ドイツ・ミステリ大賞

ドイツ・ミステリ大賞(Deutscher Krimi Preis)は、ボーフム・ミステリ・アーカイブ(Bochumer Krimi Archiv)が主催するドイツ語圏ミステリ賞。1985年創設。日本ではドイツ語表記のイニシャルをとってDKP賞とも表記される。ドイツ犯罪小説賞と訳されることもある。

批評家や学者、書評家らが選考委員となり、毎年1月に、前年に出版されたミステリからドイツ語作品部門と翻訳作品部門それぞれについて優秀作を第3位まで選出する。ドイツ語作品部門の対象はドイツの作品に限らない。

ボーフム・ミステリ・アーカイブはドイツ語圏で出版されるすべてのミステリを収集することを目的として、1984年にドイツの都市ボーフムで設立された。

ドイツ語作品部門

日本語訳のある作家はカタカナで表記する。

著者 および ドイツ語タイトル (原題) 日本語訳
1985 1. Helga Riedel – Einer muß tot および Wiedergänger
2. Werner Waldhoff – Des einen oder des anderen Glück および Ausbruch
3. Frieder Faist – Schattenspiele
1986 1. Peter Zeindler – Der Zirkel
2. Peter Schmidt – Erfindergeist
3. Norbert Klugmann & Peter Mathews – Flieg, Adler Kühn および Ein Kommissar für alle Fälle
1987 1. Horst Bieber – Sein letzter Fehler
1. Peter Schmidt – Die Stunde des Geschichtenerzählers
2. Frank Göhre – Der Schrei des Schmetterlings
3. Michael Molsner – Die Euro-Ermittler – Der ermordete Engel
1988 1. Peter Zeindler – Widerspiel
2. Hans Werner Kettenbach – Schmatz oder Die Sackgasse
3. Michael Molsner – Unternehmen Counterforce
1989 1. Detlef Bernd Blettenberg – Farang
2. Michael Molsner – Die Ehre einer Offiziersfrau および Euro-Ermittler: Urians Spur
3. Willi Voss – Das Gesetz des Dschungels
1990 1. Peter Zeindler – Der Schattenagent
2. Yaak Karsunke – Toter Mann
3. Gisbert Haefs – Schattenschneise
1991 1. ピーケ・ビーアマンドイツ語版 – Violetta
2. Peter Schmidt – Das Veteranentreffen
3. クルト・ブラハルツ – Höllenengel
1992 1. Peter Zeindler – Feuerprobe
2. ヤーコプ・アルユーニ – Ein Mann, ein Mord
3. Uta-Maria Heim – Das Rattenprinzip
第2位 『殺るときは殺る』(渡辺広佐訳、パロル舎、1997年)
1993 1. ベルンハルト・シュリンク – Selbs Betrug
2. Martin Grzimek – Feuerfalter
3. Leo P. Ard & Michael Illner – Gemischtes Doppel
第1位『ゼルプの欺瞞』(平野卿子訳、小学館、2002年)


1994 1. ピーケ・ビーアマンドイツ語版 – Herzrasen
2. Uta-Maria Heim – Die Kakerlakenstadt
3. Jürgen Alberts – Tod eines Sesselfurzers
1995 1. Detlef Bernd Blettenberg – Blauer Rum
2. Sabine Deitmer – Dominante Damen
3. Gunter Gerlach – Kortison
1996 1. Robert Hültner – Inspektor Kajetan und die Sache Koslowski
2. Robert Brack – Das Gangsterbüro
3. Regula Venske – Rent a Russian
1997 1. Alexander Heimann – Dezemberföhn
2. Gisbert Haefs – Das Kichern des Generals
3. ヴォルフ・ハース – Auferstehung der Toten
1998 1. Robert Hültner – Die Godin
2. ピーケ・ビーアマンドイツ語版 – Vier, fünf, sechs
3. John Cassar – Bogarts Bruder
3. Roger Fiedler – Sushi, Ski und schwarze Sheriffs
1999 1. ヴォルフ・ハース – Komm, süßer Tod
2. Jörg Juretzka – Prickel
3. Kurt Lanthaler – Azzurro
第1位 『きたれ、甘き死よ』(福本義憲訳、水声社、2001年)


2000 1. テア・ドルン – Die Hirnkönigin
2. ヴォルフ・ハース – Silentium!
3. ヴォルフラム・フライシュハウアー – Die Frau mit den Regenhänden
第1位 『殺戮の女神』(小津薫訳、扶桑社、2001年)


