タガログ文字 (Unicodeのブロック)

タガログ文字 (Unicodeのブロック)
Tagalog
範囲 U+1700..U+171F
(32 個の符号位置)
基本多言語面
用字 バイバイン
主な言語・文字体系
割当済 23 個の符号位置
未使用 9 個の保留
Unicodeのバージョン履歴
3.2 20 (+20)
14.0 23 (+3)
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タガログ文字(タガログもじ、英語: Tagalog)は、Unicodeの45個目のブロック

解説

フィリピンで話されるタガログ語イロカノ語などのフィリピン北部~東部で話される諸言語を表記するためのタガログ文字、或いはバイバイン(アリバタ)(タガログ語:baybayin)を収録している。なお、現在のタガログ語やイロカノ語では基本的にラテン文字が使用されており、バイバインは現代の文書ではあまり使用されていない。

主にフィリピンの北部から東部で用いられている。
バイバインが使用されるフィリピン内の地域を赤で示した地図。

バイバインはデーヴァナーガリーなどと同様に、ブラーフミー文字から派生した所謂ブラーフミー系文字(インド系文字)の一つであり、音素文字のうち、子音字に母音記号を付加することで発音を切り替えるアブギダに分類される。書字方向ラテン文字などと同様に左から右へ横書き(左横書き)する。分かち書きは原則しない。

符号位置の順序はおおむね伝統的なブラーフミー系文字の順序に従っている。

Unicodeのバージョン3.2において初めて追加された。

収録文字

コード 文字 文字名(英語) 用例・説明 ラテン文字転写
独立母音字
U+1700 TAGALOG LETTER A 母音[a]を表す。 a
U+1701 TAGALOG LETTER I 母音[i]または[e]を表す。 i/e
U+1702 TAGALOG LETTER U 母音[u]または[o]を表す。 u/o
子音字
U+1703 TAGALOG LETTER KA 子音[k]を表す。 k
U+1704 TAGALOG LETTER GA 子音[ɡ]を表す。 g
U+1705 TAGALOG LETTER NGA 子音[ŋ]を表す。 ng
U+1706 TAGALOG LETTER TA 子音[t]を表す。 t
U+1707 TAGALOG LETTER DA 子音[d]を表す。 d
U+1708 TAGALOG LETTER NA 子音[n]を表す。 n
U+1709 TAGALOG LETTER PA 子音[p]を表す。 p
U+170A TAGALOG LETTER BA 子音[b]を表す。 b
U+170B TAGALOG LETTER MA 子音[m]を表す。 m
U+170C TAGALOG LETTER YA 子音[j]を表す。 y
U+170D TAGALOG LETTER RA 子音[r]を表す。

古典タガログ語では使われておらず、現代的に派生した文字である[1]

もともとタガログ語には[r]の音素はなかったが、スペインの植民地支配による影響で[d]と[r]を区別するようになり、現代になってバイバインを用いて現代タガログ語を表記する際に必要になったためᜇから派生した文字が新たに追加された[2]

r
U+170E TAGALOG LETTER LA 子音[l]を表す。 l
U+170F TAGALOG LETTER WA 子音[w]を表す。 w
U+1710 TAGALOG LETTER SA 子音[s]を表す。 s
U+1711 TAGALOG LETTER HA 子音[h]を表す。 h
従属母音記号
U+1712 TAGALOG VOWEL SIGN I 母音[i]または[e]を表す。 i/e
U+1713 TAGALOG VOWEL SIGN U 母音[u]または[o]を表す。 u/o
ヴィラーマ
U+1714 TAGALOG SIGN VIRAMA ヴィラーマ。殺母音記号。母音/-a/を発音せず子音のみが読まれることを表す。

タガログ語ではkrus kudlitと呼ばれる[3]。元々はU+1715 pamudpodが本来のヴィラーマ記号であったが、スペイン帝国の植民地時代にキリスト教を象徴する十字架の形状の記号に置き換えられたことで導入された[3]

