『デザイナーベイビー』は、岡井崇による医療小説。2011年7月8日に早川書房から単行本が刊行された。2013年8月にハヤカワ文庫上下版が発刊され、2015年9月8日にはハヤカワ文庫(新版)が刊行された。
処女作『ノーフォールト』で起きた「徳本さん事件」から10年後の城南大学病院を舞台とした作品。生殖医療を題材としており、柊奈智や須佐見教授など前作に登場した人々も多く登場する。
2015年にNHK総合でテレビドラマ化された。
城南大学病院の新生児室から、生後3日目の女児が連れ去られる事件が発生する。女児は将来のノーベル賞候補者と目される近森博士の娘で、ダウン症を患っており、一刻も早い救出が求められる。犯人からの要求に従い、院長が身代金5000万円の運搬を請け負うが、一枚上手の犯人にまんまと奪われてしまう。
誘拐事件の犯人が杳(よう)として分からないまま、城南大学病院では更なる災難が起きる。妊娠中に脳梗塞を起こした妊婦の江嶋英恵が肺塞栓症により急死する。担当看護師が、血栓ができるのを予防するための薬の投与を忘れたと告白し、医療ミスとして処理されるかに思われた。だが、一度や二度の投薬忘れで死ぬことは有り得ないとの見解が示され、看護師による殺人の疑いが高まる。
調べを進めていくうちに、誘拐事件と妊婦急死事件に関連が見えてくる。
『デザイナーベイビー - 速水刑事、産休前の難事件 -』(デザイナーベイビー はやみずけいじ さんきゅうまえのなんじけん)のタイトルで、2015年9月22日から11月10日までNHK総合のドラマ10枠で放送された。主演は黒木メイサ[1]。
スピンオフドラマ『刑事・土橋福助』が製作される[2]。
ドラマでは、速水悠里は妊娠8か月で、夫の下地はカフェのオーナーで思春期の連れ子がいるという設定に変更されている[3]。
城南大学付属病院から生後1週間の赤ちゃん、ノゾミが誘拐された。彼女はノーベル賞間近といわれる物理学者、近森博と、元マラソン選手の優子の子供で、3時間おきに水を与えないと脱水症状を起こすという命にかかわる病気を持っている。助産士はノゾミを優子に渡したと言い張り、優子はもらっていないと言い争いになる。病院側は警察を呼ぶが、母親は事情聴取に応じない。近森夫妻の優秀な子供だから狙われたというのが警察の最初の見解であった。警察上層部は「妊婦だから捜査に最適」という理由だけで翌日から産休の予定だった速水悠里を捜査に加える。
急患を装い病院に潜入した速水は早速、優子がノゾミから目を離した事を指摘した。そこで、病院関係者に的を絞って捜査が開始され、真っ先に疑われたのが唯一アリバイが無い産婦人科医の須佐見だったが、速水から犯人はただ単に子供が欲しかったのが動機ではと言われた須佐見には犯人に心当たりが有った。出産の際に子供が死んだのは須佐見の医療ミスのせいだと思っている夫婦、岸田裕也とトモ夫妻である。岸田家に須佐見が電話をかけると裕也の声の後ろで赤ちゃんの泣き声が聞こえた。
岸田のアパートに警察が駆けつけた時にはすでにもぬけの殻だった。その後、須佐見に脅迫電話が掛かる。電話の主は裕也だった。二度目の電話に速水が優子のフリをして「返して!」と叫ぶと、裕也は須佐見に2000万円の身代金を要求し持ってこさせるが、約束の時間になっても姿を現さず事件発生から3時間が経過。与那国管理官からこの状況の推論を問われた速水は赤ちゃんの容態が急変したか、トモが赤ちゃんを連れて裕也の下から消えたと答え、事実、トモは「ごめんね」という置手紙を残して赤ちゃんと一緒に行方をくらましていた。
一方で速水は気分が悪くなり、須佐見にはついていかずに岸田夫妻の身辺捜査をすると、トモは城南病院の不妊治療「トータルケアプロジェクト」を受けており、そのために度々仕事を休まなくてはならないために仕事を辞めた事と、「死産だったのは罰が当たった…」というのをトモが言っていた、という証言を複数得た。速水の相棒である土橋が裕也を見つけて追い回すが取り逃がし、犯人を泳がそうと考えていた警察上層部は速水と土橋を叱り付ける。その後、裕也は須佐見を殺そうと襲い掛かった所を警察に追い詰められて投身自殺を図り、意識不明に。その後トモは赤ちゃんとともにいて病院に電話をかけた所を警察に確保されたが、その赤ちゃんはノゾミではなく、別の病院から誘拐された子供とすりかえられていた。トモが赤ちゃんを誘拐した動機は、自分が死産だったのに近森夫婦が赤ちゃんに無防備だったことに腹を立てたからであった。一方、須佐見は岸田夫妻に関する資料を焼却する。実は、トモの卵子は妊娠不可能な物であった。山原は速水に卵子の若返りの話しをし、「それをやったら学会から追放される」と語る。
赤ちゃんをすりかえたのは城南大学付属病院の院長、峠縁郎の息子、峠則孝であった。勉強をしないために父親に山に閉じ込められるなどされた上で出来損ないと言われ続け、就職先でもうまくいかず、会社の金を横領して監査が入る前に身代金で補填しようとしていた。則孝は「トータルケアプロジェクト」をネタに縁郎と病院を強請り、廃工場へ縁郎に身代金を持ってこさせるも、縁郎をつけていた速水と土橋が物音を立ててしまったことで彼らに気づき、縁郎が警察に自分を売ったと勘違いし自暴自棄になり、警察に追い詰められて奥多摩の渓流に泣き声がするおくるみを投げ捨てた。その場に居合わせた近森夫妻は狂乱する。
