『戦え!!イクサー1』(たたかえ!!イクサーワン)は、1985年から1987年にかけて制作・発売されたOVA作品。全3巻。阿乱霊があまとりあ社の漫画雑誌『レモンピープル』に掲載した短編漫画「戦え! イクサー1」(単行本『みんな元気かい!!』 (ISBN 9784765902373) に収録)を原作としている。
平野俊弘の監督デビュー作[1]。地球侵略を企む侵略者・クトゥルフと、反旗を翻した戦士・イクサー1の戦いを描いている。阿乱の短編漫画を原作としており、物語の骨子もほぼ同じであるが、漫画ではOVA版におけるイクサー1に相当するキャラクターは長い尾を持つネコ型の獣人少女、渚に当たる地球人少女は名前が出てこないなどの差異がある[1]。
真夜中の都会の片隅で、静寂を破る1人の男が逃げ惑っていた。
懸命に走るも躓いて転倒した男の顔には、尋常ならざる焦りが浮かんでいる。顔を上げた男の目に映ったのは、赤いレオタード調の生地に、黒いプロテクターのような物を身に着け、尖った耳と長くウェーブの掛かった金髪が目立つ少女。獣のような唸り声を上げ少女への怒りを露にする男の顔が、突如内側から食い破られたかのように弾けて崩れ、そこからタコともイカとも似付かない軟体の身体を持つ怪物が出現し、少女に襲い掛かる。しかし少女は少しも恐れず腕を構えると、その拳から眩しい光線を放ち、怪物を跡形も無く消滅させた。その途端、辺りには再び静寂が訪れる。
一方、視界に地球を臨む宇宙空間には、半球に傘を被せたような形状の巨大な隕石型をした、異星人クトゥルフの宇宙船が留まっていた。その中の一室では、2人の少女、コバルトとセピアが全裸のままベッドで談笑している。二人が口付けを交わす中、コバルトに、中枢部から呼び出しが掛かる。
身支度を整えて中枢部を訪れたコバルトの前で、数人もの従者の真ん中に立つ1人の人物が振り返った。その名はサー・バイオレット。コバルトの上司であり、クトゥルフの長である。サー・バイオレットは巨大ロボット・ディロスθの操縦者にコバルトが選ばれたことと、先んじて地球に派遣した寄生怪物達が妨害を受けていることを彼女に伝える。
怪物達を妨害しているのは、真夜中の都会に現れたあの少女であった。サー・バイオレット達からイクサー1の名で呼ばれている彼女は、怪物達と戦う一方、自分とシンクロすることで能力を完全に覚醒させてくれる、1人の地球人の少女を探していた。その少女の名は、加納渚。ごく平凡な家庭で幸せに生きる、普通の女子高生である。
クトゥルフは、渚の元へも怪物を向かわせていた。最初は単なる悪夢にしか思えなかった状態から、一気に級友も父母も怪物化されてしまった渚は、自分にも寄生のための触手を伸ばしてくる彼らに恐怖と絶望を覚える。イクサー1が駆け付けてその窮地を救うが、あまりにも過酷な現実に直面した渚はパニック状態に陥り、イクサー1の言葉に耳を貸さない。一方、クトゥルフの宇宙船からは、イクサー1と渚の抹殺の使命に燃えるコバルトが、ディロスθに搭乗して地上へ降り立つ。
イクサー1は自らの分身であるイクサーロボを異空間より呼び寄せ、嫌がる渚と共に搭乗し、街を破壊するディロスθに戦いを挑む。
上記以外にも、人類の兵器としてタンデムローター式のヘリコプターや主力戦車、富士弐號の艦載戦闘機などが登場しているが、いずれも端役としての登場にとどまっている。
本作製作の発端は、平野俊弘と阿乱霊が『レモンピープル』の版元・久保書店に企画を持ち込んだことによる[1]。
音楽担当の渡辺宙明の参加は、平野の強い希望による[1]。当初はBGMは付かない予定だった[18]。
大張正己が本作への参加を誘われたのは、平野がOVA『超獣機神ダンクーガ 失われた者たちへの鎮魂歌』での大張の仕事を見たことや、「イクサーロボをスーパーロボットにしてほしい。男性っぽくしてほしい」という平野の思惑があったためとされる[19]。大張は同作品でメカ作画監督を担当したが、プロデューサーのミスでノンクレジットとなったことにショックを受け、自分の価値を高めたいと考えていた時期だったことから本作に参加した[19]。
発売 - 東芝EMI・ユーメックス/フューチャーランドレーベル
東芝EMI(現・ユニバーサルミュージックジャパン)・ユーメックス/フューチャーランドレーベルからLPレコードアルバムとして4枚発売された。後に2枚のCDで発売され、1992年にはその廉価版が発売されている。1998年には、2枚組CD『戦え!!イクサー1 バトル・ミュージック・コレクション』として再発売された。
上記のほか、各巻のムックおよびフィルムストーリーブックが発売された。
本作の直接的なゲーム化ではないが、2010年11月25日発売のニンテンドーDS用シミュレーションRPG『スーパーロボット大戦L』には本作と続編『冒険!イクサー3』に登場するキャラクターやロボットが登場しており、本作序盤から『イクサー3』まで連続した1つのストーリーとして組み込まれている。同ゲームでのクトゥルフはビッグゴールドと同じ機械生命体であり、『獣装機攻ダンクーガノヴァ』の敵「ムーンWILL」と手を組んでいるほか、最終決戦ではコバルトのディロスθの残骸に付着していた細胞から培養した『神魂合体ゴーダンナー!!』の敵「擬態獣」を使用してくるなど、クロスオーバー展開が盛り込まれている。
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