マメジカ科 (マメジカか、Tragulidae) は、哺乳綱偶蹄目(鯨偶蹄目とする説もあり)に分類される科。
属名の「トラグルス」はギリシャ語 でヤギ に似たもの、英名で使われる「Chevrotains」はフランス語 で小さなヤギを意味する。同じく英名「マウス・ディア」は<ネズミジカ>の意味である。[ 5]
形態
大型種のミズマメジカで体重8 - 13キログラム、小型種のジャワマメジカ類では主に体重2キログラム未満[ 3] 。赤褐色や黄褐色の体毛で被われ、白い斑紋や斑点が入る種もいる[ 3] 。
角はない[ 2] [ 3] 。眼は大型[ 3] 。下顎に臭腺(下顎腺)があるが、マメジカ類では発達するものの、ミズマメジカやインドマメジカ類では痕跡的[ 2] 。側蹄も含め、蹄が発達する[ 2] 。
上顎の門歯がなく、下顎の犬歯は門歯と類似した形状となり繋がる[ 2] [ 3] 。小臼歯の歯冠は鋭い[ 2] 。これは食物をすりつぶすのではなく、切断に適した構造をしている[ 3] 。舌は長い[ 3] 。胃は腹腔内の4分の3を占めるほど大型で、3室(第1・第2・第4室)に分かれる[ 3] 。他の反芻動物における第3室を欠くが、ミズマメジカは痕跡的に第3室がある[ 3] 。
オスは上顎の犬歯が伸び続ける[ 2] [ 3] 。メスの上顎の犬歯は小型で、外観からはわからない[ 3] 。
ミズマメジカは時々昆虫やカニ類を食べ、死体あさりをして肉や魚を口にすることがある[ 6] 。
マメジカの残す原始的な部分として、ブタ のような非反芻動物に近い特徴をもつことが挙げられる。足はほっそりしていて短く、それほど敏捷に動くことはできない。しかし体が小さいので、彼らが棲み家にするような藪の中は楽に走り抜けることができる。
分類
2004年に頭骨や毛皮といった形態の比較から、旧オオマメジカT. napu と旧ジャワマメジカT. javanicus を細分化する説が提唱された[ 7] 。2005年には頭骨や毛皮といった形態の比較から、M. kathygre の新種記載も含め旧インドマメジカMoschiola meminna を3種に分割する説が提唱された[ 8] 。
以下の現生種の分類・英名は、Moschiola 属を除いてGrubb(2005)に従う[ 1] 。和名は、川田ら(2005)に従う[ 4] 。
Moschiola 属 - 分類はGroves & Mejiaard(2005)に従う[ 8]
Moschiola indica (旧インドマメジカM. meminna からインド個体群を分割)
Moschiola meminna (スリランカの乾燥帯の個体群のみを残し分割)
Moschiola kathygre (旧インドマメジカM. meminna からスリランカの湿地帯の個体群を分割)
絶滅種は6属に分類される[ 9] 。
以下の属を含めることもある[ 13] [ 14] 。
生態
主に薄明薄暮時に活動し、昼間は樹洞や岩陰などで休む[ 3] 。繁殖期を除き、単独で生活する[ 3] 。視覚的なコミュニケーションは行わず、鳴き声や臭いつけなどの聴覚的・嗅覚的コミュニケーションを行う[ 2] 。ミズマメジカは肛門周辺の臭腺(肛門腺)や包皮腺 から分泌物を糞や尿に混ぜ、行動圏に臭いつけ(マーキング)を行う(縄張り防衛を行うかは不明)[ 2] 。休息時にはまず腰を下ろしてから(イヌのお座りの姿勢)、前肢を畳み込む姿勢をとる[ 2] [ 3] 。
主に植物の葉や落果を食べるが[ 2] 、昆虫・魚類などを食べることもある[ 3] 。
交尾は長く、性行動は単純[ 2] 。出産後に母親は胎盤を食べる[ 2] 。
種によってある程度の違いはあるが、子供は約3ヶ月で離乳し、5-10ヶ月の間で成熟する。両親が面倒をみることは限られる。彼らには他の反芻動物が持っているような類の臭腺は無いが、顎先の腺で仲間かそうでないかを見分ける。
一部の種は水が得意である。彼らは、捕食者や、その他歓迎できない侵入者が接近した時、長い時間潜水することで危機から逃れることができる。このような水に親和性のある小型の偶蹄類がクジラ類への進化 の道を辿ったのではないかとも言われている[ 16] 。
出典
^ a b Peter Grubb, "Order Artiodactyla ," Mammal Species of the World , (3rd ed.), Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 637 - 722
^ a b c d e f g h i j k l m G. Dubost 「マメジカ」三浦慎悟 訳『動物大百科 4 大型草食獣』、平凡社 、1986年、72 - 73頁。
^ a b c d e f g h i j k l m n o p 福田勝洋 「偶蹄類の祖先の姿 マメジカ」『動物たちの地球 哺乳類II 6 シカ・プロングホーンほか』第9巻 55号、朝日新聞社 、1992年、198 - 200頁。
^ a b 川田伸一郎 他 「世界哺乳類標準和名目録 」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1 - 53頁。
^ 荒俣宏 世界大博物図鑑 第5巻 [哺乳類] 1988-4-25
^ Kingdon, J. (1997). The Kingdon Field Guide to African Mammals. Academic Press. ISBN 0-12-408355-2
