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超新星の観測史 」は
暫定的なもの です。
(2019年8月 )
かに星雲 はパルサー星雲 の1つであり、1054年に日本でも観測されたSN 1054 と同一のものである。
超新星の観測史 (英 : history of supernova observation)では人類が超新星 の出現について観測し、記録したできごとについて述べる。人類が初めて超新星を記録したのは紀元185年 のSN 185 とされている。天の川銀河 にある超新星も観測され、現在はSN 1604 が観測された中で一番近い超新星と認識されている[ 1] 。
望遠鏡 の発達により超新星を発見するのが別の銀河であっても可能となった。また、現在では最新の科学技術により、超新星の爆発のモデルが発達している。
観測初期
中国の天文学者によって記録された客星 (かくせい)。黄色い部分がSN 1054について言及されており、光耀未退や妖星などの文が見られる。
1万年から2万年前に起こったとされる超新星爆発によりほ座超新星残骸 が形成された。1976年 にNASA の天文学者は南半球 の人間がこの爆発を目撃して記録し、象徴的にしたのではないかと考えた。翌年に考古学者のジョージ・ミカノウスキー (英語版 ) はボリビア にあるネイティブアメリカン が残した古代の不可解な模様があることを思い出した。4つの円に2つの大きな円が配置された彫刻の模様である。小さい円はほ座 とりゅうこつ座 の星座の配置に似ている。大きい円はカペラ と超新星残骸を象徴していると考え、ジョージ・ミカノウスキーはボリビア の原住民が超新星爆発を観測した可能性を示している[ 2] 。
文献記録の中では、中国の歴史書に記載された紀元前352年ごろの観測記録が最も古いとする説がある[ 3] 。中平 2年(185年 )、中国の天文学者は空に明るい星が出現し、8か月で消えたことを観測した[ 4] 。恒星のように輝きながら彗星とは異なり天を移動しなかったという。この観測記録は超新星の特徴と一致しており、超新星爆発の最古の観測記録と確認されている。 SN 185はローマ帝国 の文献に記録された可能性もあるが、今のところは見つかっていない[ 5] 。RCW 86 がSN 185の残骸ではないかとも言われており、X線の調査によると年代はだいたい合っている[ 6] 。
太元 18年(393年 )、中国で、現在のさそり座 に新たな客星であるSN 393 が出現したことが記録された[ 7] [ 8] 。なお、未だ超新星と確認されていない事象としてはSN 386 [ 9] 、SN 437 [ 10] 、SN 827 、SN 902 [ 11] があり[ 1] 、これらは今のところ超新星残骸に同定されていないがその「候補」としては挙がっている。最初の観測記録以来2000年の間に中国の天文学者はこのような「候補」として挙がっているものを20個ほど記録しており、時代が下るとともにそれらの中にはイスラーム教圏やヨーロッパ、そしておそらくはインドなどの観測者によっても記録されるものがでてくる[ 1] [ 3] 。
SN 1006 は南天の星座、おおかみ座 に現れた超新星である。歴史上で最も明るい超新星であり、記録は中国、エジプト、イラク、イタリア、日本、スイスと幅広い範囲で観測された。また、フランスやシリア、北アメリカでも観測された可能性が挙げられている。エジプトの医者 、天文学者 、占星術師 であるアリー・ブン・リドワーン は明るさが月の約4分の1であると書き記している。現在の超新星残骸の地球からの距離は約7100光年 であることが分かっている[ 12] 。
SN 1054 は、アラビア、中国、日本で1054年に観測された。古代プエブロ人 のペトログリフ も観測に含まれるとすることもある[ 13] 。この超新星爆発はおうし座 で出現し、かに星雲 の超新星残骸になったとされる。光度は最高で 、金星 の4倍ほどになり、日中でも目視できる状態が23日、夜中なら目視できる状態が653日(=約1.79年)続いたと考えられている[ 14] [ 15] 。
カシオペア座 に現れたSN 1181 についてはあまり記録がなく、中国や日本でしか観測されていない。パルサー の3C 58 が残骸ではないかといわれている[ 16] 。
