個々の集合を表すには、しばしばラテン文字の大文字 A, B, ..., E, F, ..., M, N, ..., S, T, ..., X, Y, ... などを使う[注釈 1]。集合の元はラテン小文字 a, ..., e, ..., m, ..., s, ..., x, ... とすることが多く[注釈 2]、特に集合を表す大文字に対応する小文字を使う。
対象 a が集合 A を構成するものの一つであるとき、「a は集合 A に属す」「a は集合 A の要素(あるいは元)である」「集合 A は a を要素として持つ」などといい、a ∈ A あるいは A ∋ a と表す。
包含関係
2 つの集合 A, B について、A に属する元がすべて B にも属するとき、すなわち x ∈ A ⇒ x ∈ B が x の取り方に依らずに成り立つとき、「A は B の部分集合である」「A は B に集合として含まれる」「B は A を包含する」などといい、A ⊂ B または A ⊆ B あるいは B ⊃ A または B ⊇ A と記す。
帰属関係と包含関係は異なる概念であって、混同してはならない。例えば、X ⊂ Y ⊂ Z ならば必ず X ⊂ Z であるが、X ∈ Y ∈ Z からは X ∈ Z は必ずしも導かれない。また、x ∈ A ⊂ B ならば x ∈ B であるが、x ⊂ A ∈ B からは x ∈ B を帰結することは一般にはできない。
と表記する。ここでは x という変数を用いているが、{ y | P(y)} と書いても { a | P(a)} と書いても構わない。set-builder notation(en:Set-builder notation)やset comprehension、日本語では内包表記などとも言う。前述のようにそれぞれ、論理的な概念の外延と内包に由来するものであり日本語圏では数学分野でも今もそれらの語がよく使われているが、英語圏ではそれぞれの原語であるextensionとintensionはこの分野では今はあまり見なくなっている。
条件 P(x) は「x が X の元であって、さらに条件 Q(x) を満たす」というような形で与えられることが多い[注釈 3]が、このとき定まる集合を {x | x ∈ X かつ Q(x)} のように書く代わりに、しばしば簡単に
などと略記する。集合 {x ∈ X | Q(x)} は X の部分集合となる。また、条件 P(x) が「条件 Q(y) を満たすようなある y を用いて x = f(y) と表すことができる」というような形のときは、集合 { x | P(x)} を
数学では、1 つも要素を持たないような集合も考える。外延性の原理によれば、このような集合はただ一つしか存在しないので、これを空集合 (英: empty set) といい ∅ で表す。∅ は任意の集合 A の部分集合である。なぜなら、任意の対象 x に対して x ∉ ∅ より x ∈ ∅ ⇒ x ∈ A は真だからである。空集合の他にも決まった記号によって表される集合がいくつかある。日常的には一個だけ要素を持つものは集合とは呼ばれないが、数学ではそれも集合と呼ぶ(英語のsetやフランス語のensembleも日常的な用語では空集合や一個だけの集合に対しては使われない。) :
無限集合はどれも「無限個」の元を持っているわけだが、どの無限もみな同じというわけではなく、濃度の概念ではたくさんの無限を区別して扱うことになる。たとえば、自然数と有理数が同じ濃度を持つ、自然数と実数は真に異なる濃度を持つといったような事実は数学を学ぶ者にとってよく知られた内容である。同様の事実に、平面 R2 と数直線 R は同じ濃度を持ち、平面を覆いつくす平面充填曲線と呼ばれる不思議な平面曲線が何種類も存在することが述べられる。より次元の高い空間でも同様で、空間を埋め尽くす空間充填曲線が構築される。異なる次元をもつ空間が同じ濃度をもつというのは、次元や濃度が一方が他方を測るようなものではない異なる尺度であることを表しているのである。
集合からなる族 A を考える。A が集合演算についていくつかの性質を満たすとき、それらには特別の名前が与えられることがある。
A が(有限)交叉について閉じているとき π-系(英語版)であるといい、π-系が空集合を含むとき乗法族である[2]という[注釈 4](ディンキン族も参照)。さらに可算交叉について閉じているとき δ-乗法族であるという。また、乗法族が包含関係を持つ任意の二つの集合に対し、一方から有限回の非交和を行って他方へ達する列を持つとき集合半環という。
A が(有限)和と(有限)交叉について閉じているとき、集合の束あるいは集合環という。A が空集合でなく(あるいは空集合を元として含み)、和と差について閉じている(あるいは同じことだが対称差と交叉について閉じている)場合に限って集合環と呼ぶ場合もある。さらに可算交叉について閉じていれば δ-集合環、可算和について閉じていれば σ-集合環という。また、これらが全体集合を含むならば代数あるいは体という。δ-集合体は σ-集合体である。
A が空集合を含み、(有限)和および補について閉じているとき加法族、特に有限加法族であるという。さらに可算和について閉じているならば完全加法族という。集合族 A が加法族であることは集合体であることと等価であり、同様に完全加法族は σ-集合体の別名である。