アンドロメダ座S星
アンドロメダ座S星 (あんどろめだざSせい)またはSN 1885A とは、1885年 にアンドロメダ銀河 で発見された超新星 のことである。この超新星は、アンドロメダ銀河中で観測された唯一のものであり、天の川銀河 以外で最初に記録された超新星である。「1885年の超新星」として知られている。
発見
この超新星が最初に観測されたのは1885年8月17日 、フランス はルーアン の天文学者 リュドヴィク・グイ によるもので、公開の観測会中に気が付いたとされる[ 5] [ 6] 。当初グイは、望遠鏡の欠陥によるものと思い込み、この天体の重要性に気づかなかった。
8月19日 には、アイルランド はベルファスト のアマチュア天文家アイザック・ウォード が、この天体を見つけた[ 7] 。
翌8月20日 には、エストニア のドルパト天文台 において、エルンスト・ハルトヴィッヒ によって観測されたが、ハルトヴィッヒがこれを月明りがない日にも観測して本物の天文現象と確認し、アストロノミシェ・ナハリヒテン の編集者アーダルベルト・クリューガー へ通報したのは、8月31日 のことだった[ 8] [ 9] 。ハルトヴィッヒの通報をもってこの天体は「発見」となり、以後数多くの観測が行われた[ 10] 。グイやウォードの観測も、ハルトヴィッヒの発見によって存在が明らかとなった。
20世紀 になって行われた、これらの観測を総合した光度曲線 の分析では、ウォードの観測報告は、光度極大付近のこの天体にしては暗すぎるとして、分析から除かれ、信憑性が疑われている[ 1] [ 4] 。
特徴
アイザック・ロバーツ によるアンドロメダ銀河 の写真。ロバーツは、アンドロメダ座S星の出現時にもアンドロメダ銀河を撮影している[ 1] 。
光度・色
アンドロメダ座S星は、1885年の8月21日 から22日にかけて最も明るくなり、視等級が5.66(絶対等級では-18.74)に達した後、半年程で14等級まで暗くなった[ 4] [ 2] 。最後に観測されたのは1886年 2月で、アメリカ海軍天文台 が16等級と記録している[ 1] [ 6] 。増光と減光が非常に速く、光度極大近辺では赤みを帯びているなど、他の多くのIa型超新星とは異なる特徴を示す[ 4] 。赤みは、暗くなるのに伴ってなくなり、光度極大の2ヶ月後には、他のIa型超新星と同じような色になった。
スペクトル
明るさを測る測光観測 だけでなく、いくつかの分光観測 も行われ(当時はスペクトル を写真に記録することはできなかったが)、観測記録によれば、精度は十分でないながら、連続光の上に何本かの輝線がのったスペクトルが見られ、輝線の頂点の波長は、Ia型超新星に特徴的な輝線の波長と概ね一致していた[ 4] 。
超新星残骸
チャンドラX線天文台 が撮影したアンドロメダ銀河中心部。アンドロメダ座S星の位置は、中央右寄りにあるが、目立ったX線 源はみられない。出典: NASA / CXC / SAO [ 11]
アンドロメダ座S星が出現した位置は、アンドロメダ銀河の中心核 から16秒 で、銀河 の表面輝度 が高い位置にあることが超新星残骸 の検出を難しくしていた。しかし、1988年 にキットピーク国立天文台 のメイヨール4m望遠鏡による観測で、鉄 に富んだ超新星残骸が発見された[ 12] 。この観測では、銀河の光が明るいことを逆手にとり、鉄原子 が銀河の光を吸収して暗くなったところをとらえ、超新星残骸の検出に成功した。爆発による放出物が鉄を豊富に含んでいることは、この爆発がIa型超新星であったことと辻褄が合う。
1995年 以降、ハッブル宇宙望遠鏡 によっても観測が行われており、撮影された超新星残骸の大きさが、Ia型超新星の典型的な膨張速度から予想される大きさとよく合っていることがわかった。また、鉄の他にカルシウム 、マグネシウム 、マンガン でも吸収を起こしていることもわかった[ 13] [ 14] 。更に詳細な観測から、鉄の放出物には噴煙状の構造が見られるのに対し、カルシウムの放出物はどちらかと言えば球対称に近く、中心に近いところにコブ状構造があることがわかった[ 15] 。このような超新星残骸の分布は、熱核暴走の途中から衝撃波 が形成される遅延爆轟 波説による爆発とよく合うとされている。
分類
以上のことから、アンドロメダ座S星は、いくつか異常な点があるにせよ、Ia型超新星に分類されている。近年の研究では、SN 1939B とSN 2002bj と共に、Ia型超新星内の新しい小分類に位置付ける考え方もある[ 16] 。
出典
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^ a b c d van den Berg, Sidney (2002-04), “The Light Curve of S Andromedae”, Astronomical Journal 123 (4): 2045-2046, Bibcode : 2002AJ....123.2045V , doi :10.1086/339314
^ a b “S And -- Nova ”. SIMBAD . CDS . 2017年6月8日 閲覧。
^ a b c d e de Vaucouleurs, G.; Corwin, H.G., Jr. (1985-08-15), “S Andromedae 1885 - A centennial review”, Astrophysical Journal 295 : 287-304, Bibcode : 1985ApJ...295..287D , doi :10.1086/163374
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^ a b R. バーナム Jr. 著、斉田 博 訳『星百科大事典 改訂版』地人書館 、1988年2月10日、85-88頁。ISBN 4-8052-0266-1 。
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^ Copeland, Ralph (1885-09), “Dun Echt Circulars, No. 97 and No. 98”, Astronomical register 23 : 248-249, Bibcode : 1885AReg...23..248C
^ Vogel, H. C.; et al. (1885-09), “Über den neuen Stern im grossen Andromeda-Nebel”, Astronomiche Nachrichten 112 (16): 283-288, Bibcode : 1885AN....112..283V , doi :10.1002/asna.18851121604
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関連項目
外部リンク
座標 : 00h 42m 43.12s , +41° 16′ 03.2″