一般に力学系とは、以下の条件を満たす、時間T、位相空間である多様体M、写像 f によるタプルである。
力学系は、連続力学系と離散力学系に分類する事ができる。
連続力学系
t が実数全体で定義される力学系は連続力学系、あるいはフロー(流れ)と呼ばれる。連続力学系は一般に微分方程式で定義されることが多い。
例えば、関数X1(t ), X2(t ), ..., X n(t ) を成分に持つような n 次元ベクトル[要曖昧さ回避]を X(t )、t と X の関数である n 次元のベクトルを F(t, X) とし、X に対する連立微分方程式
を考える。このとき、n 次元空間 (X1, X2, ..., X n ) が上述の微分方程式の相空間であり、f t は f t (X(s )) = X(s + t ) によって与えられる。
より抽象的には、微分方程式を与える係数行列 F は多様体上のベクトル場として与えられ、力学系 f はそのベクトル場の流れとして実現される。従って連続力学系は実数の加法群 R による多様体 M への可微分な作用だということになる。
離散力学系
t が整数全体でのみ定義されるような力学系は離散力学系とよばれる。離散力学系は多様体のある変換の反復写像としてとらえられる。つまり、任意の整数 n について fn は f1 を n 回合成した(n が負ならば f の逆写像を -n 回合成した)写像になっている。したがって離散力学系は可逆変換 f1 が定める整数の加法群Zによる多様体Mへの作用だということになる。
Kathleen T. Alligood, Tim Sauer, James A. Yorke,津田 一郎 訳 :カオス 第1巻 – 力学系入門,カオス 第2巻 – 力学系入門,カオス 第3巻 – 力学系入門 (原書:Chaos: An Introduction to Dynamical Systems)
Hirsch・Smale・Devaney 力学系入門―微分方程式からカオスまで― 原著第3版 Morris W. Hirsch・Stephen Smale・Robert L. Devaney 著・桐木紳・三波篤郎・谷川清隆・辻井正人 訳 (2017) 共立出版
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