実はこのおくるみはダミーでノゾミは共犯者の病院長秘書の有吉に託されていた。速水は病院へ戻る車中で峠縁郎から病院が日本では禁じられている卵子の核移植を行っていたことを聞かされる。与那国は自分と警察の保身のために、公開捜査を訴える速水を退け事件の非公開を続け、赤ん坊を保護してDNA鑑定を行うまで近森夫婦にノゾミが生きている事を伏せる事を決める。峠縁郎は病院長を引責辞任し、須佐見が院長代行となる。須佐見は「トータルケアプロジェクト」の凍結を決定し、崎山はその研究室の後片付けをしていたところ、プロジェクトの中核である皆本のデスクからプロジェクトや彼には必要ない遺伝子切断に使う制限酵素の伝票を発見。さらにノゾミに関する不審な資料も発見されたところに崎山へ有吉から電話が掛かる。有吉は赤ん坊の処遇を崎山に電話で相談し、崎山は誰にも知られないように自ら指定した乳児院でノゾミを回収することに成功したが、まもなく、病院の研究室からノゾミを奪われ自殺に見せかけて転落させられた。ノゾミを引き取りに慌てて病院から出かける際、崎山は出会い頭に会って自分を詰問した須佐見に「病院に爆弾が仕掛けられている」と語っていた。
一方、近森夫妻は息子の新(アラタ)の白血病の容態が急変したことで、更なる焦りを覚える。実はノゾミは新とHLAを完全一致させて生み出された「救世主兄弟」だった。新は急性前骨髄球性白血病で、施せる治療をほぼ全てやりつくした上での再発だったため施せる治療法が骨髄移植しかなく、ノゾミを出産した時の臍帯血の造血細胞が足りないことが判明したため、須佐見から2日以内に適合するドナーの骨髄を必要とする状況になった、と伝えられる。ノゾミをドナーにした場合、ノゾミの命の保障はないが、優子は「そのためにノゾミを生んだ」と引き下がらない。
与那国に無断で捜査を続行した速水は崎山の研究室で須佐見とともにノゾミが新の救世主兄弟であるという資料を発見する。その後、独りになった速水は製薬会社から崎山に掛かってきた電話で崎山が制限酵素について調べていた事を知り、それが何に使うものかを須佐見に訊ねてゲノム編集のための遺伝子切断という回答を得る。その後、土橋が速水にノゾミの話をしていたのを偶然博に聞かれてしまい、ノゾミが生きている事が近森夫妻にバレてしまう。夫妻は「もう警察を信じない」と捜査陣を非難し、優子はノゾミと新の事情を説明して「2日以内にノゾミを返して」と与那国に言うが、与那国はそれは無理と語る。この時点では犯人に繋がる情報は何も無かった。優子は博の伝を使いネット生放送で「2日以内にノゾミを見つけないといけない」と事件を暴露。それを阻止するように与那国に命令された速水だったが、犯人を動かすためにわざと命令違反をしたため与那国から事件から外され帰宅を命じられる。この放送で警察は事件を公開捜査にせざるを得なくなった。来る情報はどれもガゼばかりだった。皆本はこの放送を利用して自らが行っていたゲノム編集を公開し、近森夫妻の子供たちの話で同情を得て世間にこれを認めさせようと高らかに山原に語る。
下地の喫茶店に戻った速水の携帯電話に須佐見から呼び出しがかかる。杖を突く博を疑問に思って調べたところ、彼は50%の確率で遺伝する遺伝性進行性神経変性疾患を発症しており、ノゾミの着床前診断を希望するも、30歳までは普通に生活できる病気だからという理由で却下されていたというのだ。そこへ崎山の容態が急変し、二人の目の前で崎山は死亡する。脳に出来た血栓を溶かすためのヘパリン注射が怪しいとにらんだ須佐見が薬剤の在庫情報を調べるとプロタミンが1瓶紛失しており、薬剤保管庫の入退室記録を閲覧すると山原が怪しいということになった。
しかし山原には崎山を殺す動機が無い。その頃、山原は皆本からノゾミの居場所がプロジェクトの元患者であることを聞きだす。そこへ赴くと赤ちゃんと、研究室から皆本が運び出した山原の卵子が入った凍結タンクがあった。山原は自分が胚培養して生まれた子供と暮らす母親からこれらを皆本から押し付けられた事を「協力するとは言ったが、これじゃ脅迫じゃないですか」と言われる。山原は凍結タンクの中を破棄し、赤ちゃんを連れ去り逃亡。後からやってきた皆本は山原の反乱に嘲り笑う。全ての罪を山原に着せようとゲノム編集の話を警察にした皆本を速水は怪しむが、与那国は山原とノゾミの確保が最優先と言って皆本を放っておく。その夜、ホテルの宴会場で記者会見を開いた近森夫妻。
会見前に博は速水から彼女が須佐見から聞いた博の事情を話し、「奥さんの思いと違っても自分の思いを語って欲しい」と言われ、会見で博は「私はノゾミに戻ってきて欲しくない。なぜならその後のことが怖いから」と、ノゾミが新のドナーとなるべく生まれた救世主兄弟であることを暴露。会場の速水や取材陣からの「母親なら子供を好きにしてもいいのか!?」という非難に対し優子は「そのためにノゾミを産んだ」と博を残して会場を去る。
『刑事・土橋福助』(けいじ どばしふくすけ)と題して本編の主人公・速水刑事とコンビを組む土橋刑事を主人公としたスピンオフドラマが製作され(2分、全8回)、深夜枠で放送(本編と同日=放送日付け上。実際の時間は水曜未明[注 1])されるほか、公式ホームページでも公開された[2]。出演は土橋・西室・日村の3人。
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