2001 1. Ulrich Ritzel – Schwemmholz
2. アンネ・シャプレ – Nichts als die Wahrheit
3. Sam Jaun – Fliegender Sommer
2002 1. Alexander Heimann – Muttertag
2. Friedrich Ani – Süden und das Gelöbnis des gefallenen Engels
3. Jörg Juretzka – Der Willy ist weg
2003 1. Friedrich Ani – Süden und der Straßenbahntrinker
2. マルティン・ズーター – Ein perfekter Freund
3. Richard Birkefeld & Göran Hachmeister – Wer übrig bleibt, hat recht
第2位 『プリオンの迷宮』(小津薫訳、扶桑社、2005年)
2004 1. Detlef Bernd Blettenberg – Berlin, Fidschitown
2. アンネ・シャプレ – Schneesterben
3. Heinrich Steinfest – Ein sturer Hund
2005 1. アストリット・パプロッタ – Die ungeschminkte Wahrheit
2. フランク・シェッツィング – Der Schwarm
3. Oliver Bottini – Mord im Zeichen des Zen
第1位 『死体絵画』(小津薫訳、講談社、2006年)
第2位 『深海のYrr(イール)』(北川和代訳、早川書房、2008年)

2006 1. Norbert Horst – Todesmuster
2. Heinrich Steinfest – Der Umfang der Hölle
3. Wolfgang Schorlau – Das dunkle Schweigen
2007 1. アンドレア・M・シェンケル – Tannöd
2. Paulus Hochgatterer – Die Süße des Lebens
3. Oliver Bottini – Im Sommer der Mörder
第1位 『凍える森』(平野卿子訳、集英社、2007年)


2008 1. アンドレア・M・シェンケル – Kalteis
2. Heinrich Steinfest – Die feine Nase der Lilli Steinbeck
3. Jan Costin Wagner – Das Schweigen
2009 1. Linus Reichlin – Die Sehnsucht der Atome
2. ベルンハルト・ヤウマン – Die Augen der Medusa
3. Heinrich Steinfest – Mariaschwarz
2010 1. Ulrich Ritzel – Beifang
2. Friedrich Ani – Totsein verjährt nicht
3. Jörg Juretzka – Alles total groovy hier
2011 1. ベルンハルト・ヤウマン – Die Stunde des Schakals
2. Frank Göhre – Der Auserwählte
3. D.B. Blettenberg – Murnaus Vermächtnis
2012 1. メヒティルト・ボルマン – Wer das Schweigen bricht
2. Friedrich Ani – Süden
3. Elisabeth Herrmann – Zeugin der Toten
第1位 『沈黙を破る者』(赤坂桃子訳、河出書房新社、2014年)


2013 1. Merle Kröger – Grenzfall
2. Friedrich Ani – Süden und das heimliche Leben
3. Oliver Bottini – Der kalte Traum
2014 1. Friedrich Ani – M
2. Robert Hültner – Am Ende des Tages
3. Matthias Wittekindt – Marmormänner
2015 1. Franz Dobler – Ein Bulle im Zug
2. Oliver Bottini – Ein paar Tage Licht
3. Max Annas – Die Farm
2016 1. Friedrich Ani – Der namenlose Tag
2. Merle Kröger – Havarie
3. Zoë Beck – Schwarzblende
2017 1. Max Annas – Die Mauer
2. Simone Buchholz – Blaue Nacht
3. Franz Dobler – Ein Schlag ins Gesicht
2018 1. Oliver Bottini – Der Tod in den stillen Winkeln des Lebens
2. Monika Geier – Alles so hell da vorn
3. Andreas Pflüger – Niemals
2019 1. Simone Buchholz – Mexikoring
2. Matthias Wittekindt – Die Tankstelle von Courcelles
3. Max Annas – Finsterwalde

アキフ・ピリンチの『猫たちの聖夜』(原題 Felidae、1989年)は、このページで扱っているドイツ・ミステリ大賞(Deutscher Krimi Preis、DKP賞)の受賞作ではない。『猫たちの聖夜』は日本語訳書では「ドイツ・ミステリ大賞受賞作」とされているが、この「ドイツ・ミステリ大賞」がドイツのどのミステリ賞のことなのかは訳者あとがき等でも明示されていない。なお、『猫たちの聖夜』は1989年にドイツのミステリ雑誌『Mimi』が主催するミステリ賞を受賞している。[1]

