ダ・ヴィンチ・恐山(ダ・ヴィンチ・おそれざん、1993年[2]5月10日[3] - )は、日本の漫画原作者、小説家、作詞家、ライター、編集者。
別名は品田 遊(しなだ ゆう)、有実 泊(ありみ とまる)。
経歴
東京都出身。2009年12月にツイッターのアカウントを作成しネット上での活動をはじめる。それ以前のネットでの表現活動はなかったという[4]。「ダ・ヴィンチ・恐山」のペンネームは小学生のころに漫画のペンネームとして使っていたもの[4][注 1]。
2011年3月、「後輩女性」、通称「輝き女子」に関する一連の人気ツイートがまんがくらぶにて4コマ漫画化される(嘘空まこと作画。2013年に単行本刊行)[5]。同年10月、月刊ビッグガンガン創刊号より、3Dモデルを利用したマンガ制作ソフトコミPo!で制作したギャグマンガ『くーろんず』の連載を開始(2015年まで連載)。
2013年から、友人・にぅまとともにustreamにネットラジオ『オールナイト虚無』を隔週で配信(2016年以降は、『恐山・にぅまのデガラシハリウッド大学』とタイトルを一新し、不定期配信)。同ラジオはネット上でカルト的な人気を博し、常連投稿者の中には、のちに歌人としてデビューした木下龍也がいる[6]。またウェブサイト「ダ・ヴィンチニュース」に「オールナイト虚無 出稼ぎ編」と称した、テキスト出張版が連載されていた。
各誌でのコラム執筆など活動の幅を広げ、2015年には「品田遊」名義で小説『止まりだしたら走らない』を出版し、小説家としてデビューを果たす[7]。同書は中央線を舞台にした短編小説集で、表紙・挿絵をツイッターの活動でも知られるerror403が担当している。2016年、ネットコンテンツを制作・運営するバーグハンバーグバーグに入社[8]。同社の運営するウェブサイト「オモコロ」で編集・記事執筆を行っている。
2016年よりバーグハンバーグバーグの同僚であるARuFaとともにネットラジオ『匿名ラジオ』をYouTubeに毎週木曜日に配信している。また、2019年からは同社が運営する「オモコロチャンネル」にも主要メンバーの1人として出演している[9]。
2018年6月よりnoteにて「居酒屋のウーロン茶マガジン」および「居酒屋の黒ウーロン茶マガジン」を開始。2023年10月現在、1日も欠かさずに継続している。
人物・エピソード
- 素顔を公開しておらず、インターネットやイベントなどで表に出る際は、仮面をつけて活動している。愛用の仮面には、デビュー作『止まりだしたら走らない』の表紙デザインがあしらわれており、2019年からは、従来よりサイズの小さなものにリニューアルした。また、小説家としてのデビュー以前は、市販の仮面にアルミホイルを貼りつけたものなどを使用していた[10]。
- ネタ系ツイッタラーとして認知が広まるにつれて、各地のトークイベントや大喜利イベントに招かれるようになる。2011年8月、おおひなたごうが主催するイベント「第4回ギャグ漫画家大喜利バトル!!」では、おおひなたごう、しりあがり寿、西原理恵子、島本和彦、東村アキコ、和田ラヂヲ、カラスヤサトシといったプロのギャグ漫画家に交じって参加し、優勝を果たした[11]。
- 小学校低学年の頃にあだ名が「ちょんまげくん」だったことがある[12]。
- 高校時代は演劇部の部長を務め、脚本で賞を取ったことがある[13]。当時書いた劇は、以降も他校の演劇部で演じられることがあり、ときおり上演許可依頼が届くという[14]。
- 大学時代、落語研究会に入ったが、一か月で退部した。経緯については不明だが、「大学生全員を心の底から憎むようになってしまった」[15]からだという。
- 哲学に造詣が深い。哲学を題材にした記事やインタビュー、漫画原作などを手掛けることも多く、オモコロで発表したウェブ漫画「下校時刻の哲学的ゾンビ」[16]などが代表的。同作は、難解な思考実験である「哲学的ゾンビ」を、わかりやすく表現したものとしてネット上で話題を呼び、研究者である永野潤の著書『イラストで読む キーワード哲学入門』でも引用された。
- ツイッターを始めたきっかけは、error403の活動に触発されたため[17]。それ以前は、小説や4コマ漫画、架空の生き物をまとめたノートなどを、誰に見せるでもなく書き続けていた[18]。
