独立した参戦者の一つがthe Golem Group だった。DARPAは公式にトラックAのチームを選択した理由を説明していない。
チームは断片的な画像化された競技コースの地図を渡された。少なくとも一つのチーム、タータン・レーシングは、改善された誘導のための追加的な目標地点を挿入することによって地図を強化した。 チームジェファーソンによって公開された報告の論文では、DARPAによって与えられた地図とタータン・レーシングで使用されたコースマップとの対比を画像で示した[ 5] 。
完走した6チーム:
優勝したタータン·レーシングはシボレー・タホ の"Boss"で参戦して$200万ドルを受け取った。2位のスタンフォードレーシングは2006年式フォルクスワーゲン パサート ワゴン の"Junior"で参戦して$100万ドルを受け取った。 3位のVictorTangoは2005年式フォード・エスケープハイブリッド の"Odin"で参戦して$500,000ドルを受け取った[ 6] 。MIT は4位でコーネル大学 とペンシルベニア大学 /リーハイ大学 も同様に完走した
6チームが完走した:
チーム名
ID#
車両
形式
拠点
所要時間 (h:m:s)
結果
タータン レーシング
19
Boss
2007年式 シボレー・タホ
カーネギーメロン大学 , ピッツバーグ , ペンシルベニア州
4:10:20
1位; 平均14 mph (22.53 km/h )で走破 [ 7] [ 8]
スタンフォード レーシング
03
Junior
2006年式 フォルクスワーゲン パサート ワゴン
スタンフォード大学 , パロアルト , カリフォルニア州
4:29:28
2位; 平均約13.7 mph (22.05 km/h )で走破[ 9]
VictorTango
32[ 注 1]
Odin
2005年式 フォード・エスケープハイブリッド
バージニア工科大学 , Blacksburg , バージニア州
4:36:38
3位; 平均 13 mph (20.92 km/h )で走破[ 7]
MIT
79
Talos
ランドローバー・LR3
マサチューセッツ工科大学 , ケンブリッジ , マサチューセッツ州
約 6 時間
4位[ 10]
The Ben Franklin Racing Team
74
Little Ben
2006年式 トヨタ・プリウス
ペンシルベニア大学 , リーハイ大学 , フィラデルフィア , ペンシルベニア州
公式資料なし
完走6チームの1つ
Cornell
26
Skynet
2007年式 シボレー・タホ
コーネル大学 , イサカ , ニューヨーク州
公式資料なし
完走6チームの1つ
2004年と2005年の競技は車両にとってはより物理的に挑戦的な競技でロボットは隔離されて他の車両とは通過時のみ他の車両を検出した。アーバンチャレンジでは全ての交通法規に従ってコース上の他のロボットを検出して避ける事ができる車両を製造する事が設計者に必要とされた。
これは車両のソフトウェア がリアルタイムで他の車両の行動に基づいて"知的に"対応しなければならないとしてより高度なソフトウェアの開発が要求された。これまでの自律型車両の開発では高速道路での走行のように構造化された状況に焦点を当てていたが、この競技では4か所の交差点で停止するようなより雑然とした都市環境で動作して相互に洗練された通信を実行する事が求められた[ 11] 。
2012年ロボティクスチャレンジ
DARPAロボティクス・チャレンジは発展途上の人型ロボットに特化した競技である。競技の第一の目標は複雑で危険な作業や分解、人間工学上の環境で実行する能力のロボットを開発する事である。[ 12] 2012年10月に設立され2013年6月に仮の大会が開催された。さらに2回の競技が計画され、2013年12月に予選と2014年12月に決勝が予定される。
以前の競技とは異なり、"車両"の製造はロボティックスチャレンジの範囲には含まれない。2012年8月にDARPAはボストン・ダイナミクス はソフトウェアのチームが競技に使用するPETMANを基にした同一仕様のロボットを開発して8台製造する契約を交わした[ 13] 。契約総額は$10,882,438 で費用に利益を加算した契約で2014年8月9日に完了する事が期待される[ 14] 。
2013 FANG チャレンジ
2013年4月22日、DARPAは"グランドシステム"の$100万ドルの賞金をFast Adaptable Next-Generation Ground Vehicle (FANG) Mobility/Drivetrain チャレンジの勝者としてオハイオとテキサスとカリフォルニアの3人に与えた。グランドシステムはの提出した最終的な設計は必要な性能と製造の難易度を測定して最高得点を獲得した。最初のFANGチャレンジは2013年1月14日に始まり、1,000人以上の参加者が200以上のチームでMETA 設計ツールが使用され、Adaptive Vehicle Make (英語版 ) コラボレーションパターンが1000種類の潜在的な移動手段とドライブトレーンのサブシステムの設計とシミュレーションのためにテネシー州 ナッシュビル のヴァンダービルト大学 で開発された。FANGプログラムの目標は専用に開発されたMETA設計ツール、モデルライブラリーとVehicleFORGE プラットホームの試験である[ 15] 。
技術
2005年のスタンフォードのコンピュータビジョン機械学習コンポーネントの技術論文とソースコードは公開されている[ 16] [ 17] 。
2007年のアーバンチャレンジのチームは、センサデータの解釈、計画、および実行のためにまざまなソフトウェアとハードウェアの組み合わせを採用した。:
チーム
言語
OS
ハードウェア
脚注
コーネル大学
C, C++, C#
Microsoft Windows XP
17台のデュアルコアサーバー
改良型のベイズ推定 によって計画する。2008年にコーネル大学はApache ライセンス 2.0の下で全てのソースコードを公開した。[ 18]
Insight Racing
Linux
Mac mini
低電力で発熱が少ない状態で数台のMac Miniを直流電源で動かした。
Team Case
大部分はLabVIEW , いくつかはC++ とMATLAB
Windows XP
5台のMac mini , 2 NI PXI's, CompactRIO
