『最後の晩餐 (Last Supper)』は『聖餐の秘跡の祭壇画』の中央パネルで、1464年にルーヴェン・サクラメント協会 (Leuven Confraternity of the Holy Sacrament) の依頼で描かれた。遠近法を用いて室内が表現され、画面に描かれた中央の部屋の壁などの垂直面、交点はイエスの頭上のマントルピースの中央へと収束し、そこに消失点が置かれている。『最後の晩餐』は、北ヨーロッパでペトルス・クリストゥスが1457年にフランクフルトで描いた『玉座の聖母と聖ヒエロニムスと聖フランチェスコ (Virgin and Child Enthroned with St. Jerome and St. Francis)』に次ぎ二枚目の、ルネサンス初期のイタリア人芸術家が完成させた透視図法を用いて描かれた絵画である。
ルーヴェンの都市公認画家になったボウツは1468年にルーヴェン市庁舎 (en:Leuven Town Hall) のための2枚の作品制作を依頼された。1枚目が1468年から1470年に描かれた祭壇画『最後の審判 (Last Judgment)』である。この祭壇画は2枚の翼しか現存しておらず、「楽園への道 (Road to Paradise)」、「呪われた者の墜落 (Fall of the Damned) が現在フランスのリール美術館に、イエスの半身が描かれた中央パネルの断片がストックホルムのスウェーデン国立美術館にそれぞれ所蔵されている。この後ボウツは大きな祭壇画『皇帝オットーの裁判』の依頼を受け、1470年から1475年に死去するまでこの祭壇画の作成に没頭した。ボウツは1枚目のパネルを完成させ、2枚目のパネルにも取り掛かった。どちらのパネルにも神聖ローマ帝国皇帝オットー3世が描かれている。現在ブリュッセルのベルギー王立美術館に所蔵されているが、残りの2枚のパネルは未完成のままである。
肖像画の分野では、ロベルト・カンピン、ヤン・ファン・エイク、ロヒール・ファン・デル・ウェイデン、ペトルス・クリストゥスらが確立した手法をさらに発展させている。ロンドン・ナショナル・ギャラリーの、1462年の日付がある『男性の肖像 (Portrait of a Man)』は背景の窓越しに風景が垣間見えるように描かれ、モデルが斜めに表現された最初の作品である。また、ボウツの作品であろうと広く認められているメトロポリタン美術館所蔵の『男性の肖像』は後の『皇帝オットーの裁判』に描かれた人物像に似ている。その他にワシントン・ナショナル・ギャラリーやアントワープ王立美術館などに肖像画が所蔵されているが、本当にボウツの作品かどうかははっきりしていない。
ミュンヘンの絵画
ミュンヘンのアルテ・ピナコテーク所蔵の2作の「ボウツ風」作品は美術史家たちを混乱させ続けてきた。1作目は『ブラバントの真珠 (Pearl of Brabant)』と呼ばれる三連祭壇画で、1902年初頭にボウツの正真の作品から切り離されたものだと裏書きされているが、最近の研究でこれは否定されている。もう1作はイエスの受難を題材とした祭壇画を構成していた2枚のパネルで、それぞれ『ユダの裏切り (Betrayal of Christ)』、『復活 (Resurrection)』が描かれている。長期にわたってこれらの作品はボウツの最初期の作品であると考えられていた。しかしパネルを年輪年代学で測定した結果、ボウツが死去する1475年ごろのものであることが判明した。そのため現在ではこの作品をボウツが描いたと考える研究者は少なくなっている。
その他の作品
間違いなくボウツの作品とされているのは『最後の晩餐』と『皇帝オットーの裁判』以外には存在しない。1468年から1470年ごろの『最後の審判の祭壇画 (Last Judgment Altarpiece)』、1466年ごろの『聖エラスムスの殉教の三連祭壇画 (Martyrdom of St. Erasmus Triptych)』が高い確率でボウツの作品だとされている。その他にボウツの作品ではないかと考えられているものには以下のような作品がある。
ベルリン美術館(ベルリン) - 『Christ in the House of Simon』、「祈りの聖母」の祭壇画の一部の『キリスト降誕 (Nativity)』
グルーニング美術館(ブルッヘ) - 『聖ヒッポリュトスの殉教 (Martyrdom of St. Hippolytus)』の三連祭壇画
王室礼拝堂(グラナダ) - 『玉座の聖母と4人の天使 (Virgin Enthroned with Four Angels)』
This article incorporates text from The Modern World Encyclopædia: Illustrated (1935); out of UK copyright as of 2005.
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