『太陽の黄金の林檎 』(たいようのきんのりんご The Golden Apples of the Sun ) は、アメリカの作家レイ・ブラッドベリ による22編の短編小説 からなる短編集 。1953年にDoubleday&Company によって出版され、日本では小笠原豊樹の翻訳により1962年に早川書房 よりハヤカワ・SF・シリーズとして出版され、2012年に新装版が文庫形式で出版された。
本のタイトルは、短編集最終話のタイトルでもある。「太陽の黄金の林檎」という言葉は、イェイツ の詩『さまようイーンガスの歌』(1899年)の最終スタンザ最終行からとられている[ 1] 。
Though I am old with wandering
Through hollow lands and hilly lands,
I will find out where she has gone
And kiss her lips and take her hands;
And walk among long dappled grass,
And pluck till time and times are done
The silver apples of the moon,
The golden apples of the sun.[ 2]
私は谷を歩き、丘をさすらい、
すっかり年をとったが、
娘はどこへ行ったかきっと探し出そう、
口づけしてその両手を取ろう。
まだらの高い草の中を歩いて、
いつまでもいつまでも時の尽きるまで
摘み取ろう、月の銀のりんごを、
太陽の金のりんごを。
(尾島庄太郎・金子光晴訳)[ 3]
ブラッドベリはこの詩の最後の3行で彼の本の前置きをしている。何が彼を「太陽の黄金の林檎」に引き付けたのかと尋ねられたときに「[妻]マギーは私たちが付き合っているときにロマンチックな詩を紹介してくれました。 私はその詩のその行が好きで、太陽から火がいっぱい入ったコップをとることについての私の話の比喩でした」と語っている[ 1] 。
『太陽の黄金の林檎』は、ブラッドベリの3番目の短編小説集だった[ 4] 。最初の『黒いカーニバル』は、1947年にアーカムハウスから公開され、日本では伊藤典夫 訳で1972年に出版された。2番目の『刺青の男 』は、1951年にDoubleday&Companyから出版され、日本版は小笠原豊樹 の訳で1960年に刊行されている。
目次
この短編集の表題作は、1953年11月の米国のパルプサイエンスフィクション誌であるPlanet Storiesの 創刊号に掲載された。
1990年、バンタムブックは『ウは宇宙船のウ 』 (1962)と『太陽の黄金の林檎』のほとんどの短編を収集し、 Classic Stories 1 というタイトルのセミオムニバス版としてまとめた。1997年、エイボンブックスはオムニバスの新版を印刷し、The Golden Apples of the Sun and Other Stories と 題した。 ハーパー・ピレニアルは、2005年版を Sound of Thunder and Other Stories と 名付けた。
セミオムニバスエディションでは、『太陽の黄金の林檎』に登場する3つの短編が省略されている。「歩行者 The Pedestrian」(1951年)、「目に見えぬ少年 Invisible Boy」(1945年)、「歓迎と別離 Hail and Farewell」(1953年)の3篇である。
邦題
原題
初出年
収録順
『太陽の黄金の林檎』(日本版)
The Golden Apples of the Sun
Classic Stories 1
霧笛
"The Fog Horn"
1952
1
1
1
歩行者
"The Pedestrian"
1951
2
2
非収録
四月の魔女
"The April Witch"
1951
3
3
2
荒野
"The Wilderness"
1952
4
4
3
鉢の底の果物
"The Fruit at the Bottom of the Bowl"
1948
5
5
4
目に見えぬ少年
"Invisible Boy"
1945
6
6
非収録
空飛ぶ器械
"The Flying Machine"
1953
7
7
5
人殺し
"The Murderer"
1953
8
8
6
金の凧、銀の風
"The Golden Kite, the Silver Wind"
1953
9
9
7
二度と見えない
"I See You Never"
1947
10
10
8
ぬいとり
"Embroidery "
1951
11
11
9
白黒対抗戦
"The Big Black and White Game"
1945
12
12
10
雷のような音
"A Sound of Thunder"
1952
13
13
23
山のあなたに
"The Great Wide World Over There"
1953
14
14
11
発電所
"Powerhouse"
1948
15
15
12
夜の出来事
"En la Noche"
1952
16
16
13
日と影
"Sun and Shadow"
1953
17
17
14
草地
"The Meadow"
1947
18
18
15
ごみ屋
"The Garbage Collector"
1953
19
19
16
大火事
"The Great Fire"
1949
20
20
17
歓迎と別離
"Hail and Farewell"
1953
21
21
非収録
太陽の黄金の林檎
"The Golden Apples of the Sun"
1953
22
22
18
「ウ」は宇宙船の略号さ
"R Is for Rocket "
—
—
19
初期の終わり
"The End of the Beginning"
—
—
20
宇宙船
"The Rocket"
—
—
21
宇宙船乗組員
"The Rocket Man "
—
—
22
長雨
"The Long Rain"
—
—
24
亡命した人々
"The Exiles"
—
—
25
この地には虎数匹おれり
"Here There Be Tygers"
—
—
26
いちご色の窓
"The Strawberry Window"
—
—
27
竜
"The Dragon"
—
—
28
霜と炎
"Frost and Fire"
—
—
29
アンクル・エナー
"Uncle Einar"
—
—
30
タイム・マシン
"The Time Machine"
—
—
31
駆けまわる夏の足音
"The Sound of Summer Running"
—
—
32
評価
チャールズ・プーアはニューヨーク・タイムズにブラッドベリは「アイルランド文学ルネサンス の詩人や伝道者に養われているように見えるスタイルで書いている」と報告し、彼は「彼の物語の核心とその周辺について一日中話すことなくたどり着くのに驚いた」と述べている[ 5] 。
ファンタジー・アンド・サイエンスフィクション誌 のアントニー・バウチャー とJ.フランシス・マッコマスは『黄金の林檎』に「最も不確かな読書体験...多くの場合、単純かつ知覚的に動く[そして]悲しいことに特定の強さや色が欠けていることが多い文章」を発見した。
イマジネーション誌 の評論家マーク・ラインスバーグはブラッドベリを「才能のある作家」と呼んだが、「無気力なテーマを養うスタイルの力を過大評価する傾向があった」と不満を述べた。
ギャラクシー・サイエンス・フィクション誌 のグロフ・コンクリンは、「この短編集には、[ブラッドベリ]でもほかの誰かでもこれまでに書いた中で最高の想像力に富んだストーリーが含まれている。これらの楽しみを説明することすらできません」と述べている。
参考資料
脚注
出典
参考
外部リンク
The Golden Apples of the Sun title listing at the Internet Speculative Fiction Database