デンマークの天文学者、ティコ・ブラーエ はヴェン島 で1572年 に新たな星がカシオペア座 に現れたことを発見し、これは後にSN 1572 と言われた
[ 17] 。この頃、ヨーロッパでは月や惑星は不変であるとするアリストテレス 派が多かった。そのため、天体観測者はSN 1572が地球の大気圏内で起こったものだと主張していた。それに対しティコは、日々経っても視差 が不変なことからアリストテレス派に反対した[ 18] [ 19] 。ティコは観測記録を記したDe nova et nullius aevi memoria prius visa stella (後の"Concerning the new and previously unseen star")を1573年に出版した。また、この本のタイトルから激変星 の1つである新星 (Nova)が名付けられた[ 20] 。
ケプラーの星 とも言われるSN 1604 。チャンドラ が撮影。
一番最近、天の川銀河 で発見された超新星はSN 1604 であり、1604年 10月9日 に観測された。ヨハネス・ファン・ヒーク もこの出現を発見したとする意見もあるが、ヨハネス・ケプラー が観測をDe Stella nova in pede Serpentarii として公表した[ 21] 。ガリレオ・ガリレイ などはアリストテレス派に反対し、新星の視差を測定した[ 22] 。超新星残骸は1941年にウィルソン山天文台 で確認された[ 23] 。
望遠鏡による観測
超新星の本質、つまり残った中性子星 やブラックホール は当分の間は不明であった。観測者は研究のもと、恒星の光度が周期的に変化していることが分かってきた。ジョン・ハインド とノーマン・ポグソン は、それぞれ1848年 、1863年 に光度についてグラフを描いたところ、急激に明るさが変化するのを発見した。しかし、これに対する関心は低かった。1866年 にはウィリアム・ハギンズ が作った分光器 を用いた新星の天文台で反復新星 であるかんむり座T星 が発見された[ 24] 。
1885年から2010年までの間に見つかった超新星の空の位置を写した動画。年々発見数は増え、21世紀になるとほとんど空を埋めつくしている。
1885年 になると、天の川銀河 以外の銀河が観測され、エストニア のエルンスト・ハルトヴィッヒ によりアンドロメダ銀河 の方向で観測された。SN 1885Aとも言われるアンドロメダ座S星 は6等級にまでなった。
このような新星の新しい分野は1930年代、ウォルター・バーデ やフリッツ・ツビッキー によりウィルソン山天文台 で観測された[ 25] 。2人はアンドロメダ座S星を確認し、太陽が107 年間で出すエネルギーと同等の爆発を起こす星をSuper-novaとし、エネルギーは元の恒星が重力崩壊 により何らかの星(中性子星 )になる時にエネルギーを放出すると仮定した[ 26] 。Super-novaという言葉は1931年 、ツビッキーがカリフォルニア工科大学 で使った言葉で、それ以降、アメリカ物理学会 の会議で使われることに決まった。1938年 にはSuper-novaのハイフンはなくなり、Supernovaが常用されるようになった[ 27] 。
超新星爆発は比較的珍しいが、天の川銀河でも50年に1回は起こっており[ 28] 、遠方の銀河が発見できるようになってからは頻繁に発見されるようになった。1933年からツビッキーは45cmシュミット式望遠鏡 をパロマー天文台 で使い、3年で12個の超新星を見つけた[ 29] 。
1938年、バーデはかに星雲がSN 1054の残骸ではないかと考え、星雲が超新星残骸であることを発見した。バーデはかに星雲が惑星状星雲 に比べて拡大速度が大きすぎることに気づいた[ 30] 。同年、Ia型超新星 が距離を計算する指標となると考えた。これは後に、アラン・サンデージ やグスタフ・タンマン (英語版 ) が標準光源 を使って測定できることを示した[ 31] [ 32] 。
超新星のスペクトル分類は1941年 、ルドルフ・ミンコフスキー により初めて行われた。ミンコフスキーは超新星を水素 の吸収線 が見られるか見られないかでIとIIの2つに分類した[ 33] 。後に、ツビッキーがこれに加えてIII、IV、Vを加えることを提案したが、現在は使われていない。さらに現在ではI型にはIa、Ib、Icという分類がある[ 34] 。詳しくは超新星#分類 を参照。