^ a b E Meijaard & C. P. Groves, "A taxonomic revision of the Tragulus mouse-deer (Artiodactyla)," Zoological Journal of the Linnean Society , Volume 140, 2004, Pages 63 - 102.
^ a b C. P. Groves & E. Meijaard, "Intraspecific variation in Moschiola , the Indian Chevrotain," Raffles Bulletin of Zoology Supplement, Volume 12, 2005, Pages 413 - 421.
^ Farooq, U., Khan, M.A., Akhtar, M.and Khan, A.M. 2008. Lower dentition of Dorcatherium majus (Tragulidae, Mammalia) in the Lower and Middle Siwaliks (Miocene) of Pakistan . Tur. J. Zool., 32: 91–98.
^ E. Thenius 1950. Über die Sichtung und Bearbeitung der jungtertiären Säugetierreste aus dem Hausruck und Kobernaußerwald (O.Ö.) in Verh. Geol. B.-A. 51/2, pp 56
^ Israel M. Sánchez; Victoria Quiralte; Jorge Morales; Martin Pickford (2010). “A new genus of tragulid ruminant from the early Miocene of Kenya” . Acta Palaeontologica Polonica 55 (2): 177–187. doi :10.4202/app.2009.0087 . http://www.app.pan.pl/archive/published/app55/app20090087.pdf .
^ Métais, G., Chaimanee, Y., Jaeger, J.-J. & Ducrocq S (2001). “New remains of primitive ruminants from Thailand: Evidence of the early evolution of the Ruminantia in Asia” . Zoologica Scripta 30 (4): 231. doi :10.1046/j.0300-3256.2001.00071.x . オリジナル の2011年7月22日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110722000705/http://www.thaiscience.info/Article%20for%20ThaiScience/Article/5/Ts-5%20new%20remains%20of%20primitive%20ruminants%20from%20thailand%20evidence%20of%20the%20early%20evolution%20of%20the%20ruminantia%20in%20asia.pdf .
^ Terry A. Vaughan,James M. Ryan,Nicholas J. Czaplewski (2011-04-21). Mammalogy (5th ed.). ISBN 9780-7637-6299-5 . https://books.google.co.jp/books?id=LD1nDlzXYicC&pg=PA347&lpg=PA347&dq=Krabitherium&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q=Krabitherium&f=false April 4, 2012 閲覧。
^ Sánchez, Israel M.; Quiralte, Victoria; Morales, Jorge; Pickford, Martin (2010). “A New Genus of Tragulid Ruminant from the Early Miocene of Kenya”. Acta Palaeontologica Polonica 55 (2): 177. doi :10.4202/app.2009.0087 .
^ Paleobiology Database: Krabitherium . Paleodb.org. Retrieved on 2013-01-18.
^ “Aquatic deer and ancient whales” . BBC News . (2009年7月7日). http://news.bbc.co.uk/earth/hi/earth_news/newsid_8137000/8137922.stm 2010年3月26日 閲覧。 [出典無効 ]
関連項目
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