- アイドルマスターシリーズのファン。2018年、会社の業務の一環で、『アイドルマスター ステラステージ』のゲーム実況をしたことをきっかけに、急速にのめり込んでいった。翌年12月にはアイドルマスターを題材にした自身初の同人誌『アイドル目撃情報』を上梓した他、アイドルマスターの特集が組まれた『BRUTUS』933号では「ダ・ヴィンチ・恐山P」としてコメントを寄せている。
- 好物は角煮[19]。嫌いなものは野菜[20]。
- 『オールナイト虚無』『デカラシハリウッド大学』にはマスコットキャラクターの「ウロ」「ムー」がおり(デザイン・作画はにぅまが担当)、ダ・ヴィンチ・恐山名義でキャラクターグッズ類およびLINEスタンプが販売されている[注 2]。
- 2017年に集中力の低下を感じ、半ば好奇心から心療内科を受診[21]。その後、検査の結果、軽度のADHDの兆候が見られるという診断がなされている[22][23]。2023年には町田粥によるコミックエッセイ『発達障害なわたしたち』で取材を受けており、同作品の単行本1巻発売の際には帯コメントを寄せ(恐山の取材回は第2巻収録予定)、恐山がゲストのオンライントークイベントも行われた[24]。
評価
コルク代表の佐渡島庸平は、ダ・ヴィンチ・恐山を「観察が得意」であるとし、「天才」と評した。佐渡島の5年近くにも及ぶアプローチは、ダ・ヴィンチ・恐山が小説家としてデビューするきっかけとなった[25]。
漫画家の赤坂アカは「すごいと思う漫画」の1つとして『くーろんず』を挙げ、ダ・ヴィンチ・恐山を「オモロを突き詰めたような男」と評した[26]。
作品リスト
連載漫画
- くーろんず(『月刊ビッグガンガン』、スクウェア・エニックス)
- 4コマくーろんず(『ガンガンONLINE』、スクウェア・エニックス)
- 「辛さの記憶と弱さの証明」2019年5月10日の日記(note)※ウーロン茶マガジンまたは黒ウーロン茶マガジン購読者のみ
- 「暴論図」2020年10月31日の日記(note)※ウーロン茶マガジンまたは黒ウーロン茶マガジン購読者のみ
- そういう人もいる(作画:南十字明日菜)
漫画原作
- 輝きジョシ子さん。(作画:嘘空まこと、『まんがくらぶ』、竹書房)※ツイートを原案に漫画化したもの。
- 哲学ゾンビの語りえない滞納(漫画:とりうみいたち、『月刊ビッグガンガン』、スクウェア・エニックス)
小説
- 中央線に乗って(cakes)(有実泊名義)
- 止まりだしたら走らない(リトルモア)
- 名称未設定ファイル(キノブックス)
- ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語 (イースト・プレス)
- キリンに雷が落ちてどうする(朝日新聞出版)
- 納税、のち、ヘラクレスメス のべつ考える日々(朝日新聞出版)
短編小説
- 無題の無駄意(新都社)(波羅密多ピコ麻呂名義)
- 平成分裂(note)
- 週末に月を買う(メルカリ)
- ゴッド・ブレス・ユー(早川書房)(ハヤカワ文庫『AIとSF』〈日本SF作家クラブ編〉収録[27])
連載コラム
- ダ・ヴィンチ・恐山の因果くらぶ(『まんがくらぶ』、竹書房)
- 字デテレビ(『TVブロス』、東京ニュース通信社)
- ダ・ヴィンチ恐山の降霊大喜利(『ダ・ヴィンチニュース』、KADOKAWA)
- オールナイト虚無-出稼ぎ編- (『ダ・ヴィンチニュース』、KADOKAWA)※ネットラジオ「オールナイト虚無」のテキスト出張版
- 甘んじろ人生相談(さるやまハゲの助アプリ)※にぅまとの共作
書籍
同人誌
脚本
作詞
- リーガルフォース下半期(2011)
- I sing for me(2011)
- テナント(2011)
- ロードローラー慕情(2011)
- 上弦の月とタオルと骨盤(2011)
- インターネットテーマソング『克服せよ!404』(2012)
- OMORO NO COCORO(2022)(作曲:雨穴、『オモコロスーパーディナーショー 〜オンラインの宴〜』エンディングテーマ曲)
- インゲル(2022)(歌唱:超学生、作曲:篠崎あやと、橘亮祐)[31]
テレビ番組
展示会
- 梨×株式会社闇×大森時生 企画展「行方不明展」(2024年7月19日 - 9月1日、三越前福島ビル) - ディレクター(「品田遊」名義)[33]
出演
テレビ番組
脚注
注釈
- ^ 当時のほかの候補に、波羅密多 ピコ麻呂(はらみつだ ピコまろ)があった[4]。
- ^ 『オールナイト虚無』第5回から登場。名前はそれぞれ「虚」と「無」から。デザインのモチーフは、ゴヤの絵画『我が子を食らうサトゥルヌス』。
出典
関連項目
外部リンク