第二次世界大戦 後に、フレッド・ホイル は宇宙に多種の元素が観測される原因を調べようとした。1946年 には質量の大きい恒星が核融合反応 をするのは、重元素 の核融合反応がエネルギー放出の原因であり、重力崩壊を起こすと述べた。重力崩壊をした恒星は不安定になり、爆発によって元素を放出するため、星間に散らばる[ 35] 。超新星爆発のエネルギー源が核融合だとする理論は1960年代の内にホイルやウィリアム・ファウラー により発展された[ 36] 。
超新星のためにコンピュータが使われたのは1960年代のノースウェスタン大学 が初めである。24インチ望遠鏡をニューメキシコ にあるコラリトス天文台 に設置し、コンピュータの操作の元、数分ごとに観測方向を変更できるようになった。この方法で2年間で14もの超新星を発見している[ 37] 。
1970年 - 1999年
Ia型超新星 は1973年 ごろに基礎が成立した[ 38] 。NGC 5253 にあるSN 1972E の光度曲線 は爆発した時の一度跳ね上がったあと、一日にだいたい0.01視等級 ずつ減光していった。Ia型超新星の元の恒星でニッケル56が生成される。ニッケル56は半減期が約6日でありコバルト56に崩壊し、コバルト56は半減期約77日で鉄56に崩壊する。この崩壊によりエネルギーを放出する[ 39] 。
また、光度を測定することで、距離が推定できる標準光源 としての利用が高まった。ハイゼット超新星探索チーム は1998年 の超新星宇宙論計画 で遠方にあるIa型超新星が予想より暗くなっていることを発見し、宇宙の加速 を証明する手がかりにしている[ 40] [ 41] 。
天の川銀河では1604年以来超新星は観測されていないが、1667年か1680年ごろにカシオペヤ座の方向で超新星爆発が起きたと考えられている。残骸はカシオペヤ座A と呼ばれ、星間塵 により発見が阻害されたと考えられている。しかし、現在では別の波長のスペクトルから見ることができる[ 42] 。
中央付近にあるのがSN 1987A の残骸であり、大マゼラン雲 の中にある。ニュートリノ が検知され、電磁スペクトル一帯で観測された初めての超新星である[ 43] 。SN 1987Aにより現代の天文学の超新星の分野で観測記録が多いに得られた[ 44] [ 45] 。
20世紀になり超新星の発見は増えている[ 46] 。特に1990年代には超新星を探査する計画が多く開始された。1992年 にロイシュナー天文台 でBAIT(Berkeley Automated Imaging Telescope program)という超新星探査計画が開始され、1996年 にはリック天文台 でKAIT(Katzman Automatic Imaging Telescope)が成功した。2000年までにリック天文台は96もの超新星を見つけ、世界で一番超新星の発見に成功した[ 47] 。
1990年代後半、超新星残骸にあるチタン44 の崩壊で放出されたガンマ線 を探索することで超新星を発見できるのではないかと提案された。チタン44は半減期 が比較的長く、近ければガンマ線が銀河を超えて届く距離にもなる。
1999年に発見されたSN 1999an 。IC 755 の内部にある。
RX J0852.0-4622はほ座超新星残骸 に見られた超新星である[ 48] 。
ほ座超新星残骸にあるのでほ座の英名ベラ にちなみ、RX J0852.0-4622はベラ・ジュニア とも呼ばれる[ 49] 。ガンマ線が検知されたため、天文学的には若い(おそらく1200年ごろ)に爆発したと思われるが、歴史的記録はない。地球から700光年ほどしか離れておらず、これほど近くに超新星が現れるのは10万年に一度ほどと言われる[ 50] 。
2000年 - 現在
ハッブル宇宙望遠鏡 がとらえたMACS J1720+35[ 51] 。
SN 2003fg は、2003年 に発見された。この超新星は質量がチャンドラセカール限界 を超えており、謎のある超新星である[ 52] 。
