競馬法

競馬法
日本国政府国章(準)
日本の法令
法令番号 昭和23年法律第158号
種類 行政手続法
効力 現行法
成立 1948年7月5日
公布 1948年7月13日
施行 1948年7月19日
所管農商務省→)
(農林省→)
(農商省→)
農林省→)
農林水産省
馬政局→畜産局→生産局畜産局
内務省→)
地方財政委員会→)
(地方自治庁→)
(自治庁→)
自治省→)
総務省
地方局→財政局→自治財政局
主な内容 競馬について
関連法令 競馬法施行令
競馬法施行規則
日本中央競馬会法
地方競馬法
自転車競技法
小型自動車競走法
モーターボート競走法
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競馬法(けいばほう、昭和23年法律第158号)は、日本における競馬の開催、競馬場、開催回数、入場料、勝馬投票券(いわゆる馬券)、勝馬投票法、払戻金等など、競馬に関する事項を定める法律である。

主務官庁は農林水産省畜産局競馬監督課だが、地方競馬施行者の指定に関する業務のみ、総務省自治財政局地方債課が専管する。また日本中央競馬会国庫納付金に関する業務について、財務省主計局農林水産係担当主計官職および理財局国庫課と連携して執行にあたる。

構成

  • 第一章 総則(第1条・第1条の2)
  • 第二章 中央競馬(第2条 - 第18条)
  • 第三章 地方競馬(第19条 - 第23条の46)
  • 第四章 雑則(第24条 - 第29条の3)
  • 第五章 罰則(第30条 - 第34条)
  • 附則

概要

主催者
日本中央競馬会(JRA)又は都道府県(=地方競馬)は、この法律により、競馬を行うことができる(1条の2)。
次の各号のいずれかに該当する市町村特別区を含む。以下同じ)でその財政上の特別の必要を考慮して総務大臣が農林水産大臣と協議して指定するもの(以下「指定市町村」という)は、その指定のあつた日から、その特別の必要がやむ時期としてその指定に付した期限が到来する日までの間に限り、この法律により、競馬を行うことができる(1条の2第2項)。
  1. 著しく災害を受けた市町村
  2. その区域内に地方競馬場が存在する市町村
日本中央競馬会が行う競馬は、中央競馬といい、都道府県又は指定市町村が行う競馬は、地方競馬という(1条の2第5項)。
日本中央競馬会、都道府県又は指定市町村以外の者は、勝馬投票券その他これに類似するものを発売して、競馬を行つてはならない(1条の2第6項)。
  • 2005年1月の改正により、これまで認められていなかった民間業者への勝馬投票券発売委託は認められている。また、2007年6月の改正で地方競馬全国協会も発売業務を行えることになった。(4条、21条)
  • 2015年5月の改正(2015年11月1日施行[1])で「海外競馬の競走のうち、日本中央競馬会が勝馬投票券を発売することができるものを指定することができる」(3条の2)、「農林水産大臣は、海外競馬の競走のうち、都道府県又は指定市町村が勝馬投票券を発売することができるものを指定することができる」(20条の2)、[注 1]となった。なお指定の要件にそれぞれ中央競馬又は地方競馬の登録を受けた馬を出走させることができる海外競馬の競走であることがある。
競馬場
中央競馬の競馬場の数は、12箇所以内において農林水産省令で定める(2条)[注 2]
地方競馬の競馬場の数は、北海道にあつては6箇所以内、都府県にあつては2箇所以内とする(19条)。
  • 1997年の門別競馬場ホッカイドウ競馬)開設の際、北海道内にはすでに旭川岩見沢帯広(以上、ホッカイドウ競馬およびばんえい競馬を開催)・札幌函館(以上、ホッカイドウ競馬および中央競馬を開催)・北見(ばんえい競馬のみ開催)の6か所の競馬場で地方競馬が行われており、門別競馬場で競馬を行うためには左記の6競馬場のうち1つで地方競馬の開催を取りやめなければならなかった。1998年より岩見沢・帯広・函館でのホッカイドウ競馬の開催がなくなり、函館での地方競馬開催が消滅したため(岩見沢・帯広はばんえい競馬の開催は残った)、北海道内における地方競馬の開催場数は変わらず6となった。なおホッカイドウ競馬は2010年以降門別のみ、ばんえい競馬は2007年以降帯広のみでの開催となっている。
勝馬投票券
勝馬投票券は10円単位で発売し、10枚(100円単位)以上を1枚として発売することができる(6条1項・2項、22条)。
勝馬投票券の形式は、「単勝式」「複勝式」「連勝単式」「連勝複式」「重勝式」とする(7条、22条)。詳細は投票券 (公営競技)#投票法の種類を参照。
  • 日本では長らく重勝式は発売されていなかったが、地方競馬では2010年ばんえい競馬の五重勝式導入を皮切りに一部主催者が導入、2011年からは中央競馬でも五重勝式の発売が開始されている。
払戻率(勝馬投票券の発売額に対する払戻額の割合)は、70%以上農林水産大臣が定める率以下の範囲内で主催者が設定する(8条、22条)。
  • 詳細は投票券 (公営競技)#控除率を参照。上記は2014年4月の改正規定施行後のもので、それ以前は固定の計算式で算出されていた。
未成年者は勝馬投票券の購入および譲り受けができない(28条)。
  • 2004年までは成年であっても学生・生徒に該当する者が勝馬投票券の購入・譲り受けをしてはいけない規定があったが、2005年1月の改正により成年なら全員勝馬投票券を購入できるように改められた[注 4]
  • 2022年4月1日施行の改正民法により成年年齢が18歳に改められるが、同時に競馬法も改正され「二十歳未満の者は、勝馬投票券を購入し、又は譲り受けてはならない」となった[2]。この法改正施行以前からもJRAでは『馬券は20歳になってから ほどよく楽しむ大人の遊び』という啓発用キャッチフレーズを導入していた。
その他
地方競馬全国協会の設立(22条 - 23条の46[注 5])。
  • 2017年の改正により地方競馬全国協会の資金確保について平成29年度から令和4年度と改められ期限延長がなされた。

