斜辺 が
17
{\displaystyle {\sqrt {17}}}
である直角三角形までのテオドロスの螺旋
テオドロスの螺旋 (テオドロスのらせん、英 : spiral of Theodorus,square root spiral, Pythagorean spiral, Pythagoras's snail )は、 キュレネのテオドロス の名を冠する、高さが1、底辺が前の直角三角形 である直角三角形の渦巻 である[ 1] 。
構築
テオドロスの螺旋は、底辺 と高さ が1である直角二等辺三角形 から始まる。次の三角形を、底辺が前の直角三角形の斜辺(長さは2の正の平方根 )、高さが1である、先の直角三角形の外側にある直角三角形とする。
さらに次の三角形を、底辺が先の直角三角形の斜辺(長さは3の正の平方根 )、高さが1である、先の直角三角形の斜辺と高さの間の点を直角 とし、外側にある直角三角形とする。
以後、一般に
n
− − -->
1
{\displaystyle n-1}
回目の直角三角形の外側に、その三角形の長さ
n
{\displaystyle {\sqrt {n}}}
の斜辺を底辺、斜辺と高さの間の点を直角とする、高さ1の直角三角形を作り続ける。この連なりをテオドロスの螺旋と言う。例えば16回目の直角三角形は底辺は
16
=
4
{\displaystyle {\sqrt {16}}=4}
、高さは1、斜辺は
17
{\displaystyle {\sqrt {17}}}
である。
歴史
テオドロスの功績は失われたが、プラトン の作品であるテアイテトス の回想部で彼の功績が伝えられた。テオドロスは、テオドロスの螺旋を用いて平方数 でない3から17の数の平方根 は無理数 であることを示したと言われている[ 2] 。
テオドロスが2の平方根の証明に関与していないことはよく知られていたため、プラトンもそれをテオドロスに帰さなかった。テオドロスとテアイテトス は、異なる方法で有理数と無理数を分別した[ 3] 。
斜辺
n
{\displaystyle n}
個目の三角形の斜辺を
h
n
{\displaystyle h_{n}}
とすると、
h
n
{\displaystyle h_{n}}
は自然数
n
{\displaystyle n}
の正の平方根となる。
テオドロスに教えられたプラトンは、なぜテオドロスは
17
{\displaystyle {\sqrt {17}}}
で止めてしまったのか疑問に思った。一般に、その理由は
17
{\displaystyle {\sqrt {17}}}
は直角三角形が重ならない最後の三角形の斜辺であったからであると考えられている[ 4] 。
三角形の重なり
1958年、カレブ・ウィリアムズ(Kaleb Williams)は、テオドロスの螺旋のどの斜辺も重ならないことを示した。また、長さ1の辺の延長は、ほかのどの頂点も通らないことも証明した[ 4] [ 5] 。
拡張
テオドロスは螺旋を斜辺が
17
{\displaystyle {\sqrt {17}}}
になるところで止めてしまったが、螺旋を無限に続けることができる。
成長率
角
φ φ -->
k
{\displaystyle \varphi _{k}}
を
k
{\displaystyle k}
番目の三角形の螺旋の中心がある頂点の角として
tan
-->
(
φ φ -->
k
)
=
1
k
.
{\displaystyle \tan \left(\varphi _{k}\right)={\frac {1}{\sqrt {k}}}.}
である。したがって、
φ φ -->
k
{\displaystyle \varphi _{k}}
は次の式で表せる[ 1] 。
φ φ -->
k
=
arctan
-->
(
1
k
)
.
{\displaystyle \varphi _{k}=\arctan \left({\frac {1}{\sqrt {k}}}\right).}
最初の直角三角形の底辺と、
n
{\displaystyle n}
番目の三角形の斜辺の成す角
φ φ -->
(
n
)
{\displaystyle \varphi (n)}
は、1から
n
{\displaystyle n}
までの
φ φ -->
k
{\displaystyle \varphi _{k}}
の和である。これは有界関数
c
2
{\displaystyle c_{2}}
を用いて次の様に表せる[ 1] 。
φ φ -->
(
n
)
=
∑ ∑ -->
k
=
1
n
φ φ -->
k
=
∑ ∑ -->
k
=
1
n
arctan
-->
(
1
k
)
=
2
n
+
c
2
(
n
)
{\displaystyle \varphi \left(n\right)=\sum _{k=1}^{n}\varphi _{k}=\sum _{k=1}^{n}\arctan \left({\frac {1}{\sqrt {k}}}\right)=2{\sqrt {n}}+c_{2}(n)}
ただし
lim
k
→ → -->
∞ ∞ -->
c
2
(
k
)
=
− − -->
2.157782996659
… … -->
{\displaystyle \lim _{k\to \infty }c_{2}(k)=-2.157782996659\ldots }
(オンライン整数列大辞典 の数列 A105459 )
螺旋の一部
半径
螺旋の半径の成長は任意の
n
{\displaystyle n}
について次の式で表せる。
Δ Δ -->
r
=
n
+
1
− − -->
n
.