U+1715 TAGALOG SIGN PAMUDPOD バイバインにおける本来のヴィラーマ記号。U+1714が導入される以前はこちらが使われていた。バイバインを用いるコミュニティではkrus kudlitがスペイン帝国主義を想起させることや、母音記号のu/oとの区別が困難である点などから、ヴィラーマを表現するにあたってこちらの記号の方が好まれている[3]

この記号がUnicodeに収録されるまではハヌノオ文字pamudpodが代わりに(不適切に)使用されていた。

古典的な字母
U+171F TAGALOG LETTER ARCHAIC RA サンバレスのRAとも呼ばれる[1]

小分類名は「古典的な字母」となっているが、実際には古典タガログ語では使われておらず、現代的に派生した文字である[1]

U+170D ᜍが定着する以前に現代タガログ語の音素[r]を表すのに用いられていた[2]

r

小分類

このブロックの小分類は「独立母音字」(Independent vowels)、「子音字」(Consonants)、「従属母音記号」(Dependent vowel signs)、「ヴィラーマ」(Viramas)、「古典的な字母」(Archaic letter)の5つとなっている[1]

独立母音字(Independent vowels

この小分類にはバイバインのうち、頭子音のない母音の音節を表す際に用いられる独立した母音字が収録されている。

子音字(Consonants

この小分類にはバイバインのうち、基本的な子音字が収録されている。

従属母音記号(Dependent vowel signs

この小分類にはバイバインのうち、子音字に結合する母音記号が収録されている。

ヴィラーマ(Viramas

この小分類にはバイバインのうち、ヴィラーマ(殺母音記号)と呼ばれる、子音字の持つ暗黙の母音/-a/を読まずに子音のみを発音することを表す記号2種類が収録されている。

古典的な字母(Archaic letter

この小分類にはバイバインのうち、サンバレス州[1]などで用いられていた子音字RAの異体字1文字のみが収録されている。なお、小分類名は「古典的な字母」となっているが、実際には古典タガログ語では使われておらず、現代的に派生した文字である[1]

文字コード

タガログ文字(Tagalog)[1]
Official Unicode Consortium code chart (PDF)
  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
U+170x
U+171x
注釈
1.^バージョン15.1時点


履歴

以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。

バージョン コードポイント[a] 文字数 L2 ID ドキュメント
3.2 U+1700..170C,170E..1714 20 L2/00-097 Takayuki K. Sato (22 February 2000), Philippino characters (status report) (英語)
L2/00-357 Michael Everson (16 October 2000), New draft for Philippine script with block introduction (英語)
14.0 U+170D,171F 2 L2/19-258 Fredrick R. Brennan (18 July 2019), The baybayin "ra", its origins and a plea for its formal recognition (revised) (英語)
U+1715 1 L2/20-257 Fredrick R. Brennan (1 October 2020), Please reclassify the Philippine pamudpod (英語)
L2/20-272 Fredrick R. Brennan (4 October 2020), Amended proposal to encode the Tagalog pamudpod (英語)
L2/21-117 Roozbeh Pournader (29 June 2021), Pamudpod properties (Tagalog and Hanunoo) (英語)
  1. ^ 提案されたコードポイントと文字の名前は、最終決定と異なる場合がある。

出典

  1. ^ a b c d e f "The Unicode Standard, Version 15.1 - U1700.pdf" (PDF). The Unicode Standard (英語). 2024年10月10日閲覧
  2. ^ a b Fredrick R. Brennan (2019年7月18日). “The baybayin "ra", its origins and a plea for its formal recognition (revised)” (英語). Unicode. 2024年10月13日閲覧。
  3. ^ a b c Fredrick R. Brennan (2020年10月1日). “Please reclassify the Philippine pamudpod” (英語). Unicode. 2024年10月10日閲覧。

関連項目