2006年 の9月に発見されたSN 2006gy は、地球から2.4億光年先にあるNGC 1260 で爆発し、2007年 10月にSN 2005ap の光度が確認されるまでは観測史上最大の光度となった。爆発はそれまでに起こったどの爆発よりも100倍以上は明るい超新星であり[ 53] [ 54] 、元の恒星は太陽 の約150倍と推定されている[ 55] 。Ia型超新星のような特徴を持っているが、スペクトル中に水素があるためII型超新星 に分類される[ 56] 。SN 2006gyは極超新星 とも考えられている。SN 2005ap は、SN 2006gyを発見したロバート・クインビー が発見した超新星でSN 2006gyの2倍、一般的なII型超新星の300倍はあるとされている。
NGC 2768 にあるSN 2000ds とNGC 4589 にあるSN 2005cz 。2つはカルシウムを多く放出する超新星である[ 57] 。
2008年 5月21日 、はじめて超新星爆発の瞬間が撮影されたことが発表された。偶然、NGC 2770 を観測していたときにX線バースト が検出され、地球から8800万光年離れた場所にあるSN 2008D が見つかった。最終的にはこのX線バーストが超新星誕生の印だとプリンストン大学 のアリシア・M・ソダーバーグ によって結論づけられた[ 58] 。
アマチュア天文家 も超新星を見つけており、パケット天文台 のキャロライン・モーア(Caroline Moore)は、探査チームとSN 2008ha を2008年の11月に発見した。超新星を見つけ、公式に認められている中では最年少の発見者であり、発見当時は14歳であった[ 59] [ 60] 。しかし、2011年 1月、カナダのキャサリン・オーロラ・グレイは10歳の時に超新星を観測し、現在の最年少を更新した[ 61] 。父とその友人は視等級17ほどのSN 2010lt をきりん座 の方向で見つけた。なお、この超新星は地球から約2.4億光年離れている。
渦巻銀河 であるNGC 4424 にある超新星SN 2012cg [ 62] 。
2009年 、南極の氷床コア で硝酸塩 が発見された。この硝酸塩は窒素酸化物 (NOx )がガンマ線によりできたものである。これによりガンマ線を検出することによって超新星を発見することが可能であることが分かった[ 63] 。
2010年 11月15日 、チャンドラX線天文台 がM100 のSN 1979C の超新星残骸が年齢30年程のブラックホール であると公表した。また、NASAはこの超新星が高エネルギー粒子を恒星風 によって生み出す中性子星 である可能性も考えている[ 64] 。
2011年8月24日 、パロマー・トランジエント・ファクトリー はM101 にあるIa型超新星SN 2011fe を超新星爆発後すぐに発見した。この超新星は2100万光年先にある[ 65] 。
2012年 3月16日 、M95 にII型超新星 であるSN 2012aw が発見された[ 66] 。
2014年 1月22日 には、ロンドン大学天文台 でM82 の近くにあるSN 2014J が発見された。距離は約1200万光年で、ここ10年間に出現したものでは最も近い超新星となった。
将来
2006年にマックス・プランク地球外物理学研究所 の研究チームは、ガンマ線 の観測に特化した人工衛星インテグラル の観測結果に基づいて天の川銀河 に存在する放射性同位体 アルミニウム26 (英語版 ) の総量の動態を調べ、超新星爆発が発生する頻度を推計した[ 28] [ 67] 。アルミニウム26は、超新星爆発を起こすような巨星の重力崩壊 時でしか合成されず寿命が100万年ほどなので、銀河系内で進行中の元素合成 のトレーサーとしてうってつけである[ 28] [ 67] 。推計の結果、天の川銀河では100年あたり 1.9 (±1.1) 回の頻度で超新星爆発が起きていることがわかった[ 67] 。しかしながら、過去2000年間で観測できた超新星爆発の瞬間は、上述のように8回しかない[ 28] 。この少なさは爆発場所から地球までの距離の遠さや星間塵 によって目視が妨げられたからであろう[ 28] 。電磁スペクトル を広範囲で観測できる機器やニュートリノ検出器 などが発展すれば、星間物質などで見えないものも検出される可能性がある[ 28] 。
LSST は広範囲の調査で10年間に3 - 4百万もの超新星を見つけられると予測している[ 68] 。
脚注
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関連項目
外部リンク