原田 泰(はらだ ゆたか、1950年9月1日[1] - )は、日本の経済学者、エコノミスト[2]、名古屋商科大学ビジネススクール教授。日本銀行政策委員会審議委員、早稲田大学政治経済学術院公共経営研究科教授、大和総研チーフエコノミストを歴任。経済学(学習院大学)博士[3]。研究分野は経済政策[4]。
岩田規久男とともに[3]、「リフレ派」の一人とされる[5][6]。バブル崩壊直後より一貫して日本銀行の金融政策を批判していた[7]。
など
金融政策によって過度な円高・デフレを防ぎ、日本の経済を成長させる重要であるとしている[5]。
日本の雇用・賃金について「重要なのは、増税と金融引き締めのショックを無用に与えないことと、誤った格差対策をとらないことである。格差は構造改革のせいという意見があるが、証拠がない。稼いでいる人の足を引っ張るのではなく、頑張ってもうまくいかなかった人を助けるのがあるべき格差対策である」「(2007年の)日本経済が良い要因は雇用の拡大にある。雇用が増えたのは賃金上昇を抑えたからである。賃金が上がらずに雇用が増えたのはジレンマだが、仕方がない。賃金を上げれば、失業率が高かった元に戻ってしまう。2002年までの『失われた10年』の間は、景気が悪いのに賃金が上がり続けた」と述べている[18]。
若者の格差拡大は景気低迷によるものであり、景気が回復すれば格差は縮小すると主張している[19]。2009年の時点で高齢者への社会保障支出を削減し、若者負担の軽減を主張している[20]。
消費税と社会保障について「日本の財政状況は異常であり、財政赤字を削減する必要がある。そのためにも、高齢者1人当たりの社会保障支出を抑制することは避けられない。それを怠った先に待っているのは、とんでもない大増税である[21]」「財政赤字を消費増税によって賄おうという議論はいいが、増税分を社会保障に回すとの考えは根本的に間違っている[22]」「消費税増税で物価が上昇するとき、年金や医療など社会保障給付を物価スライドさせれば、税収が増える一方で歳出も増える。消費税増税分の物価スライドを実施したのでは、必要になる消費税率の引上げ幅がますます大きくなってしまう。社会保障給付について消費税増税分の物価スライドを行わず、実質給付を引き下げる必要がある[23]」と述べている。
経済学の原理から、バラマキ政策は正しいとする一方で、国が景気対策をする場合公共事業をやるよりも給付金を配った方がよいとしている[24]。公共事業について「公共事業はお金がかかり過ぎるし、鉄とかコンクリートにしかならない」と述べている[25]。
環境問題について「CO2をどうしても減らす必要があるなら、日本で減らさなくても、地球全体で減らせばよい。日本のまわりには中国やロシアのようにエネルギー効率が悪くてCO2を大量に排出している国がある。これらの国に技術援助してCO2排出量を減らせば、地球全体では低いコストでCO2を減らせる」と述べている[26]。
原子力発電所について「原発を推進してきた経済産業省は、原子力は他の発電方法に比べて安価なのではなくて、同等だと言っている。しかも、福島での事故が起きた後ではなくて、従来からそうだったと言っている。さらに、コスト計算に廃炉や使用済み核燃料の処理コスト、原発立地促進のために地元自治体に支払う交付金、送電費用、出力を調整することができないために必要となる揚水発電のコスト、原子力安全・保安院など規制官庁のコストなどは、十分に考慮されていない。勿論、事故が起こった場合の補償費などは入っていない[27]」「原子力を3割も使っている日本の電力料金は世界的に高い[27]」「政府がコストに利益を乗せて電力料金を決めてくれる総括原価方式を採用してくれている限り、利益が必ず上がる。原発と利益とは本来は関係がない。普通に考える限り、原発は企業にとって割が合わない。現に、総括原価主義がなく電力市場も競争的なアメリカでは、1996年以降原発は建設されていない。総括原価主義がなければ、誰も原発など造れない[28]」「日本国外のエネルギーに依存しないために原発を使うとしても、電力の25%しか賄えない。原発がなければ核技術を維持できないという議論については、どうしても必要なら、原発を一つだけ残しておけば良い。日本経済は、脱原発では大きな打撃を受けないが、再生可能エネルギーに転換することで大きな打撃を受ける可能性がある[26]」と述べている。
日本のTPP参加に賛成している[29]。
2015年3月26日、宮尾龍蔵審議委員の後任として、日本銀行政策委員会審議委員に就任[30]。
就任後、初めて出席した2015年4月7日・8日の金融政策決定会合では、量的金融緩和政策に賛成した[31]。2016年1月28日・29日の金融政策決定会合ではマイナス金利導入に賛成した[32]。
2017年6月29日、東京都内で行った講演においてヒトラーのとったケインズ的経済政策を評して「ヒトラーが正しい財政・金融政策をやらなければ、一時的に政権を取ったかもしれないが、国民はヒトラーの言うことをそれ以上、聞かなかっただろう。彼が正しい財政・金融政策をしてしまったことによって、なおさら悲劇が起きた。ヒトラーより前の人が、正しい政策を取るべきだった」と語った[33]。
この講演の趣旨は世界的に報じられ[34]、ユダヤ人権団体サイモン・ウィーゼンタール・センターはこれを非難する声明を発表した[35]。これを受けて、翌6月30日には「ヒトラーの政策を正当化する意図は全くない」が、「一部に誤解を招くような表現があったことについては、心よりお詫び申し上げたい」と謝罪した[36][37]。
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