{\displaystyle \Delta r={\sqrt {n+1}}-{\sqrt {n}}.}
アルキメデスの螺旋
テオドロスの螺旋はアルキメデスの螺旋 によって近似 できる[ 1] 。アルキメデスの螺旋の2つの渦の距離は数学定数 である円周率
π π -->
{\displaystyle \pi }
に近づいていくように、テオドロスの螺旋の2つの渦巻きの距離は無限に近づくにつれて、急速に
π π -->
{\displaystyle \pi }
に近づく[ 6] 。
渦の数
渦の距離の平均
渦の距離の平均とπの近似精度
2
3.1592037
99.44255%
3
3.1443455
99.91245%
4
3.14428
99.91453%
5
3.142395
99.97447%
→ → -->
∞ ∞ -->
{\displaystyle \to \infty }
→ → -->
π π -->
{\displaystyle \to \pi }
→ → -->
100
% % -->
{\displaystyle \to 100\%}
5回目の渦でさえ、その近似率は99.97%である[ 1] 。
連続的な曲線
フィリップ・J・デイヴィス のによるテオドロスの螺旋を解析的につなげたもの。数字は整数である原点との距離。青は反対方向に螺旋を拡張したもの。
離散 的なテオドロスの螺旋をどのように内挿 して滑らかな曲線にするかという問題は2001年にフィリップ・J・デイヴィス によって提案、解決された。階乗 をガンマ関数 に内挿するのにオイラーの公式 を用いることを類推して、デイヴィスは次の式を用いた。
R
→ → -->
C
:
T
(
x
)
=
∏ ∏ -->
k
=
1
∞ ∞ -->
1
+
i
k
1
+
i
x
+
k
(
− − -->
1
<
x
<
∞ ∞ -->
)
{\displaystyle \mathbb {R} \rightarrow \mathbb {C} :T(x)=\prod _{k=1}^{\infty }{\frac {1+{\frac {i}{\sqrt {k}}}}{1+{\frac {i}{\sqrt {x+k}}}}}\qquad (-1<x<\infty )}
T
(
x
)
{\displaystyle T(x)}
は実数
x
{\displaystyle x}
において、螺旋の複素平面 上の座標 を表す。ジェフリー・J・リーダー (英語版 ) とArieh Iserles (英語版 ) はさらにこの関数を研究した。次の関数方程式 の解は一意的に
T
(
x
)
{\displaystyle T(x)}
のみに定まる。
f
(
x
+
1
)
=
(
1
+
i
x
+
1
)
⋅ ⋅ -->
f
(
x
)
,
{\displaystyle f(x+1)=\left(1+{\frac {i}{\sqrt {x+1}}}\right)\cdot f(x),}
初期条件は
f
(
0
)
=
1
{\displaystyle f(0)=1}
かつ、偏角 と絶対値 において、単調増加 であることである[ 8] 。
解析的なデイヴィスの連続化は原点から反対方向の螺旋へと拡張できる。
図に、元の離散的なテオドロスの螺旋の節を緑の円で示してある。青い円は螺旋を反対方向に繋げたもので、整数の範囲で
n
{\displaystyle n}
番目の点の極半径が
r
n
=
± ± -->
|
n
|
{\displaystyle r_{n}=\pm {\sqrt {|n|}}}
となっている。破線の円は原点
O
{\displaystyle O}
における曲率 円である。
関連項目
出典
^ a b c d e Hahn, Harry K. (2007), The ordered distribution of natural numbers on the square root spiral , arXiv :0712.2184
^ Nahin, Paul J. (1998), An Imaginary Tale: The Story of
− − -->
1
{\displaystyle {\sqrt {-1}}}
, Princeton University Press, p. 33, ISBN 0-691-02795-1
^ Plato; Dyde, Samuel Walters (1899), The Theaetetus of Plato , J. Maclehose, pp. 86–87, https://books.google.com/books?id=wt29k-Jz8pIC
^ a b
Long, Kate, A Lesson on The Root Spiral , オリジナル の11 April 2013時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20130411230043/http://courses.wcupa.edu/jkerriga/Lessons/A%20Lesson%20on%20Spirals.html 30 April 2008 閲覧。
^ Teuffel, Erich (1958), “Eine Eigenschaft der Quadratwurzelschnecke”, Mathematisch-Physikalische Semesterberichte zur Pflege des Zusammenhangs von Schule und Universität 6 : 148–152, MR 96160
^
Hahn, Harry K. (2008), The distribution of natural numbers divisible by 2, 3, 5, 7, 11, 13, and 17 on the square root spiral , arXiv :0801.4422
^ Gronau (2004) .
参考文献
Davis, P. J. (2001), Spirals from Theodorus to Chaos , A K Peters/CRC Press
Gronau, Detlef (March 2004), “The Spiral of Theodorus” , The American Mathematical Monthly 111 (3): 230–237, doi :10.2307/4145130 , JSTOR 4145130 , https://jstor.org/stable/4145130
Heuvers, J.; Moak, D. S.; Boursaw, B (2000), “The functional equation of the square root spiral”, in T. M. Rassias, Functional Equations and Inequalities , pp. 111–117
Waldvogel, Jörg (2009), Analytic Continuation of the Theodorus Spiral , http://www.math.ethz.ch/~waldvoge/Papers/theopaper.pdf