翻訳作品部門

受賞作
1985 1. アメリカ合衆国の旗 アラン・ファースト – The Carribean account および The Shadow trade
2. イギリスの旗 アントニイ・プライス – War Game および 『ビンテージ'44 ワインの国の不思議な戦争』 The '44 vintage
3. アメリカ合衆国の旗 トマス・ペリー – 『逃げる殺し屋』 The butcher's boy
1986 1. アメリカ合衆国の旗 ロス・トーマス – Missionary stew
2. イギリスの旗 レン・デイトン – 『メキシコ・セット』 Mexico Set
3. スペインの旗 マヌエル・バスケス・モンタルバン – 『中央委員会殺人事件』 Asesinato en el Comité Central
1987 1. アメリカ合衆国の旗 ロス・トーマス – 『女刑事の死』 Briarpatch
2. イギリスの旗 レン・デイトン – 『ロンドン・マッチ』 London Match
3. イギリスの旗 ジョン・ル・カレ – 『パーフェクト・スパイ』 A Perfect Spy
1988 1. アメリカ合衆国の旗 ジョゼフ・ウォンボー – 『ハリー・ブライトの秘密』 The secrets of Harry Bright
2. イギリスの旗 ルース・レンデル – 『ハートストーン』 Heartstones および 『引き攣る肉』 Live Flesh
3. アメリカ合衆国の旗 スタン・リー – 『ライブラリー・ファイル』 Dunn's Conundrum
1989 1. アメリカ合衆国の旗 ジェイムズ・エルロイ – 『ブラック・ダリア』 The black dahlia
2. スペインの旗 マヌエル・バスケス・モンタルバン – El balneario
3. イギリスの旗 ジュリアン・ラズボーン – 『グリーンフィンガー』 Greenfinger (ZDT)
3. アメリカ合衆国の旗 アンドリュー・ヴァクス – 『フラッド』 Flood
1990 1. アメリカ合衆国の旗 ロス・トーマス – 『五百万ドルの迷宮』 Out on the rim
2. アメリカ合衆国の旗 ジェイムズ・エルロイ – 『ビッグ・ノーウェア』 The big nowhere および 『キラー・オン・ザ・ロード』 Killer on the Road (Silent Terror)
3. アメリカ合衆国の旗 ロバート・キャンベル – 『L.A.で蝶が死ぬ時』 In La-La-Land we trust
1991 1. イギリスの旗 デレク・レイモンド – I was Dora Suarez
2. スペインの旗 マヌエル・バスケス・モンタルバン – El delantero centro fue asesinado al atardecer
3. アメリカ合衆国の旗 カール・ハイアセン – 『顔を返せ』 Skin tight
1992 1. アメリカ合衆国の旗 ジェイムズ・エルロイ – 『L.A.コンフィデンシャル』 L.A. confidential
2. Tom Kakonis – Double down
3. アメリカ合衆国の旗 デイヴィッド・L・リンジー – 『悪魔が目をとじるまで』 Mercy
1993 1. スペインの旗 Andreu Martín – Si es no es
2. イスラエルの旗 バチヤ・グール – 『精神分析ゲーム』 רצח בשבת בבוקר
3. アメリカ合衆国の旗 ジェローム・チャーリン – 『パラダイス・マンと女たち』 Paradise Man
1994 1. アメリカ合衆国の旗 カール・ハイアセン – 『珍獣遊園地』 Native Tongue
2. イギリスの旗 マイケル・ディブディン – 『ダーティー・トリック』 Dirty tricks
3. イギリスの旗 ジョン・ル・カレ – 『ナイト・マネジャー』 The night manager
1995 1. イギリスの旗 フィリップ・カー – 『殺人探求』 A philosophical investigation
2. デンマークの旗 ペーター・ホゥ – 『スミラの雪の感覚』 Frøken Smillas fornemmelse for sne
3. アメリカ合衆国の旗 ジェイムズ・リー・バーク – 『過去が我らを呪う』 A stained white radiance
1996 1. アメリカ合衆国の旗 ロス・トーマス – 『欺かれた男』 Ah, treachery!
2. イスラエルの旗 シュラミット・ラピッド – מקומון (ドイツ語タイトル:Lokalausgabe)
3. オーストラリアの旗 ウィリアム・マーシャル – War machine
1997 1. イギリスの旗 フィリップ・カー – 『殺人摩天楼』 Gridiron
2. アメリカ合衆国の旗 ジェイムズ・エルロイ – 『アメリカン・タブロイド』 American tabloid
3. アメリカ合衆国の旗 ダナ・レオン – Dressed for death
1998 1. ブラジルの旗 Patrícia Melo – O Matador