SSD を備えた数台のMac Miniを直流電源で作動。PXIはセンサーのインターフェース用。 CompactRIO はリアルタイム車両制御装置用。人間工学に基づいたソフトウェアアーキテクチャ
Team Gray
GrayMatter, Inc. AVS
他のチームよりも小型であると考えられる組み込みシステムを採用。[ 19] [ 20] 同様にシステムは他のセンサーを拡張可能になっている。[ 21]
Team LUX
Windows XP
組み込み版のXP
Team Jefferson
Java
Solaris (Java RTS), Linux (Java SE)
マイクロコントローラと Sun SPOT (Java ME)
Perrone Robotics ' MAX ロボティックス プラットホームをSun Microsystems' Java RTS/SE/ME上で実行
Team Ben Franklin
MATLAB
Sting Racing
Java
Linux
VictorTango
C++ とLabVIEW を併用
Windows と Linux
フィニッシャーの追加JAUS, フィニッシャーのみで Velodyne センサーは使用せず
Team Gator Nation (CIMAR)
C, C++, and C#
Windows, Fedora (Linux)
JAUS プロトコルを備えてシステム通信
MIT
C
Linux
40 コアを備えたクラスタ
ロボットのミドルウェアライブラリーは軽量通信と Marshaling (LCM) [3] はMITの車両用に開発された。
Austin Robot Technology
C++
ソフトウェアはテキサス大学オースティン校 の学部生によって開発された。開発環境としてPlayer Project が使用された。
Tartan Racing (優勝)[ 22]
C++
Linux
自動計画 、モーション プランニング、挙動生成、承認とワールドモデリングとメカトロニクス を備えた階層化制御システム[ 23]
脚注
注釈
出典
^ Welcome
^ “DARPA Grand Challenge Winner: Stanley the Robot! ”. ポピュラーメカニクス . 12 April 2010 閲覧。
^ "The contest, called the Grand Challenge and sponsored by the Defense Advanced Research Projects Agency, or Darpa, featured both robot collisions and robot traffic jams." John Markoff (2007年11月5日). “Crashes and Traffic Jams in Military Test of Robotic Vehicles ”. New York Times . 2008年12月7日 閲覧。
^ Urban Challenge 2008 Archive
^ “Team Jefferson 2007 DARPA Urban Challenge Debrief ”. Team Jefferson. 2016年3月4日時点のオリジナル よりアーカイブ。 Template:Cite web の呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
^ Urban Challenge — Archived as of April 2008
^ a b Carnegie Takes First in DARPA's Urban Challenge | Danger Room from Wired.com
^ First-Place Finish - Carnegie Mellon University
^ Stanford Racing Team
^ Contact
^ http://archive.darpa.mil/grandchallenge/docs/PR_UC_Announce_Update_12_06.pdf
^ DARPA ROBOTICS CHALLENGE (DRC)
^ Sole Source Intent Notice for Humanoid Robot Systems for the DARPA Robotics Challenge Program
^ Defense.gov: Contracts for Monday, August 13, 2012
^ DARPA Announces Winner of the First FANG Challenge, April 22, 2013
^ Bob Davies and Rainer Lienhart. “2005 DARPA Grand Challenge Source Code ”. 2014年3月2日時点のオリジナル よりアーカイブ。 Template:Cite web の呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
^ Bob Davies and Rainer Lienhart. Using Cart to Segment Road Images . Universität Augsburg. https://opus.bibliothek.uni-augsburg.de/opus4/files/173/TB_2005_18.pdf 2018年6月23日 閲覧。 .
^ Source code to Cornell's DARPA Urban Challenge Vehicle
^ GrayMatter, Inc AVS
^ Other teams competing in 2007 Urban Challenge
^ GrayMatter Inc AVS allowing the adding of other sensors and types thereof
^ [2] Tartan Racing team description
^ Urmson, C. et al., Tartan Racing: A Multi-Modal Approach to the DARPA Urban Challenge 2007, page 4
外部リンク
報道関係
いくつかの賞