旧競馬法

大正12年法律第47号の競馬法は、現行の競馬法と区別して「旧競馬法」と呼ばれている。

1906年に開始された公認競馬には当初法的根拠がなく、「馬券に関する内閣決議書」という農商務陸軍内務司法の4大臣による合議書によって正当化されていた。そのため馬券の射幸性に対して批判的な風潮が強まると政府は1908年10月6日刑法(明治40年法律第45号)を根拠として馬券禁止の通牒を競馬主催者に発した。

しかし、しかしこれは良質な軍馬生産という観点で大きな支障を発生させると考えた帝國陸軍(陸軍省馬政局)は、第一次世界大戦後、軍隊の機動性向上の観点から馬産奨励のため競馬に着目した。陸軍省は競馬開催に法的根拠を与えるための法案制定を強力に後押しするとともに、馬政局を農商務省に移管するなどの施策を行い、1923年大正12年)4月10日第46回帝国議会協賛並びに大正天皇摂政迪宮裕仁裁可を経て旧競馬法が成立。同年7月1日付で施行された。このとき馬券の発売も条件付きながら合法化された。

しかし、軍馬改良・馬産奨励のもと制定された「競馬法」であったが、改良された馬は日中戦争では故障が多発して使い物にならかった。過労のものは大部分が死んでしまい、改良の進んだスラリとした馬ほど使役に耐え切れず、鞍を外したら背中の肉ごととれてしまった例もある。これをうけて東条英機陸軍次官は馬政委員会の会合で日本の馬が軽化しすぎて実役能力が足りないことは事実であり、競馬が馬の改良にマイナスに作用したと非難した[3]

なお、旧競馬法における日本競馬会および競馬倶楽部畜産組合の監督は農林省が行ったが、地方競馬の施行者決定に関する業務は内務省地方局財務課が担当していた。

脚注

注釈

  1. ^ 3条の2で「海外競馬(海外において実施される競馬であつて、我が国と同等の水準にあると認められる競馬の監督に関する制度により公正を確保するための措置が講ぜられているものをいう。以下同じ。)」と定義されている。
  2. ^ 競馬法施行規則第1条で「札幌、函館、福島、新潟、中山、東京、中京、京都、阪神及び小倉とする」と規定されている。12か所というのは、戦前に横浜宮崎が存在した名残。
  3. ^ モーターボート競走法(ボートレース)の改正が2007年4月1日付け、自転車競技法(競輪)及び小型自動車競走法(オートレース)の改正が2007年6月13日付け。
  4. ^ 競馬以外の公営競技(ボートレース競輪オートレース)にて同様の改正がされたのは2007年頃[注 3]であり、それまで学生・生徒に該当する未成年者が購入できた公営競技の投票券は勝馬投票券のみという状態が2年余り続いた。
  5. ^ 2007年6月改正以降の競馬法による。改正以前の競馬法では第23条の37。

出典

  1. ^ 競馬法の一部を改正する法律の概要(平成27年5月公布)” (PDF). 農林水産省. 2016年1月26日閲覧。
  2. ^ 平成三十年法律第五十九号
  3. ^ 『競走馬の文化史』筑摩書房、19951215、99-104頁。 

外部リンク