2. アメリカ合衆国の旗 ケネス・アベル – 『餌』 Bait
3. アメリカ合衆国の旗 ジェイムズ・エルロイ – 『わが母なる暗黒』 My dark places
1999 1. ジェリー・オスター – Nightfall
2. スウェーデンの旗 ヘニング・マンケル – 『五番目の女』 Den femte kvinnan
3. アメリカ合衆国の旗 エルモア・レナード – 『アウト・オブ・サイト』 Out of sight
2000 1. オーストラリアの旗 Garry Disher – Kickback
2. アメリカ合衆国の旗 ジョージ・P・ペレケーノス – 『俺たちの日』 The big blowdown
3. アメリカ合衆国の旗 マイクル・コナリー – 『わが心臓の痛み』 Bloodwork
2001 1. フランスの旗 ジャン=クロード・イゾ – Chourmo
2. アメリカ合衆国の旗 マイクル・コナリー – 『エンジェルズ・フライト』 Angel's flight
3. スウェーデンの旗 ヘニング・マンケル – 『背後の足音』 Steget efter
3. アメリカ合衆国の旗 デニス・ルヘイン – 『愛しき者はすべて去りゆく』 Gone, baby, gone
2002 1. オーストラリアの旗 Garry Disher – Dragon man
2. アルジェリアの旗 ヤスミナ・カドラ – L'Automne des chimères
3. アメリカ合衆国の旗 デニス・ルヘイン – 『雨に祈りを』 Prayers for rain
2003 1. イギリスの旗 ロバート・ウィルスン – 『リスボンの小さな死』 A small death in Lisbon
2. イギリスの旗 イアン・ランキン – 『滝』 The falls および The black book
3. アメリカ合衆国の旗 デニス・ルヘイン – 『ミスティック・リバー』 Mystic River
2004 1. フランスの旗 フレッド・ヴァルガス – Pars vite et reviens tard
2. アメリカ合衆国の旗 ジョージ・P・ペレケーノス – 『曇りなき正義』 Right as Rain および 『明日への契り』 The sweet forever
3. カナダの旗 クリストファー・ムーア – 『死ぬには遅すぎる』 Cut out
2005 1. イギリスの旗 イアン・ランキン – 『血に問えば』 A Question of Blood
2. スウェーデンの旗 アルネ・ダール – Upp till toppen av berget
3. ギリシャの旗 Πέτρος Μάρκαρης(Petros Markaris) – Ο Τσε αυτοκτόνησε(ドイツ語タイトル:Live!)
2006 1. イギリスの旗 デイヴィッド・ピース – 『1974 ジョーカー』 Nineteen Seventy Four
2. 南アフリカ共和国の旗 デオン・マイヤー – Proteus
3. スウェーデンの旗 アルネ・ダール – Europa Blues
2007 1. アメリカ合衆国の旗 ロバート・リテル – Legends
2. アメリカ合衆国の旗 ピート・デクスター – Train
3. キューバの旗 レオナルド・パドゥーラ – 『アディオス、ヘミングウェイ』 Adiós Hemingway
2008 1. アメリカ合衆国の旗 ジェイムズ・サリス – 『ドライヴ』 Drive
2. アメリカ合衆国の旗 マーティン・クルーズ・スミス – Stalin's Ghost
3. フィンランドの旗 マッティ・ロンカ – 『殺人者の顔をした男』 Tappajan näköinen mies
2009 1. アメリカ合衆国の旗 リチャード・スターク – Ask the Parrot
2. アメリカ合衆国の旗 ジェローム・チャーリン – Citizen Sidel
3. 南アフリカ共和国の旗 デオン・マイヤー – 『流血のサファリ』 Onsigbaar
2010 1. イギリスの旗 デイヴィッド・ピース – 『TOKYO YEAR ZERO』 Tokyo Year Zero
2. 南アフリカ共和国の旗 ロジャー・スミス – 『血のケープタウン』 Mixed Blood
3. アイルランドの旗 ケン・ブルーウン – 『酔いどれに悪人なし』 The Guards
2011 1. アメリカ合衆国の旗 ドン・ウィンズロウ – 『犬の力』 The power of the dog
2. アメリカ合衆国の旗 ジョシュ・バゼル – 『死神を葬れ』 Beat the Reaper
3. フランスの旗 Dominique Manotti – Lorraine Connection
2012 1. オーストラリアの旗 ピーター・テンプル – Truth
2. アメリカ合衆国の旗 ドン・ウィンズロウ – 『野蛮なやつら』 Savages
3. イギリスの旗 ケイト・アトキンソン – Started Early, Took my Dog

脚注

参考文献

  • 福本義憲「ドイツ・ミステリ賞事情」(『ミステリマガジン』1998年4月号)

関連項目

外部リンク